仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―光陽病院・廊下―
今朝の騒動から数時間後、零は現在稟が運ばれた光陽病院へと訪れ、稟の治療が終わるまで楓のトウラマを治療するためにやって来た煌一(インフィニティ)による楓の治療を傍で見守っていた。
煌一「―――うん、これでもう大丈夫な筈だ。気分はどうだ?」
楓「あ……はい、大分楽になりました……ありがとうございます」
零「むう……本当にこれで芙蓉のトラウマは治療されたのか?」
煌一「一応はな。ひとまずこれで思い詰める事はなくなるだろうし、以前よりは断然楽になれたと思うぞ」
零「ふむ……まぁ、お前がそういうなら大丈夫なんだろうな……すまんな煌一」
煌一「礼なら必要ないさ。さて、俺はこの辺で失礼させてもらうよ。芙蓉の治療をしに来ただけだしな……稟によろしく言っておいてくれ」
そう言って煌一は軽く手を振りながら自分の世界に帰るべく歩き去っていった。零はその背中を見送ると、何処か気まずそうに俯く楓に目を向ける。
零「気分はどうだ?煌一は以前より楽になると言っていたが……」
楓「は、はい……気持ちも大分和らいでますから、前よりはずっと楽に……」
零「そうか……良かったな?トラウマが解消されて」
楓「はい………」
零「…………」
楓「…………」
会話が止まり、そこに変な沈黙が流れる。話題がないわけではないが、どちらも自分から切り出せず沈黙が続く。といっても、楓自身は単に自分とは話したくないだけなのかもしれない。
零(まぁ、稟を危険な目に合わせた原因と仲よさげに話したいだなんて、普通は思わないよな……)
顔を俯かせる楓を見つめて心の内でそう思い、思わず苦笑いをこぼしてしまう零。その時……
楓「――あ、あのっ!」
零「……ん?どうした?」
今まで顔を俯かせてた楓が突然大声をあげながら顔を上げ、零を見上げてきた。それに対し零が訝しげに聞き返すと、楓はぎゅうっとスカートを握りながら……
楓「そのっ……今朝は……すみませんでした……」
零「……え?」
気まずそうに楓が口にしたのは、謝罪の言葉だった。零はそれを耳にして思わず目をパチクリとさせ、楓は手の指を絡ませながら言葉を続けた。
楓「私、自分の気持ちをぶつけてばかりで……零さんや皆さんは、稟君のために必死に頑張っていたのに……あんな言い方を……」
零「…………」
申し訳なさそうに頭を下げる楓の姿を見た零は呆気に取られたような顔を浮かべてしまう。だが、零はすぐに苦笑いしながら首を横に振って口を開いた。
零「いや、謝らないといけないのは寧ろ俺の方だ……肝心な時に何の役にも立たず、稟に怪我を負わせってしまったのは俺のミスだし……鳴滝が現れたのも俺が原因なのは間違いない……本当に、すまない」
楓「ッ!い、いえ!そんな、謝らない下さい……!」
楓に向けて深く頭を下げる零の姿を目にし、両手を振りながら慌てて頭を上げるように言う楓。それから零が楓に言われた通りに頭をあげると、再び会話が途切れて沈黙が横たわり、零は一度顔を俯ける楓を見ると楓の座るベンチに腰を下ろした。
零「―――芙蓉……お前は稟の事、凄く大事に思ってるんだよな……だから稟が危険な場所に行くのが、恐くてたまらない……ホントはアイツを信じたいけど、アイツがそのまま帰って来ないんじゃないかと、不安で仕方ないんだろう?」
楓「……はい……」
零「そうか……俺もな……お前のその気持ち、少し分かる気がするんだ……」
楓「え?」
苦笑混じりにそう呟いた零の言葉に、楓は思わず顔を上げ零の横顔を見つめた。
零「確かに稟や俺達が戦ってる場所は、決して安全な場所とは言えない……怪我だってするし、間違えば死んでしまう事だってある。そんな場所で俺達は戦ってるんだ……」
楓「…………」
零「そんな場所に、自分の大切な人が見ずから行ってしまう。それが恐くて仕方ないのは当たり前だと思う……何より、お前は大切な人がいなくなってしまう痛みを分かってる……だから余計に恐いんだよな……」
けどな、と零は一度言葉を区切り、楓に顔を向けた。
零「稟は確かに危なかっしいし、多少の無茶も何度もする……だが祐輔が言っていたように、アイツは人との約束は必ず守る奴だ……絶対に帰ってくるって約束すれば、どんな困難な状況にぶち当たっても必ず解決して、お前達の下に帰ろうとする。どうしてアイツがそこまで頑張れるか、分かるか?」
楓「……それは……」
零「……分かってる筈だよな……お前達が帰りを待っててくれるからだ。それがアイツの生への執着をつなぎ止めてくれてる。どんなに無茶しても、必ず生きて帰ろうと戦って、お前達の下に戻ってくる……アイツがお前達を残して、勝手にくたばるような人で無しに見えるか?」
楓「い、いえ……」
少なくとも、楓達が知ってる稟はそんな人間ではない。確かに今回の様に無茶をしてしまう事こそ多いが、約束は必ず守ってくれる。首を横に振る楓を見た零は視線を下げ、手の指を絡ませながら言葉を紡ぐ。
零「まぁ、きっとアイツも色々と必死なんだ……もう二度と、誰も失いたくない。だからああやって周りに止められてもそれを聞かず、戦い続けてるんだ……」
楓「……?もう……二度と……?」
その言葉が引っ掛かり、思わず聞き返す楓。だが零はそれに答える事なくベンチから立ち上がり、楓と向き合い笑みを浮かべた。
零「……確かに、ただ帰りを待つしか出来ないっていうのはもどかしいし、時々不安に駆られてしまう時もある。それでも……アイツを信じて待っててやって欲しい……自分の帰りを信じて待っててくれる人がいる……それだけで、人は強くなれるからな……」
楓「…………」
穏やかに微笑んでそう呟く零の言葉に耳を傾けると、楓は零の顔を見つめて質問した。
楓「零さんも……そうなんですか?なのはさん達が帰りを待っててくれるから、そんなに強く……」
零「いいや?俺の場合は寧ろ、アイツ等にボコボコにされるのが御免だから必死なだけだ。知ってるか?アイツ等ちょっと俺が無茶しただけで、スッゴい剣幕で怒鳴り散らしてくるんだぞ?今朝なんて、昨日連絡し忘れただけでヘッドロックやら間接技やら引っ掻きやら……そんな目に遭ってるのにもし死んでみろ?絶対アイツ等地獄の底まで追ってきて俺をボコボコにしてくるぞ」
楓「い、いや、それは流石に言い過ぎじゃ……」
なのは達に聞かれたら絶対フルボッコされそうな事を冗談混じりに告げる零に、楓も思わず苦笑いを浮かべてしまう。そんな楓を見た零は肩を竦めながら笑みを浮かべた。
零「だがまあ、アイツ等が待っててくれるから生きたいって思うのは本当だ……それはきっと、稟も同じに違いない。だからお前も、アイツを最後まで信じてやって欲しい……これはお前達にしか出来ない、お前達の役目だと思うから……」
楓「……私達の、役目……」
その言葉を聞き、楓は顔を俯かせて口を閉ざした。その横顔を見た零は右腕に付けたスパイダーウォッチで時間を確認し、そろそろ稟の病室に向かおうとベンチから立ち上がり廊下を歩き出した。その時……
楓「……あの!」
零「ん……?」
突然背後から楓に大声で呼び止められ、零は足を止め後ろへと振り返った。其処にはベンチから立ち上がった楓の姿があり、楓は一瞬視線を下げてしまうも、顔を上げて零を見据え……
楓「――稟君を……宜しくお願いします……!」
深く、思い切り頭を下げたのである。それを見た零は一瞬キョトンとしてしまうが、すぐに小さく笑みを浮かべながら深く頷き返す。
零「ああ……迷惑掛けた分はキッチリ返す……任せておけ」
力強い口調でそう返すと、零は楓に背を向けて再び歩き出し、稟の病室へと向かっていったのであった。
◇◆◆
―光陽病院・手術室―
そしてその頃、芙蓉家から移動した稟は後始末(例の35人)を終えたユーストマとフォーベシィの権力(と『邪魔をしたら潰す』というアテナの殺気)で手術室に移動された稟はシンから診断され……
シン「両腕の骨が貫通に……声帯が切られて、疲労が溜まりすぎてる……死ぬ気かお前は?」
とあきられていた。
シン「とりあえずアテナが色々呼んだみたいだ」
そう言ってシンが手術室の入り口に目をやると、入り口が開きエル、ジェノス、クライシス、ノア、カトルが入って来た。
稟「おい……おい……結構……いるな……」
エル「まずは声帯を治しましょう」
エルがそう言って稟の喉に手を伸ばすと、エルの力で稟の喉が少し光った。
稟「おぉ……結構楽だ……」
エル「やはり傷が深いですね……」
ジェノス「一人だけじゃなくて皆がいるだろ。大丈夫さ」
エルにそう言うと、ジェノスは何処からか取り出した自分のデバイスにマギのメモリを差し込んで稟に回復魔法を使った。
稟「あぁ……気持ちが良いな」
カトル「次は腕だな、時間がかかるから全身じゃなくて局部麻酔だ。少し痛いと思うが気にするな」
稟「了解」
カトル「とりあえずノアさんから貰った特性骨を埋め込んでだなぁ……」
それから稟の手術が始まり、カトルによる手術はすぐに終わったが……
稟「まだ動きにくいな……」
カトル「当たり前だ、今終わったばかりだろ」
ノア「とりあえず後は秘薬で……」
ノアは何処からか取り出した薬の瓶を開き、稟の腕に薬を塗っていく。
ノア「クライシス、今よ!!」
クライシス「そぉれ!!」
クライシスは急に矛に成るとノアがそれを取り、稟の腕に突くと矛から光が患部を覆った。
稟「おぉ……すぐに直った!!」
光が治まると共に稟の両腕が動くようになり、稟は腕を軽く動かして腕の調子を確かめていく。するとその時、手術室の扉が開かれ零が入ってきた。
零「稟、終ったか。今煌一が来てな、芙蓉のトラウマを治したそうだ」
稟「わかりました……って零さん、その顔の傷はいったい?」
腕の調子を確かめていた稟は零の顔にある引っ掻き傷に気付き、傷の事を問われた零は頬を掻きながら苦笑を浮かべた。
零「いや、さっき写真館に帰ったらなのは達に朝帰りについて叱られてな。連絡するのをすっかり忘れてたんだ」
稟「そうですか……楓は大丈夫ですか?」
零「とりあえず思い詰めすぎる事は無くなったみたいだ。煌一は話したらすぐに帰っていった」
稟「そうですか……零さん、後でリハビリ程度の運動に付き合ってくれませんか?」
零「そう言うと思ったよ、いいぜ。場所はどうする?」
稟「アテナに言って下さい、俺の家の地下に有りますから」
零「了解。じゃあ後でな」
零はそう言って稟に軽く手を振りながらアテナを探しに手術室後にし、稟もそれを見送るとそこから腕を上下に動かしていくが……
ノア「ああそうそう……後少ししたら私の友人が来るから」
稟「?友人?」
ノア「四葉楓って言って、いい人よ♪時間軸がずれてるからまだかかるけど……」
稟「わかりました。待ちますよ」
稟はノアにそう言うとシンの手ほどきを受けリハビリを始めていき、病室を出るときに皆も自分の世界へと帰っていったのだった。