仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第十九章/エクスの世界⑦(後編)

 

 

樹「稟っ?!」

 

 

稟「ちょっと……言い過ぎ……ですよ……祐輔……さん」

 

 

いきなり現れた稟に一同が驚く中、稟はおぼつかない足取りでリビングに行こうとするもバランスを崩し、倒れかけたが……

 

 

アテナ「稟ッ!!」

 

 

アテナが咄嗟に走り寄って稟の身体を抱き抱え、稟は自分を抱えるアテナの顔を見て苦笑を浮かべた。

 

 

稟「あり……がとな……アテ……ナ……」

 

 

アテナ「無茶しないの!!とりあえず今は寝てなさい!!」

 

 

そう言ってアテナは稟を抱き抱えて部屋へと連れていき、祐輔は二人の背中を見送ったあと楓の方へと振り返った。

 

 

祐輔「……確かに稟君を心配するのは当たり前だと思う。だけど、心配するのと信じるってのは別物だよ」

 

 

楓「……え?」

 

 

そう語り掛ける祐輔の声は優しく、先程の雰囲気はもう無くなっていた。

 

 

祐輔「誰かを守る時の稟君を止めることは絶対にできない。誰かが言って止まるくらいなら、君の事はとっくの昔に全てを教えていたよ」

 

 

楓「あっ…………」

 

 

祐輔「今回は稟君は『プリムラちゃんみたいな将来生まれる子』を守るために、だから止まらない。そんなとき僕達にできるのは待つことだけ。わかるよね?」

 

 

楓「はい……」

 

 

祐輔「ならこの話はこれでおしまい。もう夜が明けちゃったから皆は学校頑張って……「いや、今日は休みだ」……えっ?」

 

 

ユーストマ「今日は鳴滝がなにかアクションを起こしかねないからな、皆は休みだ。さっきマー坊と学園長っつう人間に言ってきたからな!」

 

 

フォーベシイ「うんうん、学園長という人間は話しが早くて助かるよ!」

 

 

ユーストマが大笑いするとフォーベシィもティーセットを片付ける手を休めて大笑いし、互いにサムズアップした。

 

 

零「それでいいのか……」

 

 

大輝「あんなに傍若無人なのは幸助さん位じゃないかなぁ……」

 

 

優矢「おい、また狙われるぞアンタ」

 

 

そんな二人の姿に写真館組はそれぞれ思った事を呟き合い、学園が休みとなったメンバーはそれぞれどうするか既に話し合っていた。

 

 

亜沙「じゃあボク達は……一眠りしたから朝御飯でも作ろうかな?フェンリルちゃんとミカエルちゃんやエクトちゃんにも作らないとね♪」

 

 

カレハ「私も手伝いますわ♪」

 

 

そう言って亜沙とカレハがキッチンに走っていくと、楓は突然糸が切れたように床に倒れてしまう。

 

 

麻弓「楓?!」

 

 

祐輔「……大丈夫、眠ってるだけだから」

 

 

慌てて駆け寄る麻弓に祐輔が楓の様子を確かめてそう告げると、麻弓は安堵の溜め息を吐き、シアは近くに眠るネリネを見つけて首をうねった。

 

 

シア「リンちゃんは寝てるし……私も寝るっス!菫ちゃんも寝よ?」

 

 

菫「うん…」

 

 

樹「なら俺様が添い寝……「お前はこっちだ」……離してくれ!!やらなければならないんだ!!」

 

 

ミカエル「させるかぁ!!」

 

 

シアと菫がネリネの横に移動して寝ようとする口径を目にし、樹は添い寝を狙ったがミカエルに阻止されて何処かへと引きずられていった。

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

―稟の部屋―

 

 

アテナ「まったく……少しは声が響くのを考えなさいよ……」

 

 

禀『気にするなアテナ』

 

 

そしてその頃、稟の部屋ではベッドに横になった稟とアテナがいた。因みに稟は何故か言葉が上手く出ないので、念話を使ってアテナと会話を交わしている。

 

 

禀『なぁ……アテナ』

 

 

アテナ「なにかしら?」

 

 

禀『強く……なりたいな……』

 

 

そう言って稟はアテナに背を向けて横になっていき、アテナは子を見守る母親のような表情を浮かべて優しげに告げる。

 

 

アテナ「なれるわよ……絶対に……」

 

 

禀『……だな……強く……なるさ……』

 

 

アテナ「その為に、今日は色々回復役引っ張ってくるから、今は寝なさいな」

 

 

禀『あぁ……』

 

 

アテナの声を背中越しに聞きながら、稟はその目から涙を流し眠りについていった。

 

 

―……ギリッ―

 

 

アテナ「………鳴滝……っ!!」

 

 

稟が眠りに付いたのを見守ったあと、アテナは歯軋りして握り拳を固めた。

 

 

アテナ「『誓約』が無ければ、すぐに消しに行くのに……っ!」

 

 

『誓約』……それはアテナが神になる前に誓った契約。その内容は『他世界のストーリーに大きな干渉を禁ずる』というモノであり、鳴滝を消せば零の世界への『大きな干渉』となる。その為にアテナは鳴滝を消せなかった。

 

 

アテナ「……とりあえず今は……休みましょう……」

 

 

胸の内から沸き上がる怒りを無理矢理押さえ込んで息を吐き、アテナはもう一度稟を見たあと自分の世界に帰って行った。

 

 

 

 

 

◆◇◇

 

 

 

 

 

殆どのメンバーが眠りに付いた後、芙蓉家の前では零と祐輔が明朝を迎えた青空を見上げて立つ姿があった。

 

 

零「……すまない祐輔……何か、お前に損な役をやらせてしまって……」

 

 

祐輔「別に気にしてないよ。それにこういうことは、ハッキリ言わないといけないだろうしね」

 

 

零「…………」

 

 

隣で苦笑いしながらそう告げる祐輔だが、零は無表情のままただ青空を見上げ、コツンと後頭部を壁に当てながら口を開く。

 

 

零「だけど……芙蓉の言うことには一つ……間違ってない事がある……」

 

 

祐輔「えっ……?」

 

 

その言葉に対し、祐輔は思わず空を見上げていた目を零に向けた。零のその表情はやはり無表情で、赤い瞳にも感情が宿っているようには見えない。そんな零の様子を見た祐輔はある事を思い出し、口を開いた。

 

 

祐輔「もしかして、楓ちゃんが言ってたこと気にしてる?」

 

 

零「…………」

 

 

その問い掛けに零はなにも答えようとしない。だが言わずとも分かるのか、祐輔は少し溜め息を吐いて再び喋り出した。

 

 

祐輔「あれは楓ちゃんが稟君を心配し過ぎて思わず言っちゃっただけなんだから、そんな気にする事は――」

 

 

零「だが間違ってるなんて言えないだろう。俺がこの世界に訪れさえしなければ、鳴滝が稟を襲う事なんてなかった……」

 

 

そう呟きながら、零は俯かせていた顔を僅かに上げて目の前を見つめた。

 

 

零「そうさ……最初から俺がいなければ……お前も稟も……あんな目に遭う事はなかったんだ……」

 

 

祐輔「え?今なんて――」

 

 

誰にも聞こえない声で呟く零の言葉を聞き取れず、思わず聞き返す祐輔。だが零は口を閉ざして何も言わず、顔を上げて何時もの表情に戻った。

 

 

零「いや、ちょっと愚痴をこぼしただけだ……その辺で何かあったかい珈琲でも買ってくる。朝はやっぱり冷えるしな」

 

 

微笑を浮かべながらそう告げると、零はそのまま祐輔の隣を通り過ぎて歩き出し芙蓉家を出て町へと向かっていった。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

早朝の木漏れ日通り。辺りにはまだ人の数が少なく、人影もチラホラとしか見えない。芙蓉家を後にした零は一人でその場所を歩き続けていたが、その顔は何処か優れなかった。

 

 

 

 

 

 

『そもそもこうなったのも全部、零さんがこの世界に来たせいじゃないですか!!あの人の目的が零さんなら、零さんがいなくなればいいだけの話じゃないんですか?!』

 

 

 

 

 

 

零「…………………」

 

 

 

 

 

 

脳裏に蘇るのは、あの時楓に言われた言葉。その言葉を思い出す度に様々な人の顔が零の頭の中を過ぎっていく。ただ自分を苦しめる為だけに蘇させられ、クアットロに操られるアリシアとリインフォース。自分の因子を手に入れる為だけにヴェクタス達にさらわれ、関係ない戦いに巻き込んでしまった佐知と祐輔の世界のヴィヴィオ。自分を倒す為だけに鳴滝に作られ、命を捨てなければならない宿命を背負う事になったアズサ。そのどれもが、自分が必ずしも関わっている……そして、今回も……

 

 

 

 

 

 

 

 

―ザザザァ…ザザザザザザザザザザァッ!!!―

 

 

 

 

 

 

 

 

『――どうして?何故私が望む形で生まれてきてくれなかったの……?何故そんな力を持って生まれてきたの……?』

 

 

 

 

 

 

 

 

―ザザザァ…ザザザザザザザザザザァッ!!!―

 

 

 

 

 

 

 

 

『貴方なんて……産まなければ良かったっ……!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

零「………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

不意に頭の中に流れた、いつかと同じノイズ混じりの映像。それが過去の記憶に関する事だと理解するのは、一秒も掛からなかった。その映像を垣間見た零は足を止め、自分の手の平を見下ろしていく。

 

 

零「……そうだな……お前が一番正しいよ……芙蓉……」

 

 

自嘲するように、それでも何処か寂しげに笑い、零は再び歩みを進めて商店街へと向かっていったのだった……

 

 

 

 

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