仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

397 / 519
番外編/桜龍玉と新たな神⑦(中編)

 

そして、あれから約一時間が経った。

 

 

探索を再開した零とノエルの二人は、ギルデンスタンの居場所と奴が集めた残りの桜龍玉が保管されている場所を探して慎重に先へと進み、それらしき場所か、或いはその場所に通じる部屋がないか隅々まで探しながらビルの最上階を目指し登り続けた。だが……

 

 

 

 

 

ノエル「――どういうこと?桜龍玉もギルデンスタンも見付からないどころか、幻魔の一匹とも遭遇しないだなんて……」

 

 

 

 

 

漸く最上階の前まで登り詰めたというのに、此処までギルデンスタンと桜龍玉に関する手掛かりが何一つ見付からないどころか、二人が侵入してからそれなりに時間が経っているにも関わらず、未だに幻魔一匹の姿すら見付かっていないのであった。

 

 

零「おい、どうなってる?此処まで何も無いと、流石に違和感しか感じんぞ……本当に此処が幻魔共の根城なのか?」

 

 

ノエル「それは、間違いない……最近まで何度も調査を繰り返して、此処が奴らの根城だと確信を持って、万全の準備をして、それで漸く……なのにっ……」

 

 

まさか、自分達が突入する前に既に違う場所にアジトを移して此処を破棄したのだろうか?そんな事を想像しながらノエル自身も困惑を隠せない様子でいたが、そんな彼女を見た零は薄い息を吐いて自分達が登ってきた階段と、上の階に続く一本道の階段の先に見える扉を交互に見た後、階段の上の扉を顎で指した。

 

 

零「取りあえず、此処まで来た以上は最後まで確かめてみるしかないか……どうやらこの先が最上階のようだし、あの扉の先に何かないとも限らん……気を抜くな」

 

 

ノエル「っ……分かってるわよっ」

 

 

気落ちし掛けていたノエルに葛を入れるように厳しい口調でそう言えば、ノエルもそう言い返し武器を構え階段を登っていく。そして零もその後に続いて階段を登ると、二人は階段を登り切ると共にすぐさま扉へと近づき、扉の取っ手をそれぞれ掴み顔を見合わせた。

 

 

零「準備はいいな?」

 

 

ノエル「当然……」

 

 

零「よし―――GO……!!」

 

 

―バァンッ!!!―

 

 

零の合図と共に、扉の取っ手を掴んだ二人の手が勢いよく扉を開け放っていった。扉が開かれ、零は懐からディケイドライバーを取り出して腰に装着し、ノエルはアサルトライフルを構えながら扉の向こうへと突入していく。その先にあったのは……

 

 

零「――ッ?!何……?」

 

 

ノエル「え……ウオ?折夏?!」

 

 

魚見「――!ノエル?ディケイド?」

 

 

折夏「…………」

 

 

零とノエルが突入した扉の向こうに広がっていたのは、埃を被っていたりクモの巣が張られてる無数の客席がズラリと並べられた、広々とした空間の寂れた劇場のような場所であり、更に零とノエルが突入した扉とは別の扉から、二人と同じタイミングで劇場内に突入してきた別チームの魚見と折夏の姿が其処にあったのだった。

 

 

別動隊との予想外の合流に一瞬互いの顔を見て驚くも、零達はすぐに我に返って小走りで互いへと駆け寄り合流していく。

 

 

零「お前達ももう此処まで辿り着いてたか、どうだ?そっちで何か見付かったか?」

 

 

魚見「いえ……此処に来るまで色々な場所を探しましたが、他の桜龍玉とギルデンスタンに関する手掛かりどころか、幻魔の一匹も見付からず……そちらは?」

 

 

ノエル「こっちも似たようなもんよ……ったく、何がどうなってんのっ?まさかアイツ等、本当に此処を捨ててっ……?」

 

 

零「…………」

 

 

これだけ探して幻魔一匹の影すら見付からないとなると、本当に奴らをこのビルを破棄してしまったのか。だが、何故急に?何の為に?それが分からず腑に落ちない様子で近くの壁に握り拳を叩き付けるノエルだが、零はそんな彼女を尻目に険しげな表情で劇場内を見回していく。

 

 

零(……何だ……この妙な違和感……?胸がざわつくような……何かが可笑しい……)

 

 

魚見「―――取りあえず、このホール内も調べてみましょう。まだ何も手掛かりはないとは言い切れませんし、落胆するのはそれからでも遅くはありません」

 

 

ノエル「……分かったわよ……望み薄だけどね……」

 

 

正体不明の違和感を拭えずに零がホール内に視線をさ迷わせていく中、この場所に何か僅かにでも手掛かりが残されていないかと調査すべく、手初めにホールの壇上の上を調べようと魚見とノエルが歩き出す。が、その時……

 

 

 

 

 

 

 

 

―シュウゥゥッ……パキイイイイイィィィィィィィィィィィィィィインッ!!―

 

 

『―――ッ?!』

 

 

零「ッ!何?!」

 

 

 

 

 

 

一同が動き出したその時、突如四人が入ってきた二つの扉が光の障壁に覆われて、封鎖されてしまったのであった。それを見た零達は突然の事態に驚愕し、慌てて扉へと引き換えして零が扉を阻む障壁に右手を伸ばすが、障壁に触れた瞬間に青白い火花が飛び散り、零の右手を弾いてしまった。

 

 

―バチイィィッ!!―

 

 

零「ッ!クソッ、やっぱり罠だったかっ!」

 

 

魚見「そんな……」

 

 

ノエル「……ってことは、まさかっ……!」

 

 

 

 

 

 

『―――ヒヒハハハハハッ……ノコノコと罠に掛かりに来るとは、やはり人間は単純で助かる……』

 

 

 

 

 

 

『……ッ!』

 

 

障壁で塞がれてしまった扉を見て一同が動揺する中、背後から突然零達を嘲笑うかのような不気味な笑い声が響き渡り、零達はそれを耳にし声が聞こえてきた方へと振り返った。すると、ホールの壇上の上に螺旋状の不気味な緑色の光が何処からか出現し、その光の中から、黒いマントを纏った一体の不気味な外見の異形が杖を付きながら姿を現した。

 

 

零「お前は……?」

 

 

『クククククッ、お初目に掛かるかな?我等が偉大な幻魔神をその手で屠った、憎たらしき世界の破壊者、そして、水ノ神よ?』

 

 

魚見「ッ!」

 

 

ノエル「ギルデン……スタンっ……!」

 

 

二人を知っているような口ぶりで零と魚見を交互に見つめ、クツクツと不気味に嗤う黒いマントの異形……幻魔界最高の科学者でありマッドサイエンティスト、ノエルと折夏を改造人間にした張本人であるギルデンスタンの出現に、ノエルが憎悪を宿した瞳で睨み付けるが、魚見はそんなノエルを片手で制止しながら前に出てギルデンスタンを睨み付けた。

 

 

魚見「……何故、貴方が私の事を知っているのです?幻魔神を倒した張本人の彼はともかく、私が知り得る限り、私達は貴方達に正体を知られないように動いていた筈ですが……」

 

 

『フン……桜ノ神の下から盗んだ仮面で顔を隠し、それで私が貴様の正体に気付かないとでも思ったのかね?』

 

 

魚見「ッ……」

 

 

零「籠手の事までバレてるのかよ……情報ダダ漏れし過ぎだろう」

 

 

魚見の正体どころか、魚見が持つ籠手の出所までギルデンスタン達に知れ渡っていた。その事実に魚見達も驚愕し零も腰に手を当てて呆れるようにそう呟くが、ギルデンスタンはそんな零の言葉に対し笑いながら首を横に振った。

 

 

『いやいや、私がそれを知れたのは偶然の産物だよ……私もまさか、こんな形でお前達の正体を知ることになるとは思わなかった……ハハハッ!天は何処までも私の味方のようだッ!』

 

 

零「?何を訳の分からん事を……頭のネジが跳んでるのか?」

 

 

ノエル「元から頭の可笑しい奴よっ、大勢の人間を自分の欲望と研究の為に犠牲にしたっ……こんな奴のせいでっ……!!」

 

 

『ン?……あァ……誰かと思えば私の『娘』ではないか。ハハハハハッ、まさか私の下から離れてまだ生きていようとは、驚いたよ、『クレシダ』!』

 

 

零(……?クレシダ?)

 

 

ノエル「クレシダじゃないッ!誰がアンタみたいなクソ野郎の娘なものかッ!私は私だッ……ノエル・コーマットだッ!!」

 

 

クレシダという名で呼ばれ忌ま忌ましげにそう吐き捨てると、ノエルはアサルトライフルの標準をギルデンスタンの額に合わせて引き金に指を掛けるが、そんなノエルを見てもギルデンスタンは未だに愉快げに笑い続けていた。

 

 

『ククククッ、それは残念だ……お前の『姉妹』は、私が与えた名を喜んで受け入れてくれたのだがねぇ……なぁ、『ゴネリル』?』

 

 

ノエル「……え?」

 

 

魚見「――ッ!ノエルッ!」

 

 

―バアァンッ!―

 

 

零「?!」

 

 

不気味に笑うギルデンスタンの言葉にノエルが思わずそう聞き返した瞬間、突然魚見が何かに気付いたように悲鳴のような大声を上げながら飛び出して自分の体ごとノエルを押し飛ばし、その直後、ノエルが立っていた場所の背後にある客席に一発の銃弾が打ち込まれ、零はその銃弾が放たれてきた方へ振り返った。其処には……

 

 

 

 

 

 

 

 

折夏「………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其処には、ノエルが立っていた場所に銃口から煙りが立つハンドガンを向けて、無表情のまま佇む少女……魚見とノエルの仲間であるはずの折夏の姿があったのだった。

 

 

零「お前っ……?」

 

 

魚見「クッ……」

 

 

ノエル「お……折、夏……アンタ……?」

 

 

折夏「…………」

 

 

折夏の手に握られたハンドガンを見て、今のノエルに向けて放たれた銃弾が折夏の手によるものだと一目で理解した零は驚愕を露わにし、一方でノエルは未だに何が起きたのか理解出来ず魚見と共に床に倒れたまま呆然と折夏を見つめるが、折夏は無言のまま銃を下ろし、超人的な跳躍力でギルデンスタンが立つ壇上の上まで飛び上がって着地し、ギルデンスタンの前にひざまづいて懐から二つの宝玉……魚見達が手に入れた六桜玉と七桜玉を差し出した。

 

 

ノエル「ッ?!それはっ!」

 

 

折夏「こちらが、残りの桜龍玉の六桜玉と七桜玉です……ギルデンスタン様」

 

 

『ご苦労……。流石は私の娘だ、言われた通りにしっかり仕事を熟してくれる。フフフフッ』

 

 

折夏が差し出す二つの桜龍玉を受け取り、クツクツと酷薄な笑みを浮かべるギルデンスタン。そんなギルデンスタンを零も微かに目を細めて睨み付けると、ギルデンスタンの前に跪く折夏に目を向けた。

 

 

零「どういう事だ……お前、コイツ等を裏切ってたのか?」

 

 

折夏「…………」

 

 

ノエル「何とか言ってよ……折夏っ……!私達、仲間だったんじゃないのっ……?!」

 

 

魚見「……そういう事ですか……」

 

 

零とノエルが疑問を投げ掛けるも、折夏はギルデンスタンの前に跪いたまま何も答えようとはしない。無言を貫き通す折夏にノエルも思い詰めた表情を浮かべるが、魚見はそんなノエルを横目にふらつきながら立ち上がり、ギルデンスタンを見据えながら懐から籠手を取り出した。

 

 

ノエル「……!ウオ?!」

 

 

魚見「……私の正体や籠手の事……そして私達が今夜このビルに突入する事も、彼女を使ってあらかじめ調べ済みだったという事ですか……ギルデンスタン」

 

 

『フフフッ……私もまさか、お前がゴネリルとクレシダを私の研究所から連れ出した不届き者だとは思わなかったよ。だから昨夜も、密偵からお前と其処の破壊者との戦いに、この二人が現れたと聞いた時は驚いた……まさか私の計画の邪魔をしていた盗っ人と同一犯だったとはなぁ……。いやだが、だからこそ、お前達がゴネリルを連れていてくれて助かったというものだ』

 

 

―パキィッ!―

 

 

そう言いながらギルデンスタンが指を軽く鳴らすと、折夏はそれに応えるように前に出ていき、淡い光と共にその姿が一瞬で変化していった。短かった筈の銀髪が腰まで伸び、まるで法師のような恰好と銀色の鎧を身に纏い、右手に薙刀を手にした姿……折夏の幻魔としての姿であるゴネリルへと。

 

 

『ゴネリルの脳改造は既に半分近くまで完了していてね……。私の手で、このように自在に操る事が可能なのだよ。まあ最も、改造が不完全なままだった為に行方が知れないせいで洗脳も使えなかったが、お前達が姿を現してくれたおかげでこうして我が娘を取り戻し、残りの桜龍玉も揃った。その点においては、お前達に感謝せねばならないかな?』

 

 

零(……ッ!まさか、俺を助けてコイツの部屋の場所を教えたのも、コイツから正体を聞き出す為に……?)

 

 

魚見「…………」

 

 

だとするなら、あの時には既に折夏はギルデンスタンに洗脳されていたという事なのか。そう推測しながら魚見に目を向けて彼女とのやり取りを思い出す零だが、魚見はそんな零の視線に気付かずに瞳を伏せて溜め息を吐くと同時に、瞬時に怪人Sへと変身して左腕のパッチ・アーマーから鋼鉄の剣を抜き取った。

 

 

零「ッ!おい、どうする気だ?」

 

 

『どうも何もありません。私達の目的はギルデンスタンを討ち倒し、奴の計画を阻止して、奪われた桜龍玉を全て回収する事……作戦に変更はありません』

 

 

ノエル「ちょ、ちょっと待ってっ!それって……折夏とも戦うって事っ?!」

 

 

『……障害となるのなら、それもやむを得ないでしょう。このまま幻魔神の復活を許す訳にはいきませんし、彼女が幻魔として立ち塞がるのなら、彼女を仲間として迎え入れた私が、この手で……』

 

 

ノエル「そんな……ちょっと待ってよウオッ!そんなのっ!」

 

 

それはつまり、幻魔として立ち塞がる折夏を倒してでもギルデンスタンを止めるという事か。淡々とした声でそう語る怪人Sにノエルが前に出て止めようとするが、怪人Sはそんな彼女を素通りしギルデンスタンとゴネリルに立ち向かおうとすると、そんな怪人Sを零が横から止めた。

 

 

『!ディケイド……?』

 

 

零「……お前はギルデンスタンを倒して、六桜玉と七桜玉を奪い返せ。あの女は、俺が何とかする」

 

 

ノエル「え……何とかって……?」

 

 

『何をするつもりですか?……彼女は奴の手によって直接脳を弄られて、もう元に戻す事が不可能な域にまで改造されている……こうなる事は覚悟出来てた……彼女を救うには、もう……』

 

 

零「…………」

 

 

仮面で表情を見えないが、何処か思い詰めたような声でそう呟き、顔を俯かせる怪人S。そんな彼女の様子を見て零も微かに目を細めながら口を閉ざすと、壇上の上から飛び降りこちらに向けて薙刀を身構えるゴネリルを見据え、口を開いた。

 

 

零「こうなる事は最初から予想していたって事か……アイツはもう自分の手じゃ救えないって事も、何時かアイツが、お前達を裏切るかもしれないって事も……そうなった時は、自分の手で討つと決めて」

 

 

ノエル「……え?」

 

 

『…………』

 

 

真剣な口調で零にそう問い掛けられるも、怪人Sは口を閉ざして何も答えない。そして、その間にも劇場内の至る場所に闇が発生し、其処から今まで姿が見られなかった人造幻魔の大群が現れて零達を包囲していく。

 

 

零「それでもアイツを連れていたのは、完全に幻魔にされてしまうアイツを見捨てられなかったからなのか、それともギルデンスタンの元に置いておくのは危険な性能だったからか……俺には分からんが、前者ならまだ諦めるのは早いだろ。手ならまだこっちにある」

 

 

『……どんな手があると?彼女の脳に再び手を加えれば、彼女は記憶だけでなく、辛うじて留められた彼女の人格まで崩壊してしまう……貴方が其処まで義理立てする必要は……』

 

 

零「義理を立てなきゃならない理由が一応あるんだよ。操られていたのかどうか知らんが、俺も一度アイツに助けられてるんでな……それに経験談から言わせてもらうと、知り合いの女に目の前で死なれるってのは……結構来る物があるんだよ……一緒に過ごした時間が長かろうが、短かろうとな……」

 

 

ノエル「……?」

 

 

気のせいか、そう語る零の横顔が一瞬、ノエルには切なげな顔に見えた。しかし零はすぐに真剣な表情へと切り替わり、左腰のライドブッカーから二枚のカードを取り出すと、取り出した二枚の内の一枚のディケイドのカードを身構えた。

 

 

零「悩んでる時間もない。アイツを救う気があるなら、お前達は黙ってとっととギルデンスタンを仕留めろ、周りの雑魚とあの女は俺が引き受ける。変身ッ!」

 

 

『KAMENRIDE:DECADE!』

 

『ATTACKRIDE:ILLUSION!』

 

 

『…………分かりました…………彼女を頼みます…………ノエルッ!』

 

 

ノエル「!わ、分かったっ!」

 

 

『今生の別れは済んだか?では、もう一人の娘を返してもらうついでに、世界の破壊者と水ノ神という今までにない実験材料も一緒に頂こうか……行けっ!我が造魔達っ!我が息子達よっ!奴らを捕らえるのだっ!』

 

 

『シャアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!』

 

 

『グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!』

 

 

『……!!』

 

 

ギルデンスタンが変身したディケイドと怪人S達を指差し高らかに叫ぶと共に、無数の人造幻魔……造魔達とゴネリルは一斉にそれぞれの武器を構えながら三人に目掛けて突っ込んで斬り掛かっていき、それを見たディケイド達も咄嗟に客席を飛び越えて造魔達が振りかざす武器をかわしていく。

 

 

そして怪人Sとノエルはそのままギルデンスタンに向かって客席を飛び越えながら突っ込み、ディケイドはイリュージョンを使用して生み出した分身に造魔達の相手を任せ、その隙に本体はゴネリルに向かって走り出して戦闘を開始していくのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◇

 

 

 

 

―廃ビル前―

 

 

ルーノ『―――ふうむ……此処が例の幽霊ビルという奴ですかな?』

 

 

ディケイド達がギルデンスタンの計略に嵌まり戦闘を開始したその頃、廃ビルの正面玄関から月光に照らされる巨大なビルを見上げる複数の人影……姫、紗耶香、桜香、アシェン、そして馬鬼に跨がるドールが鎧を纏った姿であるルーノと、その後ろに乗ったなごみの姿があった。

 

 

姫「上役の話では、此処に奴……ギルデンスタンが身を隠し、怪人Sとその仲間が今夜突入する予定だったらしいが……どうだ、アシェン?」

 

 

―キュイィィィィィッ……ピピッ!―

 

 

アシェン「――はい、確かに。今から約一時間程ほどに、何者かが建物内に侵入した形跡があります」

 

 

なごみ「つまり、怪盗の皆さんはとっくに虎穴の中へ……という事ですか」

 

 

桜香「此処から離れた場所に怪人S達の物と思われるヘリもあったし、多分まだこの中でしょうね……」

 

 

大型ヘリの方には、万が一怪人S達が戻ってきた時に備えて絢香を待機させてきたが、恐らくその心配も杞憂に終わるかもしれない。幻魔やそれ以外の多くの人魔と戦い続けてきた彼女達にしか分からないだろうが、このビル全体が今、異様な気配に覆われているのである。もしかしたら今現在、この建物の中の何処かでギルデンスタンと怪人S達の戦いが繰り広げられてるのやもしれない。

 

 

紗耶香「それにしてもまさか、ギルデンスタンの奴が生き延びていたとはな……私達がしっかり確認しておけば……」

 

 

桜香「今更後悔しても後の祭りでしょ。奴を取り逃がした尻拭いは、私達の手でケリを付けるしかないわ」

 

 

姫「ああ、今回は……いや今回も、私も無関係とは言えないしな」

 

 

そう言いながら、姫の視線が背後の馬鬼……の後ろに向けられ、それを追うように一同の目もそちらに向けられていく。其処には……

 

 

 

 

 

真姫『――ンンブウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーッッッ!!!!!ンンンンンンンンンンンンンンンンンンーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

布団で丸められた上に馬鬼の片足に繋がれた縄でグルグルに縛られ、喋ることも出来ず篭った声でなにやら奇声を発する真姫の姿が其処にあった。

 

 

桜香「……桜ノ神の籠手の盗難を見逃す所か、まさか盗難の手助けをしていただなんてね。ほんとハタ迷惑な神だわ……」

 

 

姫「上役にも上役なりに何か事情があったのだろうがな。それが許される事かどうかは置いといて……彼女に関する責任は私が代わりに負う……私も、個人的な理由で怪人Sに会わなければならなくなったしな」

 

 

紗耶香「?個人的な理由、とは……?」

 

 

手首を回して骨の音を鳴らしながら何時になく真剣な様子を浮かべる姫の意味深な言葉が気になり、紗耶香が怪訝な顔でそう聞き返した。その時……

 

 

 

 

 

 

―チュドオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオォォンッッッッ!!!!!!―

 

 

『……ッ?!!』

 

 

 

 

 

 

廃ビルの最上階の一角から突如、巨大な轟音と共に、爆発と閃光が炸裂したのであった。爆風と共に無数の破片が夜の空に飛び散っていくその光景を目の当たりにし、姫達も突然の事態に驚愕で目を見開きながら、爆発が巻き起こった廃ビルを見上げた。

 

 

紗耶香「あ、あれはっ?!」

 

 

桜香「爆発……最上階から……?!」

 

 

アシェン「……恐らくはと言うか、間違いなく彼処でやがりますね……怪人S達とギルデンスタンが戦っているのは」

 

 

姫「ッ!最上階へ急ぐぞッ!ギルデンスタンを相手に彼女達が戦っているとなると、奴の事だ、きっとまた非道な罠を仕掛けているに違いないっ!」

 

 

数百年前にも嘗てギルデンスタンを相手に戦った事がある経験からか、桜香達にそう呼び掛けて廃ビルの中へ彼女達と共に突入しようとした姫だったが、彼女達は正面玄関を目にしてその足を止めてしまった。何故なら……

 

 

―シュウゥゥッ……―

 

 

『アァァァァッ……』

 

 

『ギシャアアァァァァッ!!』

 

 

廃ビルの正面玄関前に突然前触れもなく闇が出現し、其処から数え切れない数の造魔達が奇声を発しながら姿を現したのである。まるで、中に入ろうとする姫達を阻むかのように。

 

 

桜香「ッ!私達を入れさせないつもり?!」

 

 

なごみ「邪魔物対策も万全なようですね、どうしますか?」

 

 

姫「決まってるさ」

 

 

間髪入れずに即答すると、姫は何処からか取り出したイクサベルトを腰に巻き、紗耶香と桜香も籠手をそれぞれ取り出して右腕に装着していき、姫は続けて取り出したイクサナックルを掌に押し当てた。そして……

 

 

『READY!』

 

 

姫「強行突破だ、コイツ等を蹴散らして最上階を目指すッ!変身ッ!」

 

 

『変身ッ!』

 

『F・I・S・T・O・N!』

 

 

電子音声と共に、それぞれ変身動作を行ってライダーへと変身する姫達。そして変身を完了したイクサF達は得物を手にして迫り来る造魔達と対峙していくと、アシェンも拳を構えながら馬鬼に跨がるルーノに声を掛けた。

 

 

アシェン「お嬢様をお願いします、ドール様。万が一にもお嬢様を傷物にした時には――」

 

 

ルーノ『心配めさるなやアシェンさん、なごみさんのぷるぷるお肌と貞操は私がしっかり守ってみせましょう!いざって時にゃ、この騎英の手綱(ベルレフォーン)で光を超えて突貫してやるぜぇい!(`・ω・´)』

 

 

なごみ「その場合私も一緒に敵陣の中に突撃する事になってしまいますが、頼もしさは伝わってきますね」

 

 

ルーノ『あ、なんでしたらなごみさんもボンッキュッボンな大人化&変身とかしてスポット参戦しちゃいます?私、丁度そういう道具を持ってますし』

 

 

なごみ「魅力的なお誘いですが、遠慮しておきます。私が此処でそんな事をしては全世界のなごみんファンが血涙を流しながら発狂してしまいますし、道具に頼らずともこれからボインボインになる予定ですので」

 

 

ルーノ『ワオ、何か今とんでもねぇフラグを投下されたような気ぃしますけど、残念です。ではあれだ、なごみさんのお母様みたいな魔法少女とかどーじゃろな?』

 

 

なごみ「ふむ……魔法少女ですか。アイデアは悪くはありませんが、そうなると魔法のステッキが必須ですね……ブツは?」

 

 

ルーノ『つカレイドステッキ』

 

 

龍王『お前達少しは緊張感という物を持てんのかぁッ!!あと貴様も何かあからさまに胡散臭いステッキを渡すなぁッ!!』

 

 

鬼王『……昨夜は無理とか言って嘆いてた癖に、しっかりツッコミ出来るようになってるじゃない……』

 

 

イクサF『弱気でいるよりはずっとマシさ、行くぞッ!』

 

 

背後で胡散臭いステッキをなごみに渡そうとしているルーノにツッコミを入れる龍王を背中に、イクサFは後ろ腰から取り出したイクサカリバーを剣形態に切り替えながら先陣を切るように造魔達へと斬り掛かり、正気に返った龍王と鬼王、そしてルーノも馬鬼の手綱を操ってその後に続き、廃ビルの中へと突入していくのであった。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。