仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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番外編/仮面ライダーディエンド~怪盗と王女と幻の秘宝~④

 

 

奇妙な共同生活が始まってから一週間……

 

 

大輝「ふっ……ふんっ……ふぅっ……」

 

 

部屋に閉じ込められてから一週間後。腹の怪我が大分回復した大輝は鈍った身体を鍛え直す為、黒いタンクトップ姿で床で腕立て伏せ1000回を行っていた。そしてやっと1000を達成すると、大輝はくたびれたように床に座り込んで近くに置いてあったタオルを手に取り、額や全身から流れる汗を拭っていく。すると其処へ、シュレリアが料理を載せたトレイを両手に持ってキッチンから出てきた。

 

 

シュレリア「――あ、泥棒さん!何やってるんですか?!」

 

 

キッチンから出てすぐ床に座り込む大輝の姿が目に入ったシュレリアは血相を変え、慌ててベッド横のサイドテーブルにトレイを置いて大輝に駆け寄った。

 

 

大輝「?ああ君か……見て分からないかい?トレーニングしてるのさ」

 

 

シュレリア「そうじゃありません!駄目じゃないですか?!まだ怪我が治っていないのにそんな事したら!」

 

 

大輝「大袈裟だな君は……怪我ならもう大した事ないさ。それにずっと寝ていたせいで身体も鈍ってたし、ちゃんと体力を回復しておかないと泥棒業にも支障が出るんだよ」

 

 

シュレリア「それで怪我が悪化したらどうするんですか?!いいから寝てて下さい!」

 

 

そう言いながらシュレリアは大輝を強引に床から立ち上がらせてベッドに座らせ、大輝は「お節介だな…」と軽く溜め息を吐きベッドに大人しく横たわった。

 

 

シュレリア「全くもう……ちょっと目を離した隙にこれなんですから……」

 

 

大輝「別に俺がなにをしてようが構わないだろう?君には関係ないんだし」

 

 

シュレリア「関係大有りです!怪我してる泥棒さんを拾ったのは私なんですから、泥棒さんをお世話するのは私の役割なんですよ?!」

 

 

大輝「拾ったって……俺は犬か猫かい?」

 

 

シュレリア「犬はちょっと違いますけど、猫っていうのはあながち間違ってないと思いますよ?言う事を聞かないところとか、人に懐かないところとか、おまけに泥棒さんですし……泥棒さんは動物で例えるなら猫がピッタリです」

 

 

全く、とまるで聞き分けのない子供に頭を悩ませる母親のような顔で何度も頷くシュレリア。大輝はそんなシュレリアの顔を見てめんどくさそうに溜め息を吐き、ベッドのシーツに足を入れていく。

 

 

大輝「分かりましたよ。大人しく寝てればいいんだろう……」

 

 

シュレリア「よろしい……あ、でもその前にこれ食べて下さい。お粥作ってきたので」

 

 

そう言ってシュレリアはサイドテーブルの上に乗せておいたお粥の載ったトレイを両手で持ち、大輝に差し出していく。大輝は差し出されたお粥を見てこの前のお粥を思い出し若干険しげに眉を寄せ、シュレリアはそんな大輝の様子に苦笑した。

 

 

シュレリア「大丈夫です、ちゃんとレシピ通りに作りましたし、私も味見しましたから(焦)」

 

 

大輝「……だったらいいけど……」

 

 

苦笑するシュレリアの言葉を聞き、ちゃんと味見した上で運んできたのなら問題はないのだろうと判断した大輝はシュレリアの手からお粥を受け取り、蓋を開いた。中身はちゃんとしたお粥であり、この前のような有害な料理には見えない。見た目は一応安全だと確認した大輝は器横のレンゲを手に取り、お粥を掬って口に運ぶ。

 

 

シュレリア「……ど、どうですか?」

 

 

大輝「……悪くはない……この前に比べたらマシな方かな……」

 

 

シュレリア「っ!ほ、本当ですか?!良かったぁ~」

 

 

不安げな様子で大輝の反応を見守っていたシュレリアはそれを聞いて安心したように肩の力を抜き、大輝はそれを尻目に黙々とお粥を食べ進めていく。

 

 

大輝「しかし、良く此処まで上達したものだね。この前のアレとは比べ物にならないし……」

 

 

シュレリア「あ、あははは……流石に私もアレはないって思いましたからね……だからあれから色々勉強と練習を繰り返して、漸く人様に出せる物が作れまして……υυ」

 

 

大輝「……あっそう……」

 

 

頬を掻きながら苦笑いを浮かべるシュレリアに大輝は適当に相打ちを打ってお粥を食べ進め、シュレリアはそんな大輝を何も言わずに見守っていくが、そこでふとある事を思い出した。

 

 

シュレリア「あ、そういえば泥棒さん、ちょっと気になってる事があるんですけど……」

 

 

大輝「?気になってること……?」

 

 

シュレリア「はい。あの、泥棒さんって、誰かご家族の方とかはおられるんですか?」

 

 

大輝「……っ!」

 

 

単純に疑問に思い、シュレリアは悪意が一切ない表情で小首を傾げながら聞いた。その問いを受けた大輝は一瞬ピタッとレンゲを掴む手が止まるが、すぐに何でもなかったようにレンゲを動かしていく。

 

 

大輝「……何でそんなこと聞くんだい?」

 

 

シュレリア「何でって……ほら、泥棒さんが此処に閉じ込められてから一週間が経つでしょう?外との連絡も出来ないですし、だから多分、泥棒さんのご家族の方々も心配なさってるんじゃないかと思って……」

 

 

要は、長らく連絡が出来ないせいで大輝の家族が大輝を心配してるんじゃないかと気になってるんだろう。そんな事にまで気にかけるシュレリアに思わず薄い息を吐き、大輝はお粥の米をレンゲで弄りながら……

 

 

大輝「――そんな筈ないさ……俺には、家族なんて物はいないからね」

 

 

シュレリア「……え?いないって……?」

 

 

大輝「……家族はいない。俺の両親なんて、もう何年も前に死んでるし」

 

 

シュレリア「……っ!」

 

 

冷たく、平たい口調でそう告げた大輝の言葉にシュレリアは思わず唖然となった。大輝はそんなシュレリアの視線から顔を背け、暫く口を閉ざした後にポツポツと話し始めた。

 

 

大輝「両親は俺が小さい頃に交通事故で死んでね……俺はその時両親と一緒にいたから、両親の死を目の前で見てたんだよ……その後俺は両親の死を間近で見たショックで暫く塞ぎ込んで、そのまま実家から離れて暮らしていた兄さんの下に引き取られたのさ」

 

 

シュレリア「…………」

 

 

大輝「それから数年間、兄さんが傍で支えてくれたお陰で漸く両親の死から立ち直れてね……俺はそんな兄さんみたいになりたくて、あの人みたいに誰かを立ち直せられる人間になりたいと思って、あるプログラムを作って一人の人物の下で働いてた……だけど……」

 

 

ググッと、言葉と共にレンゲを握り締める手に力が加われた。シュレリアはそれに気付いて不安げに大輝を見つめると、大輝は顔を逸らしたまま……

 

 

大輝「……俺は裏切られたんだよ……信じていたモノ全てに……そして俺は……兄さんまで……」

 

 

シュレリア「……泥棒さん……?」

 

 

ポツリと、なにかを呟いた大輝に心配そうに声を掛けるシュレリア。大輝はそんなシュレリアの顔を横目に見ると、いつもの様子に戻って肩を竦めた。

 

 

大輝「まっ、そういうワケだから君に心配されるような事は何もないって訳さ。理解してくれたかい?」

 

 

シュレリア「あ……はい……あの……すみません……余計な詮索をしてしまって……」

 

 

大輝「そう思うなら、これ以上俺の事情に首を突っ込まないでくれるかな?俺にも触れて欲しくないことの一つや二つはあるんだよ」

 

 

現に今もそうだしと、大輝は冷たい口調で言いながらレンゲでお粥を掬って口に運んでいき、シュレリアも聞いてはいけない事を聞いてしまったと思って少し落ち込んでしまう。そんな時……

 

 

 

 

 

 

―コンコンッ……―

 

 

『姫様、少し宜しいでしょうか?』

 

 

シュレリア「……?!エ、エルク?!」

 

 

大輝「……ん?」

 

 

 

不意に入口の扉からノック音が響き渡り、シュレリアはその音と共に聞こえてきた青年の声に驚いて思わず椅子から立ち上がり、大輝は訝しげな顔でそんなシュレリアと扉を交互に見つめていく。

 

 

大輝「……何だ、君の知り合いかい?」

 

 

シュレリア「え……あっ、はい、私の護衛の騎士でして……ってこんな事してる場合じゃないんだった!!どうしましょう?!このままじゃ泥棒さんが見付かっちゃう……!!」

 

 

あわわわわ!と、ベッドの周りをあっちこち行ったり来たりと荒立たしく動き回るシュレリア。そんなシュレリアを大輝は呆れるように見つめ、そうこうしてる間に再び扉からノック音が響き渡った。

 

 

『姫様?どうかなされましたか?』

 

 

シュレリア「っ!い、いえ、なんでもありません?!ちょっと待ってて下さい!」

 

 

『はぁ……』

 

 

扉の向こう側にいる騎士に待ってもらい、シュレリアは大輝と扉を交互に見ると大輝の手からレンゲとお粥をババッ!と素早く一瞬で奪い取り、大輝を半ば強引にベッドへと横たわらせてシーツを手に取った。

 

 

シュレリア「す、少しの間隠れてて下さいっ!此処で見付かったら直ぐに拘束されて、そのままアーベルト王子に突き出されてしまうかもしれませんから!」

 

 

大輝「……ふぅ、しょうがないか……」

 

 

確かに此処で見付かってしまえば面倒な事になるに違いない。ならば此処は彼女の言う通りにした方が最善だろうと思い軽く溜め息を吐き、シュレリアはそんな大輝を見て苦笑いしながら大輝にシーツを被せ、ついでにベッドに取り付けられたカーテンも閉めて大輝を隠すと、最後に自分の服装が乱れていないか確認してから扉に声を掛けた。

 

 

シュレリア「ど、どうぞ。入っていいですよ?」

 

 

『はい、失礼します』

 

 

声と共に、扉を覆っていた結界が無数の光の結晶と化して消え去り、扉がゆっくりと開いて奥から蒼の騎士甲冑を身に纏った金色の髪の人物……先程シュレリアが"エルク"と呼んだ青年が現れた。

 

 

エルク「お久しぶりです、姫様。お元気そうですね」

 

 

シュレリア「えっ、えぇ、貴方も元気そうで安心したわ、エルクυυ……それで、今日はどうかしたの?何かあった?」

 

 

エルク「あ……い、いえ。ただ賊捜しが一段落したので、姫様の様子が気になって来てみただけなんですが……ご迷惑でしたか?」

 

 

ボリボリと、エルクは頭を掻きながら不安げにシュレリアに問い掛け、シュレリアはそんなエルクの様子に一瞬キョトンとなりながらもすぐに笑みを浮かべた。

 

 

シュレリア「いいえ、毟ろ嬉しいですよ?ありがとうエルク、心配してくれて」

 

 

エルク「っ!い、いいえ!姫様に礼を言われるようなことは何も……!」

 

 

ニコッと微笑み掛けるシュレリアの笑顔を見てエルクはほんのりと顔を赤らめながら両手を振り、ベッドのシーツから少し顔を出してその様子を見ていた大輝は「……ほぉ」と関心したような声を漏らしていた。

 

 

シュレリア「でもすみません。貴方も忙しい筈なのに、わざわざ私なんかの様子見に来てくれて……」

 

 

エルク「い、いいえ!全然そんな大した事ないです!俺もずっと姫様の顔を見てなかったからどうしてるかな?って気になってたし、俺が好きで来てるだけですから(焦)」

 

 

シュレリア「……ふふ……貴方は本当に優しいですね、エルク。レイディアントにいた頃も、貴方はいつもそうやって私の事を気にかけてくれたし……」

 

 

エルク「ぁ……」

 

 

祖国での記憶を思い出し、懐かしそうに微笑みながらそう呟くシュレリア。エルクはそんなシュレリアの顔を見て笑うのを止め、表情を暗くさせて顔を俯かせてしまう。

 

 

シュレリア「……?エルク?」

 

 

エルク「……あの、姫様……本当にこれしか……道はないんでしょうか……」

 

 

シュレリア「……え?」

 

 

表情を曇らせながらポツリと呟いたエルクにシュレリアは思わず訝しげに聞き返し、エルクは顔を少し上げてシュレリアを見つめながら身を乗り出した。

 

 

エルク「だってっ、あんな王子に嫁ぐなんてやっぱり可笑しいです!俺達の国を滅ぼそうとした男なんですよ?!レイディアントの為とは言え、その為に姫様一人が辛い思いをするなんて納得出来ません!出来ませんよ!」

 

 

シュレリア「…………」

 

 

エルク「もう一度国王陛下とお話して、他に方法がないか話し合う事は出来ませんか?!じゃなきゃこんな……諦めきれませんよ……俺だってっ……」

 

 

最後の部分だけはか細く、シュレリアには聞こえない声でエルクは苦々しく呟いた。そんなエルクの様子に釣られるようにシュレリアも一瞬暗い表情を浮かべるも、すぐに明るい表情へと戻って笑顔を向けた。

 

 

シュレリア「大丈夫ですよエルク、私は良いんです。こうする事で、レイディアントの民を救う事に繋がるのなら、私は何も惜しみません」

 

 

エルク「っ!ですが…!」

 

 

シュレリア「それに、アーベルト王子の要求を呑むと言ったのは私なんです……これは私なりに考えて決断した道……城の者達や民達、そして貴方を守れるなら、私はそれで良いです」

 

 

エルク「姫様……」

 

 

だからもう気にしないでと、苦笑いを向けるシュレリアを見てエルクは思わず悔しげに拳を握り締め、それでも無理矢理自分を納得させて肩の力を抜いた。

 

 

エルク「すみません……何か感情的になってしまって……」

 

 

シュレリア「ううん。貴方も貴方なりに心配してくれてるんだって分かったから、気にしないで、エルク」

 

 

エルク「はい……だけど……少し驚きました……」

 

 

シュレリア「?驚いたって、何が?」

 

 

驚いたというエルクの言葉にシュレリアはなんの事かわからず小首を傾げながら不思議そうに聞き返し、エルクは頬を掻きながら言い難そうに口を開いた。

 

 

エルク「いや、えっと……俺が姫様を最後に見たのは一週間前だったんですけど、その時の姫様は寂しそうなお顔で笑う事が多かったんです……」

 

 

シュレリア「寂しそう……私、そんな顔で笑ってましたか?」

 

 

エルク「はい、この王宮に来てからずっと……でも今はそんな感じがしないって言うか……寧ろ以前の姫様に近い雰囲気がするというか……何かあったんですか?」

 

 

シュレリア「え……えっと……」

 

 

エルクに言われ、シュレリアは思わず視線だけを動かしベッドに向けた。其処には鋭い視線で「喋るんじゃないぞ」と訴えかけてくる大輝の顔がカーテンの間から見えた。

 

 

シュレリア「…い、いえ!なんでもないですよ?あはははυυ」

 

 

エルク「?……そうですか……」

 

 

何かごまかすように苦笑いをするシュレリアに微かに疑問を抱きながらも、本人がなんでもないと言うなら執拗に詮索するのは止めようとエルクは一応納得すると、ふと部屋の時計が視界に入ってそちらを見つめた。

 

 

エルク「もうこんな時間か……すみません姫様、またこれから賊捜しに向かねばなりませんので、俺はそろそろ……」

 

 

シュレリア「あ、はい。気をつけて下さいね、エルク」

 

 

エルク「ありがとうございます。では、これで……」

 

 

まだ複雑な感情が残る顔でそう言ってエルクはシュレリアに向けて一度礼をし、そのまま部屋から出て他の兵士達が集まる王宮の中庭へと向かっていったのであった。

そして部屋に残されたシュレリアは入り口に再び結界が張られたのを確認するとホッと安心したように一息吐き、大輝も漸く上体を起こして扉を見つめた。

 

 

大輝「……随分と気にかけられてるようだね……しかも妙に親しげだったし……彼とは長い付き合いなのかい?」

 

 

シュレリア「え?あ、ええまあ……私がまだ十四の時に新人だった彼が護衛騎士として配属されてきて、それから馬が合って良く話し相手になってくれてたんです。だから、彼も私の大事な友人なんです♪」

 

 

大輝「友人ねぇ……」

 

 

笑顔でエルクが大事な友人だと告げたシュレリアに大輝は扉に視線を向け、先程のエルクの様子を思い出しながら口を開いた。

 

 

大輝「……君さ?彼が君に接する時の態度とか見て、何か気付かないのかい?」

 

 

シュレリア「……?なにがですか?」

 

 

大輝「…………いや、何でもないよ…………ただ天然で鈍感となると、もう救いようがないなぁって思っただけさ……」

 

 

シュレリア「???」

 

 

あのエルクとかいう青年が気の毒に思えて仕方がない大輝はそう言って呆れたように溜め息を吐くとベッドに横たわり、シュレリアはそんな大輝を見て頭上一杯に疑問符を並べまくっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

―王宮・王座の間―

 

 

丁度同じ頃、レデグレアの王座の間では二人の人物が向き合ってなにかを話していた。王座に腰掛ける人物はこの国の王子であるアーベルト・ジ・レデグレア。そしてもう一人は、全身に黒いローブを身に纏って顔を隠す謎の人物であった。

 

 

『ふふふ……万事首尾よくいってるみたいですねぇ、アーベルト王子?』

 

 

アーベルト「あぁ、あまりにも上手く行き過ぎて逆に怖いぐらいさ。はははは!やっぱ最高だよ、アンタがくれたこの力はさぁ」

 

 

『気にいって頂けて光栄ですよ……』

 

 

ニヒルな笑みを浮かべながら自分の手を眺めるアーベルトに黒いローブの人物も怪しげに笑うが、すぐに声音を真剣な物に変えて語り出した。

 

 

『しかし注意して下さいよ?幾ら貴方の力が強大とは言え、婚式の日までなにが起きるか分かりませんからねぇ。油断してはなりませんよ?』

 

 

アーベルト「心配するなよ、この世界に僕以上の力を持つ奴なんてだぁれもいやしない。そして秘宝の力が手に入った今、僕はこの世界の王になったと言っても過言ではないのさ!」

 

 

『……そこまでおっしゃるなら私も構いませんが……その慢心が、滅びを喚ばぬよう気をつけて下さい』

 

 

アーベルト「だぁから心配するなって。他の国もレイディアントみたいにさっさと併呑してみせるからさぁ……そうだ……アンタにも国を一つ分けてやって良いよ?何処がいい?」

 

 

既に他の国が自分の手に落ちるという前提で、嫌らしい笑みを浮かべながらそんな事を問いかけるアーベルト。しかし、黒いローブの人物はそれに対して『いえいえ』と首を横に降った。

 

 

『私にそのような国等必要ありませんよ。私には他にやらねばならない事がありますからねぇ』

 

 

アーベルト「やらなければいけない事……ああ、例のアレ集めか?」

 

 

『えぇ。奴らのせいで百体近くしか残ってませんからね、またこれから戦力を集めに行かなければいけないのです。いやはや、中々骨にくる仕事ですよ……』

 

 

やれやれと、黒いローブの人物はウンザリしたように首を振りながら軽く溜め息を吐き、そのままアーベルトから背を向けて入り口へと歩き出した。

 

 

『まあそういう訳ですから、私はそろそろ失礼させて頂きます。一週間後の婚式、楽しみにしてますよ』

 

 

アーベルト「あぁ、アンタが来てくれるのを待ってるよ。それまでアレ……ん?そういえばアレの名前はなんて言ったかな?確か―――」

 

 

アーベルトは『アレ』の名を思い出せず顎に手を添えながら首を捻らせ、それを聞いた黒いローブの人物は足を止めてゆっくりと振り返り……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――"イレイザー"……"物語を喰らう者"ですよ……キシッ♪』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ楽しげに、黒いローブの下で歪な笑みを浮かべてそう答えたのだった……

 

 

 

 

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