仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第二十章/シリウスの世界⑦

 

 

深夜、大輝が引き起こした騒動が落ち着いてから一同はそれぞれ自由な時間を過ごし、今はもうなのは達も組の人間も眠りに付き静かな夜が訪れていた。そんな中、トイレから戻ってきた零は部屋に戻ろうと縁側を歩く中、空から光を射す月に気付いて夜空を見上げた。

 

 

零「ふむ。しかし、こんな静かな夜というのも久々な気がするなぁ……」

 

 

最近では旅に同行する人間が増えてか、夜中にガールズトークする女性陣の笑い声などが自室にも聞こえてきたりする事がたまにある。別にそのせいで眠れないといったことはないが、やはり自分的にはこういった静かな夜の方が好ましい。そう思いながら暫く月を見上げ、部屋に戻ろうと目の前に視線を戻すと……

 

 

零「……ん?神威?」

 

 

視線を向けた先に、神威が自分の部屋の前の縁側で月を見ながら酒を飲む姿を見付けた。それを見た零が足を動かそうとしたのを思わず止めると、向こうも零に気付いたのか、ゆっくりとこちらに目を向けてきた。

 

 

神威「よう、寝れないのか?」

 

 

零「……トイレに行ってただけだ。戻ろうと思ったらお前が見えた」

 

 

目を伏せながらそう答えると、零は一度神威の部屋に目を向けてノーヴェ(別)の気配を感じ取り、彼女を起こさぬよう静かに神威の横に座ると、神威がお猪口を差し出してきた。

 

 

神威「飲むか?」

 

 

零「おう」

 

 

短く返事を返して神威の手からお猪口を受け取ると、神威に酒を注いでもらい口に含んだ。

 

 

零「……そういえば、一つ聞きたいことがある」

 

 

神威「ん?」

 

 

零「何でヤクザをやってるんだ?お前なら他にいろいろできるだろう?」

 

 

神威「あ~」

 

 

正直神威ほどの人間なら、ヤクザ以外にも彼に合った道が色々とあったのでないかと思う。その意味を込めて問い掛けると神威は答え難そうな声を漏らし、零はそれを見てお猪口を手の中で弄んでいく。

 

 

零「まぁ、別に無理に答えなくても「まあ簡単に言えば……」ん?」

 

 

神威「組長(おやじ)に憧れたからだ」

 

 

神威は零の言葉を遮って答えた。

 

 

零「おやじって……お前の父親か?」

 

 

神威「いや、血は繋がっちゃいないし養子になったわけでもない。俺がこの世界に来る前にいた『清水組』ってヤクザの組長だ。俺たち組員は親愛の意味をこめて『おやじ』って呼んでる」

 

 

そう言うと神威はお猪口の酒を飲み干し、月を見上げながら懐かしげに目を細めた。

 

 

神威「昔は俺もどうしようもない悪ガキでな……目に付くもんを全部傷つける日々が続いた。ずっと1人でそこらの不良やらなんやらに喧嘩売ってた」

 

 

零「両親はいなかったのか?」

 

 

神威「お袋は俺がガキのときに死んだ。血縁上の父親に当たる男は今何をしてるかは知らん。そんで、俺が1人でバカやってたときに組長(おやじ)に拾われた。そっからは俺の人生一変してな。俺も組長(おやじ)たちを信用するようになってた。んでな、俺が組長(おやじ)にお前と同じことを聞いたんだ。なんでヤクザの組長なんてやってんだ?ってな。そしたら組長(おやじ)はこう言ってたんだ」

 

 

 

 

『―――神威。世の中にはな、器用に生きられる奴ばっかりじゃねぇのさ。社会に出て、会社入って、下げたくねぇ頭下げて、他の奴に媚びる。無論それは悪いことじゃねぇ。それも生きる中では大切なことだ。けどな、それができねぇバカ共もいるんだ。自分に嘘がつけねぇ、自分を偽ることができずにただ自分の思ったとおりに生きようとする不器用なバカがな。そして世の中ってのはそんな奴らを受け入れられるほど優しくねぇ。規律を重んじる組織の中じゃ自分の感情で動く奴は邪魔なのさ。

でもな、ワシはそんなバカ共が大好きだ。自分を偽らずに不器用に、真っ直ぐに生きようとする連中を、社会から零れ落ちた連中を拾ってやりてぇんだよ』

 

 

 

 

神威「そう、言ってた……だから俺も組長(おやじ)と同じ事がしたいんだ。実際、この組の連中も管理局から切られ、零れ落ちた奴らばっかりだからな」

 

 

零「……そう、か……」

 

 

月を見上げて組長(おやじ)のことを語る神威の表情は、何処か憧れのそれに近いものが秘められてると感じ取り、零は目を細めながら静かに微笑んだ。そんな時……

 

 

「んん~、神威~?」

 

 

神威の部屋から襖越しにノーヴェ(別)の声が聞こえ、神威は背中越しにその声を聞いてハッと振り返った。

 

 

神威「あ、気付かれたか」

 

 

零「?どういうことだ?」

 

 

神威「ノーヴェは俺がいなくなってしばらくすると、寝ながら俺のこと探すんだよ」

 

 

零「ほう……器用な真似が出来るもんだ。それも愛故にって奴か?」

 

 

神威「まあな」

 

 

零の冗談に恥ずかげもなく笑って答えると、神威は自分のお猪口を置いて立ち上がった。

 

 

神威「じゃあ俺はもう寝るわ。お前も早く寝ろよ?」

 

 

零「ああ。俺なんか気にしないで早く行ってやれ、じゃないとノーヴェが起きるぞ」

 

 

お猪口を軽く振って見せると神威は笑みを浮かべながら手を上げ、そのまま襖を開けて自分の部屋に戻っていった。

 

 

零「やれやれ……アイツ等みたいなのは他の世界でも見てきたが、やっぱり俺には分からんなぁ」

 

 

俺も誰かを好きになれば分かるのかね?と自嘲気味に笑うと、神威が置いていった酒をお猪口に注いでいく。

 

 

零「……まぁ。その愛っていうのがなんなのか、まだイマイチ分からないところもあるんだが……」

 

 

まだ自分が誰にも心を開いていなかった頃、高町家の皆が自分に家族同然に接してくれている事は分かったし、温かさのようなものは感じ取れた。だが、それが一体なんなのか、自分にはサッパリ分からなかった。

 

 

零「愛情、か……どうして俺にはそれが分からないんだろうな……」

 

 

記憶の失う前のことなんて全く思い出せないが、自分も誰かに身篭られてこの世に生を受けたはずなのだ。ならば、一度ぐらいはその愛をこの身に……

 

 

 

 

 

 

 

 

『――どうして?何故私が望む形で生まれてきてくれなかったの……?何故そんな力を持って生まれてきたの……?』

 

 

『貴方なんて……産まなければ良かったっ……!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「――ハッ……何を馬鹿なことほざいてるんだろうな、俺は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなはずがないと知っていたではないか……と、零は馬鹿な想像を思い浮かべようとした自分を鼻で笑いながら軽蔑した。親の愛情なんて知らないし、そもそも愛情を注ぐ子供にあんなことを言う親なんている筈がないだろうに。お猪口に注いだ酒の水面に映る自分の顔を見つめながらそう考えると、不意に、何時かの時と同じノイズが頭の中を横切った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

―ザザザザザッ……ザザザザザザザッ……!!―

 

 

『おい、聞いたか?あのガキの噂……』

 

 

『聞いたよ、任務先の世界の人間全員を丸々殺戮したって話だろ?信じらんねえよ……』

 

 

『汚れ役を引き受けてるとは言え、六歳のくせに顔色一つ変えずに人を殺せるとか、どーゆう神経してんのかねえ……』

 

 

『この前の任務から帰ってきた時も、あの子、全身血で染まって帰ってきたって話でしょ……?』

 

 

『しかも、ターゲットの男とその部下の首を持ってたんだって。あの子が通った後の廊下とか、血で真っ赤になってて……』

 

 

『気持ち悪いっ……本物の化け物じゃないっ……』

 

 

『ただでさえ、こっちはいつ暴走するかも分からない因子にビクビクしながら過ごしてるっていうのに……まったく、アレの親もどうしてあんな化け物を産んだかね?いっそ降ろした方が世の中の為になっただろうに』

 

 

『馬ー鹿、あのガキの中には破壊の因子なんてもんがあんだぞ?下手に殺しでもしたら、この世界も俺達も巻き添え喰らってくたばっちまうだろ』

 

 

『生きてても迷惑、死んでも迷惑……ほんと、あんな迷惑極まりない化け物なんて他にはいないだろうねぇ……』

 

 

『その為にアイツの因子の研究を進めてるんだろう?詳細さえ分かれば、どんな処分方法なら巻き添えにならずに済むか次第に分かるだろうさ。――――様も、利用価値がなくなればアレを処分する予定らしいし』

 

 

『ハハハハハハ!ソイツはいい!もし処刑台に立つ時がきたら、死に際にはこう言い残して欲しいなぁ……『生まれてきてごめんなさぁ~~いぃ、ゴミなのにぃ~~』ってよぉ!』

 

 

『ブッハハハハハハッ!!そりゃ笑える!ついでに酒とつまみもありゃ最高の見世物じゃね?ダッハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

零「…………っ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

脳裏に何度も響く、幾つもの耳障りな笑い声。それのせいか呼吸も浅くなって息苦しく、お猪口を持つ手にも思わず力が入りお猪口にヒビが入った。ビシィッという亀裂が走る音がその場に響き、零はその音で我に返ると、何かを払うように頭を振って何度か深呼吸を繰り返した。

 

 

零「はぁっ……はぁっ……クソッ、なんなんだ一体……この間からっ……」

 

 

前回と同様に断片的に蘇る記憶。片手で頭を鷲づかみながら浅い呼吸を繰り返すと、零はお猪口の酒を口の中に流し込んで深い溜め息を漏らし、目を細めながら記憶の中のある言葉を口にした。

 

 

零「っ……生まれてきて、ごめんなさい……か……」

 

 

「?何がですか?」

 

 

零「……は?」

 

 

苦々しげに呟いた零の言葉に対し、不意に横から疑問の問いが投げ掛けられた。突然のそれに零も一瞬唖然となりながらも、その声が聞こえてきた方へと視線を向けていく。其処には……

 

 

零「……キャロ?」

 

 

キャロ「あ、はい。こんばんは、零さん」

 

 

其処には、パジャマの下にストールを羽織った少女……別の部屋でフェイト等と一緒に寝ている筈のキャロがこちらを見つめて立っていたのだった。

 

 

 

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