仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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番外編/桜龍玉と新たな神⑨(前編)

 

―廃ビル・七階フロア―

 

 

そしてその頃、ビルの屋上から落下してきた零と魚見を偶然回収したイクサFは馬鬼と共に七階フロアへと戻り、造魔を全て撃退した七階フロア内に一時留まり零と魚見の傷の治療をしていた。

 

 

因みに零がノエルと折夏と鉢合わせなかったかと一同に問い掛けたが、どうやらイクサF達も二人に会っていないらしく、もしかするとまだ上の階層の何処かで身を隠しているのかもしれないと予想し、索敵能力に優れたアシェンを連れ鬼王と龍王が二人を探しに向かっている。

 

 

零「―――今度こそ本当に死んだかと思ったな……」

 

 

ドール「毟ろ、あのお馬さんに撥ねられて何故死なないのかマジで不思議ですね。なのはさん達に鍛えられ過ぎじゃね?……いや普通か」

 

 

なごみ「苦労人は無駄にしぶといと言われてますからね、毟ろあの程度の事故に耐えられないようでは苦労人は名乗れませんよ」

 

 

零「お前等の中の苦労人の定義はどうなっとるんだっ!」

 

 

ドールの治療を受けている最中の身体でありながら、何だか偉く失礼な事を口を揃えて語るドールとなごみに鋭いツッコミを入れる零。そしてそのすぐ近くでは姫の治癒術を受ける魚見の姿もあり、魚見は零と話すドールとなごみを見て何処となく驚いたような様子を浮かべていた。

 

 

魚見「……驚きました……まさか、あんな子供達まで幻魔と戦っていただなんて……」

 

 

姫「まぁ、子供とは言っても片方は人形で、女の子の方は子供らしからぬ思慮深さではあるがな。どちらも油断ならない相手だよ」

 

 

魚見の傷を治癒術で癒しながら可笑しそうに笑う姫。魚見はそんな姫の顔を無表情のまま見上げると、馬鬼の方に振り向き、馬鬼の足に結ばれた縄で縛られてる真姫を見て再び口を開く。

 

 

魚見「上役があの様子だという事は……貴女達は既に、こちらの経緯は何もかも承知済み、という事でしょうか……」

 

 

姫「……一応、な……君が無断で籠手を盗んだ事も、上役がそれに協力していた事も……それに――」

 

 

魚見「…………」

 

 

魚見の右腕の傷がみるみる内に癒えて完治されていく。しかし魚見はその様子を見る事なく姫から目を逸らしたまま無言となり、姫も治療する箇所を変えながら目を細める。

 

 

姫「―――君があの事件の際、フォーティンブラスに捕まった私を助ける為に、"水ノ神"の力を使って現世に攻め入ろうとしていた事もな……」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

数時間前、桜ノ神社……

 

 

姫「―――魚見が……黄泉の亡者達を先導して、フォーティンブラスと戦おうとしたっ?!」

 

 

逃亡した真姫を全員で縛り上げて籠手が盗まれた真相を洗いざらい吐いて貰った後、姫は居間で真姫と二人きりになり、彼女から先の事件の裏で起きていた事件を聞かされ驚愕の声を上げた。

 

 

真姫「そっ。無断で地獄に行って、数万の罪人達を引き連れて現世に降りようとしてね。彼女の神権の力……本来の役目である死んだ魂達を黄泉の国に誘う黄泉送り。その逆の、亡者達を黄泉から現世に誘い二度目の生を与える黄泉還りでね……三途の川を自由に行き来出来る、『死神』の彼女なら出来る芸当だ」

 

 

姫「そんな……黄泉還りは神界では禁忌として定められてるのに……彼女はその禁を破ったとっ……?」

 

 

真姫「彼女の真面目な性格を良く知ってる君からすれば、信じられない話だろうさねぇ。私も、実際に拘束された彼女を目にするまでは半信半疑だった訳だし」

 

 

姫「……っ……」

 

 

飄々とした調子でそう語る真姫の説明を聞き、姫は顔を俯かせて唇を噛み締めた。親友の彼女が何故禁忌を破ったのか。その理由が、フォーティンブラスと戦おうとしていたという話から大体の想像が付いてしまったからだ。

 

 

姫「……私のせい、ですか……私を幻魔神の下から救い出そうとして、禁じられていた筈の黄泉還りを使って現世に攻め入ろうとした、と……」

 

 

真姫「有り体に言えばそうなるだろうね。姫ちゃんが幻魔神に捕まったって話が神界に広まった際に、彼女が上役達の下に乗り込んできたのさ。君を助けに向かわせて欲しい、なんて申し込んで来てさ」

 

 

姫「…………」

 

 

真姫「けど上役達は保身を優先したいからそんな話は聞き入れず、せっせと神滅兵器の起動に私達を働かせ、彼女も強行手段に出て禁を破る事にしたらしいよ。随分本気だったみたいでね、彼女が蘇らせようとした亡者共はどいつもこいつも罪深い罪人達ばかりで一筋縄ではいかないような連中ばかり……おかげで彼女を捕らえるのに苦労したと、彼女を捕らえた神達が口を揃えて言っていたよ」

 

 

姫「……その後、彼女は?」

 

 

真姫「無論拘束された後に、罰は与えられたよ。本当なら悪神として裁かれても可笑しくない事件だったけど、彼女の役職の水ノ神は君みたいに有象無象の誰でもいい桜ノ神とは違って人を選ぶからね。彼女を裁きまた別の水ノ神を用意するのは面倒だから、水ノ神の力を封印して一ヶ月の投獄さ。まあ、君みたいに先の大乱の責任を全て負わされ神界からの『永久追放』、なんて罰よりはずっとマシな方だろ?」

 

 

姫「……彼女の神氣を一切感じ取れないのは、それが原因ですか……では、どうやって彼女は私の籠手を?」

 

 

投獄されていたのならば、彼女はどうやって牢獄から抜け出して籠手を奪取したのか。それが気になり姫が真姫に疑問を投げ掛けると、真姫は何でもない調子で口を開いた。

 

 

真姫「察しの良い君なら、もう気付いているんじゃないのかい?例え彼女が牢獄から抜け出させたとしても、水ノ神の力を封印された状態で君の籠手を盗み出すなんて事は不可能に近い……つまり、彼女は牢獄から抜け出してから籠手を手に入れたのではなく、"籠手を手に入れてから牢獄から抜け出した"……と考えた方が、説得力があるんじゃないかな?」

 

 

姫「……まさか……」

 

 

真姫「そっ……"私"だよ?先の事件の騒乱の中で封印されていた籠手の封印を解き、捕われてた彼女に籠手を渡して逃がしたのは……ね」

 

 

封印を解いて籠手を持ち出した犯人は魚見ではなく、自分だった。包み隠そうともせず、飄々とした調子で笑いながらその真相を語る真姫に姫は僅かに目を細め睨み付けた。

 

 

姫「どういうつもりですか……いえ、貴女の質の悪さは昔から知っていましたが、今回は度が過ぎてる……何のつもりでこんなことを……?幻魔神復活を止める為ですか?」

 

 

真姫「それは彼女を逃がした後に付け足された目的の一つに過ぎないよ。本来の目的は、桜龍玉を集めてるギルデンスタンの始末さ。あの事件の裏でコソコソと動き回っていたのは知っていたから、目障りに思ってね。だから彼女に奴の始末を依頼したって訳さ。案外、潔く聞き入れてくれたよ?」

 

 

姫「ッ!白々しい、彼女が断らないと知った上でそんな話を持ち掛けたのでしょ……!」

 

 

真姫「当然。じゃなきゃ、籠手の封印を解いて彼女の脱走を手助けしたりなんてしなかったよ。こんな事がバレれば私の首も間違いなく跳ぶし、十分な可能性がなければやらなかったさ。あの時点で利用出来そうなのは彼女しかいなかったし、ギルデンスタンを放置していては桜龍玉を揃えて良からぬ事を願われ兼ねない。だから早めに潰しといた方が良いと彼女を嗾けた」

 

 

姫「ッ……脱走した彼女がどんな処遇を受けることになるか……それを分かった上でですか……」

 

 

真姫「ん?忘れたのかい?私が慈悲や遠慮とは無縁な女だって。そもそも私の中での優先順位っていうのは、世界の存続とその世界に生きる命達を生き長らえさせる事だ。その為だったらそれ以外の物はどうだっていいし、それを脅かす物は容赦なく排除し、その為の犠牲だって顧みないよ。君だろうと、水ノ神であろうと……君が契約を交わしたディケイドだろうとね」

 

 

姫「……何故其処で彼の名が出てくるのですか……」

 

 

真姫「君も白々しいねぇ。本当は気付いてるんだろ?幻魔神の謎の復活の原因が彼の出現にあって、彼の中に破壊の神氣と再生の神氣を司る、二つの因子があるって……。彼は世界に本来起きない筈のイレギュラーを発生させる、十分に異端で危険な存在じゃないか」

 

 

姫「っ、しかし彼は……!」

 

 

真姫「私達の世界を救ってくれた、だろ?私もそれは承知しているけど、皆が皆そう思うだけでは済まないさ。保身派の上役達は彼を即刻先の事件の元凶として捕える事を唱えたけど、彼と契約した君を監視役として付いていかせる事で黙らせた……だから、私は君をまだ桜ノ神でいさせてあげてるんだ。いざという時、君に彼を討ってもらう為にね」

 

 

姫「……っ……」

 

 

上役の神々が自分に課した役目の一つ。それを改めて突き付けられた姫は唇を噛み締めながら目を逸らして拳を強く握り、真姫はそんな姫に不敵な笑みを向けて飄々と言葉を紡いだ。

 

 

真姫「君が桜ノ神になったばかりの頃にも一度言ったと思うけど、神様なんて物は本来理不尽な存在なんだよ。だから、私を人でなしと思うのは君の自由だ。私は体裁なんてものはどうでもいいし、神々や人間達が取り決めた価値観や善悪に縛られるつもりもない。私は私の役割に徹する、その為なら如何なる手段も取る。例えそれが君達からしてみれば非道であろうとね。それが嫌なら、私の思い通りにならないように抗ってみせてくれよ?その自由は君達にもある訳なんだし」

 

 

姫「……相変わらずの破綻ぶりですね……本当、どうして貴女は……」

 

 

真姫「理解しようとなんてしなくていいよ。神様なんてのは大昔からロクでなしばかりだし、人には理解出来ないような連中ばかりさ。親兄弟と平然と殺し合いしたりとかね。もしも君がそれを分かるようになってしまった時は、君もこちら側と同類になってるだろうさ。……それとも、君も私みたいになりたいかい?」

 

 

姫「……少なくとも、見境なく男を襲っては食い散らかすような痴女になりたくはありません……だから、貴女や上役達の思い通りにもなりませんよ」

 

 

真姫「結構結構、私みたいになりたくないという意志があるなら君はまだ大丈夫だ。……まぁ、数千数万と年を重ねていった時には、どうなるかは分からないけどね」

 

 

ニタリと、真姫は姫にそう言いながら口元を歪め笑みを深めた。まるで姫が何処まで今の自分を貫き通せるか、愉しんでいるかのように……。

 

 

 

 

 

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