仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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番外編/過ぎ去りし思い出⑥

 

 

そしてその日の夜。咲夜は突然吐血して倒れたはるかを見てなにが起きたのか分からずに錯乱してしまい、雪奈はそんな咲夜を何とか落ち着かせて医者を急いで呼びに行き、布団で意識を失って死んだように眠るはるかの様子を診てもらっていた。

 

 

咲夜「先生っ……!はるかはっ、はるかは一体どうなってっ?!」

 

 

「…………」

 

 

はるかの容態を診る医者に泣きそうな声を上げて詰め寄る咲夜。

それに対し、医者は無言のままはるかの脈を調べて首筋に当てていた手を離し、深く息を吐いた。

 

 

「どうやら、はるかさんの持病が発作を起こしたみたいですね……」

 

 

咲夜「持病が……発作?」

 

 

「前にも話しましたよね?はるかさんは、今の医学では治せない持病を抱えています。今までは発作も起こらなかったので、当分は大丈夫だと思っていたのですが……」

 

 

雪奈「な、何とかならないんですかっ?」

 

 

「今話した通り、この病を治す事は私でも無理です。ただ、薬を飲ませて発作を抑える事なら出来るのですが……」

 

 

と、医者は其処まで話して何処か言いにくそうに顔を逸らし、咲夜と雪奈は医者の顔を見つめて訝しげに眉を寄せた。

 

 

咲夜「な、何ですか?もしかしてお金ですか?!それなら私がどうにかします!だから薬をっ……!」

 

 

「いえ、そうではなくて……今はその薬が切れていて、この村にはひとつもないんです。だから薬を一から作る必要があるのですが、薬を作るのに必要な材料が足りなくて……」

 

 

雪奈「そ、そんな……」

 

 

咲夜「……その材料って、何処にあるんですか?」

 

 

薬を一から作る為の材料が足りない。

そう告げた医者に咲夜が真剣な表情で問い掛けると、医者は少し腕を組んで何かを考えたあと、ゆっくりと床から立ち上がって家の外へと出ていく。

そして二人が背後から着いて来てるのを確かめると、此処から少し離れた場所にある畑の向こうに存在する山を指差した。

 

 

「あの山です……あの山の頂上付近にある洞窟に、薬に必要な薬草が生えているのですが……」

 

 

咲夜「彼処に……ッ!」

 

 

雪奈「ッ?!咲夜?!」

 

 

あの山に、はるかの発作を抑える薬を作るのに必要な薬草がある。

医者が指差す山を見た咲夜は突然その山がある方へと向かって勢いよく駆け出すが、それを見た雪奈は咄嗟に背後から咲夜の手を掴み咲夜を引き止めた。

 

 

咲夜「ッ?!雪奈っ!は、離せっ!」

 

 

雪奈「離せませんっ!一体何する気ですかっ?!」

 

 

咲夜「決まってるだろ?!あの山に行って、その薬草を取りに行くっ!それではるかが助かるんだっ!」

 

 

雪奈「何言ってるんですか?!こんな暗闇で何も見えないのにあんな山に行って、もしなにかあったらどうするんですっ?!」

 

 

「彼女の言う通りです!それにあの山には、最近盗賊達が根城にして潜んでるという噂もあって危険なんです!明日になれば私が村の皆を集めて一緒に山に行きますから、それまで落ち着いて「落ち着ける訳ないっ!!」……ッ?!」

 

 

山に向かおうとする咲夜を必死に説得して引き止めようと試みる二人だが、突然怒号を上げた咲夜に驚いて思わず口を閉ざしてしまう。咲夜は前髪で顔を隠し、ギリッと唇を噛みながら顔を俯かせた。

 

 

咲夜「落ち着くなんてっ、出来る訳ないだろうっ……はるかは今にも死にそうになって苦しんでるのにっ、それを黙って見てるなんて……私には出来ないっ!」

 

 

雪奈「咲夜……でも明日になれば皆でっ……!」

 

 

咲夜「それまではるかの体が持つとは限らないだろう?!私はずっと、あの子を診てきたから分かるんだ!もしっ……もしはるかまで失ったらっ……私はっ!!」

 

 

雪奈「咲夜っ!!」

 

 

咲夜「お前には関係ないだろうっ!!お前は赤の他人なんだからっ、私達の事に口出しするなっ!!」

 

 

雪奈「ッ?!」

 

 

言うことを聞かない咲夜を引き止めようと何時になく怒鳴る雪奈だが、はるかを心配するが余り我を忘れた咲夜はそれを強く拒絶してしまい、雪奈はそれを聞いてショックを受けたように目を見開いた。

咲夜はそんな雪奈の様子を見て自分が言ってはならない事を口にしてしまったと気付いてハッと我に返り、気まずげに顔を逸らした。

 

 

咲夜「っ……ともかくっ、私の事はもう放っておいてくれっ!!」

 

 

「ッ!咲夜さん!」

 

 

今はとにかく一刻を争う。急がなければはるかの命が危ないと、焦燥に駆られる咲夜はショックを受ける雪奈の手を振りほどいて山の方角へと駆け出し、医者の静止も聞かずそのまま村を飛び出してしまったのだった。

 

 

「まずいっ……!雪奈さん!私は村の皆に呼び掛けて咲夜さんを追い掛けます!貴方はそれまで、はるかさんを見てて下さいっ!」

 

 

雪奈「ぁ……は、い……」

 

 

医者は咲夜が走り去った方を呆然と見つめて佇む雪奈にはるかを任せると、咲夜を捜しに向かうために村の人々を集めに向かった。

そして家の前に一人残された雪奈は呆然と咲夜に振りほどかれた手を見つめ、静かに顔を俯かせていたのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

それから数時間ほど経った頃。

村を飛び出した咲夜は暗闇に包まれた山の中へと単身で入り、闇に包まれて視界もままならない状態で木々を掻き分けながら頂上を目指し歩いていた。

しかし、歩みを進める咲夜の表情は何処か複雑なものとなっている。その原因はやはりはるかの容態とは別の理由……先程自分が雪奈に対して言い放った発言にあった。

 

 

咲夜(ッ……何やってるんだ私は……はるかの事を焦る余り、雪奈にあんなっ……)

 

 

今も脳裏に思い浮かぶのは、自分の心無い言葉に驚愕して傷付く雪奈の顔。

 

 

夕方の帰りにも、みっともなく自分の胸の内に仕舞い込んでいた感情を思わず雪奈にぶつけて、結局はそれっきり気まずいままだった。

 

 

その上はるかの事で焦っていたとは言え、あんな酷いことまで言ってしまってと、咲夜は先程の自分に自己嫌悪しながら不気味な風の音が響き渡る林の中を突き進んでいく。

 

 

咲夜(……とにかく、今はその薬草とやらを見つけ出さないと……雪奈の事は、その後に謝れば……!)

 

 

あの時はるかが吐いていた血の量。

 

 

前にも今日のようにはるかが吐血した事が何度かあったが、あの量は今までとは違って多過ぎるし、あんな……まるで死んだように気を失うなんて事も一度だってなかった。

 

 

もし、あんな状態が長時間続いたら?

 

もし薬が間に合わなかったら?

 

 

今までなかった事態なだけに、不安の余り嫌な光景が脳裏を過ぎる。その度に、咲夜の心を支配する不安がドンドン大きくなっていた。

 

 

咲夜(……もし……もしも……はるかまで失ったら……私は……)

 

 

――何の為に……生きればいい?

 

 

ふとその場で歩みを止め、そんな自問自答を心の中で呟く咲夜。だがすぐに頭を左右に振って気を取り直し、その場から駆け出して闇に包まれる山奥へと向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

それから更に数十分後。道もまともに分からぬまま、ただひたすら頂上を目指して山道を登り続けた咲夜が辿り着いたのは絶壁の岩山だった。

周りには岩山を囲むように森林が存在し、その中心に立つ岩山は不格好で足場が悪そうに見える。

岩山の前に立つ咲夜はそれを見上げながらそう思い、険しげに眉を寄せた。

 

 

咲夜(この上が頂上…この近くに、はるかの薬を作るのに必要な薬草が…)

 

 

医者の言葉がホントなら、山の頂上に当たるこの岩山の何処かに洞窟がある筈。咲夜はその洞窟を探して岩山の周辺を歩き回り、目を動かし岩山の隅々までそれらしきものを探していく。すると……

 

 

咲夜(……ッ!あれは……?)

 

 

咲夜の目にふとあるモノが止まり、咲夜は思わず足を止めて立ち止まった。

目を細めてその方向を良く見てみれば、岩山の頂上へと続く山道の途中に何やらポッカリと穴の開いた部分……洞窟のような場所があるのを発見した。

 

 

咲夜「もしかして……彼処か?よしっ!」

 

 

目的地が見えてきた。これなら思ったより早く薬草を届けられるかもしれないと、咲夜は顔を引き締めてその洞窟に向かうべく走り出そうとした。その時……

 

 

 

 

 

 

―………ガサガサァッ!―

 

 

咲夜「……え?―グイィッ!!―ッ?!ンンッ?!」

 

 

不意に咲夜の背後の林から物音が鳴り響き、それと共に林の中から何か……無数の腕が飛び出し、突然咲夜の口や腕を背後から抑え込んでいったのだ。

 

 

咲夜(な、なんだ?なにっ……?!)

 

 

「へっへへっ、つぅかまえたぁ~」

 

 

「そら、こっちに来ようか嬢ちゃん?」

 

 

突然の事態に頭が付いていかず混乱して咲夜の耳に、意地汚い声が届く。その声が余計に咲夜を困惑させるが、それを他所に咲夜を掴む腕達は暴れる咲夜を徐々に林へと引き込んでいき、遂に咲夜の姿は林の中へと消えていってしまったのだった……

 

 

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