仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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番外編/桜龍玉と新たな神⑥(前編)

 

 

―桜ノ神社・古小屋―

 

 

なごみ「――では、怪人Sの正体が人間の場合、あの姿に変身した時点で命を落としてしまう……という事でしょうか?」

 

 

桜ノ神社が家畜を飼ってる古小屋。其処には鶏などが飼われてる他にも昨夜姫が捕らえた馬鬼も格納されており、絢香達は姫の説明を受けながらその小屋に場所を移していた。そして姫はなごみからの問いに頷き返しながら、小屋の向こうに格納されて眠ってる馬鬼を見つめて口を開いた。

 

 

姫「アレは本来、神格化した肉体に合わせて造られたモノだからな。もし人間がアレを使って一度でも変身すれば、人間の肉体では耐え切れずに灰と化して死んでしまうんだ……」

 

 

ドール「ぬー……まーるで何処ぞの呪いのベルトみたいですなぁ。あちらの方も装着者が人間ではないのが条件でしたし」

 

 

桜香「だとすると、怪人Sは人間じゃない?……もしかして幻魔とか……」

 

 

姫「いや、それこそない。アレは幻魔達にとって弱点となる力も含んで造られた品物だ。仮に幻魔がアレを使って変身しようものなら、一瞬で蒸発して消えるのがオチだぞ」

 

 

なごみ「ですが、絶対とも言い切れないのでは?その籠手自体に何か改造処置を施した……という可能性もありますし」

 

 

姫「……確かにな……鎧の所々に封印処置が施されて、本来の力が使えなくなっているようだったし……だが……」

 

 

平然とあの籠手の力を使い熟してる事から、怪人Sが人間だという線は先ずないと思われる。だとすれば、人間以外……つまり幻魔か、もしくはそれ以外の何かと考えられるが、情報が余りに少な過ぎて全く検討が付かない。怪人Sの深まる謎に深く考え込んで一同の間に沈黙が漂う中、それを破るかのように桜香が口を開いた。

 

 

桜香「まぁ、奴の正体に関しては本人と対面した時にでも問い質せばいいでしょ……。それはそれとして、そもそも何で貴女の籠手を怪人Sが持ってるの?アレって元々何処に保管してたわけ?」

 

 

姫「ん?何処にと言われても、アレは私が封印される前にその時代の聖者達に後を任せて…………―――」

 

 

桜香に聞かれて昔の記憶を思い出すように腕を組んで小屋の天井を見上げながら暫くそうしていた姫だが、不意に姫の顔が凍り付き、そのまま固まってしまった。

 

 

絢香「……?姫様?」

 

 

姫「―――ああ……そうか……一人居たな……今回の件を詳しく知ってそうな奴が……」

 

 

紗耶香「えっ……ほ、本当ですかっ?!それは一体っ?!」

 

 

姫「……うむ……」

 

 

姫のその言葉に激しく食い付いて身を乗り出す紗耶香だが、それに反して姫の顔は何処か複雑げで歯切れが悪い。まるで気付いたけど気付きたくはなかったような、出来れば話したくないような、そんなあからさまに嫌な顔で言葉を紡ぐ。

 

 

姫「龍王、鬼王の籠手……そして怪人Sが持つアレを造るのに手を貸してくれた、私の上役の神だよ。多分、奴なら今回の件についても何か知っているかもしれない……」

 

 

ドール「ほうほう?つまりその方に話を聞けば、あの怪人さんが何処で姫さんのライダーシステムを手に入れたか分かるかもしれないってなワケですかい?」

 

 

姫「可能性はないとは言い切れないが……ただ、まぁ……また、あの見苦しい姿を見る事になるとはな……ハァ……」

 

 

『……?』

 

 

目に見えて嫌そうな様子で、嘗て自分を桜ノ神にした上役の神の事を話して溜め息を吐く姫。そんな彼女の様子に絢香達は揃って頭上に疑問符を浮かべていくが、この数時間後、何故姫がこんな反応をするのかその理由がすぐに分かることとなるのだった……。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―大型ヘリ内―

 

 

零「…………」

 

 

折夏「…………」

 

 

そしてその一方、ノエルと魚見が部屋を出ていった後、零が捕われた部屋の中には囚われの身の零、そして彼の監視役と思われる折夏が室内の椅子に腰掛け黙々と本を読む姿があった。

 

 

零「…………」

 

 

折夏「…………」

 

 

―ペラッ……―

 

 

零「…………」

 

 

折夏「…………」

 

 

零(……気まずいっ……)

 

 

先程のノエルとのやり取りのせいか、どうにも室内の空気が重苦しい。更に本を読む折夏が余りにも無愛想なのでどうにもこちらから話し掛け辛いし、沈黙だけが続く部屋の中に折夏の本のページをめくる音だけが響き渡る。

 

 

零(クソ……さっきから何も話さないし、何かやりにくいなっ……ああもうっ、こういう奴は苦手だってのにっ……)

 

 

折夏「…………」

 

 

アズサと初めて会った時もそうだったが、ああいう何を考えてるいか分からない相手はどうにも苦手だし、話の切り出し方にも悩む。だが……

 

 

零(……それでも……ちゃんと聞かない事には、な……)

 

 

ノエルは先程、自分と折夏はギルデンスタンに捕まり改造されたと言っていた。つまり彼女もノエルと同じ改造人間で、フォーティンブラスが復活したあの日に幻魔に親族を殺され誘拐されたという事なのか。正直それを知るのは恐ろしく思うが、あの事件の当事者である自分がそれを聞かない訳にはいかない。そう思い意を決して、零は折夏に向けて口を開いた。

 

 

零「――ひとつ、聞いてもいいか?」

 

 

折夏「……何……?」

 

 

零「いや……お前もアイツと同じ改造人間と聞いたが、お前もあの日……フォーティンブラスが復活した日に、ギルデンスタンとやらに捕まって誘拐されたのか?……家族を殺されて……」

 

 

折夏「…………」

 

 

もしもそうなら、被害者である彼女に辛い記憶を呼び起こさせる質問になってしまうが、零は彼女の返答を待って真っすぐ折夏の顔を見つめたまま視線を反らそうとしない。そしてそんな零の質問を受けた折夏も本から顔を上げて零の方へと顔を向けながら少しだけ間を置くと、パタンッと本を閉じ語り出した。

 

 

折夏「……私は……違うと思う……」

 

 

零「……思う?」

 

 

折夏「そう……私はノエル達が研究所に連れて来られる前から、ギルデンスタンの下で改造手術を受け続けていた……だから多分、私が奴に捕まったのはずっと前だと思う……」

 

 

零「……?」

 

 

たどたどしい口調で自分のことを話す折夏だが、その言い方は何処か妙だ。思うだとか、多分だとか、自分のことの筈なのにハッキリしない。それに疑問を抱き頭上に疑問符を浮かべる零だが、そんな零の反応に気が付いたのか、折夏は一瞬だけ悲しげに眉を潜め自分の手の平を見下ろした。

 

 

折夏「ごめんなさい……私には、貴方に話せる過去がないの……そもそも自分が何処の誰なのか、私自身にも分からないから……」

 

 

零「……?自分が誰なのか分からないって……まさかっ……」

 

 

折夏「……そう……私には、過去の記憶というモノが一つも存在しないの」

 

 

零「ッ!」

 

 

それを聞いて、零は驚愕を露わにして目を見開いた。記憶が存在しない。それはつまり、彼女は嘗ての自分と同じ……いいや、彼女がギルデンスタンに捕まっていたという経緯を考えれば、もしかしたら自分なんかよりも……。

 

 

折夏「……ギルデンスタンの下で改造手術を長く受け続けていた後遺症だろうって、魚見は言っていた……だから自分が何時からギルデンスタンの下にいたのか、それ以前の、家族の記憶も一切覚えてない……」

 

 

零「……なら、お前の名前は?」

 

 

折夏「知らない……立花 折夏という名前も、魚見とノエルが一緒に考えて私に付けてくれたけど、本当の名前は一切思い出せない」

 

 

零「……そう、か……」

 

 

短く答え、零は思わず折夏から目を反らしてしまった。淡々と感情のない口調で自分の事を話す折夏の姿を見ているのが、いたたまれない気分になったからだ。自分やアズサは記憶喪失になっても名前だけは忘れずに済んだのが唯一の救いだったが、彼女はそれすらも奪われ、過去の自分を思い出す事も出来ない。改めて幻魔の非道を知った零は眉を潜めながら拳を強く握り締めていき、折夏はそんな零の顔を見て不思議そうに首を傾げた。

 

 

折夏「何故、貴方がそんな辛そうな顔を浮かべているの?」

 

 

零「……ふん、別に。たださっきから手洗いに行きたくて、我慢してるだけだ」

 

 

折夏「……そう……」

 

 

彼女に同情の念を抱いてしまったとは言えない。彼女自身がそう思うのならともかく、他人からそんな風に思われるなど、彼女の境遇をより悲惨にさせるだけではないかと思う。だからそれを悟られないように憎々しげな口調でそっぽを向きながらそう告げると、折夏は短く答えながら何かを考える様に少しだけ瞼を伏せ、椅子からゆっくりと立ち上がり零の後ろに歩み寄る。

 

 

零「……?何だ?」

 

 

折夏「黙って」

 

 

折夏の突然の行動に戸惑う零だが、折夏はそれだけ言ってゴソゴソと零の背後で何かをし、ガチャリッと、零の身体を縛り付けていた鎖を解いてしまった。

 

 

零「ッ?!お前、なんでっ?」

 

 

折夏「……トイレは其処の角を曲がった先にある……その後どうするかは、貴方の勝手にすればいい」

 

 

零「なっ……」

 

 

それはつまり、逃げたければ好きに逃げればいいという事だろうか。だが、何故急に敵である自分にそんな事を?と困惑を隠せず零は唖然とした顔で折夏を見上げていき、折夏は解いた鎖を無造作に投げ捨てながら淡々と告げた。

 

 

折夏「私もただ、ノエルと同じ意見ってだけ……貴方はギルデンスタンの件とは何も関係ないし、貴方には私達に協力する義理なんてない……貴方に協力する気がないのなら、無理に巻き込む必要はないと思った。ただそれだけ」

 

 

零「…………」

 

 

そう語る折夏の顔は先程と変わらず無表情だが、嘘を言ってるようには見えない。突拍子もない行動に驚きはしたが、要するに関係ない人間は去れと彼女は言いたいのだろうと、零はそう思いながら徐に立ち上がり片腕を軽く回していく。

 

 

零「本当に良いのか。あの魚見とかいう奴は俺に協力して欲しいと言っていたが、仲間を裏切るような真似をして」

 

 

折夏「上手い言い訳なら既に考えてあるから心配いらない。それから貴方のドライバーとカードは、さっき教えたトイレまでの道の突き当たりにある魚見の部屋に保管されてると思うから、忘れないように……」

 

 

零「……そうかい……何から何まで有り難い限りだな……じゃ、達者でな」

 

 

簡潔にそれだけ告げると、零は折夏の方を一度も振り返らずそのまま歩き出し、部屋を出て去っていってしまった。そして部屋にただ一人残された折夏は部屋の扉を暫くジッと見つめると、薄く溜め息を吐き、再び椅子に腰を下ろして天井を仰いだ。

 

 

折夏「……二人への言い訳……なんて言おう……」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

―桜ノ神社・参道―

 

 

 

 

―――突然だが、皆さんは変態神という神様をご存知だろうか?

 

 

その名の通り、変神の更なる上をゆく超ド級の変態の神様の事だ。

 

 

そういったカテゴリーの神は平行世界を探せば一人はいるだろうが、実は嘆かわしい事に、その一人がこの桜ノ神の世界にも生息(?)しているのである。

 

 

仮に、万が一、多分何かの間違いだろうが、もし彼女に会いたい場合、あるモノを用意すれば彼女はすぐにすっ飛んで現れてくれる。

 

 

どうやって?なに、手順は簡単だ。その辺りの降霊術の準備より遥かに安い。

 

 

先ず、脱いだ洗濯物(ただし男物に限る)を用意する。

 

 

次に、これを外に置いとき暫く待ってる。これだけである。はい。

 

 

で……

 

 

 

 

 

 

 

 

「ンンンンンンンンンンンンンンンフゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!久方ぶりのイケ☆メン☆の脱ぎ立てシャツをゲェェッッッッチュウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!スゥウウウウウウウウウウウウウハァアアアアアアアアアア!!!スゥウウウウウウウウウウウウウハァアアアアアアアアアア!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

……ゲッチューである。

 

 

絢香「………………………………うわぁ………………………………」

 

 

紗耶香「…………あの…………出来れば何かの間違いかと思いたいのですが……まさか、アレが……」

 

 

姫「私の上役……つまり私の上司だよ……凄いだろう?」

 

 

桜香「……えぇ、ある意味そうね……まさか此処までブッ飛んでたとは想像もしてなかった……」

 

 

アシェン「寧ろブッ飛んでるを通り越して、最早ドン引きの域かと思いますが」

 

 

ドール「そーですかい?私的には欲望に忠実そうな方で、寧ろ好印象なのですが(・∀・)?」

 

 

なごみ「私は全く見えませんが、皆さんの反応と奇声のような物で何となく察しが付きますね」

あまりに見苦し過ぎる光景な為、アシェンに後ろから両目を塞がれている。

 

 

わざわざ写真館に一度戻って持ってきた零の服の匂いを激しく嗅いだり舐め回したりする目の前の女神……姫の上役の神を実際に目の当たりにしてドン引きする一同(一名を除き)。姫もそんな絢香達の予想通りの反応に思わず溜め息を吐くと、まるで野良犬のように地べたに平伏して服に顔を埋める上役の神に歩み寄った。

 

 

姫「――お久しぶりです。その様子だと、相変わらず男漁りに没頭なさっているようですね」

 

 

「ジュルウゥウウウウッ!ジュルルルルルルルッ!!……ふ?ふぁ!ひふぇふぁんひゃひゃいろ!ふぃっふぁひぃふりれぇ!」

 

 

姫「取りあえず、服を口に含んで喋らずにシャキッとして下さい。汚い。子供が見てる前ですよ」

 

 

「ふぇ?……ふぁ」

 

 

姫の言葉を聞いて、クチャクチャと汚らしい音を立てて服を口に含んでいた上役の神は其処でやっと彼女の背後に見える絢香達の存在に気付き、すぐさま立ち上がり服を後ろに隠しながら姿勢と態度を引き締めた。既に手遅れだが……。

 

 

「げふんげふん!えー……初めまして、皆さん?私が桜ノ神・木ノ花之咲耶姫の後見人兼上司の、真姫(まき)です、ヨロシク!……んで、そんなことよりこの服の持ち主は何処よ?ん?ん?!」

 

 

姫「此処にはいませんし、居たとしても絶対に会わせません」

 

 

「ええぇぇぇぇえッ!!?じゃあ何故に私を呼んだしッ!!?」

 

 

姫「少なくとも貴女の欲を満たす為ではないのは確かです」

 

 

しっかり自己紹介したかと思えば、すぐに自分の欲望に忠実になり服の持ち主を探し忙しなく辺りを見回す上役の神……"真姫(まき)"に姫が冷静にそうツッコミを入れると共にショックを受け、そんな二人のやり取りを離れて見ていた一同も「本当に大丈夫なんだろうか……」と不安を覚えずにはいられないでいたのだった。

 

 

 

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