仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―光写真館前―
機械兵器との戦いから一日が経ち、零は昨日稟と共に芙蓉家で夜を過ごした後、写真館の前で稟とアテナから見送りを受けていた。
稟「お世話になりました」
零「いや、気にしなくていい、大丈夫だ……ところでアテナ、一つ聞きたい」
アテナ「なにかしら?」
零「実はエクスのカードの絵柄が戦ってる最中に変わったんだが、どういう事だ?」
そう言いながら零はライトブッカーからエクスリリィフォーム・カリスの絵柄のカードを取り出してアテナに見せ、アテナはカードを見た後稟を見つめながら話し出した。
アテナ「それは本当の力を取り戻したからよ。カリスはエクスの中で一番強いから。稟の力の根源は『護る力』その想いにカードが反応したんじゃないかしら?」
零「成る程な……」
アテナ「ちなみに稟が潰した連中の人工生命体の工場の中に鳴滝が関わってるヤツがあったわ、とりあえずこの世界じゃ人工生命体は作れないわ」
零「あぁ、だが安心はできないな」
アテナ「だから、貴方も頑張りなさいな♪」
アテナはそう言って笑みを浮かべ、零の額にデコピンするとその指で零の額をついた。
零「……だな。じゃ、そろそろ行く」
稟「零さん、俺が怪我で動けない間に皆をフォローしてくれてありがとうございました」
零「いいや、俺は別に何もしてない。だから気にするな……これからも芙蓉達と、仲良くやれよ?」
稟「はい!」
零の言葉に稟は穏やかに笑いながら力強く頷き返し、零も微笑しながら首に掛けたカメラを構えてそんな稟の顔を撮った後、手をヒラヒラと振りながら写真館に入っていった。
稟「じゃあ、俺達も行くか……」
アテナ「はやて達が待ってるわよ♪」
稟「……誠心誠意話せば伝わる……はず」
アテナが口にした名前に一瞬げんなりとするも、自分に言い聞かせるようにそう呟き稟達も写真館を後していった。
◆◇◆
―光写真館―
…その後、写真館に戻った零はなのは達に機械兵器との戦いに稟と共に勝利し、この世界での役目を終えた事を伝えてエクスの世界で撮った写真も現像し、早速次の世界に向かおうとしたのだが……
零(……はて……何故こうなったのだろうか……?)
はやて「さぁて……じゃあじっくりOHANASHIしよか、零君?」
……次の世界へと向かおうとした前に、何故か零は床に正座させられ、目の前には背後に修羅王を浮かばせたなのは達が仁王立ちして立っていたのだった。
零「あの……取りあえず聞きたいのだが、何故お前達はそんなお怒りになって、俺は床に正座させられてるんだろうか……?」
フェイト「何故?何でこんな事になったのか全く予想付かないんだ……?」
零「いや、あの……分かってたらこんな質問最初からしないというか……正直、今回のことでお前達が怒る要素が何処にあったかサッパリ検討付かないというか……」
なのは「そっかぁ、じゃあ多分コレ見たら思い出すんじゃないかな?」
零「コレ?」
正座させられた零が疑問げにそう聞き返すと、なのはは一枚の何処かの店の名刺のようなモノを懐から取り出し、零へと見せていく。それには……
『今日は楽しかったわ零、また会いましょう♪』
と、名刺の裏に女性の物と思われる文字でそう書かれていたのである。
零「って、何だそれっ?!」
なのは「零君が着て帰ってきたコートの胸ポケットに入ってた名刺なんだけど……随分と仲良しになったみたいだねえ?『零』なんて呼ばれて?」
零「いやっ、俺は全然知らんぞ?!大体そんな名刺を貰った覚えなんて?!」
フェイト「ふーん……なら、どうして零の額から香水の香がするのかな?」
零「は……?香水?」
フェイトにそう言われ、零は頭上に疑問符を浮かべながら指先で自分の額に触れ試しに嗅いでみた。すると額に触れた自分の指先から、何やら良い香がする香水の匂いがした。
零(額に香水?いつの間にこんな…………あっ)
訝しげに自分の指先を睨みつけていると、零は其処である事……先程稟達と別れる際にアテナにデコピンされ、額を指で突かれた事を思い出し僅かに顔を上げた。
零(まさかあの時?!あの女、また余計な事を?!)
なのは「どう説明するのかな?この香水と名刺の事」
零「い、いや、だからその……勘違いするな!それはアテナの奴が俺のポケットに忍ばせた物であってっ、香水もアテナの仕業なんだ!だいたい、俺がそんな店に行ったり女から名刺を貰ったりすると思うか?!」
はやて「うん、零君ならやる」
零「やりかねないですらないッ?!」
フェイト「零の日頃の行いからよぉーーく考えてみれば、そう思われるのも無理ないと思うけど?」
零「な、なんだ日頃の行いって?そんな風に思われる行いをした覚えなんて全然っ……」
なのは「そうかな?私達が知らない所でいつの間にか知らない女の人と出会って……」
フェイト「仲良くなって、その人のトラブルに首を突っ込んで……」
はやて「そんで最終的にその人も落とす……が、零君お得意のパターンやしなぁ?」
零「お、落と?何の話だ?俺は別に高い所から人を落とした覚えはないぞ?」
『………………………………………………………』
……ん?なんだ?何故皆、そんな呆れたような目で俺を見る?
姫「なんというか……本当に人の恋心を弄ぶことに関しては天才的だな、君は」
ディエチ「自覚ないのは分かってるけど……いい加減それも治さないと命に関わると思う」
ヴィータ「ってか、今正にその真っ最中だけどな」
シグナム「違いないな……」
セッテ「……はぁ」
おいコラッ、なに好き勝手言っとるんだお前等はっ、大体自覚ないって何の話だ?!俺は大概の自分の事はちゃんと理解してるつもりだぞ?!……って、おい?お前等?何故無言のまま俺の襟首掴んで部屋を出ようとする……?
なのは「にゃはは、いい加減その無自覚な鈍感を叩き直そうと思ってね……場所変えてOHANASHIしようか♪」
零「は?いや、だから誤解だと言ってるだろう?!というか何時もOHANASHIする時の笑顔が今日に限ってより一層恐ろしいのは何故だ?!ちょ、待っ――?!」
ズルズルズルーとなのは達に強引に引きずられ、例の如く別室に連行される零。残された一同はそんな光景を何時ものように見送り、零達が出ていったあと深い溜め息を吐いたのだった。
◆◇◆
―ドッガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!!―
その頃、家に戻ろうと帰路を歩いていた稟とアテナは写真館の方から響き渡った爆音を聞き、稟は写真館の方角を見たあとアテナに目を向けた。
稟「……何したアテナ……」
アテナ「べっつに~♪ただ額に女性用の香水塗ってポケットに名刺入れたのよ、滝にあげたのと同じもの♪」
稟「はぁ……まぁ大丈夫だろう……また飲みに行くとするか……」
稟は陽気に笑うアテナを見て深く溜め息を吐いた後、写真館から鳴り響く轟音を聞きながら家に戻っていったのであった。
◆◇◇
―光写真館―
零「…………死ねる…………」
あれから数十分後、OHANASHIを終えた零は所々に包帯を巻きながらグッタリとソファーに倒れ込み、そんな零の近くで優矢とエリオが珈琲を片手に苦笑しながら声を掛けた。
エリオ「えぇっと、大丈夫ですか零さん?もし良かったら珈琲でも煎れますけど?」
零「……いや、いい……今そんな気分じゃない……」
優矢「ったく、お前も毎回毎回あんだけやられてどうして気付かねえのかねぇ?いい加減治せよ、その鈍感」
零「ぐうぅ……だから別に、俺は鈍くないと言ってるだろっ?訓練生の頃とか、担当の教官に『お前は反射神経が良くて異変を察知する能力もピカイチだし、ホントに鋭感だなぁ』って、絶賛された事あるんだぞ?」
優矢「いや、その事で鈍いって言ってんじゃねぇんだっつの……」
あぁーもうわっかんねえーかなぁと、頭を乱暴にガシガシと掻き毟る優矢にエリオも苦笑いするしか出来ず、零はそんな二人の様子を見て訝しげに首を傾げるも直ぐにソファーに俯伏せてしまった。
零「まぁ取りあえず、この世界での役目を終えたことだけは分かるな……」
エリオ「あはは、そうですね……稟さん達、これからもこの世界で笑い合って生きていけますよね」
零「あぁ……アイツ等は、過去に縛られずにちゃんと未来を見て生きていける。稟も芙蓉も……な」
そう言って零は態勢を仰向けに変えてズボンのポケットから一枚の写真を取り出し、それをジッと眺めていく。其処には魔王家での稟や楓達の姿が写し出されており、零は写真に写る稟達を見て何処か優しげな笑みを浮かべた。その時……
―ガチャッ…ガララララララララッ…パアァァァァァアンッ!!―
リビングの背景ロールが再び何の前触れもなく新たな絵を降ろして淡い光を放ち、その光が止むと、其処には何処かの街中の高層ビルの上で夜空に浮かぶ満月に向かって孤高の雄叫びを上げる金と銀の狼の絵が現れたのである。
はやて「これは……狼?」
零「……シリウスの世界か」
一同が新たな背景ロールの絵を食い入る様に見つめる中、零はソファーに寝転がったまま目を僅かに細めて小さくそう呟いていたのだった。
そしてその頃、光写真館が新たに訪れた世界の某所では、大量の怪人に囲まれた金と銀のライダーと赤いライダーが背中合わせに怪人達と対峙する姿があった。このライダー達は何者なのか?そしてこの世界で待つ零達の役目とは……?
◇◆◆
―謎の建造物内・牢獄の間―
―カツッコツッカツッコツッ……―
恭平「…………」
一方同じ頃、組織のアジトである謎の建造内の牢獄の間と呼ばれる部屋。其処はその名の通り、組織が捕らえた重要人物や裏切り者を投獄する為に作られた部屋であり、その場所を組織の人間の一人である新藤恭平が静かに歩いていた。そうして恭平はある牢獄の前で止まり、牢獄の中の人物を見つめた。
恭平「―――よう、気分はどうだい?裏切り者さん」
「……最悪よ……何日もこんな暗い場所に閉じ込められて……気分が良いはずがないでしょ……」
恭平「そっか……ま、当然ちゃ当然だろうな」
微笑しながらそう呟く恭平の目の先には、両手に手枷を嵌められ、拘束着を身に包んだ金髪のロングヘアーの女性……先の戦いで組織に敗れ囚われてしまった、ナンバーズのNo.2であるドゥーエが壁に寄り掛かって床に座り込む姿があった。
ドゥーエ「それで……今日は一体どんな尋問をする気なのかしら?言っとくけど、どんな事をされても私はドクター達の居場所を吐いたりしないわ……さっさと焼くなり殺すなり、好きにしなさい……」
恭平「ははっ、既に覚悟を決めてるってワケか?いいねぇ、誰かを庇う為に命を張れる奴は嫌いじゃないぜ?」
ドゥーエ「あら……じゃあそんな嫌いじゃない奴からのお願いで、此処から出してくれないかしらね?そしたらお礼に一回一緒に寝てあげるけど……?」
せめてもの抵抗にと、繰り返される尋問のせいで弱々しくなった顔で妖艶な笑みを作り、余裕の態度を見せてそんなことを言ってみせるドゥーエ。それを聞いた恭平は……
恭平「いいや……そんな事しなくても、ちゃんと逃がしてやるさ」
ドゥーエ「……え?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。ドゥーエは必死に作っていた表情を崩して呆然とした顔を浮かべ、恭平はそれを他所に黒いスーツの内側ポケットから紙で包まれた何かを取り出し、それを牢獄の隙間から投げて床を滑らせドゥーエの足先に当てた。
ドゥーエ「?これは?」
恭平「お前の両手に嵌められた手枷の鍵と、このアジトの見取り図だ」
ドゥーエ「ッ?!」
軽い口調でそう告げた恭平の言葉に驚愕し、ドゥーエは咄嗟にそれを手に取って何かを包む紙を広げ、中身を開いていった。其処には確かに一つの鍵があり、更に鍵を包み込んでいた紙もこの牢獄の間と思われる場所を赤いペンで丸をされた見取り図であった。
ドゥーエ「これはっ……」
恭平「逃げてはいいが、今はまだ止めてた方が良いぜ。今は他の任務に当たってた連中がこのアジトに戻り始めてる。今逃げたりしても、上の連中に一発で異変を悟られてまたこの場所に逆戻りだ。此処にいる連中は俺も含めてアンタの変装を簡単に見破れる連中ばかりだしな……アンタだって分かるだろ?」
ドゥーエ「っ……貴方、一体なんのつもりなの?これも何かの策略とかかしら?」
恭平「おーおー、せっかく手助けしてやってるのに信用ないねぇ?」
ま、いきなり敵に逃げても良いなんて言われても信用出来る訳ねえかと、恭平はヤレヤレとポーズを取って溜め息を吐き、ドゥーエを見据えながら言葉を紡ぐ。
恭平「コイツは組織とは何も関係ねえ、俺が独断やってるだけさ。勿論バレれば、俺もただでは済まねえだろうよ」
ドゥーエ「貴方の独断?……なら余計に理解出来ないわね。自分が殺されるかもしれないっていうデメリットを払ってまで敵にこんな真似をして、それで貴方に何の得があるって言うの?」
恭平「得ならあるさ。ほれ、その見取り図、よく見てみ?」
ドゥーエ「?」
そう言われ、ドゥーエが再び見取り図を見てみると、其処にはこの牢獄の間以外に別の部屋が赤い丸で囲まれている図があった。
恭平「逃げ出せるチャンスがあるとしたら、零達が九つ目の世界を回った後辺りぐらいだろう。終夜や裕司以外の連中は一気にアジトを出払う予定だし。その隙にアンタは此処を抜け出し、その部屋に保管されてる奴を盗み出して零と高町に渡してくれ」
ドゥーエ「?ディケイド達に……ですって?どうして私がそんな事……」
恭平「アンタにしか出来ねえから言ってんだよ、それで此処から抜け出せるなら易いもんだろう?それに、零が組織に対抗するにも今のままじゃ無理だ。アンタだって、零が組織の手に墜ちたら困るだろ?」
ドゥーエ「…………」
確かに、破壊の因子を持つ零が組織に墜ちてしまえば最早自分達に勝ち目はない。その事を突き付けられたドゥーエは一瞬口を閉ざして黙り、恭平を睨みながら口を開いた。
ドゥーエ「確かに、黒月零が組織に着くのは避けたいわ……でも、なんで貴方がそれを阻止するために手を貸すの?貴方も組織の一員じゃなかった訳?」
そう、ドゥーエが抱く一番の疑問はそれだ。確かに零が組織の手に落ちるのは避けたいが、何故零を手に入れて得をする側の恭平がそれを阻むような真似をするのか?それが理解出来ないドゥーエが疑問げに問うと、恭平は笑みを浮かべながら……
恭平「確かに俺は組織の一員だ。でもな……俺は別に組織に忠誠を誓った訳でも、揺り篭に叶えてもらいたい願いがあって組織に入った訳でもねえんだよ」
ドゥーエ「?組織への編入が忠誠でも願いでもない?なら一体……」
何が目的で?最後まで言い切らずにそう問い掛けるが、恭平は何も答えず背後の壁に背を預けた。
恭平「その質問に答える気はねえな。だが、俺の目的は今も昔も何一つ変わってないってことは確かだ……そんで、どうする?此処でビビって死ぬまで終わらない尋問を受け続けるか?まあ、別に俺はそうなっても困らねえから嫌なら断っても良いぜ?」
ドゥーエ「…………」
肩を竦めながら恭平がそう言うと、ドゥーエは手の平の上の鍵を見つめていく。そうして暫く何かを考えるように黙り込むと、静かに顔を上げ、恭平を見つめながらゆっくりと口を開いていった――――
第十九章/エクスの世界END