仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―桜ノ神社―
姫「――『怪人S』?」
それから数十分後。一先ずなごみ達についての誤解を解いた後、零達は絢香からこの世界に呼ばれた理由について説明を受け、彼女の説明の中に出てきた気になるワード……怪人Sという聞き慣れぬ名に姫が思わず聞き返していた。
零「何だ、その捻りのない名前?新星のお笑い芸人か何かか?」
桜香「ふふ……お笑い芸人なら寧ろ良かったのだけどね、それだったら茶の間のテレビで笑うだけで済むのだから。……怪人Sというのは、最近この町に現れた正体不明の怪盗の名よ」
絢香「実はつい先日、桜ノ神社宛てに突然こんなモノが届きまして……」
そう言って、絢香は懐から一枚のカードのようなモノを取り出して卓袱台の上に置き、姫がそれを手に取ると、零達も脇から顔を出しそのカードを覗き込んだ。其処には……
今夜12時丁度、桜ノ神社に保管されてる『桜龍玉』の一つ、『六桜玉』を頂戴しに参ります
怪人Sより
其処には、如何にも漫画の中の怪盗が送り付けたような予告文が書かれており、零はそれを見て眉間に皺を寄せながら険しい表情を浮かべた。
零「なんだこれは……ネタかと思えば、本気で怪盗の真似事のつもりか?悪ふざけにも程があるだろ、くだらん」
ドール「おや、そうですか?私はこういうの嫌いじゃないですよ。怪盗の美点を捉えてますし、名前も何処となく怪人二十面相を彷彿とさせるというか」
零「そりゃ空想や漫画の中の場合はな。現実でこんな物、出された方からすれば堪ったものじゃない」
アシェン「随分辛辣ですね……怪盗絡みで、何か嫌な思い出でも?」
零「……随分昔にな。まだ局員になり立てだった頃、これと似たような予告状が送られて来たんだよ。〇〇ホテルのお高い宝石を頂くみたいな……明らかに悪戯の可能性大だったが、万が一に備えてと俺を含んだ多くの局員達が深夜まで警備に付けられたが、結局取り越し苦労で何も起こらず、俺は次の日にも別の仕事があったのに寝不足で遅刻……口喧しい上官から叱られるわ、嫌な同僚からは『高ランクの魔導師様となると堂々と遅刻が出来るんですねぇ~』なんて嫌味を言われるわで散々な目にあった。しかもこんな悪戯が年に数回もあるのだから、怪盗なんちゃらと聞く度に思わず舌打ちしてたくらいだ」
なごみ「公務員のお仕事も大変ですね。……もしや、零さんが大輝さんを毛嫌いしてるのは其処から来てるとか?」
零「それもあるし、個人的に奴という人格が俺の嫌いなタイプっていうのもある。カイトみたいに訳ありで怪盗やってるならともかく、自分の為に怪盗の真似事やってる奴の気なぞ知れん。だから俺は声を大にして言いたい……滅べ、全世界のエセ怪盗共っ」
ドール「オオゥ……積年の怨みとやらが篭められてるのをヒシヒシと伝わりますね」
姫「…………」
絢香が見せた予告状を見たせいで嫌な記憶と嫌な奴の顔を思い起こされたからか、不機嫌な表情を浮かべて昔の事を語る零の隣では、何やら姫が険しい顔付きで予告状を睨み、絢香に視線を戻し口を開いた。
姫「『桜龍玉』の六桜玉を頂戴する……この怪人Sとやらが名指した物を、君達は保管していたのか?」
絢香「はい。六桜玉の他にもあと一つ、七桜玉も保管してました。ですが、以前海道大輝さん達にツボを盗まれた時の事を考えたら心配になりまして……今回はこの予告状が送られて来たのをきっかけに、町の方々にも協力を要請して市内にある美術館に六桜玉を厳重に保管して頂けるようお願いしたのですが……」
紗耶香「その……誠に申し上げ難いのですが……昨夜その盗っ人が厳重な警備をかい潜って美術館に侵入し、六桜玉を奪われてしまいまして……」
桜香「私達が救援を受けて駆け付けた時には、警備員達は全員気絶、怪人Sにも既に逃げられた後だった。幸い怪我人は誰もいなかったのだけど、目を覚ました彼等は何故か全員怪人Sを追っていた時の記憶が欠落しててね。詳しく話を聞こうにも、彼等は何も覚えてはいなかった……だから、奴を直接見たって人は誰もいないのよ」
姫「記憶が欠落?……ふむ……確かにこれはただ事ではなさそうだな……しかも奪われたのが桜龍玉の一つとなると余計に妖しく……」
予告状を見据えながら顎に手を添えて思考に浸る姫。するとそんな彼女の横顔を見ていたなごみが、スッと小さい左手を上げた。
なごみ「ハイ。取りあえず、事情を知らない私達は置いてきぼりを喰らってるので、質問宜しいでしょうか?」
絢香「え……あ、は、はい。どうぞっ」
なごみ「有り難うございます。では早速なのですが、先程から皆さんが話してる『桜龍玉』とは、一体なんなのでしょう?もしやアレですか?D〇的な何か?」
ドール「わお、なごみさん、いきなりそんな核心突いちゃう?でも私的にも其処んとこ気になってたので、ハイ!私にもチョーイイネーでサイコーな説明プリィィィィズ!」
絢香「え……えぇっと……」
零「……コイツ等の発言の八割方は無視していいぞ、絢香。一々気に止めてたら話が進まない」
絢香「は、はぁ……」
横に並びながら片手を挙手するなごみとドールの言動とテンションに圧倒されて言い淀む絢香に零が静かにそう言い放ち、絢香は控え目に頷きながら一度咳払いした後に説明を始めた。
絢香「桜龍玉とは、とある神様……あっ、姫様とは別の神様ですよ?が、大昔に作ったという『神具』の事です」
アシェン「?失礼ですが、神具とは?」
桜香「文字通り、神様の手で作られた道具のことよ。不老不死を無効化して命を刈り取る武器、この世全ての生き物を魅力させる薬、天気を操る道具とか。そういった普通なら有り得ない事を実現させる道具と認識してくれればいいわ。……まあそういったモノは殆ど、もう随分と大昔に消えてしまったようだけど」
絢香「それらの神具を生み出した本人、或いは持ち主である神様達が人の世からいなくなれば、それと共に、彼等が作った神具も人の世に残されず消えてしまいますからね。そして、その桜龍玉も持ち主の神様がいなくなった事で、数百年の間ただの石に変わり果てていたのですが……」
其処で、絢香の視線が姫に向けられていき、姫もそれで絢香が何を言いたいのか悟り小さく頷き返した。
姫「なるほど……桜龍玉は、初代桜ノ神が作った神具だからな。現桜ノ神の座に居る私が蘇った事で、力を失っていた桜龍玉は本来の力を取り戻したというわけか……となると、このまま桜龍玉を放置しておくのはマズイかもしれない」
零「……?何だ?そんなにヤバい物なのか?」
姫「……ふむ……使う人間によりけり、といった感じだな」
なごみ「……つまり、扱う人間によっては危険な品物になる、という事でしょうか?」
そう問い掛けるなごみの瞳が少しばかり真剣味を帯びたような感じがするのは、気のせいではないだろう。そんな彼女に疑問を投げ掛けられた姫は少しだけ間を置いた後、徐に頷き言葉を続けた。
姫「桜龍玉という神具は、全部で八個存在する。そうして全ての桜龍玉を集めた者は、様々な望みを叶えてくれる『桜龍』を呼び出せると言い伝えられてるのだ」
ドール「オーリュー?……アレー?何か設定が本格的にD〇っぽく――」
零「今ネタを挟むのは自重しろ、本当に話が進まなくなるっ」
姫「別に構わないぞ?何せ桜龍玉自体、初代桜ノ神が違う世界の地球から招いたナメック人の知識を借りて完成させた神具なのだし」
零「パクリどころかオリジナルの制作者本人が関わってただとォッ?!!」
なごみ「成る程……某龍玉と類似点があるのはその為ですか。納得しました」
まさかの衝撃事実に驚愕を露わにして動揺してしまう零だが、なごみやドールは「ああそういう事……」と結構冷静に受け止めており、姫もなごみの言葉に肯定するように頷いた。
姫「とは言っても、桜龍はかの神龍のようにあらゆる望みを叶えてくれるという訳ではない。出来ない事も多々あったり、桜龍を呼び出す為の力が足りないからと原典より桜龍玉を一つ増やしたりと、龍玉の劣化版として生み出されたんだ。まあそれでも、不老不死を授けたり、星を一つ生み出したり、死者を蘇生させるなどの力は持っているのだが……」
零「……その時点で既にヤバい感じがするな……何でそんな品物を一カ所に保管せずに放置してたっ?」
そんな危険な品物だと言うなら、何故しっかりと保管するなり封印するなりしておかなかったのだと呆れる零だが、姫は力無く首を横に振りながら薄く溜め息を漏らした。
姫「全て集めようにも、私も他の桜龍玉が何処にあるかは知らないんだ。なにせ上役の神達は、桜龍玉の事を私に説明しただけで何処にあるかなど教えてはくれなかった。桜龍玉は、人間が自分達の叶えたい望みを叶える為に追い求め集めるものだからと言ってな……最も、散らばった桜龍玉は意図的に人間達には見付からないような場所に落ちるよう仕向けてあるらしいのだが……」
なごみ「?それはどういう……」
ドール「……ハハーン……もしやアレですか?『願いを叶える道具は授けてやるけど、オメーらには絶対見付けられないだろうけどなプギャー!』……みたいな?」
姫「ふむ……半分ぐらいは間違ってはいないな。仮にも神の手によって作られた願望機、そう安易く人間の手には渡らぬように、己の願いの為に何処まで神具を追い求められるか……半ば人間達への試練という意味も篭められているらしい。まあ、散りばめられてから一度でも全て集められた事はないらしいが」
零「……成る程な……んで、その怪人Sとやらも何か叶えたい望みがあるから、桜龍玉を追い求めるって口か?」
桜香「毟ろそれ以外集める理由がないでしょ。でも、このまま怪人Sに七桜玉を渡すワケにはいかないわ。どんな理由があれ、それを話さず、堂々と姿も見せずにこんなふざけた予告状を送り付けてきて、厳重に保管すれば無断で掻っ攫って行くような奴がまともな筈ない」
零「いや、理由も話さずにって部分はソイツもお前も似たようなも――」
桜香「ん?何かしら♪」
零「……いや、別に何も」
ニッコリと笑い掛けて来る桜香から逃れるように目を逸らして言葉を引っ込める零。そしてそんな零を横目に、姫は予告状を卓袱台の上に戻して話を続けた。
姫「それで?先程私に確認してもらいたい物があると言っていたが……もしや、この予告状の事か?」
絢香「それもなんですが、もう一つ。これなんですが……」
そう言って、絢香は再び懐から先程出した予告状と同じ物を取り出し、卓袱台の上に置かれた予告状の横にソレを差し出した。其処には……
今夜1時半、〇〇〇ホテルに保管された『七桜玉』を頂戴しに参ります
怪人S
其処に書かれていたのは先の予告状と同じく、絢香達が持つ最後の桜龍玉を頂くという怪人Sからの予告文だったのである。
紗耶香「今朝方に、神社の郵便受けに入れられてた物です。内容は、我々が持つ最後の桜龍玉……七桜玉を、今夜頂くと」
姫「昨日の今日でもう、か……まぁ盗みを働いた以上、町に長居出来る筈がないだろうからな。それでこの、七桜玉が保管されているホテルというのは?」
桜香「この町で1番大きなホテルよ。六桜玉を美術館に移動させる時に、一緒に人知れず移動させたのだけど……どうやら向こうにはバレてたみたいね」
アシェン「では、今の内に関係者に連絡して、七桜玉を別の場所に移動させては如何でしょうか?」
紗耶香「いや……恐らく、それも無駄骨にしかならんだろ。実際前回の予告状が送り付けられてすぐ美術館に六桜玉を移動させたにも関わらず、怪人Sは予告通り、美術館に潜入し六桜玉を盗んでしまった」
零「……こっちがどんなに手を打とうが、向こうには全部筒抜けって事か。チッ、小賢しい」
ドール「アータ本当に辛辣ねぇ……そんな怪盗嫌いになるまで、一体どんだけ嫌な思い出築いてきたん?」
怪人Sの手際の良さに忌ま忌ましげに舌打ちする零に、ドールが若干ドン引いた様子で声を掛ける。そしてそんな二人のやり取りに苦笑いを浮かべながら、絢香は姫に目を向けた。
絢香「ともかく、怪人Sが一筋縄ではいかない相手だというのは間違いなさそうです。何せ、人間の記憶を消すなんて事をやって退けるのですから……もしかすると、怪人Sが異形の類という可能性も……」
なごみ「つまり、怪人かもしれないという事ですか。……まあ既に怪人と堂々と名乗っている訳ですから、あながち間違いでもないと思いますが」
零「だが怪人がわざわざ、これから盗みに行きまーすなんて予告状出して自分達の作戦をバラすような馬鹿を……いや……有り得なくはないか……」
アシェン「……いえ、其処で私とお嬢様を見られましても。実際にそんなお馬鹿をやってるのはショッカーですし」
実際お馬鹿をやってる知り合いの世界の悪の組織の事を思い出して半目でなごみとアシェンを見つめる零。そんな零を見つめ返し冷静に返すアシェンを他所に、桜香が茶を啜って再び口を開いた。
桜香「まあそんなワケで、私達は今夜〇〇〇ホテルに保管されてる七桜玉の警備に参加して、怪人Sを迎え撃つ事にしたの。だから、其処に貴方達にも参加してもらいたいのよ。もしかすると怪人Sが幻魔、もしくは幻魔とは違う別の敵……なんて事も、あるかもしれないでしょ?」
姫「ふむ……まあ私は別に構わないが、零、君はどうする?」
零「どうするも何も、最初から俺にも手伝わせる気で連れて来たんだろう?今更帰るなんて言えるか。……それに、その怪盗とやらをひん捕まえるのも悪くはない。俺が直々に御上に差し出して刑務所にぶち込んでやる。フ、フフフッ……」
ドール「わー……零さんがヒーローにあるまじき極悪な顔で笑っておられるぅー……って、最初から零さんにヒーローらしいとことかありませんでしたな」
なごみ「堂々と女性にセクハラするような人ですしね。因みに、何やら面白そうなので私も参加します」
アシェン「お嬢様が参加なさるのなら私も。私の目の届かぬ所で、お嬢様が零様に卑猥な事をされては護衛失格ですので」
零「何処まで信用されてないんだ俺はッ?!人を女を見れば手を出す犯罪者みたく言うなッ!誤解されるだろうッ!」
ドール「しかし間違ってはいないでしょう?昔から、ヒロインは主人公とのToloveるなイベントを起こしては無闇矢鱈にフラグが乱立すると相場が決まってるのですし」
アシェン「えぇ、ですからお嬢様まで毒牙に掛けられては堪りません」
零「何処の相場だッ!大体さっきから訳の分からん事ばかりっ、俺が幼女になぞ手を出す訳がないだろうッ!」
アシェン「ほう……それはつまりアレでますでしょうか?うちのお嬢様は攻略する価値なしと?貴方からすればヒロインとしての魅力もない、と?」
零「な……何故に其処で、無表情のまま手をバキボキ鳴らすっ?い、いや待て、攻略とかヒロインなんたらは分からんがっ、なごみは普通に魅力的だと思うぞっ?ウンっ」
なごみ「いやーん、零さんってばもぉー(棒読み」
アシェン「お嬢様が魅力的?……遂に本性を曝しましたか、この変態ロリ」
零「フォローに回った途端にコレかぁッ?!一体俺にどうしろと言うんだお前はッ!!」
ドール「ウワァー……幼女に魅力を感じるとか零さんマジきめぇ……あっ、私に十メートル以内近づかないでくれます?」
姫「なんと、零はロリもイケる口だったか……よし、君が望むのなら私もこの身をロリにしよう!何、口外はしないから犯罪にはならないさ!」
零「己らも勝手に人を変態認定するなぁあああああああああっっっ!!!!」
紗耶香「……前にも思いましたが……本当にこんなんで大丈夫なのでしょうか……」
絢香「あは……あはははは……あは……」
ボケ要員×4からの矢継ぎ早のボケ攻撃に、忙しなくツッコミを飛ばす零を見て紗耶香はうんざりした様子で溜め息を漏らし、絢香もまた何とも言えず苦笑いを浮かべるしか出来ずにいたのだった。
◇◆◇
―桜ノ町・???―
――零達が桜ノ神社で絢香等と話しているその一方、桜ノ町の何処かに存在する暗闇に包まれた広い空間。何処までも闇で先が見えぬ広大な空間のその中心にて、今、二人の人影が身体を向き合わせ何かを話す姿があった。
『――一体どうなってる?貴様が言う神具とやらは、何処ぞの鼠に横取りされてしまったぞ?』
『ふぅむ……妙ですなぁ……アレの存在を知るのは、現代の聖者共、そしてこの世界に不在の桜ノ神のみのハズなのですが……』
解せぬと言うように、顎に不気味な形状の手を添えてそう語るのは、黒いマントを身体に身に纏い後頭部が後ろに延びた骸骨のような姿の異形。そしてその異形と向き合うのは銀の装甲を光り輝かせる魔人であり、銀色の魔人は自分と骸骨の異形の足元に転がる六個の桜色の宝玉……桜龍玉を見下ろしていく。
『残る桜龍玉は二つの内、一つを奪われた……このままでは、桜龍とやらを呼び出す事は不可能だ……一体どうするつもりだ?』
『なに、心配は入りませぬよ。その辺りの事も考えてはおります故、心配ご無用……』
『……ならばいいがな……だが、忘れるなよ?』
銀色の魔人の緑色の瞳が、暗闇の中で妖しげな輝きを放ちながら骸骨の異形を見据える。
『主である幻魔神を失い、消え逝く定めであった貴様が、我々『大ショッカー』の傘下に下るに足る人材であるか……それを証明出来なければ、貴様は――』
『分かっておりますとも、"月影"殿……。必ずや桜龍の力にて我らが主を蘇らせ、アナタの信用に応えてみせましょうぞ……』
月影と呼ばれる銀の魔人にそう告げて、骸骨の異形が右手に握る禍々しい形状の杖の尻で地面を軽く叩くと、二人の足元に転がる六つの桜龍玉が不気味な緑色の光に包まれ、そのまま何処かへと消えてしまったのであった。