仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
番外編/聖夜の後に
―光写真館―
――クリスマス・イヴ当日の夜。外で深々と白い雪が降り注ぐ中、今年もやって来た聖夜を祝おうと写真館でもクリスマスパーティーという名のどんちゃん騒ぎが開催され、パーティーは大いに盛り上がった。
昼間にディードとオットーとセッテの台所組が完成させた豪勢な料理をスバルやエリオを始めとした大食い組が食べ尽くし、この日のために密かに特訓していたウェンディやセインがアズサを交えて行った芸で笑いを取ったり、パーティー中にフェイトとはやてが間違えて酒を飲んでしまった為に酔っ払い、稟の世界での悲惨な記憶を思い出した零が一目散に逃げ出そうとしてまんまと捕まり再び地獄を見る羽目になったりと、それぞれの記憶に残る賑やかなパーティーとなった。
――そして楽しいクリスマスパーティーがお開きになり、メンバーも騒ぎ疲れてそれぞれの自室でぐっすり眠りに付いた頃……
姫「――よし、では始めるか!」
零「……何をだよ……」
―――大きな白い袋を二つ傍らに、何故か赤い手袋と赤い帽子を被ったサンタの格好に変身した姫に眠たげに目を細めながら不機嫌そうに突っ込む零の姿があったのだった。
『聖夜の後に』
零「――つまり……あれか……お前がサンタクロースになって、日頃世話になっている皆へクリスマスプレゼントを贈ると……?」
姫「うむ、所謂サプライズ企画という奴だ」
取りあえずいきなり過ぎて状況が飲み込めなかった為に姫から説明を受け、漸く姫が何をしようとしているか理解して納得するように頷く零に得意げに胸を張る姫。だが……
零「ああ、まぁ……東洋の神様がサンタの格好なんかしていいのかとか細かいツッコミは抜きにしてもそれは別に構わないが……それで何故部屋で寝ていた俺がお前に叩き起こされねばならんのだっ」
口端をヒクヒクさせながら不機嫌そうにジト目で姫を睨みながら今一番の不満を口にする零だが、別に企画自体に参加させられる事に対しそんなに不満がある訳ではない。ただ寝ていた所を姫に結構本気でボディープレスされて無理矢理叩き起こされた事に不満があり、その事について姫に言及すると……
姫「私も最初の内はちゃんと君の名を呼んだり身体を揺さ振ったりなどして起こそうと試みたんだぞ?それでも起きてくれないから、仕方なく力業を行使させてもらってだな」
零「仕方なくの力加減じゃなかっただろう、明らかに容赦のない本気の体だったぞアレは……。大体なんで俺まで参加しなければならないんだ?お前が一人プレゼントを配り回れば済む話だろ……」
まさかプレゼントの入った袋を担いで部屋を配り回るのがしんどいから、自分に荷物運びをやれと言うのではないだろうなと警戒して零が若干身構えながら問い掛けると、姫は少し恥ずかしげに頬を染めて……
姫「いや、あの……一人でこのテンションを維持するのは、ちょっと……」
零「?……お前、まさか、その格好で一人プレゼントを配り回るのが恥ずかしいから、俺に手伝えと言うんじゃ……」
姫「……うん」
零「……………………」
◇◆◇
それから数分後……
『――ったくっ、サンタの格好するのが恥ずかしいなら最初からしなければ良いだろうにっ……』
姫「馬鹿を言うな、クリスマスにプレゼントを運んで来るのがサンタクロースと相場が決まっている以上、我々もその様式に従わぬ訳にはいかないだろ?向こうにはヴィヴィオやエリオにキャロなどの子供達がいるのだから」
『ヴィヴィオはともかく、エリオやキャロがサンタを信じているかも妖しいだろ……というかちょっと待て……俺のこの格好は一体なんなんだ……?』
結局姫のサプライズ企画を手伝う事になって就寝しているなのは達一同の部屋に向かってる途中、姫の後ろを付いてきていた零が此処に来るまで疑問に思っていた今の自分の格好について姫に問い詰めた。その姿は、何故かディケイドに変身したボディーとスーツの上にサンタの服を着せられ、頭の上にはサンタの帽子を被らせられて顔にまで白い髭が身につけられていたりと、端から見れば不審者と思われても可笑しくはない珍妙な格好をしていたのであった。
姫「良く似合ってるではないか?名付けるなら、仮面ライダーディケイド・クリスマスフォームといった所か?」
ディケイドX'mas『そんな一年に一回しか使えなさそうなフォームいらんわ。そうじゃなくて、何故に俺が変身させられてる上にサンタの格好なぞされねばならんのだっ』
姫「いや、君は毎回至る所から世界の破壊者などと不名誉窮まりない名で呼ばれてるだろ?だからイメージアップも兼ね、今夜限りは『世界の破壊者』ではなく子供達に夢を与える『夢の配達者』となって子供達を喜ばせようではないか!という私からの配慮だ」
ディケイドX'mas『……一歩間違えれば子供の夢を壊し兼ねんだろこの格好は……』
姫「見られさえしなければ問題ないだろう?もし見付かった時には、君のカードの能力で逃げる事も出来るし」
ディケイドX'mas『そっちが目的か?!』
結局便利屋ではないか何が夢の配達者だ!と叫び掛けるが、姫がディケイドの口を抑えながら口元の前に人差し指を立てて横を指差した。其処にはFW組の部屋、そしてその隣に並ぶギンガとナンバーズ達の部屋があり、大声を出せば彼女達が起きてしまうと言いたいのだろう。
姫「文句なら後で幾らでも聞く、今は彼女達にプレゼントを配る方が先だ」
ディケイドX'mas『っ……分かった分かった……もう文句は言わない……』
折角のクリスマスイヴだしなと、ディケイドは溜め息を吐きながらプレゼントの入った袋を持ってFW組の部屋の扉を静かに開け、姫と共に部屋の中に入っていった。
◇◆◇
スバル「……んー……もう食べられないれすぅ……」
エリオ「くぅー……くぅー……」
キャロ「すぅ……すぅ……」
ティアナ「……ん……」
ディケイドX'mas『……一人如何にもって感じの寝言を言ってるな』
姫「微笑ましくて良いじゃないか。さ、彼女達が起きない内にプレゼントを置いていくぞ」
ディケイドX'mas『分かってる……って、そういえばプレゼントの中身は大丈夫なのか?まさかまた人にあげられないようなモノとか入ってないだろうな……?』
姫「心配するな、ちゃんと彼女達のリクエスト通りに用意しているさ♪」
ディケイドX'mas『……なら良いが……』
一先ずプレゼントの中身がちゃんとしたモノであると姫に確認を取り、姫と共にそれぞれのベッドで眠っているスバル達の枕元にプレゼントを置いていくディケイド。しかし、プレゼントを置き終わった姫は胸元が開けているティアナの艶っぽい寝姿を見て眉を潜めていた。
姫「それにしても、年齢に見合わずティアナは妙に色っぽいな。やはり胸か……」
ディケイドX'mas『いや、隣の芝生は青いって奴じゃないか、ソレ……?』
両手を叩くように払いながら口先を尖らせる姫にそう告げるディケイドだが、姫はそれを聞いてゴソゴソとティアナのベッドに下から潜り込み……
姫「ティアナに芝生はないようだぞ?」
ディケイドX'mas(馬鹿っ、止めんか起きるだろっ!次に行くぞっ!早くっ!)
ティアナのベッドに下から潜り込んで何かを確認する姫の服を無理矢理引っ張って引きずり出し、姫がまた余計な事をしない内に次に向かおうとディケイドは姫を引きずってFW組の部屋を後にするのだった。
◇◆◇
それから更に数分後……
姫「ギンガとナンバーズはこれでクリア、と……では次に行くぞ、零」
ディケイドX'mas『……ああ……』
姫「?どうした、鼻を抑えたりして?」
ディケイドX'mas『……プレゼントを置こうとしたら、ウェンディ達の寝相の悪さやられたんだよ……ノーヴェの鉄拳が飛んでくるわ、セインに思い切り蹴られるわで……』
姫「ああ……成る程……」
大人数のギンガ達の部屋にプレゼントに置いてきた後、ディケイドと姫の二人が次に向かったのはヴォルケンリッター達の部屋だった。そして二人はゆっくりと部屋の扉を開けて中の様子を確認すると、シグナム達はそれぞれ気持ち良さそうに深い眠りに付いていた。
ディケイドX'mas『寝てるな……よし、此処は素早く行けよ?あまり長居すると、アイツ等が気配を感じて起き出すかもしれん』
姫「ああ、分かった」
相手が歴戦の騎士な以上、あまり長居せず素早くプレゼントを置いて次に行こうと、姫は四人分のプレゼントを持って部屋に入りシグナム達の枕元にプレゼントを置いていく。が……
―ゴトッ―
ヴィータ「すぅ……すぅ……」
姫「……………」
何故か最後のプレゼントをヴィータの枕元に置いた後、姫は一瞬動きを止めて何かを探すかの様にヴィータのベッドの周りを見回し、そのまま静かに部屋を出てパタンと扉を閉じ……
姫(無意識にくつ下かかってないか調べてしまった……見た目的にサンタ信じてそうで……)
ディケイドX'mas(無意識にくつ下かかってないか調べてたな……見た目的にサンタ信じてそうだからって……)
姫が一体何を探していたか大体の予想は付いてるが、その辺を問い詰めると少しややこしくなりそうなのであまり追及しないでおこうとディケイドも無言を決め込み次の部屋に向かっていくのだった。
◇◆◇
そしてそれから更に数分後……
―パタンッ―
姫「――フェイト達はこれで良しと……最後はなのはとヴィヴィオの部屋だな」
ディケイドX'mas『……?最後って、アズサは良いのか?あと爺さんとキバーラとか』
姫「アズサは私と同じ部屋だからな、君を起こしに行く前にプレゼントを置いて来てある。栄次郎とキバーラにも同様だ」
ディケイドX'mas『ああ、なるほど……抜け目がないな……』
姫の手回しの良さに関心しながら、残った二つのプレゼントを持ってなのは達の部屋へと向かうディケイドと姫。そして姫はゆっくりと部屋の扉を開け、室内で眠ってるであろうなのはとヴィヴィオを起こさぬように部屋の中に足を踏み入れようとする。が……
なのは「――あれ?姫……さん?どうしたの、そんな格好で?」
姫「………………」
ディケイドX'mas『………………』
――室内には、クリスマスパーティーではしゃぎ疲れたからかぐっすり眠ってるヴィヴィオの隣で、上体を起こし読書するなのはの姿があったのだった。それを見た姫とディケイドもまさかなのはが起きているとは思わず、こんなコスプレ姿まで見られダラダラと汗を流していき、なんとかごまかそうと姫が動揺を受かべながら喋り出した。
姫「わ、私は……サンタの娘です、人違いです」
なのは「サンタさんって、外国人だよ?」
姫「……実は妾の子で……」
ディケイドX'mas『なんだその昼ドラみたいな衝撃事実……』
なのは「へ?零君?なんで変身なんかして……え、っていうかなにその格好……?」
ディケイドX'mas『聞くな……それ以上聞けば泣くぞ』
なのは「泣くのっ?!」
※サンタ娘&夢の配達者、事実説明中……
なのは「――へぇ、じゃあ二人で皆にクリスマスプレゼントを配り回ってたんだ?なんか素敵♪」
ディケイドX'mas『俺は巻き込まれただけだけどな……』
姫「そう言いながら、君もノリノリだったじゃないか?案外楽しんでただろ?」
ディケイドX'mas『む……まぁ、否定はせんが……』
なのはに一通りの事情説明を済ませた二人はなのはが用意した椅子に腰掛け、姫は彼女の横に眠るヴィヴィオの枕元に彼女が欲しがってたクリスマスプレゼントを静かに置き、ディケイドも自分の袋からプレゼントを取り出してなのはに差し出した。
ディケイドX'mas『ほれ、取りあえずこれがお前へのプレゼントだ。メリークリスマス』
なのは「あ、うん、ありがとう♪でもいいなぁ、何か二人とも楽しそうで。私も一緒にサンタさんやりたかったかも……」
姫「そうか?なら来年辺りには君も一緒にプレゼント配りをやろうじゃないか♪」
ディケイドX'mas『止めておけ、やるなら相当の忍耐力が必要だぞ?……色々と疲れる羽目になるのは必須だからな……』
なのは(……あぁ……多分また姫さんのボケに振り回されたのかなっ……)
疲れたようにガックリと肩を落とすディケイドを見て此処に来るまで何があったのかすぐに分かり、思わず苦笑いしてしまうなのは。しかし姫はそんななのはとディケイドの反応を他所に袋の中を漁って中身を確認すると、袋を担ぎ椅子から立ち上がった。
姫「さて、では私達はそろそろ退散するとしよう。あまり長話をして、ヴィヴィオを起こしてしまうワケにはいかないしな」
ディケイドX'mas『同感だ。こんな珍妙な格好を見られたら、心が折れる自信があるし……』
なのは「そ、そんな、私は全然良いと思うよ?可愛いし(汗)」
ディケイドX'mas『お前、最初に俺の格好を見た時に若干引いてたよな……?』
なのは「うぅっ……」
姫「そう言ってやるな零、彼女は彼女なりにイメージアップを試みる君の頑張りを褒めようとしている訳であってだな……」
ディケイドX'mas『そもそもの元凶はお前だろうがっ!』
なのは「にゃははは……」
白々しさ全開の笑顔を浮かべる姫にディケイドも怒りを含みながらすかさず突っ込みを入れ、なのはもそんな二人の漫才を見て自分も来年参加するとなるとこの輪に入らねばならないのかな、と苦笑いを浮かべるのだった。
◇◆◆
零「――はあぁ……やっと終わったか……」
数分後、なのはと一言二言会話を交わしてから彼女達の部屋を後にした零は変身を解き、姫と共に自室の前に戻り大きく背を伸ばしていた,
姫「助かったよ、零。付き合せてしまって済まなかったな」
零「全くだ……今度からは何かやる時は、前以て伝えに来いよ?もう寝てる所を無理矢理起こされるのはゴメンだからな?」
姫「ふむ……まあ、善処はしよう♪」
零「……なんか胡散臭いな……ハァ、まあいい。じゃ、俺はもう寝るぞ「あっ、ちょっと待て」……あ?」
早くベッドに就きたいので早々に切り上げ自室に戻ろうとする零だが、姫に呼び止められ訝しげな顔で背後へと振り返った。すると姫はなにやら袋の中を漁り、其処から一つのプレゼントを取り出して零に差し出した。
姫「まだ一つプレゼントが残っていたのを忘れていた、これは君へだ」
零「?……俺、別に欲しい物とかないぞ?」
姫「だろうなぁ、これは私が選んだ君へのプレゼントなんだから。まあ、今夜の企画に付き合わせたお詫びだと思って、受け取ってくれ」
零「……ま、変なものじゃないなら受け取ってやるよ……」
素直に礼を言うのが恥ずかしいからか、零はそっぽを向きながらそう言って姫の手からプレゼントを受け取り、姫もそんな零の反応に微笑みながら床に置いた袋を持って背中を向けると、零の方に顔を向けて……
姫「メリークリスマス、零……また来年、一緒に皆へプレゼントを贈ろう」
零「……気が向いたら、な……」
優しげに微笑みながらそう告げる姫に、彼女から貰ったプレゼントを軽く振りながらそう答える零。そんな零を見て姫は微笑を浮かべながら手を振って自室へと戻っていき、零も姫の背中が見えなくなるまで見送ると、姫に貰ったプレゼントの包装紙を破かないように取り外しプレゼントの中身を取り出していく。それは……
零「……?これは、桔梗の花……の指輪か?」
プレゼントの中身は、桔梗の花の装飾が彩られた男物の銀色の指輪だったのだ。なのは達のような女性ならともかく、何故こんな物を男の自分に?とワケが分からず指輪を怪訝な目でジッと眺めていくと、零はふと桔梗の装飾を見てある事を思い出した。
零(そういえば……桔梗の花言葉って、確か……)
桔梗の花言葉と言えば――『優しい愛情』、『誠実』、『従順』、『清楚』、『気品』、『正義』、そして……
『変わらぬ愛』、『変わらぬ心』
零(……俺自身に何かが……例え人間でなくなっても、変わらずに俺に付いてきてくれる……って事なのか……?)
それともただの偶然か……真意は分からないが、なんだか彼女なりに気遣ってくれているような気がして、零は思わず苦笑を浮かべた。
零(また来年、か……そうだな……叶うならまた……また皆で……)
手の中で輝く桔梗の指輪を見つめながら穏やかに笑い、零は視線を上げて廊下の窓の外の方を見た。暗闇の向こうにちらほらと白い粉雪が降る景色が見え、また来年、皆で一緒にこの景色がもう一度見られるようにと、桔梗の指輪を強く握り締め静かにそう決意するのであった。