仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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番外編/過ぎ去りし思い出⑩

 

 

それから数十分後。盗賊達と戦った場所を離れた二人は先程咲夜が見付けた岩山に再び訪れ、薬草があると思われる洞窟に向けて険しい道を登っていた。しかし辺りが暗い事もあって視界は余り良好ではなく、二人は暗闇の中、足場を探りながら壁を伝い先へと進んでいた。

 

 

咲夜「ぐぅ……雪奈、其処は少し滑りやすいから気をつけろよ!」

 

 

雪奈「は、はいっ……」

 

 

道端も思ったより幅が狭く、一歩間違えて足を踏み外したりでもすれば転落すること間違いない。そうなれば先ず命はないと、咲夜と雪奈は緊張で額から汗を流しながら足場に注意して道を進んでいく。そして……

 

 

咲夜「ハァ…ハァ…やっと着いたかっ……」

 

 

雪奈「ゼエッ、ゼエッ……此処が例の洞窟、ですか……?」

 

 

険しい岩山を時間を掛けて上り詰め、漸く目的の洞窟の前にまで辿り着いた咲夜と雪奈。外からでは洞窟の中の様子は全く分からないが、奥の方から微かに風の吹く音が聞こえてくるのが分かる。

 

 

咲夜「一応奥の方まで進めそうだな……よし、行くか」

 

 

雪奈「あ、待ってください咲夜。先行は私が行きます。危険がないとも限りませんから」

 

 

咲夜「ん……そうだな……悪い、頼む」

 

 

暗闇に包まれた洞窟の奥に何があるかは分からない。もしかしたら途中で障害物や岩が落ちてきたり、考え難いが何処かの動物が寝所に使って潜んでる可能性もあるかもしれない。それを考えた雪奈は辺りを警戒しながら先行して暗闇の洞窟に入っていき、咲夜もその後を追う形で雪奈の後ろを付いていった。

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

―洞窟内―

 

 

暗闇に包まれる広い洞窟内。壁や天井からは大小様々な岩が突き出ており、足場は此処に来るまでと同じでゴツゴツとしてるため、気をつけて進まなければ転んでしまいそうになる。雪奈はそんな洞窟内を見渡しながらゆっくりと先に進んでいき、咲夜も足元に注意しながら雪奈から離れ過ぎないように奥へと進んでいく。その時……

 

 

雪奈「―――?あれは……咲夜、あれ!」

 

 

咲夜「え……?」

 

 

先を進んでいた雪奈が何かを見付け、咲夜に呼び掛けながら洞窟の奥を指差した。咲夜が雪奈の背中から顔を出して雪奈が指差す方を見つめると、暗闇に包まれる洞窟の奥に何かがあるのが微かに見える。良く目を凝らして洞窟の奥を見てみれば、其処には岩だらけの洞窟には不自然に浮いてる大量の雑草……いや、二人の目的の薬草と思われる薬があったのだ。

 

 

咲夜「っ!もしかして……アレが例の薬草か?」

 

 

雪奈「ちょっと待ってください……」

 

 

洞窟の奥に生えている草を見つけ、もっと近くで良く確かめようと咲夜が一歩前に踏み出すが、雪奈が片手でそれを制して先に草が生えている場所へと近づいていき、地面に片膝を付いて何かを確かめるように草に触れていく。

 

 

雪奈「……間違いないようですね。咲夜、多分これが御医者様が言っていた薬草だと思います」

 

 

咲夜「本当か?だが、お前見ただけで分かるのか?」

 

 

雪奈「まあ、これでも一応は元武将でしたからね……戦場で負傷した時などは、こういった薬草等を自分で採取して怪我の治療に利用したりとかしていたので、薬草を見分けるぐらいなら出来るんです」

 

 

咲夜「そうなのか……私はそういう事が出来ないから違いは分からないな……助かったよ雪奈、やはりお前が居て良かった」

 

 

雪奈「ハハッ、私もこんなところで戦場で身につけた能力が役立つとは思いもしませんでした……とにかく、コレを早く御医者様に届けましょう。急がないと手遅れになります」

 

 

雪奈は真剣な表情になりながら薬草を手に取って咲夜に呼び掛け、咲夜もそれに頷き返しながら雪奈の隣に駆け寄って腰を屈め、薬草を一本一本、出来るだけ草を傷付けないように優しく抜き取っていく。その最中……

 

 

咲夜「―――雪奈……その……本当に、ありがとうな……」

 

 

雪奈「……え?」

 

 

薬草を採る作業の中、突然咲夜がポツリと雪奈に礼の言葉を口にしたのである。それを聞いた雪奈は思わず手を止めて咲夜に顔を向け、咲夜はそんな雪奈に振り返らないまま薬草を採りながら言葉を続けた。

 

 

咲夜「正直、私ひとりじゃ此処まで辿り着く事なんて出来なかった……さっきもお前の助けがなかったら、一体どうなっていたか……私にも想像が付かない」

 

 

雪奈「…………」

 

 

咲夜「普段は何処か抜けていて、ちょっと目を離せば物を壊したり何もない所で転んだりと……困った部分も色々あるが、それも多分お前自身の良いところでもあるのだろうな。それに、さっき盗賊達と戦っていたお前……最初見た時は少し戸惑いはしたが、一瞬月を背に刀を振るうお前の姿が余りにも綺麗に見えて……正直女の私も見惚れるぐらいのものだった」

 

 

雪奈「そ、そんな……そんな大したものじゃありませんよ……こんなのはただの、人を殺めることしか出来ない力です……」

 

 

今まで戦に勝つ為、そして自分以外の他者を殺すだけ為に刀を振るってきた為に、感慨深い表情でそう告げた咲夜の言葉に戸惑いを浮かべる雪奈。咲夜はそんな雪奈の顔を見て苦笑すると、何かを思い付いたような表情で雪奈に声を掛けた。

 

 

咲夜「なあ雪奈。はるかの体調が今より良くなったら、私達の村で剣術の師範とかやってみないか?」

 

 

雪奈「……は?し、師範?」

 

 

咲夜「村の子供達を集めて、剣の稽古を仕込んでやるんだ。お前は剣の腕が良いから、きっとみんなのいい手本になれると思うぞ?」

 

 

雪奈「そ、そんなっ、私には無理ですよ!人に何かを教えるだなんて……こんな私に……」

 

 

咲夜「そんなの分からないだろう?それにお前の剣は、人を殺める以外にも使い道があると思う。さっきのようにな」

 

 

雪奈「……へ?」

 

 

微笑する咲夜のその言葉に雪奈は思わず間抜けな声を上げながら聞き返し、咲夜は暗い天井を見上げて先程の出来事を思い返していく。

 

 

咲夜「さっきのお前の戦い……アレはただ人を殺す為にではなく、私を守ろうとして刀を振るったのだろ?誰かを守る為に力を振るうことと、人を殺めるだけに力を振るうことはまったく違う……お前は自分を人を殺す事しか出来ない人間だと考えてるみたいだが、私はそうは思わない。お前は弱い人間を守るためなら、理不尽な暴力に立ち向かえる優しい奴だ。そんなお前なら、きっと子供達に沢山大切な事を教えてくれると思う……私はそう思ってるぞ?」

 

 

雪奈「……買い被り過ぎですよ、咲夜……私はそんな―グイィッ!―ひゅごぉっ?!」

 

 

暗い影を落としながら咲夜の言葉を否定しようとした雪奈だが、それを言い切る前に咲夜がムッとした顔で突然雪奈の両頬をつまんで引っ張っていった。

 

 

咲夜「まったく……お前は自分を自虐し過ぎだ。その癖、少しは治した方がいい」

 

 

雪奈「い、いぃぃぃいひゃあいっ!!いひゃあいれすよひゃくやぁっ!!」

 

 

咲夜「やかましいっ!私がそう思ってると言ってるのだから、お前も素直に褒め言葉として受け取っておけばいいのだっ!」

 

 

雪奈「ふぁ、ふぁいぃぃっ……!」

 

 

ムスッとした表情の咲夜の勢いと両頬を引っ張られる痛みからコクコクと何度も頷く雪奈だが、首を振る度に頬が更に痛み若干涙目になっていた。咲夜もそんな雪奈に呆れるように溜め息を吐きながら雪奈の頬から手を離すと、雪奈はジンジン痛む両頬を抑えながら唸り声を上げていく。

 

 

雪奈「うぅ~……いきなり酷いじゃないですか咲夜ぁ……」

 

 

咲夜「お前が何時までもウジウジしてるからだ。親友の言葉ぐらい素直に聞き入れろ、馬鹿者が」

 

 

雪奈「うっー……」

 

 

そっぽを向いて不機嫌そうに告げる咲夜。雪奈は両頬を摩りながらそんな咲夜を涙目で見つめると、溜め息を吐いた後にポツリと口を開いた。

 

 

雪奈「でも……仮に貴方の言う通り剣の師範をする事にしても、私は余り気乗りはしません……人を殺す術を、子供に教えるだなんて……」

 

 

咲夜「はっ?……はぁ……お前な、誰がそんなことを子供達に教えろと言った?」

 

 

雪奈「えっ?いや、だって……」

 

 

咲夜「まったく……いいか?私がお前に子供達に教えてやって欲しいのは、大切なものを奪う術なんかじゃない。大切なものを、守る術だ」

 

 

雪奈「?大切な……ものを?」

 

 

疑問げに問い掛ける雪奈に小さく頷き返すと、咲夜は集めた薬草を傍らに置いてパンパンと汚れた手を払いながら話の続きを語り出した。

 

 

咲夜「今の乱世、親を失い独りになってしまう子供は沢山いる……だから出来る限り、自分の力で、自分の家族を守れる術を今の内に教えてやって欲しいんだ。そうすれば……私達やお前のように、親を失う子供が少しは少なくなるかもしれないしな」

 

 

雪奈「……あ……」

 

 

彼女が何を言いたいのか、漸く分かった。

 

 

彼女は昔、両親が目の前で殺された時に何も出来ず、ただはるかと共に事の成り行きを黙って見ているしか出来なかった。

 

 

その事を経験して咲夜は何も出来ない無力感を知っているからこそ、今の子供達に自分と同じような感情を抱かせたくないのだろう。

 

 

同時に……人を斬る事しか知らなかったこんな自分でも、子供達が大切なモノを守れるように導くことが出来るのだと教えるために。

 

 

それに気付いた雪奈は呆然と咲夜の顔を見た後、土で汚れた自分の手の平を見つめ、ギュッと強く握り拳を作っていく。

 

 

雪奈「――でき……ますかね……こんな私でも……」

 

 

自信なさげだが、何処か僅かな意欲を感じさせる声で呟く雪奈。すると、そんな雪奈の拳の上に横から咲夜の手が重なり、それを見た雪奈は顔を上げて微笑する咲夜の顔を見た。

 

 

咲夜「そんな心配するな。お前ならきっとできる、私が保証してやる♪だから、もっと自分に自信を持て。な?」

 

 

雪奈「……はいっ」

 

 

……一つ、咲夜のおかげで武将以外の道が開けた気がする。

 

 

今まで何かを奪うしか出来なかった自分でも、誰かに大切な事を教え、与えられる人間になれるのだと。

 

 

そう思いながら雪奈は何処か救われたような笑みを浮かべ、咲夜もそんな雪奈の顔に満足げに頷いて薬草の束を手にし、ゆっくりと立ち上がった。

 

 

咲夜「さて、お喋りは此処までだ。薬草も手に入ったし、急いで村に戻ってこれを届けよう」

 

 

雪奈「そうですね……急ぎましょう!」

 

 

これだけの量さえあれば、きっと薬を作る事が出来るはず。咲夜と雪奈は自分達が採った薬草を手に互いに頷き合うと、急いで村へと戻るべく入り口に向かって走り出そうとした。その時……

 

 

 

 

 

―シュンッ……ガギイィンッ!!―

 

 

咲夜「――ッ?!なっ?!」

 

 

雪奈「ッ!」

 

 

 

 

 

二人が入り口に向かおうとしたその時、突然暗闇の向こうから何かが飛来し咲夜の足元に突き刺さったのであった。それを見た咲夜が驚愕して思わず後退ると、雪奈は咲夜の足元に突き刺さる何か……柄の部分に血がこびりついた短刀を見てすぐさま咲夜の前に立ち、腰に差した雪片の柄に手を添えながら暗闇の向こうを睨みつけた。すると其処には……

 

 

 

 

 

「――へ……へへ……見付けたぜぇ……女共ォッ……」

 

 

 

 

 

下品な笑い声と共に暗闇の向こうからゆっくりと姿を現したのは、左目の部分から頭に掛けて夥しい血が付いた包帯を何重にも巻き、右腕がない右肩に布を巻き付けた人物……先程雪奈に倒された筈の盗賊の頭だったのである。

 

 

咲夜「お前っ、さっきのっ?!」

 

 

雪奈「……何の用ですか?そんな姿でこんな場所にまで、まだ何かご用でも?」

 

 

「ヘヘヘッ……決まってんだろォ?うちの部下たちを皆殺しにして、俺をこんな姿にしやがったテメェ等に報復しにきたのよォ!」

 

 

雪奈「……どうやら頭まで低俗のようですね……わざわざ見逃してあげたというのに、そんな姿で報復など……まだ分からないのですか?どうやったところで、貴方一人程度では私を殺す事など出来ないと」

 

 

そう、彼女は先程あの数の盗賊達をたった一人、無傷で倒した実力者なのだ。

 

 

そんな彼女の実力ならば、右腕と左腕を失い負傷した盗賊に負けることなど先ずない。

 

 

しかし……

 

 

「へ……ヘヘヘッ……確かに、俺じゃお前に勝つ事は出来ねぇだろうなぁ……」

 

 

雪奈(……?何だ、コイツのこの余裕……)

 

 

雪奈に勝てないと分かっていながら、何故か余裕の笑みを崩さないまま腰に差した刀を徐に抜いていく頭。そんな頭から何か怪しげな雰囲気を感じ取った雪奈は眉間に皺を寄せ、雪片に手を添えたまま自分が採った分の薬草を背後にいる咲夜に押し当てた。

 

 

咲夜(?雪奈……?)

 

 

雪奈(咲夜、私が先に飛び出して奴の動きを封じます。その後、貴方は先に入り口に向かって走って下さい)

 

 

咲夜(ッ!お前はどうする気だ……?)

 

 

雪奈(大丈夫です……奴を抑えたら、私もすぐに後を追いますから。だから貴方は早く、薬草を御医者様に届けて下さい……)

 

 

咲夜(っ……分かった……だが気をつけろよ?)

 

 

雪奈(はい……では、私が合図したら入り口まで一気に走ってください……いち……にい……)

 

 

ジリッと、足を僅かに開き頭を睨みつけながら腰を屈めていく雪奈。それを見た咲夜も雪奈から受け取った薬草を握る手に力を込めていき、そして……

 

 

雪奈「――さんッッ!!!」

 

 

―バッ!!!―

 

 

洞窟内に怒号が響き渡ったと同時に、雪奈が先に頭に向かって勢い良く飛び出しながら鞘から雪片を抜き、その後を追うように咲夜が駆け出した。それを見た頭は咄嗟に刀を大振りで振りかざし突っ込んできた雪奈に振り下ろすが、雪奈は横に身を反らして刃を避けながら頭の刀を雪片で払い飛ばし、そして……

 

 

―ドシュウゥッ!!―

 

 

「ウゴォッ?!」

 

 

雪片で突きを放って頭の肩を貫き、そのまま頭を地面に押し倒していったのだ。咲夜はそれを横目に二人の横を通りすぎて入り口へと一直線に走っていき、それを確認した雪奈は頭を見下ろしながら口を開いた。

 

 

雪奈「此処までです。先程は見逃しましたが、このまま貴方を生かせば咲夜にまで危害が及ぶ可能性がある……トドメを刺させて頂きます」

 

 

そう言って雪奈は目付きを鋭くさせ、雪片の刃を頭の肩に突き刺したまま左胸に向けて動かしていく。頭も刃が動かされる度に悲痛な声を上げて苦しむが、その顔からは未だ笑みが消えていない。

 

 

雪奈「…何がそんなに可笑しいのです?」

 

 

「ク、クククッ……なぁ、さっきから変に思わないのか?どうして俺が、勝ち目もないのにたった一人でお前達の前に現れたのか……」

 

 

雪奈「?何を……ん……?」

 

 

意味深な発言をする頭に訝しげな表情で問い返そうとする雪奈だが、其処で何かある『臭い』が漂ってる事に気付き鼻を嗅いでいく。以前まで戦場にいた自分にとって毎日のように嗅いでいた臭い……それが何なのか直ぐさま理解した雪奈はハッとなり、頭の鎧を剥ぎ取ってその下に巻いてあるものを見た。それは……

 

 

雪奈「なっ、火薬っ?!」

 

 

頭の腹や胸などに幾つも巻かれてあったのは包み……かつて自分の居た織田軍が使っていた火繩銃に使われる大量の黒色火薬を包装した火薬包みだったのだ。更にその全てには導火線が伸びて火が付いており、頭は驚愕する雪奈を見て愉快げに笑い出した。

 

 

「ハハハハハハッ!!なあ知ってっかっ?!火薬ってのわぁ、直接火を付けるとものすげえ威力で辺り一帯をぶっ飛ばすんだぜ?これだけの火薬を一度にぶっ放せば、お前等もただじゃあ済まねェだろォ?!!」

 

 

雪奈「ッ?!!」

 

 

完全に正気を失い狂った眼でそう叫んだ頭のその言葉に、雪奈の脳裏に一瞬信長の家臣だった頃の記憶が過ぎった。

 

 

確か以前、火繩銃に使われる黒色火薬の運搬の任に当たって夜営をしてた際に、数人の兵士の不注意で火薬の一部に火が引火して爆発が発生するという事故が起きた事があった。

 

 

任の最中にそんな大事故が起きたことを知られて家の名に泥を付くことを恐れ、信長にはその時の事を黙っていたが、あの時目にした破壊的な威力は今でもこの目に焼き付いている。

 

 

それが今此処で起きようとしていると知った雪奈は慌てて咲夜が走り去った方角を見ると、咲夜はまだ入り口までに辿り着いていない。

 

 

もう一度火薬包みを見れば、導火線の火は既に火薬へと到達しようとしており、咲夜が洞窟を脱出するまでの時間は残されていない。

 

 

雪奈「クッ!!」

 

 

この男は最初から、自分達を巻き添えにして死のうとしていたらしい。

 

 

このままでは、咲夜もその巻き添えで爆発に巻き込まれてしまう。

 

 

瞬時にそう理解した雪奈は雪片の切っ先を突き刺したまま狂ったように笑う頭の胸倉を乱暴に掴んで強引に立ち上がらせ、そのまま頭と共に洞窟の奥へと全力で駆け出し、そして……

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

咲夜「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ……!」

 

 

そしてその頃、雪奈に頭を押さえる役を任せた咲夜は薬草を片手に全力で洞窟内を駆け、入り口に向かって一直線に走っていた。

 

 

咲夜「待ってろはるかっ……もうちょっとの辛抱だからっ……!」

 

 

もうすぐ薬草を届けられる。これを届けた後ははるかに調合してもらった薬を飲ませ、その後は雪奈を迎え一緒にはるかが目覚めるのを待とうと。咲夜は薬草を握る手に力を込めながらそう誓っていた。その時……

 

 

 

 

 

―……チュドオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオンッッッ……!!!!!!―

 

 

咲夜「ッ?!な、うわぁッ?!」

 

 

 

 

 

突如洞窟の奥の方から何かの轟音が響き渡り、それと同時に洞窟内に激しい揺れが発生したのである。突然襲い掛かった揺れに咲夜も驚愕しながらバランスを崩してその場に両膝を付いてしまうが、揺れは次第に小さくなって徐々に治まっていき、漸く完全に沈静して治まっていったのだった。

 

 

咲夜「うぐっ……いっつぅ……な、なんだ今の?一体何が起きたんだっ……?」

 

 

揺れが完全に治まったのを確認すると、咲夜は壁に手を付けながら立ち上がって両膝に付いた汚れを払っていき、一体なにが起きたのかと疑問符を浮かべながら辺りを見渡して背後に振り返り、そして……

 

 

咲夜「………………………………………え………?」

 

 

背後へと振り返った瞬間、咲夜の表情が突然凍り付き固まってしまった。

 

 

咲夜が見つめる先には此処に来るまで走ってきた道。

 

 

その道の奥には、自分を逃がす為に頭を取り押さえる雪奈の姿があったはずなのだ。しかし……

 

 

 

 

 

 

 

 

―ゴゴゴゴゴゴォッ……―

 

 

 

 

 

 

 

 

……暗闇に包まれる洞窟の奥に居たはずの雪奈の姿がなく、其処には腹の底まで響くほどの重たい地響きと共に天井からガラガラと音を立てて大小様々な岩石が落下し、黒煙がこちらへと徐々に広がりつつある異常な光景があったのであった……

 

 

咲夜「……ゆき、な……?……ぁ……雪奈ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーッッ!!!!!!!」

 

 

一体何がどうなったのか、何が起きたのか全く分からない……

 

 

しかし、雪奈の身に何かが起きた事だけはすぐに理解でき、咲夜は悲痛な叫び声を上げながら黒煙が流れてくる洞窟の奥へと駆け出していったのだった……

 

 

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