仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
奇妙な共同生活が始まってから一週間と六日目……
あのドタバタから四日後、怪我が大分完治した大輝はシュレリアと共にテーブルに着き、昼食を取っていた。因みに昼食は全てシュレリアが作って用意した物である。
大輝「……ほう……随分とマシな物になったじゃないか」
シュレリア「ふふん、そうでしょう?あれからずっと家事のお勉強をしてきたんですからね♪私だってやれば出来る子なのです!」
えっへん!と、両手を腰に当てて胸を張るシュレリア。実際この三日間、大輝に馬鹿にされて負けず嫌いに火が付いた彼女は試行錯誤を繰り返しながらも全ての家事を一人で熟していき、今では以前と比べ物にならないほどスキルアップしていた。そんなシュレリアを見た大輝は……
大輝「――とは言っても、ただ『マシ』になっただけだしね?まだまだ俺の足元には及ばないよ♪」
シュレリア「ぅ……むぅ!どうして素直に褒められないんですかねこの人は……」
大輝「『もう泥棒さんには絶っっっっ対に負けません!!』なんて威勢よく啖呵を切ったんだ。だったら俺を越えるぐらいの技量を身につけてくれなきゃ、簡単に君を褒めたりはしないよ?」
シュレリア「むむむ……」
不敵な笑みを浮かべながら告げる大輝にシュレリアも頬を膨らませながら唸り声を漏らし、大輝はそれを見て小さく笑いながら料理を口に運んでいく。
大輝「まあでも、君がそこまで成長した頃には、俺はもう此処にはいないだろうね。もうすぐ二週間になる訳だし」
シュレリア「……え?」
あともう少しで二週間が経つ。大輝のその言葉を聞いたシュレリアは一瞬呆然となり、壁に立て掛けられているカレンダーに目を向けた。
シュレリア「―――ぁ……そっか……明日だったんだ……婚式の日……」
大輝「?なんだ、忘れてたのかい?」
シュレリア「あ、はい……泥棒さんを見返してやろうって思って、ずっと家事やお料理の勉強をしてましたから、すっかり……」
其処まで口にすると、シュレリアは先程までの明るい雰囲気とは打って変わって暗くなってしまい、顔を俯かせてしまった。
シュレリア「……そっか……明日になれば、泥棒さんはいなくなっちゃうんですよね……」
大輝「そっ、やっと俺も君から解放されるって訳さ。本当に長かったよ、全く」
この部屋に閉じ込められたばかりの頃を思い出し、やれやれといった様子で肩を竦める大輝。だが、シュレリアは何も話さそうとせず、顔を上げてカレンダーを見つめながら小さく笑みを浮かべた。
シュレリア「長かった……ですか……でも……私にはあっという間に感じましたけどね、二週間って……」
大輝「そうかい?結構色々あったと思うけど?」
あのゲテモノお粥から始まり、キッチンが目茶苦茶に荒らされていたり、掃除をしようとしたら掃除機に振り回されて部屋を無茶苦茶にしたり、魔法の練習をしていたら間違って爆発を起こしたりなど、シュレリアにはかなり苦労した記憶があり、そんな大輝の言葉を聞いたシュレリアも苦笑いを浮かべた。
シュレリア「色々あったからですよ……この二週間、泥棒さんの看病したり、お料理したり、お話したりとか……泥棒さんと一緒に過ごした時間は凄く楽しかった……楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうって、良く言うじゃないですか」
大輝「…………」
そう言ってシュレリアはカレンダーから大輝へと視線を向けて笑みを見せるが、その笑みは何処となく寂しそうに見える。そう感じた大輝は手に持ったフォークを思わず止めるが、すぐにフォークを動かしていく。
大輝「おめでたい奴だな、君は……そんな事に楽しいなんて感じてる暇があったら、結婚後の事を考えてた方が良いんじゃないかい?君は明後日には、この国の王女……いや、女王になる訳なんだしさ」
大輝は言葉を紡ぎながら、チーズの塊みたいな色のポレンタに真っ黒なイカスミをつけて口に運び、シュレリアはそれを聞いてほぐしたカニの入った冷たいスープをスプーンですくいながら答えた。
シュレリア「そんなの考えても、意味なんてないですよ……女王なんて言っても、私は国と秘宝を手に入れる為の道具でしかない……多分婚式の後の生活では、こうして笑う事も殆どなくなると思います……王子の女癖の悪さは、レデグレアでも有名らしいですからね(苦笑)」
大輝「…………」
シュレリア「だから私は、その前に泥棒さんに会えて、ホントに良かったって思えます……もし泥棒さんに会えてなかったら、こんな楽しい思いをして、心から笑う事なんてなかった……ふふ、神様に感謝しないといけませんね?こんな素敵な贈り物をありがとうって♪」
本当にそう思っていると、シュレリアは素直に自分の気持ちを打ち明けて子供のように微笑んだ。それを見た大輝は薄く溜め息を吐きながら料理を食べ進めていき、シュレリアも笑みを浮かべたまま料理を食べようとするが……
大輝「……一つだけ、質問してもいいかな」
シュレリア「……へ?」
黙々と静かに料理を食べていた大輝が不意に質問を投げ掛け、シュレリアは突然のそれを受けてサラダを口に運ぼうとするのを止め、大輝はフォークをくるくる回してパスタを搦め捕りながら話を続けた。
大輝「君は以前、俺に言っただろう?『私達には秘宝よりもっと大事で、命を懸けてでも守りたい物がある』……と」
シュレリア「あ……はい、確かに言いましたけど……それが何か?」
大輝「君に言われてから、ずっとその言葉の意味が気になってたんだよ。だが、どれだけ考えてもその意味は分からなかった……教えてくれないか?エレメンタルストーンより大事な物とはなんだ?」
それが知りたいんだと、その意味を篭めた真剣な瞳でシュレリアを見つめながら問いかける大輝。シュレリアはそんな大輝を見て一瞬キョトンとなるが、すぐにクスッと笑みをこぼしてそれに答えた。
シュレリア「秘宝より大事で、命を懸けてでも守りたい物……それは……『民と国』ですよ」
大輝「民と……国?それが秘宝より大事な物だっていうのかい?」
秘宝より大事な物だというから、もっとスゴイお宝を想像していた大輝は険しげに眉を寄せながら聞き返すが、シュレリアは迷いなく「はい」と頷き返し、それを見た大輝は呆れたように溜め息を吐いた。
大輝「君は……一体何処までアホなんだい?そんな物がエレメンタルストーンより価値のあるお宝なハズがない!」
シュレリア「……確かに、泥棒さんから見ればそうかもしれませんね……だけど私達にとっては、何物にも替え難い物なんです」
民と国が秘宝より大事な物と言うシュレリアに否定的な態度を取る大輝に、シュレリアは言葉では言い表せない真剣な雰囲気を漂わせながらそう答えた。それを感じ取った大輝も思わず口を閉ざし、シュレリアはバルコニーの方を見つめて話を続けた。
シュレリア「まだレイディアントにいた頃、私は時々城を抜け出して、お忍びで街に下りてた事があったんです……その時に、色々な人達と関わる事も少なくはありませんでした。沢山の人達が笑い合い、助け合い、励まし合って、今という時を懸命に生きている……そんな人達を見て、一つだけ分かった事があるんです」
大輝「分かった事?」
シュレリア「はい……皆がこうして暮らせているのは、このレイディアントがあるから……そしてレイディアントという国があるのは、民である皆がいるおかげなんだって」
大輝(……国があるからこそ民があり、民があるからこそ国がある……誰かからそんな話を聞いた事があるな……)
大輝は迷わずにスラスラと言葉を放つシュレリアの話を聞きながらふとそんな事を思い出し、シュレリアはバルコニーから大輝へと目を戻した。
シュレリア「秘宝はもちろん大事だと思います。でも、秘宝を失ってもレイディアントがなくなるワケじゃありません……それより私は、レイディアントがなくなり、民達が悲しむ姿を見たくないんです」
大輝「……それが秘宝より、国や民が大事な理由かい?そんな物―――」
シュレリア「泥棒さん……エレメンタルストーンがどんな経緯で生まれたのか……知ってますか?」
大輝「?何だって……?」
突然話を切り替えたシュレリアの質問に、大輝は頭上に疑問符を並べた。シュレリアは一度目を伏せると、ゆっくりと瞳を開いて語り出した。
シュレリア「エレメンタルストーンが生まれた経緯は、ごく一部の人間にしか知り渡っていません……ですがその経緯は、聖女が自分の大切な人達を守りたいという『思い』が形になって生まれたと、そう言い伝えられてるんです」
大輝「思いが……エレメンタルストーンを生んだ?」
シュレリア「はい。誰かを思う心があったから、泥棒さんが言うお宝が生まれた……だから私は思うんです……本当の宝はエレメンタルストーンではなく、エレメンタルストーンが生まれるきっかけとなった、自分が守りたいと思う人達……民達が幸せに暮らす国なんじゃないかって」
大輝「…………」
シュレリアは迷いなく、真剣な眼で大輝の瞳を見つめながらそう断言した。それを聞いた大輝はジッとシュレリアの眼を険しげに見つめ、馬鹿馬鹿しいと溜め息を吐きながら皿とフォークを持って立ち上がり、キッチンの奥へと去っていってしまった。それを見たシュレリアは……
シュレリア「……泥棒さんも、いつかは分かる時が来ますよ……泥棒さんにも、誰かを思いやる気持ちがあるんだから……」
椅子に座ったまま一人呟き、天井を見上げて寂しげな顔を浮かべていたのだった。
◆◇◆
その日の夜……
大輝「―――眠れない……」
時刻が午前12時を回った深夜。明日の為に早く眠りに付こうと早めにベッドに横たわっていた大輝だが、何故か今日に限っては中々寝付けずにいた。
大輝「……すこし夜風に当たって来ようかな……」
このまま横たわっていても寝付けそうにないし、夜風にでも当たって気分を変えようかと大輝はベッドから下り、バルコニーに出ようと歩き出した。その時……
大輝(……?何だ?)
バルコニーに足を踏み入れ様とした時、大輝はバルコニーに誰かがいる事に気付いて足を止め、カーテンの陰に隠れて顔だけ出した。すると其処にはバルコニーの塀に背中を預けて体育座りし、なにやら分厚い本を広げる人物……シュレリアの姿があった。
大輝(?何をやってるんだ、こんな時間に……)
こんな深夜にあんなところで何をやってるのか。大輝はそんな疑問を抱きながらシュレリアを静かに見つめていると……
シュレリア「…………っ……………さ…………」
大輝(……?声?)
シュレリアの方からかすかれ声が聞こえてきている事に気付き、大輝は疑問符を浮かべながらその声を良く聞き取ろうと前に少し出ると……
シュレリア「―――ぐすっ……うっ……お父様っ……みんなっ……」
大輝(……泣いてる?)
聞こえてきたのは、シュレリアの啜り泣く泣き声だったのだ。この二週間の間に一度も聞いた事がなかったシュレリアの泣き声に大輝も戸惑いを浮かべてシュレリアを見つめると、シュレリアは泣きながら膝に乗せた分厚い本を胸に抱き寄せていた。大輝は眼を細めてその本の表紙を見てみると……
大輝(あれは……アルバム?)
そう、シュレリアが胸に抱いてる本とは、『Album』と表記された本だったのだ。シュレリアが泣きながら呟く言葉からして、恐らくあれにはレイディアントの国王や民達の写真でも整理してあるのだろう。
大輝(……まさか、ずっと此処で泣いてたっていうのか?)
自分が此処に来る前………もしくは自分が此処に来てからも、彼女はああやって一人で泣いていたのだろうか?レイディアントを守る為に自分の気持ちを押し殺し、好きでもない仇の男と永遠の契りを交わさねばならない…………彼女も人間の少女なのだから、それが辛くないハズがない。
大輝(だから此処で、自分の気持ちをさらけ出してた訳か……馬鹿な奴だ。他人の為に自分の身を犠牲にするなんて、そんなのはただの偽善でしかないのに)
啜り泣くシュレリアを見て馬鹿馬鹿しいといった感じに鼻で笑うと、大輝は背中を壁に預けて天井を仰ぎ、シュレリアが言っていたあの言葉を口ずさむ。
大輝「国が宝……そんな物に価値なんてあるワケない……あるハズがない……」
瞳を伏せ、まるで自分に言い聞かせるようにか細い声でそう呟くと、大輝はシュレリアの啜り泣く声を聞きながらベッドへと戻っていったのだった…………
奇妙な共同生活。外に出られるまで、あと七時間……