仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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番外編/過ぎ去りし思い出⑦

 

 

雪奈「…………」

 

 

咲夜が岩山に辿り着く前。咲夜が村を飛び出した後、医者からはるかの事を任せられた雪奈は咲夜達の家ではるかの様子を傍で看ていた。

はるかは未だ死んだように眠ってピクリとも動かず、目覚める様子は一向にない。

そんなはるかを心配げに見守りながら、雪奈は何処か暗い表情を浮かべていた。

 

 

『お前には関係ないだろうっ!!お前は赤の他人なんだからっ、私達の事に口出しするなっ!!』

 

 

雪奈(……咲夜……)

 

 

目を瞑れば、脳裏を過ぎるのは先程咲夜が言い放った言葉。

それを思い出す度に雪奈は心を締め付けられるような痛みを感じ、傍らに置いてある雪片に視線を向けた。

 

 

雪奈(やっと……やっと刀を持つ以外の道を見付けられたと思ったけど……それも一時の夢幻……だったのかな……)

 

 

あの時の咲夜の言う通り、自分は所詮この二人家族からすれば赤の他人。

どんなに強い絆を結んだとしてもそれは代わりないし、そもそも……夕方に告白したように咲夜は戦をする人間を嫌っている。

そんな彼女と自分が友情を育む事など、最初から無理だったのかもしれない。

 

 

雪奈(私……これからどうすれば……)

 

 

今からでも咲夜を追うべきか。

 

 

だが、こんな状態のはるかを放っておく事も出来ない。

 

 

それに何より……今は咲夜に顔を合わせるのが怖い。

 

 

もしまた追い掛けて拒絶されたら……そう思うと臆病になってしまい、どうすればいいのか迷い瞳を伏せて俯いてしまう。その時……

 

 

 

 

 

はるか「………ゆ……きなさ……ん……?」

 

 

雪奈「……ッ?!は、はるかさん?!」

 

 

不意に目の前から声を掛けられ、雪奈はハッと正気に戻り慌てて目の前に視線を向けた。

其処には今まで気を失っていたはるかが重たい瞼を開き、苦しそうな顔で雪奈を見上げる姿があった。

 

 

雪奈「き、気が付いたんですねっ!具合は?!体調はどうですか?!」

 

 

はるか「ぁ……は、い……少しきつい……ですけど……なんとか……」

 

 

雪奈「そ、そうですか……良かったぁっ……」

 

 

ぎこちない笑みを浮かべるはるかを見て、肩に張っていた力を抜き安堵の溜め息を吐く雪奈。

はるかはそんな雪奈を見て「心配をお掛けしたみたいで……すみません……」と詫びると、そこで何かに気付き誰かを探すように辺りを見渡していく。

 

 

はるか「?……あの……お姉ちゃん……は……?」

 

 

雪奈「え?……あ……」

 

 

何故か咲夜の姿がない事に気付き、苦しげに顔を青ざめたまま雪奈に問い掛けるはるか。

それに対し雪奈は何と言えば良いのか分からず口を閉ざして顔を逸らしてしまい、それを見たはるかは訝しげに眉を寄せた。

 

 

はるか「雪奈さん?……ッ!まさか……お姉ちゃんっ……!うっ、ゲホッゲホッ!!」

 

 

雪奈「?!だ、ダメですよ起きちゃ!まだ安静にしてないと!」

 

 

咲夜の身に何かが起きたのだと感じ慌てて体を起こそうとするも、途中で激しく咳込み口を抑えるはるか。そんなはるかの背中を直ぐさま摩って落ち着かせようとする雪奈だが、はるかにその手を力無く掴まれた。

 

 

雪奈「!はるか…さん…?」

 

 

はるか「ゴホッゴホッ……雪奈さんっ、お願いです……お姉ちゃんを止めに行って下さいっ……!」

 

 

雪奈「え?」

 

 

何度か咳き込みながら雪奈の服をキュッと強く掴み、悲願する様な目でそう頼み込んできたはるかに思わず訝しげに聞き返す雪奈。

はるかはそれに対し気まずげに顔を俯かせ、重たい口を開いた。

 

 

はるか「お姉ちゃんは……私の事になると、すぐ周りが見えなくなって……一人で何時も突っ走ってしまうんですっ……その度にボロボロになって……自分の身より私なんかを案じてっ……」

 

 

雪奈「はるかさん……貴方……」

 

 

咲夜が何をしようとしてるのか分かってるのか、それとも今までも今回のような事があったから何かに感づいたのか、震える手でしっかりと雪奈の服を掴み言葉を紡ぐはるか。

 

 

はるか「嫌な予感がするんです……今度こそ本当に、お姉ちゃんが遠くに行ってしまいそうなっ……だからお願いしますっ……!姉を……姉を助けに行ってあげて下さいっ……!」

 

 

雪奈「……でも……私にはそんな資格……」

 

 

自分の正体。それを考えるとどうしても戸惑ってあと一歩を踏み出すことが出来ず、雪奈ははるかから視線を逸らしてしまう。

しかしはるかは顔をあげてそんな雪奈の顔を見上げ、雪奈の身体を力弱く揺らし首を左右に振った。

 

 

はるか「資格なんて、あるじゃないですか……こんな事を頼めっ…ゲホッゲホッ!!頼めるのは……親友の雪奈さんしかいないんですっ……!」

 

 

雪奈「……はるかさん……」

 

 

はるか「もう二度とっ、あんな痛みを味わいたくないんですっ……!家族を失う……痛みをっ……!」

 

 

雪奈「ッ!」

 

 

苦しげに咳をしながら必死に声を出して言い放ったはるかのその言葉に、雪奈は僅かに目を見開いた。

それと同時に、ある光景が雪奈の脳裏にフラッシュバックして蘇る……

 

 

 

 

 

―――血の臭いが充満する荒野……

 

 

辺りに無造作に転がる血だらけの死体……

 

 

その中心に血に濡れた刀を手に呆然と佇む自分……

 

 

そしてそんな自分が目を見開いて見つめる先には……無惨にも刀や槍を背中に突き刺されて血だまりに沈む、一人の男性の死体……

 

 

 

 

 

雪奈(……家族を失う……痛み……)

 

 

 

 

 

脳裏に蘇ったその光景を見た雪奈はうなだれるはるかの姿を見下ろし、心の中で静かにそう呟いた。

 

 

雪奈(……私は……)

 

 

雪奈は何かを考えるようにゆっくりと瞳を伏せると、うなだれるはるかの両肩を掴み、優しく身体を離していく。

 

 

はるか「っ……雪奈、さん……?」

 

 

雪奈に体を離されて不安げな声を漏らすはるか。

それに対し、雪奈は無言のままゆっくりとはるかの体を布団へと横たわらせ、優しげに微笑んだ。

 

 

雪奈「大丈夫です。咲夜は私に任せて下さい……彼女を助けるのは、親友の私の役目ですから」

 

 

はるか「……雪奈さん……」

 

 

優しく語る雪奈のその言葉を聞き、はるかは安心したように息を吐いてゆっくりと瞼を閉じていき、再び意識を手放していった。

雪奈はその様子を見て一瞬慌てるも、すぐに平静さを取り戻してはるかに布団を被せていき、はるかの前髪を掻き分けていく。

 

 

雪奈「……待ってて下さいはるかさん……貴方の望みは、必ず果たしてみせます……この刀に誓って……」

 

 

はるかの額に浮かぶ汗を手の甲で拭いながら力強くそう呟くと、雪奈は目付きを鋭くさせながら傍らの雪片を手にゆっくりと立ち上がるのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

そしてその一方で、はるかの予想が当たり咲夜は危機に瀕していた。それは……

 

 

「ふひひ、やっぱお前の見立てた通り、かなりの上玉だなぁ」

 

 

「だろ?だから言ったじゃねえか、絶対に損はしねぇってさ」

 

 

咲夜「っ……!」

 

 

周りには、卑下た顔をした見るからに品のなさそうな男達。

その中心には頭を押さえ付けられ、両手は後ろに回されて縄で縛られており、口には布を噛まされて言葉を放つ事が出来ない咲夜の姿があった。

そう……彼女は今、この男達に捕まり危機的な状況に陥ていたのである。

 

 

「しっかし、随分と無用心だなぁお嬢ちゃん?こんな夜更けにこんな所をうろついてたら危ないだろ?ま、今更言っても遅いだろうがなぁ」

 

 

咲夜(っ……クソォッ……)

 

 

恐らくコイツ等は村を出る前に医者が言っていた盗賊の一味だと思うが、それが分かったところで今の彼女にはどうしようもない。

なにせ両手を縛られてる上に叫ぶ事も出来ない以上、彼女が男達に反抗する術などないのだから。

 

 

咲夜(こんな事してる場合じゃないのにっ……こうしてる間にもはるかがっ……!)

 

 

「さぁて……このまま奴隷としてどっかに売り付けるのも有りだがぁ……」

 

 

咲夜(ッ!)

 

 

悔しげな表情を隠すように顔を伏せる咲夜のもとに、盗賊達の頭と思われる男が歩み寄ってくる。

咲夜は何も出来ない恐怖に耐えながら精一杯の抵抗と言わんばかりに男を睨み上げるが、男はそんな咲夜の気丈な態度に口笛を吹いてニヤリと笑い、腰に差していた小太刀を抜き取った。

 

 

「どうせだ。奴隷になって後々痛い思いするより……此処で俺等が慣れさせといてやるよ」

 

 

咲夜(……え?)

 

 

そう言われ、咲夜は一瞬何を言われたか分からずぽかんとなってしまう。

男はそんな咲夜の様子を他所にニヤニヤと笑いながら……小太刀で咲夜の着物を切り裂いた。

 

 

咲夜「ッッッッ?!!!!」

 

 

「あっ!コラッ!暴れんじゃねえっ!大人しくしてろっ!」

 

 

男のその行動で、自分が今から何をされるのか咄嗟に理解した咲夜は両目を見開きジタバタと身を捩って暴れ出した。

しかしその抵抗も長くは続かず、別の男に上から頭を押さえ付けられて身動きが取れなくなってしまう。

そしてその間にも男は手を止めず、ビリビリと咲夜の着物を引き裂き肌を露出させていく。

 

 

「ん~いいねぇ、きれいな白い肌だぁ」

 

 

咲夜「っっ!!!!!」

 

 

必死に耐えていた恐怖と共に、咲夜の眼からボロボロと涙が溢れ出た。

助けを求めようと涙で歪む視界で周りを見渡しても、恐怖と絶望と羞恥で震える自分を見てゲラゲラと笑う卑下た男達しかいない。

 

 

「大丈夫。嬢ちゃん他の女より綺麗な顔してっから、きっと良い飼い主が買ってくれるだろうさ」

 

 

咲夜「ッッ!!!!」

 

 

気分良く笑いながらそう告げた男の言葉に、咲夜は更に顔を青ざめた。

このままでは、コイツ等に好き勝手に弄ばれた挙げ句売り飛ばされてしまう。

そう考えただけで恐怖が増し必死に抵抗を続けようとするも、上から押さえ付けられてるせいで全く身体が動せない。

 

 

「心配なさんな、最初は痛いだろうがすぐに良くなるだろうよ……最後には良くなりすぎて快楽しか求められなくなるだろうがなぁ~」

 

 

そう言って男は今度は咲夜の足に手を伸ばしていく。咲夜も必死に抵抗して頭を左右に振っていた事で口に噛まされていた布が緩み、漸く口だけ解放された。

 

 

咲夜「うぁっ、止めろ!!離せ!!離せえぇっ!!」

 

 

「おーおーかわいいねえ、でもやめれないなぁ~」

 

 

ボロボロと泣きながら必死に叫び声を上げる咲夜だが、男はそんな咲夜の泣き顔を見て逆に気分を良くしてニヤニヤと笑い、咲夜の足を掴んで無理矢理開こうとする。

 

 

「さあてぇ……それじゃあいよいよ、ご開帳~!!」

 

 

咲夜「いやっ、だっ……!嫌だあぁ!!はるかあ!!雪奈ぁあああああああああああああああああああああああっっ!!!!!」

 

 

……結局……どんなに強くなっても、所詮自分は女でしかない……

男に押さえつけられてろくに抵抗も出来ず、ただ助けを求めて叫ぶしか出来ない。

ボロボロと大粒の涙を零しながら泣き叫ぶ咲夜を男達はただ可笑しそうに笑い、必死に力を込めて閉ざしていた足も遂に開かれようとした。その時……

 

 

 

 

 

 

 

 

―ブシャアァッ!!―

 

 

『……はっ?』

 

 

咲夜「……え……?」

 

 

 

 

突然男達の背後から、何かを斬り捨てるような生々しい音が響いた。

それを聞いた男達は表情が固まり、正気に戻ると共に慌てて背後へと振り返った。其処には……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪奈「………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咲夜「っ?!ゆき……なっ……?」

 

 

其処には、頭上に輝く黄金の満月を背に静かに佇み、白い髪と肌に赤い血を塗り付けて太刀を握る少女……雪奈の姿があったのだった。

その足元には盗賊の仲間である男達の死体が転がっており、恐らく髪や肌に浴びいてる血はその男達のものなのだろう。

 

 

「な、何だお前っ?!いきなり何しやがんだっ?!」

 

 

雪奈「…………」

 

 

仲間の死体を見て戸惑いと怒りの感情を浮かべる盗賊達だが、雪奈は血を被った前髪で顔を隠したまま何も答えようとはせず、刃に血を浴びた雪片を片手に幽霊のようにユラリと歩き出し、男達へと近づいていく。

 

 

「て、てめぇっ……こんな事して、ただで帰られると思うなよ?!お前ら!やっちまえっ!!」

 

 

何も語ろうとしない雪奈の態度に憤怒し、頭は部下達に命令を投げ掛け雪奈へと放っていった。

そして部下達はあっという間に雪奈の周囲を囲んでいき、雪奈はゆっくりと足をとめて立ち止まると、雪片を僅かに上に上げて構えを取った。

 

 

「ダアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 

「ウオラアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 

それと同時に、目の前から二人の男が刀を振りかざし雪奈へと斬り掛かってきた。

それに対し雪奈はユラリと顔を上げると、前髪の奥に隠れた赤い眼が"青い眼"に一瞬で変わり、そして……

 

 

 

 

 

 

雪奈「……ふふっ……」

 

 

―……キュッ……―

 

 

『……へ?』

 

 

 

 

 

 

雪奈は幽霊のような動きで二人の男の間をユラリと抜け、すれ違い様に二人の首に浮かぶ"線"を雪片でなぞるように振るった。

ただそれだけ……それだけの動作をしただけで……

 

 

 

 

 

 

―ゴバアァァッ!!!―

 

 

『ッ?!なっ?!!』

 

 

 

 

 

 

……すれ違った男達の首が、赤い線を描いて夜空へと飛んだ。

 

 

その直後男達の首があった部分から噴水のように血が噴き出し、雪奈の上に降り注いで全身を赤く染め上げていく。

 

 

雪のように綺麗で白かった髪と肌は赤く染まり……

 

 

美しかった雪片の刃は血を伝らせて地面に赤い水滴を落としていき……

 

 

青い異形の眼は、赤い雨の向こうから盗賊達を捉えて逃さない……

 

 

その明らかに人間離れした雰囲気に、盗賊達は背筋にゾワッと寒気を感じ思わず後退りした。

 

 

「なん、だっ……何なんだお前はっ?!!」

 

 

頭は口を開かずにはいられなかった。

 

 

何かを語らなければ、この身体を支配する恐怖に押し潰されそうになるから。

 

 

しかし雪奈は先程と同じでその問いに答えようとはせず、血で染まった赤い前髪を掻き上げ、そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

雪奈「さあ……殺し合いましょう……この黄金の月の下で……」

 

 

 

 

 

 

 

 

死を直視する魔眼で男達を捉え、謡うようにそう告げたのだった……

 

 

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