仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

359 / 519
番外編
番外編/過ぎ去りし思い出


 

 

 

 

―――今から話を始めよう。

 

 

時は戦国の世。

 

 

『桜ノ神・木ノ花之咲耶姫』が人間だった頃の、彼女が神となる代価として失ってしまった記憶。

 

 

まだ桜ノ神ではない少女、咲夜が唯一心から親友だと思える友と出会った、悲しくも、大切な友との出会いの物語を……

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

数百年前の桜ノ町。此処は昔は名もないただの辺鄙な村ではあったが、乱世の真っ只中でありながら戦とは関係が薄く、村人達は活気に溢れていた。

 

 

元々戦とは掛け離れた場所に村が存在してたのもあるが、この村は以前ある戦で敗退した落ちぶれ兵士の一団に食料と金品目的で襲われた事があり、一度壊滅状態に陥た事があった。

 

 

その為に再建は不可能と見た国からも見捨てられてしまった(本音は国の資金を戦の為だけに集中して使いたいが為、故意で見捨てた)のだが、残った村人達の努力で村は再建され、その時の傷痕は残ったままだが、必要最低限の生活は出来るようになったのである。

 

 

そしてそんな村から離れた場所に位置する畑では、一人の少女が汗水流し働く姿があった。

 

 

「――よっ、と……ふぅ、これで終わりか……」

 

 

両腕に抱えた多くの野菜を荷車に乗せ、額に浮かぶ汗と汚れを手で拭い一息吐く少女。桜色の綺麗な瞳に腰まで伸ばした黒髪を後頭部に纏め、服装は農作の仕事を行うにあたって動きやすさを重視した格好をしている。そんな少女の下へと、少女と同じ格好をした中年の男性と女性が柔らかい笑みを浮かべながら歩み寄った。

 

 

「おう、お疲れさん咲夜。野菜は全部積み終わったかい?」

 

 

咲夜「ん?あぁ、おじさん、おばさん。野菜は今ので積み終わりましたよ。あとは市に持って行けば良いだけです」

 

 

「そう、いつもありがとね咲夜ちゃん?咲夜ちゃんのおかげで仕事がはかどって助かるわ♪」

 

 

咲夜「いや、私もおじさん達が雇ってくれたおかげで助かってるから、お互い様ですよ。それに農作の仕事も、やってみると結構楽しいですし」

 

 

少女……咲夜はそう言って荷車に積まれた野菜に顔を向けて笑みを浮かべると、男性の隣に立つ女性が懐から袋を取り出し咲夜に差し出した。

 

 

「それじゃあ、はいこれ。今日の分のお金ね」

 

 

咲夜「……は?いやでも、まだこれから市で野菜を売る仕事が……」

 

 

「いいっていいって、そっちは俺らの方でやっとくからよ。お前さんは早く家に帰ってやんな。はるかちゃんが待ってんだろ?」

 

 

咲夜「あ…いや…しかし…」

 

 

男性が口にした『はるか』という名を聞き、咲夜は思わず顔を俯かせて悩んでしまう。すると女性がそんな咲夜の手を取り、金銭の入った袋を咲夜の手に握らせ優しく微笑んだ。

 

 

「遠慮しなくていいのよ?これで美味しいものでも買って、はるかちゃんと一緒に食べなさい。仕事は明日また頑張ってくれたらいいから、ね?」

 

 

咲夜「……すみません……色々と気を使ってもらって……明日もまた頑張ります!」

 

 

そう言って咲夜は二人に頭を下げて礼を言うと、そのまま村の方に向かって走り出していった。そして男性と女性はそんな咲夜の背中を見つめ、優しげな笑みを浮かべていく。

 

 

「ほんと、咲夜ちゃんは妹想いのいい子ねぇ」

 

 

「親を早く亡くして大変だろうに、弱音一つ吐かねえからな。あんな娘がうちにも欲しいよ……」

 

 

「ハイハイ、馬鹿言ってないで早く市に行くよ!早く荷車引っ張りな!」

 

 

「へいへい……」

 

 

女性は男性の腰を強めに叩いて荷車を引っ張るように促し、男性は軽く溜め息を吐きながら言われるがままに荷車を引っ張って村の市へと向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

それから数十分後……

 

 

「ごほっ、ごほっごほっ!ごほっ…!」

 

 

村の中に存在するボロボロの家。此処にも嘗て落ちぶれ兵士の一団に襲撃された傷痕が残っており、家の壁や天井には所々風穴が空いていた。そしてその家には住人と思われる一人の少女……肩に少し掛かる長さの黒髪に、咲夜と同じ桜色の瞳を持つ少女が布団の上で何度も苦しげに咳き込む姿があった。其処へ……

 

 

―ガララッ……―

 

 

咲夜「ただいまぁ、はるか」

 

 

「ごほっごほっ……ぁ……お姉ちゃん……?」

 

 

家の戸が静かに開き、其処から着物姿の咲夜が家の中へと入ってきたのだ。それに気付いた少女……はるかは布団から顔を出して咲夜に目を向けると、咲夜は藁草履を脱いではるかの下へと歩み寄り、はるかの隣に腰を下ろした。

 

 

咲夜「体の調子はどうだ?朝出た時も具合が悪かったみたいだが……まだキツイか?」

 

 

はるか「うう、ん……今は大丈夫……そんなにキツくないよ……」

 

 

はるかは咲夜にそう言ってけだるそうに布団から身を起こしていき、それを見た咲夜は慌ててはるかの身体を支えていく。

 

 

咲夜「おいこら、起きるんじゃない!まだ寝てなきゃ駄目だろ?!」

 

 

はるか「あはははっ、平気だよこれくらい。お姉ちゃんは心配性なんだから……それより、お姉ちゃんこそどうしたの?こんなに早く……お仕事は……?」

 

 

咲夜「ああ、今日はおじさんとおばさんが気にかけてくれてな、いつもより早く仕事が上がったんだ」

 

 

はるか「そっ、か……じゃあ、今日はいつもより長く一緒にいられるね……♪」

 

 

えへへ……と、嬉しそうな笑顔を咲夜に向けて微笑むはるか。咲夜はそんなはるかの顔を見て釣られるように笑いながら、彼女と一緒にいる時間をあまり作ってやれない事に内心罪悪感を感じてしまう。そんな複雑な心境になりながらはるかの背中を摩ると、咲夜は何処からか包みを取り出して布団の上に置いた。

 

 

はるか「……?なに、これ……?」

 

 

咲夜「今日はおばさん達が少しまけてくれてな、お陰で良いものが買えたんだ。開けてみろ」

 

 

はるか「?」

 

 

何処か楽しげに笑う咲夜の様子に疑問を抱きながらも、はるかは言われた通りに包みを手にして中身を開いていく。それは……

 

 

はるか「――っ!わぁ~!新しい本だぁー!」

 

 

開けた包みの中には、小説や子供に読み聞かせるための絵物語など様々な種類の書物があったのだ。はるかは包みの中の書物を見て目を輝かせ、咲夜はそんな妹の様子に思わず笑みを浮かべた。

 

 

咲夜「今晩の夕飯の材料を買ったあと、まだ手持ちに余裕があったからお前にと買ってきたんだ。お前、こういうの好きだろう?」

 

 

はるか「うん!あ……でも良いの?こんなに沢山、凄く高かったんじゃ……」

 

 

咲夜「なあに、それくらい問題ないさ。だからお前が気にすることなんてない、心配するな」

 

 

はるか「うん……ごめんね――じゃなくて……ありがとう、お姉ちゃん……♪」

 

 

貰った本を胸に抱き、満面の笑みを浮かべて咲夜に礼を告げるはるか。咲夜もそんなはるかの喜ぶ顔を見て嬉しそうに笑い、はるかの頭の上にソッと手を置いて頭を撫でていく。

 

 

咲夜「よしっ、じゃあそろそろ晩御飯にするか?」

 

 

はるか「あ、だったら私も手伝っ――ごほっごほっ!」

 

 

咲夜「馬鹿っ、良いからお前は寝てろ!余り体に無理させたら、治るものも治らなくなるだろっ?」

 

 

はるか「ゴホッゴホッ…!うんっ……ごめんね、お姉ちゃん……」

 

 

咲夜「ち・が・う。それは言わないと約束だろ、はるか?」

 

 

はるか「あ……うん、そうだった……ありがとう……お姉ちゃん……」

 

 

咲夜「うむ、よろしい♪」

 

 

じゃあ、今から夕飯を作るから待っているんだぞと、咲夜ははるかをソッと布団に寝かせて立ち上がり夕飯の準備を始めようとするが、その時天井に空いた風穴から流れた風が髪を撫で、天井を見上げた。

 

 

咲夜(ん……今夜はいつもより冷えそうだな……今日は体の温まるものでも作るか……)

 

 

苦しそうに咳き込んで布団に横たわるはるかに顔を振り向かせてそう考えると、咲夜は早速準備に取り掛かろうと髪をポニーテールに纏めて夕飯作りを始めていくのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

……その日の晩。村人達の殆どが眠りに付いてる為、辺りには虫達の鳴き声だけが響き渡っていた。漆黒の闇が辺りを支配し、不気味な静寂が流れる村の入り口の前に、風来人の格好をした一人の人物が佇んでいた。

 

 

「……寂れた村……こんなところにも人って住んでるんだ……」

 

 

そう呟く声から察するに、おそらく女だと思われる。サラサラとした白い髪に、清楚な顔立ち。腰には鈴を付けた白塗鞘の太刀を下ろし、女は風来帽を指で少し上げて村を見つめた。

 

 

「此処なら暫く、身を休める事が出来るかな……よし……」

 

 

女は何かを決心したように呟くと、力強く一歩を踏み出して村の中へと入ろうとした。その時……

 

 

 

 

 

 

―ガサガサッ……―

 

 

「――ひいぃっ?!!」

 

 

突然女の背後の茂みから物音が響き、女は悲鳴を上げながらそちらの方へと振り返り思わず身構えた。女がビクビクとした様子で茂みに向けて両手を構えていると、茂みからは未だにガサガサと物音が聞こえ続けていた。

 

 

「だ、だだだだだだ誰?!誰かいるんですかっ?!」

 

 

若干及び腰になりながらも、茂みに向かって情けなく叫ぶ女。その間にも茂みの中から響く物音はどんどん近くなっていき、茂みの中から出てきたのは……

 

 

 

 

 

 

「うにゃー」

 

 

 

 

 

 

「…………ねこ?」

 

 

 

 

 

 

茂みの中からゆっくりと姿を現したのは、体中がドロだらけになって汚れた一匹の猫だったのである。それを見た女は唖然とした顔になって思わず固まり、猫はそんな女を他所に鳴き声を上げながらトコトコと何処かへと歩き去ってしまい、女はそんな猫を目で追ってガクッと肩を落としてしまう。

 

 

「な、なんだネコかぁ……もぉ……脅かさないでよぉ……」

 

 

ネコ相手に無駄に驚いてしまい、げんなりした表情で疲れた声を漏らす女。そうして女はガックリと肩を落としたまま、再び村の中に入ろうと歩き出していくが……

 

 

―……ガッ!―

 

 

「ふぇ?……へぶうぅぅッ?!!」

 

 

ビダアァンッ!!と、女は何故か何もない場所で爪先を引っ掛け、そのまま盛大にすっころんでしまったのだった……顔から思いっきり。

 

 

「ぁあ……うぅ……ひぐっ……うえええええええぇぇんっ……!!顔思いっきり摩っちゃったあああああああああぁぁぁぁぁぁっ……!!」

 

 

おもむろに地面から泥だらけになった顔を上げ、女は深夜にも関わらずジンジン痛む鼻を抑えながら、村の前でびーびーと泣き出してしまったのであった……

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。