仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
光写真館―
零「――そういえば、結局アレからなのは達に連絡出来なかったな……」
芙蓉家を後にして飲み物を買いに行く途中、零は偶然光写真館の前を通り掛かり額から冷汗を流していた。その理由は昨日、チンクに伝言を伝えて以来なのは達に稟達の作戦の事で朝帰りになることを連絡し忘れてしまったからだ。
零「優矢に聞いたらアイツも連絡をし忘れてたみたいだし……取りあえず、昨日のことを話しておかないとマズイよな……」
ポリポリと後頭部を掻きながら溜め息交じりにそう呟くと、零は昨日連絡し忘れた用件をなのは達に伝えるため、写真館へと足を踏み入れていった。
◇◆◆
零「出来ればまだ寝ていてくれると助かるんだが……誰かいるか?」
写真館の中へと入った零は、ソロリソロリと忍び足でリビングまでの廊下を歩き、ゆっくりと扉から顔だけ出してリビングの中を覗き込んだ。リビングにはまだ待機メンバーの姿が誰一人見られず、零はそれを確認すると小さく安堵の溜め息を吐いてリビングの中へと入っていく。しかし……
なのは「―――あ……」
零「は?……あっ……」
零がリビングへと入ると、それと同時にキッチンから珈琲を持った人物……何時もサイドテールに纏めてる髪を下ろし、パジャマ姿のなのはが現れたのだった。なのははリビングへと忍び込む零を見てピタリと停止してしまい、零もキッチンから出て来たなのはに気付いて思わず固まってしまうが、すぐに引き攣った顔で笑みを作り手を挙げた。
零「よ、よう……おはようなのは……起きてたんだな?」
なのは「………………………………………………」
出来るだけ何時もの態度でなのはにそう呼び掛ける零。だがなのははそんな零を見ても無表情のままなにも言わず、手に持った珈琲をコトッと近くのテーブルに置いて零へとゆっくり歩み寄っていき、そして……
―……ガシッ!―
零「……は?―ギギギギギギギギギギギギギギギィッ!!!―イッ?!イタッ!イダダダダダダダダダダダダダダッ?!!」
零へと近付いたと思えば、なのはは突然零の頭を脇に抱えて締め上げ、いきなり渾身のヘッドロックを決めていったのであった。
なのは「連絡もしないで、何時まで経っても帰ってこないからみんなして心配してたのに……な・に・を・や・っ・て・い・た・の・か・なあ?」
零「ま、待てなのはっ?!連絡しなかったのは悪かった!!すまない!!だからヘッドロックは勘弁して欲しい首が折れる!!」
なのは「今日という今日は許しませんっ!!泣いても謝っても許さないっ!!」
零「鬼かお前はっ?!いや待て本当に待てっ?!これ以上は本当に落ちるっ?!落ちるっ?!グアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ?!!」
ギギギギギギィッ!!と、骨が絞まる音が露骨に響き渡る中、零は悲痛な悲鳴を上げながら必死になのはの腕をタップし続けていたのだった。
◇◆◆
数十分後……
零「おうぅっ……お前っ、幾らなんでも本気でヤル事ないだろうにっ……」
なのは「自業自得、みんなに心配掛けたんだからそれぐらい安いものでしょ」
零「ぐぅ……」
あれからなのはにこれまであった出来事を話しヘッドロックを解いてもらった後、零はなのはと共にソファーに座って話をしていた。因みに稟の事は大輝からの連絡やティアナとアズサから話を聞いていた為、何か異常事態が起きていた事は分かってたらしい。
なのは「それで、稟君の方はどうなの?怪我の具合は……」
零「……一応今回の案件の後始末を片付けた後、両王が近くの病院に移す予定らしい。何でもアテナが平行世界から色んな連中を引っ張って、稟の治療をするとか……」
なのは「そっか……じゃあ一応大丈夫なのかな、平行世界の人達の力ならどうにか出来るかもだし」
零「それでも、完全に治療出来るかはまだ分からない。変な後遺症とか残らなければ良いが……」
なのは「うーん……私としては、逆にあの人達の力でも治らない後遺症があるかどうか微妙な気がするけどねぇυυ」
…まあ、確かに殆どの連中が出鱈目な力を持ってるしなぁと、零はなのはの言葉に同意するように頷いて首を摩り続ける。そして零は首を摩っていた手を下ろすと、コートのポケットからエクスのカードを取り出し目を細めた。
零「……だが、稟がそんな怪我を負ったのも元を辿れば、俺のせいでもある……」
なのは「……え?」
何処か思い詰める様な顔でエクスのカードを見つめる零の呟き、なのはは珈琲を口から話して疑問げに聞き返した。すると零はカードを懐に仕舞い、背景ロールに目を向けて語り出す。
零「今回の稟達の作戦……鳴滝の邪魔さえなければ、こんな事にはならずに丸く収まってたハズだった……アイツが俺を倒す為に稟の力を手に入れようとしなければ……俺がこの世界に来なければな……」
なのは「…………」
零「ホント、俺は皆に迷惑掛けてばかりだ……今までの世界でだってそうだ……世界を救う旅に出てる筈が、こんな事ばかりで……」
一時は怒りや憎しみに囚われて因子の力に負け、祐輔の世界を破壊しようとした事もあった。どれだけ自分は周りの人間に迷惑を掛ければ気が済むのか。自分に対して自己嫌悪に陥る零はソファーからゆっくりと立ち上がり、背景ロールの前に立って二つの言葉を思い出していく。
『あの人の目的が零さんなら、零さんがいなくなればいいだけの話じゃないんですか?!』
『貴方なんて……産まなければ良かったっ……!!!!!!』
零「――俺がいることで、周りの人間が傷付くなら……俺は一体どうすればいい……?」
世界を旅し、その世界で与えられた役目を果たすだけならまだ良い。だが、その度に周りの人間が自分の問題に巻き込まれて傷付いてしまうのなら、自分はどうすれば良い?それが分からない零は瞳を伏せて俯いてしまい、それを見たなのはは両手で包み込むコーヒーカップを見つめながら口を開いた。
なのは「確かに……私達がこの世界に訪れさえしなければ、稟君達に迷惑掛けることなんてなかっただろうね……」
零「…………」
なのは「でも、さ……誰かに迷惑掛けずに生きられる人間なんて、きっと何処にもいないと思うよ?」
零「……え?」
ポツリとそう呟いたなのはの言葉に、零は顔を上げて思わず振り向いた。なのははそんな零を見ず、珈琲の表面に映る自分の顔を見つめ続ける。
なのは「零君に限ったことじゃないよ……誰だって、知らない内に周りに迷惑を掛けてしまう時だってある……私やフェイトちゃん達だってそうだし」
零「…………」
なのは「確かに、自分のせいで周りの人間が傷付いてしまうのは嫌だと思う……そのせいで皆に迷惑掛けて、自分なんかいなくなってしまえばって考える事もあるかもしれない……でも、それじゃ駄目だと思う」
そう呟きながら、なのはは顔を上げて零を見つめた。
なのは「例え本当にいなくなったとしても、それで救われる人なんて誰もいない……何もしてあげられていない……逆にまた皆に迷惑掛けるだけだよ」
零「……なら、一体どうしたら……」
自分はそれが最善の道だと考えてた。自分が消えればそれで全てが解決すると。なのはにそれを否定された零が表情を曇らせながら聞き返すと、なのはは珈琲を一口して顔を上げる。
なのは「あくまで私の考えなんだけど……私だったら、傷付けてしまったその人に何か自分に出来ることがないか、考えると思う……」
零「?自分に……出来る事を……?」
なのは「うん、私だったらそうするかな……確かに、自分のせいで誰かを傷付けて、それで平気でいられる筈ないと思う……いたたまれない気持ちになるかもだけど、その人を放っていなくなるだなんて……やっぱり出来ないから……」
そう語るなのはの脳裏に、ある光景が過ぎる。それはあの忌まわしき事件―――あのロストロギア事件後、黒月零が重傷の怪我を負いベッドの上で眠る隣で、彼が無茶をしてしまったきっかけを作ってしまったことに対し、顔を俯かせて涙を流す自分の姿……
なのは「――だから、私はその人に出来る事をしようって考える。考えて考えて……周りから何を思われても、傷付けてしまった責任は自分で取る……まぁ、私の場合はそれぐらいしか考え付かないだけなんだけどねυυ」
零「…………」
なのは「責任取って、それを果たしたら、今度はまた考える……どうすれば同じ過ちを繰り返さずに済むか……どうすればもう周りを傷付けずに済むかって……その人を守る方法を、自分がその人に何をしてあげられるか……考えると思う」
零「……自分がその人に、何をしてあげられるか……」
そう言われ、零は今も眠っているであろう稟のことを思い出していく。自分は彼に何をしてやれるか、自分が今彼に出来る事はなにかと。
零(俺が稟にしてやれる事……俺が出来るのは……)
手の平を見つめると、零は瞼を伏せて暫く考え込む。カチッカチッと時計の針が小刻みに進み、徐々に時間が過ぎていく。なのははそんな零をただジッと見守り、考え込んでいた零も漸く伏せていた瞳を開き、なのはの方へと振り向いた。
零「なのは、悪いんだが、ちょっと相談に乗ってもらえないか?」
なのは「?相談?何を?」
零「稟が治療を終えた後のリハビリについてだ。アイツ、多分治療した後は軽いリハビリ程度の運動をしようなんて考えてる違いない……だから、今の内にそのメニューを考えておきたい」
なのは「リハビリ程度の運動って、良く分かるねそんなこと?υυ」
零「これでもお前と同じ、教導官をやってた身だぞ?若い奴の考えることはそれなりに分かる……といっても、もし俺が同じ立場ならそうするっていう予想なんだがな」
なのは「あー……成る程、無茶して周りに迷惑掛けるのはお手の物だもんね二人とも……私達には『無茶するな』なんて言う癖に……」
零「俺達は良いんだよ、男だから」
なのは「良いわけないよ!差別だよそんなのっ!」
抗議百パーセントの目で零を睨みながら大音量で叫ぶなのはであるが、零はまるで何処吹く風だと言うように明後日の方を向いてしまう。なのははそんな零を見て不機嫌そうに頬を膨らませ、プイッとそっぽを向くと……
零「――なぁ、なのは…」
なのは「む……何っ?」
なのはは零と顔を合わせずそっぽを向いたまま不機嫌そうに聞き返し、零はそれを見て若干苦笑いをこぼしながら口を開く。
零「お前は……俺が居て……良かったって思えるか……?」
なのは「……へ?」
何処か不安が込められてるように聞こえる問い掛け。それを聞いたなのはが零に顔を向けると、視界に映った零の横顔は何処か儚げに見える。なのははどうしてそんな顔をするのかと疑問を抱くが、逆にあまり詮索するのも気が引け、小さく笑みを浮かべながら答えを返す。
なのは「もちろん、良かったって思ってるよ?だって、零君が頑張ったから救われた人達だって沢山いるんだし……フェイトちゃん達やアズサちゃん達……勿論、私もその一人なんだから」
零「…………そう、か…………」
その言葉に、零は微かに力無く笑った。まるで何処か救われた様な、そんな笑みだとなのはは思った。
零「……んじゃ、さっさとメニューを完成させるか?久々の教導官らしい仕事だから、腕が鳴るなぁ」
なのは「え?あ、うん」
突然いつもの調子に戻った零に若干戸惑いつつも、零がテーブルの上に置いた紙に目を向けていくなのは。ちょっとだけ気になり目線を上げて零の顔を覗き込んで見るも、その顔はやはり何時もと変わらないように見えた。
因みにメニューが完成した直後に起床したフェイト達に見付かってしまい、昨夜連絡しなかった事で引っ掻きやら関節技を喰らうハメになったのはまた別の話である……