仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―レデグレア・王宮中庭―
鋭い銃声と共に突如現れた海道大輝。彼は右手に持つドライバーを上空に向けたまま、突然の事態にどよめく観客達を尻目に自身を睨みつけてくるアーベルトを睨み返していた。そんな中、護衛の兵士の一人が大輝の顔を見て声を荒げた。
「あ、あいつ……あいつです!二週間前、王宮に侵入して失踪した賊はっ!」
「なんだと?!」
「ほ、本当だっ……間違いない!」
「馬鹿な、国中探して行方すら掴めていなかったのに、一体何処にいたんだ?!」
屋上に立つ大輝を見て兵士達や観客達からざわめきが広がっていき、その会話を聞いたアーベルトは大輝を睨みつけながら一歩前に出た。
アーベルト「そうか、貴様だったのか?以前王宮に賊に入ったという愚か者は」
大輝「まあね。でも邪魔が入ったせいで、お宝を盗むのに随分と時間が掛かったよ。おかげでこの二週間は苦労が絶えなかったし」
アーベルト「ふん……で?今更その賊が何しに来た?わざわざ捕まりにきたのかい?」
大輝「いいや、今も言っただろう?俺が此処へ戻ってきたのは―――」
そう言いながら大輝はドライバーを持つ右手を下げ、左手の人差し指でアーベルトの背後にいる人物………呆然と佇むシュレリアを指差した。
大輝「俺が此処へ戻ってきたのは……彼女をもらいに来たからさ」
シュレリア「……え?」
エルク「っ!何?!」
シュレリアを貰いに来た。何時になく真剣な顔付きでそう告げた大輝にシュレリアは思わず呆然と聞き返し、エルクや観客達は驚きを隠せずにいた。それを他所に大輝は懐を漁ってある物……先程盗んだエレメンタルストーンを取り出した。
アーベルト「?!それは、エレメンタルストーン?!貴様いつの間に?!」
大輝「ついさっきさ。コレを手に入れたら、とっととこの国からオサバラしようと思ったんだけど……その前にある事を思い出してね」
そう告げる大輝の言葉に、アーベルト達は訝しげに眉を寄せた。大輝はそれを見るとエレメンタルストーンへと視線を移し、軽い口調で話し始めた。
大輝「君達も知ってるだろう?嘗てこの世界を我が物にしようとした悪魔を倒すため、聖女はこの石を用いて悪魔を討った……お伽話や伝説にはそれだけしか言い伝えられていないけど、この石はね?"聖女の願いと思い"がなければ、本来の力を発揮出来ないんだよ……」
「つまり」と、大輝はエレメンタルストーンからシュレリアへと目を戻して指先を向けた。
大輝「エレメンタルストーンが真の力……真に価値あるお宝になるには、彼女がいなければならない。だから彼女を貰いに来たのさ」
エルク「なっ…ふざけるな貴様!そんな事の為に姫様を!!」
エレメンタルストーンが真の価値あるお宝にする為。そんな事の為にシュレリアを貰うと告げた大輝にエルクは怒りを露わにして叫ぶが、大輝はそれを無視して呆然と自分を見上げるシュレリアを見据え、大きく息を吸い込み……
大輝「――――シュレリア・リ・レイディアントッッ!!!」
シュレリア「……っ?!」
ビクッと、突然声を荒げた大輝にシュレリアは肩を震わせ、大輝はそんなシュレリアに向けて叫び続ける。
大輝「君は言ったなッ?!秘宝より大事で命を懸けてでも守りたいのは国だとッ!!レイディアントがなくなり、民達が悲しむ姿を見たくないとッ!!」
シュレリア「…………」
大輝「自分が身を差し出せば、レイディアントや民達を守れると!!だがそれは……本当に君の望みなのかッ?!」
シュレリア「っ!」
大輝「確かに君が犠牲になれば、国は救えるだろ……だが、民達を悲みから救うことは出来やしない!何故か分かるかッ?!」
力強く叫びながら、大輝は彼方を指差す。その方角は彼女の国、レイディアントが存在する方……
大輝「それは君が民の幸せを願うように、彼処にいる民達も、君の幸福を願っているからだっ!!」
シュレリア「っ……?!」
大輝の放った言葉と共に、一瞬だけシュレリアの脳裏に様々な記憶が駆け巡った。自分の父、エルク、城の皆、国の民達……いつも共に笑い合った、彼等の笑顔が何度も蘇る。
大輝「本当に彼等を悲しみから救いたいと思うなら、自分の心を騙すな!!幸せになれ!!君が望むように生きろ!!それが君の言う、『君だけのお宝の望み』だっ!!」
シュレリア「……泥棒……さん……」
その言葉を聞く度に、胸の内から何かが込み上げ、涙が浮かび上がる。ただそれでも、彼からは一切目を離さない。
大輝「国を、民を思うなら答えろ!!君の本当の望みは何だ?!君の思いは何処にある?!答えろ!!シュレリア・リ・レイディアントォッ!!!!」
シュレリア「あ……ぁ……」
私の望み?
私の思い?
それは、レイディアントを守る事……
その思いに偽りも間違いもない。
……でも……
でも本当は……
アーベルト「惑わされるなシュレリア!!分かってるのか?!レイディアントの命運を握ってるのは、この僕なんだぞ?!」
シュレリア「……私……は……」
そんなの、言われなくても分かってる……
だけど……
でも本当は……それでも私は……
シュレリア「――私はっ、レイディアントに帰りたいっ!!もう一度っ!!もう一度みんなに会いたいっっ!!!」
エルク「姫様……」
「シュレリア様……」
顔を上げて、溢れ出る涙でグチャグチャになった顔でずっと押し殺していた自分の本心を大輝に向けて叫ぶシュレリア。エルクや先程大輝とぶつかった女性は、それを聞いてシュレリアの気持ちを感じ取り、大輝も微かに笑みを浮かべながらアーベルトに向けて手を伸ばした。
大輝「そういう事だ王子君、彼女は返してもらうよ」
アーベルト「ッ!返してもらうだと?貴様のものではないだろうにっ!!」
大輝「……ああそうか……確かにそうだね……ならば怪盗らしく―――」
アーベルトの言葉を聞いて真剣な目付きへと変わり、大輝は胸ポケットから一枚のカードを取り出し、右手に持つドライバーへと装填してスライドさせ、そして……
『KAMENRIDE――』
大輝「――盗ませてもらう……変身ッ!」
『DI-END!』
銃口を上空に向けて引き金を引くと同時に電子音声が鳴り響き、それと共に大輝を中心に三つの残像が駆け巡っていく。そして三つの残像が大輝に重なると大輝の身体が灰色のアーマーを纏い、最後に真上から下りてきたプレートが仮面部分にセットされていくと共に灰色のアーマーが鮮やかなシアン色へと変化していき、大輝は仮面の戦士………仮面ライダーディエンドへと変身したのであった。
シュレリア「?!ど、泥棒さん……?」
エルク「す、姿が変わった?!」
アーベルト「ちぃ!なにをしている兵士達?!早く奴を捕らえろ!抵抗するなら殺しても構わん!」
ディエンドに変身した大輝を見てシュレリア達が唖然とした顔になる中、アーベルトは怒鳴り声に近い声で周りの兵士達に呼びかけてディエンドへと放っていき、それと共にそれまで呆然としていた観客達もその時になって漸く弾かれたように出口へと殺到した。
ディエンドはそれを尻目に屋上から飛び降りて中庭に着地し、武器を振りかざしながら斬り掛かってくる兵士達へと突っ込んでいった。
シュレリア「ど、泥棒さん!」
エルク「っ!姫様危険です!今はこちらへ!」
襲い掛かってくる兵士達と戦うディエンドを見てシュレリアは思わず身を乗り出し、エルクはそんなシュレリアの手を引っ張って物陰に避難させていく。そしてディエンドは兵士達が振り下ろす槍をかい潜りながら左腰のホルダーから一枚のカードを取り出し、ディエンドライバーへと装填してスライドさせた。
『ATTACKRIDE:BLAST!』
ディエンド『ハッ!』
―ズガガガガガガガガガガガガガガァンッ!!―
「グ、グアァッ?!」
「ウアァッ?!」
電子音声と共にディエンドがドライバーの銃口を真上に向けて引き金の引くと、銃口から発砲された銃弾が雨のように兵士達へと降り注ぎ、兵士達を吹っ飛ばして気絶させていったのだ。そしてディエンドは倒れる兵士達を見渡すと、数人の兵士達に守られるアーベルトと対峙していく。
ディエンド『この程度かい?案外大したことないね、あんなのをこき使って彼女の国を自分の物にしようとしたのか?』
背後で倒れる兵士達を顎でクイッと指し、小馬鹿にするように笑うディエンド。だが……
アーベルト「――ふ、ふふ……見くびってもらっては困るなぁ盗っ人君?」
ディエンド『……何?』
アーベルトは怒るワケではなく、不気味な笑いを漏らしながらそう告げたのだ。予想とは違う反応を見せるアーベルトにディエンドも訝しげに聞き返し、アーベルトは不敵な笑みを浮かべたまま兵士達の前に出ていく。
アーベルト「どうせだ、君にも見せてやろう?僕が手に入れた王の力を!オォォォォォォォォォッ!!」
アーベルトは獣のような雄叫びを上げながらその姿を徐々に変えていき、獅子のような姿をした灰色の怪人……ライオオルフェノクに変わって左手から青い光弾をディエンドに撃ち出し、ディエンドはそれをかわしながらバックステップで後ろへと下がった。
シュレリア「?!あ、あれは……?!」
エルク「か、怪物?!」
ディエンド『……今の攻撃……成る程……二週間前の夜、宝物庫で俺を撃ったのは君だったのか?』
『ご名答、せっかく苦労して手に入れた秘宝を横取りされたら堪ったものじゃないからね?因みに……』
ライオオルフェノクは言葉を区切りながら右腕を掲げると、ライオオルフェノクの背後にいた兵士達とディエンドの背後に現れた兵士達の顔に紋様が浮かび上がり、灰色の怪人……オルフェノクへと姿を変化させていった。
ディエンド『これは……』
『ふはははははっ!彼等は僕直属の親衛隊さ!どうだい?恐れ入ったか?今なら大人しく秘宝を渡して命乞いすれば、助けてやってもいいぞ?』
ディエンドを包囲するオルフェノクの数はパッと見れば三十は軽く越えている。敵地のど真ん中にいるのだから当然だが、恐らく増援がまだまだやって来るはず。状況から考えれば逃げるのが得策と思われるが……ディエンドは何故か含み笑いを漏らしていた。
『?何を笑ってる?余りの恐怖で頭も可笑しくなったか?』
ディエンド『ふ、いいや?寧ろ高揚感を覚えてるんだよ、俺は』
あ?と、ライオオルフェノクは見下すような目でディエンドを睨みつけた。ディエンドはただ不敵な笑みを浮かべたまま、ドライバーの銃口をライオオルフェノクに向け……
ディエンド『立ち塞がる障害が大きければ大きい程、お宝を手に入れた時の喜びも大きくなる……この程度のことで逃げてたら、怪盗なんてやってられないんだよ』
『貴様、自分が置かれてる状況が分かってないのか?それとも、命が惜しくないとでも言うのか?』
険しげにディエンドにそう問い掛けるライオオルフェノクだが、ディエンドは何を今更といった感じに笑みを漏らし、ライオオルフェノクに指鉄砲を向けながら語り出した。
ディエンド『憶えておきたまえ王子君……其処にお宝がある限り、それを手に入れる為なら命だって懸ける……それが怪盗だ!』
『……良く言った……なら、此処で死ねぇっ!!』
ライオオルフェノクの怒号と共に、オルフェノク達が一斉にディエンドへと襲い掛かり、ディエンドはディエンドライバーを乱射させながらオルフェノクの大群へと突っ込んでいった。