仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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番外編/過ぎ去りし思い出②

 

 

夕日の光が差し込む咲夜とはるかの家。其処には昨日と変わらず布団の上で静養するはるかの姿があった。だが二つだけ昨日と光景が違い、先ずは彼女の容態が昨日より安定し良好であること。そしてもう一つは、彼女が布団から身を起こし昨日咲夜に貰った本で読書をしてるという事。静穏の漂う家の中に本のページをめくる音だけが響き渡り、はるかが次のページをめくろうとした瞬間……

 

 

―ガラガラッ―

 

 

咲夜「はるか、ただいま」

 

 

はるか「…あ、お姉ちゃん!おかえり~!」

 

 

家の戸が音を立てて開かれ、其処から咲夜とオロオロと辺りを見渡す雪奈が家の中へと入ってきたのである。すっかり読書に意識を向けていたはるかは咲夜の声に反応して顔を上げ笑顔で出迎え、それに対し咲夜は身体を起こすはるかを見て驚いた顔を浮かべ、はるかの傍に駆け寄っていく。

 

 

咲夜「はるか、身体の具合は大丈夫なのか?」

 

 

はるか「あっ、うん。昨日より大分楽な方だから全然大丈夫……あれ?お客さん?」

 

 

心配する咲夜に笑ってそう言うと、はるかは戸の前でなにやらオロオロしている雪奈に気付き首を傾げた。するとはるかに疑問を抱かれた雪奈は若干肩をビクッと震わせながらも、苦笑しながら手を上げてはるかに挨拶していき、咲夜ははるかから雪奈に視線を向けて口を開いた。

 

 

咲夜「ああ、アイツは雪奈と言って、さっき其処の市で知り合った旅人だ」

 

 

はるか「?旅人さん?あ、だから風来坊の格好を……」

 

 

咲夜の説明で、何故雪奈が風来坊の格好をしてるのか納得し小さく頷くはるか。するとはるかは、今まで読んでいた本を傍らに置いて布団から立ち上がろうと……

 

 

咲夜「ってこら!まだ寝てなきゃ駄目だろ?!」

 

 

はるか「ん……でも、せっかくお客さんが来てくれたのに、お茶も出さないのは……」

 

 

雪奈「い、いえ、別に気にしなくていいですよ?お構いなくυυ」

 

 

はるか「でも……」

 

 

安静にしてなければいけない体を起こし、雪奈に茶を出そうとするはるかに気にしなくていいと慌てて呼び掛ける雪奈だが、せっかく来てくれたお客に茶も出さないのは失礼ではないかと、はるかはそれが気になり心配そうに咲夜の顔を見つめた。すると、咲夜はそんなはるかの両肩に手を添えながら……

 

 

咲夜「そんな心配するな。それに、雪奈は別に客って訳ではないし」

 

 

はるか「へ?お客さん……じゃないの?」

 

 

咲夜「ああ。雪奈は客じゃなくて、今日から家に住む同居人だ。だからお前も、雪奈と仲良くするんだぞ♪」

 

 

はるか「え……」

 

 

雪奈「……は?」

 

 

雪奈は今日から家に住む同居人。陽気に笑ってそう告げた咲夜の言葉にはるかと雪奈は思わず目を点にさせてしまうが、雪奈はすぐに正気に戻ると慌てて草履を脱いで中へと上がり込み、咲夜の手を強引に引っ張り家の隅っこに引き寄せた。

 

 

咲夜「む?どうした雪奈?」

 

 

雪奈「ど、どうしたじゃありませんよっ!今の、一体どういう事ですか?!」

 

 

咲夜「……ああ、同居の事か?どういう事もなにも、今言った通りだが?」

 

 

雪奈「聞いてませんよっ!いきなり同居なんて、そ、そんなこと言われても困ります……!」

 

 

雪奈の反応も無理もない。いきなり今日会ったばかりの他人の家に連れて来られて、しかもいきなり本人の同意も無しに同居しろと言われても戸惑ってしまうのは当然の反応だろう。オドオドと慌てふためきながら困惑してしまう雪奈だが、咲夜は呆れたように溜め息を吐きながら腰に手を当てていく。

 

 

咲夜「まあ、確かにあらかじめちゃんと言わなかった私も悪いとは思うが……だが実際、お前も今日泊まるところがないんだろう?金もないし、そんなんで宛があるのか?」

 

 

雪奈「それは……その……ないですけど……」

 

 

咲夜「だろ?なら必要な金が貯まるまで此処を使えばいいさ。あ、無論貸し借りがどうのこうの言うつもりもないから、その辺は安心してくれて構わない」

 

 

雪奈「あ……う……いや……でも……」

 

 

確かに手持ちがない以上、此処に住まわせてもらえるならソレはソレで助かる。だが、やはり……と雪奈はチラッとこちらを見つめて不思議そうにしてるはるかを横目で見つめ、暗い表情を浮かべてしまう。そんな煮え切らない態度を見せる雪奈に咲夜は軽く溜め息を吐いた。

 

 

咲夜「まったく……まあ、別に野宿がしたいというのなら引き止めはしないぞ?ただし、それでどんな恐ろしい目に遭っても私は責任取らないが……」

 

 

雪奈「……えっ?ど、どういう意味ですか、それ?」

 

 

ポツリと、若干小声で呟いた最後の言葉の部分が気になり恐る恐る咲夜へと問い掛けていく雪奈。それと共に、何故か咲夜の周りからドロドロドロドロッ……と怪しげな効果音が聞こえ始め、咲夜は顔を真っ青に染めながらポツポツと語り始めた。

 

 

咲夜「お前は他所の人間だから知らないだろうが……この辺りはな……?他でも出るってかなり有名なんだよ……」

 

 

雪奈「で、出る?出るって……ま、まさか……?」

 

 

咲夜「そう……昔、この村はある盗賊の一団に襲われた事があってな……その時に沢山の村人が殺されたのだが、その殺された村人の怨霊が今も夜な夜なこの村を徘徊してるらしい……」

 

 

雪奈「え、えぇぇぇっ?!……で、でもっ、そんなのただの噂……ですよねっ……?」

 

 

咲夜「どうだろうなぁ……実際見たっていう証言は度々聞くし、あながち嘘とは言い切れないしな~……」

 

 

雪奈「そ、そんなぁっ?!」

 

 

幽霊や怨霊の類が余程苦手なのか、咲夜の話しを聞いただけで瞳を潤ませながら情けない声を上げてしまう雪奈。そんな雪奈の様子に咲夜は顔を反らして不敵に笑い、すぐに陽気な笑みを浮かべながら雪奈の肩を叩いた。

 

 

咲夜「まっ、それでも構わないと言うなら勝手にすればいいさ♪あ、でももし呪い殺されても私を恨まないでくれよ?」

 

 

雪奈「うっ?!うぅっ……うぅぅぅぅぅぅっっ……」

 

 

ポンポンッと、雪奈の両肩を叩きながら好きにしろ♪と陽気に笑う咲夜。しかしあんな恐ろしい話しを聞かされた以上、既に暗くなり始めた外を出歩くなんて出来っこない。完全に怖じけづいてしまった雪奈は涙目になりながら咲夜を睨み、ただただ悔しげに唸り声を上げるしか出来なかったのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

数時間後……

 

 

はるか「ごちそうさまでした」

 

 

雪奈「……ごちそうさまです」

 

 

咲夜「お粗末様でした……っと。それじゃ、私は食器を洗ってくるよ」

 

 

あれから時間が経ち、時刻は既に夜中。咲夜達の自宅では咲夜とはるか、そして結局外に出るのが怖くて家に居着く事にした雪奈は、丁度夕食を済ませたところだった。咲夜ははるか達の食器と自分の食器を持って皿洗いをするために外へと出ていき、居間には雪奈とはるかの二人だけが残された。

 

 

雪奈「…………」

 

 

はるか「…………」

 

 

雪奈「…………」

 

 

はるか「…………」

 

 

雪奈(か……会話がないっ……υυ)

 

 

咲夜が外に出ていってから二人はどちらからも話しを切り出そうとはせず、ただ沈黙だけが流れ続けていた。やはり親しくもない会ったばかりの得体の知れない人間と意気ワイワイと話せる筈がない。しかし此処に住む事になった以上、何時までも彼女と壁を作るのはあまりよろしくない。そう思った雪奈は心の中で腕を組み、ウーンウーンと唸りながらはるかと楽しく話せそうな話題を必死に考えていた。その時……

 

 

はるか「―――あ、あのぉ……少し伺ってもいいですか、雪奈さん?」

 

 

雪奈「……へ?あっ、は、はい!何でしょうか?!」

 

 

予想外にもはるかの方から声を掛けられ、雪奈は意識を取り戻し慌てて大声で返事を返した。そんな雪奈の返事に若干引きながらも、はるかは若干苦笑しながら言葉を続けた。

 

 

はるか「え、えっと…雪奈さんとお姉ちゃんって、確か市で知り合ったんですよね?それで、二人はどんな経緯で知り合ったのかなぁ……と思って……」

 

 

雪奈「あ……ええっと……それはですね?話せば少し長くなりますけど……」

 

 

はるかに咲夜と知り合った経緯を聞かれ、雪奈は簡潔にだが詳しく事情を説明していく。するとはるかは話を聞きながら何度も小さく頷き、話が終わると同時に仕方なそうに息を吐いて苦笑いをした。

 

 

はるか「そうだったんだ……お姉ちゃん、本当に相変わらずなんだから」

 

 

雪奈「?……あの……もしかして、咲夜さんって何時も今回みたいなというか、人助けを……?」

 

 

はるかの様子からそうなんじゃないかと思い、率直に質問する雪奈。その問いを受けたはるかは苦笑いしたまま頬を掻き、複雑な顔を浮かべながら口を開いた。

 

 

はるか「そうですね……毎日って訳じゃないですが、姉は何時も目の前で困っている人を見ると放っておけなくて、すぐに助けに入っちゃうんです……例え相手が自分より大柄で、凶器を持ってても、自分より強くても、最後までその人を助けるまで諦めないっていうか……」

 

 

雪奈「……どうして、咲夜さんは其処まで……?」

 

 

はるか「…………」

 

 

ただの親切ならまだ分かるが、はるかの話を聞く限り咲夜のソレは明らかに親切の度を越えてる。何故そこまでして自分の身を危険に曝すような事を?と雪奈が怪訝な顔で問い掛けると、はるかは自分の両手を絡めながらそれに答えた。

 

 

はるか「もう随分昔の話しなんですけど……この村は昔、戦で敗戦した兵士達の一団に襲われたことがありまして……その時に私達の両親、それに当時親しかった友達や親戚も、皆殺されてしまったんです……」

 

 

雪奈「え……」

 

 

家族や友人達を殺された。物静かな口調でそう呟いたはるかの言葉に雪奈は目を見開き、はるかは顔を俯かせたまま苦笑いした。

 

 

はるか「姉は多分、その時のことを今も後悔してるんだと思います……目の前で大切な人達が死んでいくのに、何も出来ずにただ見ているしか出来なかった……それを今も忘れられないから、姉は二度とそんな思いをしたくないが為に人を助けてるんだと思います」

 

 

雪奈「…………」

 

 

はるか「姉は何時もああやって元気に振る舞ってますけど、アレも本当はその時の弱さを隠す為に取り繕ってるだけなんです。弱いままじゃ誰も守れないから、弱さを見せたら誰も救えないから、自分なら出来る、自分なら絶対やれる、自分は強いんだって……もうあの時みたいな後悔をしたくないから、そう自分に言い聞かせて、強く有ろうとしてるだけなんですよ」

 

 

はるかは咲夜が出ていった家の入り口の方へと視線を向けてそう言うと、雪奈に視線を戻して儚げに微笑んだ。

 

 

はるか「だから私も、病気に負けずに長生きしないといけないんです……あんな姉をひとり残して逝ったりしたら、心配過ぎて成仏も出来ませんからね」

 

 

雪奈「…………」

 

 

あははは……と、頬を掻きながら苦笑いするはるか。雪奈はそんなはるかの顔を黙って見つめ、顔を俯かせながら自嘲気味に笑った。

 

 

雪奈「羨ましいですね……出来れば私も、貴方みたいな温かい家族の下に生まれたかった……」

 

 

はるか「?雪奈……さん?」

 

 

雪奈「――いえ、なんでもありません♪あ、そういえばさっき咲夜さんが布団を出しといてくれって言ってましたっけ。ちょっと取ってきます♪」

 

 

心配そうに声を掛けてきたはるかに明るげに答えると、雪奈はおもむろに腰を上げて咲夜に頼まれた布団を取りに家の奥へと向かっていった。そして、居間に残されたはるかは……

 

 

はるか(……雪奈さん……何だか一瞬寂しそうな顔をしてたような……ただの気のせい?)

 

 

先程の雪奈の様子が普通ではなかったと疑問を抱き、雪奈が去っていた方を心配そうに見つめていたのだった。

 

 

 

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