仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第一章/ライダー大戦②

 

 

それから約十数分後。あの後必死に逃走を試みようとした零はなのはの手によって締め上げられた後、半ば強引に頭を下げさせられて男達に謝罪しどうにかその場を収める事が出来た。

 

 

そしてその後、そのまま六課に連行しようとするもなのはの技が極まり過ぎたせいか零がまともに動けなくなってしまい、仕方がないと一旦公園のベンチで休憩し零が回復するのを待つ事になった。

 

 

零「ぐぅおおおっ……未だに腕の感覚がねえぞっ……どんだけ馬鹿力込めやがったんだお前はっ……」

 

 

なのは「自業自得。人様に迷惑を掛けた上に見ず知らずの人達の前で人の胸捕まえて、散々好き勝手言ってくれたんだから当然の報いでしょ」

 

 

零「だからそれはさっきから何度も謝っとろうがっ……!」

 

 

未だ快調に至らない左腕を揉みほぐすようにマッサージしながらそう言い返す零だが、そんな零をジトーとした目で睨んでいたなのはは自身の膝の上に両肘を立て、頬杖を付きながら溜め息を漏らした。

 

 

なのは「全くもう……私達にそうやって簡単に謝れるのに、なんであの人達にも素直に謝る事が出来ないのかなぁ、零君は……」

 

 

零「それも何度も言ったろっ……。確かに出来が良いとは言えないだろうが、俺は別にあの写真を失敗作とは思ってないんだっ。自信満々で出した物を悪いとも思っていないのに頭を下げられる筈も無し、寧ろ売り物にならないと自覚して商売してるとしたらそっちの方がタチ悪いだろう?」

 

 

なのは「ああ言えばこう言うんだからっ……だったら何でさっき、「まともな写真を撮りたくなった」なんて言ったのっ?あの写真を失敗と思ってないなら、わざわざ上手く撮れるようになる必要もないでしょっ?」

 

 

そもそもな話、彼が人からお金を貰って写真を撮影する様になったのは此処最近の話だ。

 

 

JS事件解決前まではあくまでも個人の趣味として写真を撮っていたし、それ以外殆ど無趣味で、自分の写真の腕も自覚している彼がこんな顧客の不評を買うしかない無駄な商売をするとも思えない。

 

 

何せ今まで局員として働いて貰ってきた給料や報酬でさえ使い道が思い付かないと今も自分の口座に腐らせているのだから、金銭的に困ってるというのも恐らくないだろう。

 

 

だのに一体何のつもりで彼等や自分達を此処まで振り回すのかと、納得いかない様子でジト目を向けるなのはの視線も気にせず、零はベンチから立ち上がって無事である利き腕で適当な風景を撮影していく。

 

 

零「出来に不満がないとは言え、何事においても向上心というモノは大事だろ?普通の写真も撮れるようになれば、その分趣味の幅だって広がるしな。……後はまぁ、そうだな……」

 

 

なのは「……?」

 

 

今まで饒舌に話していたのに突然歯切れが悪くなり、口を噤む零。そんな零の様子の変化になのはも訝しげに眉を潜めると、零は機動六課がある方角の空を見つめ……

 

 

零「……まぁ、こんな不出来な写真を『門出の記念に欲しい』だなんて言われて、らしくなく張り切り過ぎてたとこは確かにあったかもな……」

 

 

なのは「え……」

 

 

ポツリと小声でそう呟いた零の言葉に、なのはが僅かに目を見開き思わず聞き返すが、零はそれ以上語らず再び写真撮影に戻ってしまう。

 

 

一方のなのはは今の零の言葉の意図が読めず怪訝な表情を浮かべていたが、その時ふと、彼女の脳裏に数日前のとある記憶が過ぎった。

 

 

それは六課の運用期間終了の明確な日程が発表された日。

 

 

部隊を設立した日から分かっていた事とは言え、改めて突き付けられる終わりに感傷を覚えながらも、残り限られた時間の中で新人達の教育に力を注ぐ事に決意を改めたあの日の訓練終わりに、彼がFWメンバーから何かをせがまれていたのを目にした気がする。

 

 

今の彼の言葉の起因が其処にあるのだとすれば……

 

 

なのは「──ほんと素直じゃない……そういう事なら先に相談してよ……こんな事しなくても、言ってくれたら私や他の皆も違うやり方で手伝えた事があったかもしれないのにっ」

 

 

零「……俺が生半可なやり方じゃ上達しないってのは、長年お前が一番近くで見てきてよく知ってるだろう?期間満了まで時間も少ない以上、こうでもして自分を追い込まないと間に合うかどうか分からんしな……ま、結果はこの通り大失敗だったんだが、っと」

 

 

―カシャッ!―

 

 

なのは「わっ……!ちょっ、今気が抜けてる時の顔撮ったでしょうっ?!消してよ今の写真っ!」

 

 

零「無茶を言うなよ、最近のデジカメじゃあるまいし……まあしかし、今のは中々良い顔してたじゃないか?FWの奴らに見せる写真の楽しみが更に増えたなぁ」

 

 

なのは「ほんっとに止めてっ!ああもうっ、何で私達そのカメラをプレゼントしちゃったんだろうって今更ながら後悔してきたっ……!」

 

 

零「ほほーう?過去を見つめ直すのは良い事だ、その調子で今まで自分がどれだけ無茶無謀な真似を繰り返してきたかを改めるといい。特にお前にとってはいい薬になるだろうよ」

 

 

なのは「それ零君が言えた口じゃないでしょーっ?!ついこの前だって、私とフェイトちゃんに来てた任務の受注書を無断で書き替えた上に一人で勝手に引き受けたりなんかしてっ!まだこの前の事件から日にちも経ってないのにその任務で無茶したせいで、アルティさんも調子悪くしてメンテナンス行きになったの忘れたのっ?!」

 

 

零「アルティはともかく俺は良いんだよ、男だし。ワーカホリックのお前と違ってこうやって趣味で適度に息抜きもしてるしな。心のゆとりも身体の出来も違うのさ」

 

 

なのは「良い訳ないよっ!差別だよそれっ!」

 

 

ガーッ!!と、抗議100%で零を睨みながら大音量で叫ぶなのはだが、この会話も何度も繰り返してきた零の方は慣れた様子で何処吹く風とばかりに明後日の方を向きながら撮影を続けていき、今度は公園の池を撮ろうとファインダーを覗き込んだ、その時……

 

 

 

 

―ブォオオオオオオオオオオオオオオンッ……―

 

 

零「……ッ?!」

 

 

 

 

ファインダーから見る風景が突然銀色のオーロラのように歪み始め、そのオーロラから一人の青年の姿が徐々に映し出された。

 

 

『ディケイド……今日、貴方の世界が終わりを告げます……』

 

 

零「なっ……」

 

 

オーロラから出現した謎の青年の口から告げられた意味深な言葉。その内容に零も動揺し思わずカメラから目を離し顔を上げるが、其処には銀色のオーロラも、青年の姿もなく何処かへと消えてしまっていた。

 

 

零「……何だ、今の……ディケイド……?」

 

 

なのは「もうほらっ!動けるようになったんなら早く帰るよっ!まだ他にも苦情に来た人達への謝罪とお金の返金が残ってるんだからっ!」

 

 

再びファインダーを覗き青年の姿を探そうとする零だが、痺れを切らしたかのように零の両肩を強めに揺らしてくるなのはに、零は僅かに戸惑った眼差しでなのはの方に振り返った。

 

 

なのは「……?何?どうしたの?」

 

 

零「なのは……お前、今の……」

 

 

なのは「今の?……あ、ごめん、もしかして今肩掴んだの痛かった……?」

 

 

零「……いや、それは大丈夫だ……ただ……」

 

 

なのは「?」

 

 

さっきの謎のオーロラと青年の姿が見えていなかったのか、なのはの様子は特に先程と変わりない。それでますます困惑を深めた零はもう一度池の方に振り向き、先程の青年について考え込む。

 

 

零(何だったんだ今のは……白昼夢?まさか、俺まで働き過ぎで幻覚を見たなんて言うんじゃないだろうなっ……)

 

 

なのは「……ーい……おーい……ねぇ、本当に大丈夫なの零君っ?」

 

 

零「ん……あぁ、平気だ……そうだな……今日はもうそろそろ戻るとするか……」

 

 

なのは「そ、そう?何か急に素直になったけど……どっか可笑しくなった訳じゃないよね……?」

 

 

零「何でちょっと素直に従っただけで頭の心配までされなきゃならんのだっ……はぁ、いいから帰るぞ……何か急にドッと疲れが出てきた……」

 

 

なのは「???」

 

 

こんな真昼間から幻を見るとは、これではなのはをワーカホリックとは笑えない。今日は大人しく彼女の言う通りに従っておこうと踵を返し、不思議そうに小首を傾げるなのはを尻目に六課への帰路に付こうと歩き出した、その時……

 

 

 

 

―ブオォォォォオンッ!―

 

 

零「……ッ?!」

 

 

なのは「え……な、何ッ?!」

 

 

 

 

突如零達の目の前から灰色のオーロラが何処からともなく現れ、そのまま壁のように猛スピードで迫ったかと思えば二人の前を潜り抜けるように通り抜けていったのである。

 

 

零(今のは、さっきのっ……?!)

 

 

なのは「な、何だったのっ?今、確かっ……!」

 

 

「──きゃあああああああああああああああああああっっっっ!!!!」

 

 

零&なのは「「?!」」

 

 

先程幻覚かと思われた銀色のオーロラが再び出現し驚愕を露わにする零の隣でも、初めて目撃した銀色のオーロラになのはも動揺を隠せずにいたが、今度は何処からか悲鳴が響き渡り、慌てて今の悲鳴が聞こえてきた方へと振り返ると、其処には……

 

 

―ブォオオオオオオオオオオオオオオオンッ……!!!!―

 

 

──ミッドの上空を先程と同じ銀色のオーロラが覆い尽くし、更にはそのオーロラが次々とビルや建物を呑み込んで消滅させていくというありえない光景が広がっていたのだ。

 

 

突然のそんな非常事態を目の当たりにして零達だけでなく周りの人々もパニックになる中、更に消滅したビルから数え切れない程の数の巨大な怪物達が翼を羽ばたかせて姿を現した。

 

 

零「何だありゃっ……?!」

 

 

なのは「か、怪物っ……?!って、待って、何かこっちに来てるっ?!」

 

 

オーロラに続いて突如現れた謎の怪物の群れを見て戸惑う暇もなく、空を慌てて指指すなのはの言う通り、複数の巨大な怪物の一体が群れから離れて低空飛行で零となのはに目掛けて迫り来る姿があった。

 

 

零「まずいっ……!なのは!早く逃げ──!」

 

 

―ドゴォオオオオオオオオオオオオンッ!!!―

 

 

零「うぉおおおおおおおおおおッ!!?」

 

 

なのは「キャアァァァァァァァアッ!!?」

 

 

迫り来る巨大な怪物を見て零が咄嗟になのはに逃げるように呼び掛けようとするが、それよりも早く怪物が零となのはの間を横切り、二人を左右別々に吹き飛ばしてしまう。

 

 

更にそれだけで終わらず、直後、怪物が横切った場所に突然銀色のオーロラが壁のように現れ、二人の間を隔ててしまった。

 

 

零「ッ?!なのはッ!!」

 

 

なのは「ッ……うぅっ……な、何がっ……って、れ、零君っ?!」

 

 

オーロラの向こう側に隔てられたなのはを見て慌てて零がオーロラの壁に駆け寄ると、怪物が横切った衝撃で地面に倒れ込んでしまっていたなのはも壁の存在に漸く気付き、ふらつきながら身を起こしオーロラの壁に近付いていく。

 

 

零「おいなのは、無事かっ?!何処か怪我はっ?!」

 

 

なのは「わ、私は大丈夫……!それより何なのこれっ?!結界っ?障壁っ……?!」

 

 

零「いや、俺にも分からないが何かが違う!コイツは一体っ……?!」

 

 

二人の間を隔てる壁を何度も叩いたり殴り付けたりしてもビクともしない。唐突な事態の連続に状況が一切呑み込めず困惑が深まるばかりな中、突然壁の色が徐々に濃くなっていき、向こう側に見えるなのはの姿が見えなくなり始めていた。

 

 

零「ッ?!お、おいなのはっ……?!何だどうなってるっ?!なのはァッ!!」

 

 

なのは『──?!──!!──ッ!!!』

 

 

必死に壁を殴って向こう側のなのはに呼び掛け続ける零だが、それも虚しく徐々に壁の色が濃くなるにつれてなのはの声も届かなくなっていき、やがて完全に向こう側も見えなくなってしまった。

 

 

零「お、おいッ?!クソッ!一体何がどうなってるんだッ?!」

 

 

なのはの姿が完全に見えなくなってしまい、零は苛立ちをぶつけるように壁を殴りながら彼女を探しに急いでその場を離れようとするが、振り返った先には自分達がいた公園はなく、何故か空に満月が浮かぶ、何処かの見知らぬ街中の夜の広場のような場所へといつの間にか変わっていた。

 

 

零「……何だ……これ……?」

 

 

「──どうやら、始まったみたいですね……」

 

 

零「ッ?!」

 

 

いつの間にか場所が変わっただけでなく、空も夜中にまでなっていて零が不思議そうに辺りを見回していると、突然聞き覚えのある声が聞こえて振り返った。すると其処には、先程の公園でファインダーに映っていた青年がゆっくりとこちらに向かって歩いて来る姿があった。

 

 

零「お前……さっきの……!」

 

 

「貴方のバックルとカードは何処です?」

 

 

零「……?バックル?カード?……何の事だ?」

 

 

いきなり投げ掛けられた質問の意味が分からず零は首を傾げながら青年に聞き返してしまうが、青年はその問いに何も答えず、その身体が徐々に透明になって消えていく。

 

 

「急いでください……世界を救うには、貴方の力が必要です……」

 

 

零「お、おい待て!何の話をしてんだ?!おいッ!!」

 

 

徐々に消えていく謎の青年に向けて叫ぶ零だが、青年の姿はそのまま透明化していき、周りの景色に溶け込むように何処かへと完全に消え去ってしまった。

 

 

零「クッ、何なんだクソッ!……とにかく、早くアイツを探さないと……!」

 

 

突然起きた不可解な異変に、消えた謎の青年。理解不能の展開ばかりが続き未だに混乱が収まらないが、零は青年の言葉が気になりながらも、取り敢えず今はなのはを探し出して無事を確かめなければと、急いでその場から走り出していくのだった。

 

 

 

 

 

 


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