仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

404 / 521
番外編/桜龍玉と新たな神⑩(前編)

 

―廃ビル・13階フロア―

 

 

―バアァンッバアァンッ!バアァンッバアァンッバアァンッ!―

 

 

『シャアァッ?!』

 

 

『ガアァッ?!』

 

 

ノエル「クッ……!このっ、いい加減しつっこいっ!」

 

 

その一方、廃ビル13階のフロアの一角では、最上階から気を失う折夏を抱えて避難していたノエルの姿があったが、彼女達は次々と迫り来る無数の造魔の大群によって行き止まりに追いやられ逃げ場を失い、絶体絶命の危機に瀕していた。それでもなおノエルは諦めようとはせず、折夏を守るようにハンドガンを構えて迫り来る造魔達を一体ずつ確実に倒していく。しかし……

 

 

―バアァンッ!カチッ、カチッカチッ……!―

 

 

ノエル「ッ?!嘘、弾切れ?!」

 

 

造魔達に目掛けて連射していたノエルのハンドガンの弾が不意に底を尽き、弾を装填しようと咄嗟に懐に手を伸ばしてマガジンを手に取ろうとする。しかしどれだけ懐を漁ってもマガジンは見つからず、それでマガジンも底を尽いてしまったのだと悟ったノエルは舌打ちしてハンドガンを乱雑に投げ捨てながら、後ろ腰からコンバットナイフを抜き取って構えを取った。

 

 

ノエル(クソッ……!武器の大半はギルデンスタンの奴との戦いで使い切ったしっ、コイツだけでこの場を切り抜けるのはっ……!)

 

 

ハッキリ言えば不可能だ。ナイフ一本では自分の身を守るのも難しいのに、もし一斉に攻め込まれでもしては折夏を守る所ではない。このままでは、二人揃って……

 

 

ノエル(――いや……私が囮になってコイツ等を引き付ければっ、折夏だけでも或いはっ……)

 

 

それならせめて、折夏だけでも助かるかもしれない。背後の物陰に隠れ気を失う折夏に視線だけ向けてそう思案すると、ノエルは次に目前から迫り来る造魔達の注意を自分にのみ引き付けなければならない方法を考える。

 

 

ノエル(コイツ等の注意を私に向ける方法……確か、コイツ等も普通の幻魔達のように人間を喰らうのが好きな筈っ。だったらっ……!)

 

 

造魔達の興味を一度に引き付けるとしたら、幻魔達の好物である人間の血の臭いを嗅がせのが方法として手っ取り早い。そうと決まればと、ノエルは躊躇する事なくナイフを逆手に持ち、自分の左腕にナイフの刃を食い込ませて適量の血液を流していく。

 

 

―ブシュッ!ポタッポタッ……ポタッ……―

 

 

ノエル「ぐっ……ほら、こっち!こっちよっ!こっちに来なさいっ!!」

 

 

『……!グルルルッ……!』

 

 

『シャアァァァァッ……!』

 

 

血が流れる左腕を造魔達に見えるように向けて自分に注意を逸らすようにノエルが動き出すと、ノエルの血の臭いを敏感に嗅ぎ取ったのか、造魔達の視線が一斉にノエルへと集まり彼女に向かって迫ってきた。それを見たノエルは額から冷や汗を流しつつ自分の思惑が上手く行ったと不敵に笑うと、そのまま物陰に隠れる折夏から離れるようにその場から走り出していった。

 

 

ノエル(ッ……!あの子のすぐ近くで喰われてもっ、奴らはすぐに私を平らげた後に折夏にも狙いを変えてあの子に襲い掛かるに違いないっ……だから出来るだけ遠くっ、とにかく今はあの子から奴らを引き離す事だけ考えて、それからっ……!『シャアァァァァァッ!!』……?!)

 

 

とにかく自分が囮になって奴らを折夏から遠ざけて、その後の事はその時に考えればいい。背後から追って来る造魔の群れを見つめながらそう思案していた中、ノエルの前方から数え切れない大群の造魔達が奇声を発しながら押し寄せて来る光景があったのだ。それを見て慌てて方向転換しようと足を止めるノエルだが、既に背後からも造魔の大群が間近に迫ってきており、逃げ場はない。

 

 

ノエル(っ……万事休す、か……いや……)

 

 

正しく前門の虎、後門の狼という最悪な状況であるにも関わらず、ノエルの目はまだ諦念の色を帯びてはいない。力強い闘志を宿した瞳で造魔の大群を睨み据え、コンバットナイフを構え直しながら戦闘態勢に入る。

 

 

ノエル「―――上等よ……ただでなんかやられてやるもんか……どうせ死ぬんならせめて、アンタ達も道連れにしてやるわっ!!」

 

 

『シャアァァァァァァァァァァァァァアッ!!!』

 

 

どうせ此処で力尽きるならせめて、一匹でも多くこの化け物共を地獄への道連れにしてやると、決死の覚悟で造魔の大群を迎え撃とうとするノエル。そうして、そんなノエルへと造魔達が刀を振りかざしながら一斉に飛び掛かり、それを見たノエルも造魔達を睨みつけながらナイフを振り抜こうとした。その時……

 

 

 

 

 

 

「―――勇ましいのは結構な事です。が、それで命を粗末にするのは関心し兼ねますですわね」

 

 

―ヒュッ……バゴオオオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーオォォンッッッ!!!!―

 

 

『ッ?!ギッ……ゴアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!?』

 

 

―ドッガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!―

 

 

ノエル「?!……え?」

 

 

 

 

 

 

ノエルに刀を振りかざして襲い掛かろうとした造魔達に突如何処からか、業火と雷と暴風が混雑した無数の攻撃が降り注いだのだった。それらの攻撃は造魔達を薙ぎ払って微塵にし、その光景を見たノエルが突然の攻撃で巻き起こった爆発と閃光に思わず目をつぶり、再び目を開くと、其処には……

 

 

 

 

 

 

アシェン「―――ふむ……後方の大群諸共薙ぎ払ったつもりでしたが、大分残ってしまいましたか」

 

 

鬼王『全く。次のフロアに着いた途端、何か妙な場所に幻魔達が集まってるなと思えば……』

 

 

龍王『たったの武器一つでこの大群を相手にしようなどと、自殺行為も良いところだぞ』

 

 

 

 

其処には、造魔達の残骸の上に佇み拳と刀をそれぞれ構える一人の女性と二人の戦士……零から話を聞いてノエルと折夏を探しに来たアシェン、鬼王と龍王がノエルを守るように背を向け造魔の大群と対峙する姿があったのだった。

 

 

ノエル「ア、アンタ達は……」

 

 

アシェン「貴女がノエル・コーマット様……ですね?金髪に小柄、スリーサイズは上から84、57、82。何処となくツンデレっぽい顔立ち……成る程……零様から教えて頂いた特徴と完全に一致しますね」

 

 

ノエル「え?零って、ディケイドの事?……ってか、なによ今の特徴ってっ?!アイツがそれ全部言ってたのっ?!」

 

 

アシェン「えぇ。零様から貴女様の特徴について質問した時、今の通りに教えて頂けましたが?」

 

 

龍王『いや、会って早々の初対面の人間にいきなり嘘を吹き込んでどうするんだお前っ』

 

 

ノエル「……は?う、嘘?」

 

 

アシェン「いえ、初見で何やらからかい甲斐のある方だなぁと思いましたので、少しばかり私なりの挨拶を少々」

 

 

鬼王『嘘かホントか分かりにくい冗談は止めて頂戴?彼なら本気で言い兼ねないと、一瞬信じそうになったじゃない』

 

 

アシェン「桜香様からしてみれば都合のよい嘘では?もし零様が彼女にもフラグを確立させてしまっているなら、今の内にバキボキに折っておこうかなと言う私なりの親切心もあるのですが」

 

 

鬼王『よしいいぞ、もっとやれ』

 

 

龍王『お前も簡単に丸め込まれるんじゃあないっ!!』

 

 

造魔の大群を前にしながら、呑気に漫才を繰り広げる三人。そしてそんな三人の会話を忙しなく目で追っていたノエルは困惑し、堪らず三人に向かって叫んだ。

 

 

ノエル「な、何なのよ一体、アンタ達はっ!」

 

 

龍王『ん?……まあ』

 

 

鬼王『取りあえず言えるのは……』

 

 

アシェン「……ノエル様達の味方である事に、違いはありませんよ」

 

 

―ダンッ!!―

 

 

そう言い切ると共に、鬼王と龍王は同時に地を蹴って駆け出し、アシェンも宙を跳んで造魔達の中へと跳び回し蹴りを放っていくのであった。

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

―廃ビル・屋上―

 

 

―バキイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーイィィィンッッッッ!!!!!!―

 

 

ディエンド『ウグアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!』

 

 

同時刻、ギルデンスタンの願いを叶えた桜龍が八つの桜龍玉達と共に消えた後、廃ビルの屋上ではギルデンスタンの願いによって復活した初代幻魔神がその暴威を振るい、圧倒的な実力でディエンドを一方的に追い詰めていく姿があった。既にディエンドの姿はボディの所々が砕けてボロボロになっており、それでもなお立ち上がろうとするディエンドを見て、初代幻魔神はディエンドからもぎ取った装甲の一部を投げ捨て関心の声を漏らした。

 

 

「驚いたな……あれだけの一方的な暴力で痛め付けられながら、まだ戦う意志が残っているとは……やはり今の人間達は、この程度の暴力を前にそう簡単に屈しないのかい?」

 

 

ディエンド『グッ……ッ……クッ……!』

 

 

まるで、小さな子供が答えの分からない問題の答えを大人に問い掛けるように、小首を傾げてディエンドにそう尋ねる初代幻魔神だが、今のディエンドにそれにまともに答えるだけの余裕はない。今までの戦いで、ディエンドは初代幻魔神と自分の実力差を思い知ってしまっている。このままでは勝てない、ならばこの場をどう切り抜けるか。ただその方法を考える事だけで精一杯であり、初代幻魔神も何も答えないディエンドを見て嘆息すると、そんなディエンドに人差し指を向けながら莫大な神氣を指先に収束していく。

 

 

「いや、違ったか……立ち上がる意志はあれど、戦う意志は既にない、か……勘違いしてすまなかったね。だが、君のその力は我々にとって軽視できない物だ。悪いが消えてもらうよ?」

 

 

ディエンド『クッ……!』

 

 

バチバチバチイィッ!!と、凄まじい火花を散らして収束していく初代幻魔神の指先のエネルギー弾を見てすぐさま起き上がって逃げようとするディエンドだが、初代幻魔神に一方的に痛め付けられた時のダメージがまだ残っていて上手く起き上がれず、そんなディエンドを消し去ろうと、初代幻魔神が充分に溜まった指先のエネルギー弾をディエンドに目掛けて撃ち出そうとした。その時……

 

 

 

 

 

 

『FINALATTACKRIDE:DE・DE・DE・DECADE!』

 

 

『――デエェアァァァァッ!!!』

 

 

「……ん?」

 

 

―ドゴオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオォンッッッ!!!!―

 

 

 

 

 

 

上空から不意に電子音声が響き渡り、それを耳にした初代幻魔神が顔を上げて空を見上げたと同時に、上空から猛スピードで飛来した何かが初代幻魔神に渾身のキックを打ち込み遥か後方へと後退りさせていったのだった。そして初代幻魔神に不意打ちをした何か……ディケイドに変身した零はボロボロのディエンドの前に華麗に着地すると、それに続き魔法少女の姿をしたなごみがフワリとその隣に着地した。

 

 

ディエンド『っ……!零、なごみっ……!』

 

 

ディケイド『…………』

 

 

初代幻魔神に不意打ちして現れたディケイドとなごみを見て驚くディエンドだが、ディケイドはそれに対し何も答えず、無言のままに視線のみを動かして屋上の一帯を見渡していく。

 

 

先程まで廃ビルの屋上の空に浮かんでいた筈の桜龍と桜龍玉、そしてあの銀色の魔人の姿が何処にも見当たらず、屋上に残されているのはボロボロの姿に変わり果てたディエンドと、先程自分が蹴り飛ばした見慣れない真紅の鎧を身に纏った金色の髪の女。

 

 

そして何故か、身体を真っ二つに引き裂かれて屋上の隅に転がっているギルデンスタンの亡骸だけだった。

 

 

ディケイド『一体何がどうしてこうなったんだ、少し目を離した隙に状況が一転しすぎだろ……』

 

 

なごみ「……ふむ……確か零さんの話では、ギルデンスタンが既に桜龍を呼び出していたとの話でしたが……その桜龍とやらと桜龍玉の姿が何処にも見当たらず、ギルデンスタン(実際に見るのはこれが初めてなので推測)のあの姿とボロボロの大輝さんに、あの如何にも危険人物っぽい格好をした女性から察するに……既に願いを叶えてもらった後で、あの方が零さん達が以前倒したというフォーティンブラスなのでしょうか?」

 

 

ディケイド『だったら俺もこんなに困惑せずに済んだんだがな……残念ながら、あんな可愛げのある外見したパツキン女なんぞ知らん。おい、どうなってる海道?一体何なんだあの女は?』

 

 

桜龍の姿が消えているのを察するに、あの女が桜龍の願いによって呼び出された存在であるのは多分間違いない。

 

 

しかし、どう見てもアレは自分達が以前倒したフォーティンブラスではないし、何故ギルデンスタンがあんな姿に変わり果てていて、一緒にいた筈の銀色の魔人の姿もいつの間にか消えてしまっているのか。

 

 

予想していた事態と違い過ぎててイマイチ状況が把握出来ず、ディケイドは自分と魚見が屋上から落ちた後の経緯について聞き出そうとディエンドに目を向けてそう問い掛けるが、その時、そんなディケイドの不意打ちを受けながら何事もなかったかのように身を起こそうとした初代幻魔神が何かを思い出したように顔を上げた。

 

 

「ディケイド……零……ああ、そうか君かね。桜ノ神と契約してフォーティンブラスを倒した人間というのは?」

 

 

ディケイド『……だったらどうした?いや、そもそもお前、何者だ?』

 

 

声を掛けてきた初代幻魔神に警戒しながらなごみの前に出てディケイドがそう聞き返す。するとそれに対し、初代幻魔神はディケイドのディメンジョンキックを受けた鎧の胸の部分の埃を手で払いながら悠々とした声で口を開いた。

 

 

「君については、復活した際に自然と頭の中に情報が入り込んできた時から気になっていてね。会えて光栄だよ。そしてはじめまして、私は君達が倒した四代目幻魔神フォーティンブラスより前の、初代幻魔神……リアだ。宜しく頼むよ」

 

 

ディケイド『!初代幻魔神だと……?』

 

 

なごみ(……リア、ですか……シェイクスピアの四大悲劇のリア王を彷彿とさせますが、フォーティンブラスといいギルデンスタンといい、もしや、この世界のシェイクスピアは幻魔達と何か繋がりでもあったのでしょうかね……)

 

 

そんな推測をしながら、以外にも友好的に自己紹介をする初代幻魔神……"リア"を真っすぐ見据えるなごみだが、ディケイドはそんなリアを見て表面上では冷静さを保ちながらも内心では困惑を抑え切れずにいた。

 

 

ディケイド(どういう事だ……初代?何で今更そんな古臭い奴を蘇らせて……あの銀色とギルデンスタン、何を考えてる……?)

 

 

ただ指導者を蘇らせたいのならばフォーティンブラスでも構わないハズだ。それをわざわざ初代の幻魔神を復活させたということは、あのリアとかいう女にしか出来ないナニカがあるからなのか。少なくともフォーティンブラスより理知的に見える印象に騙されぬようディケイドが注意する中、リアはそんなディケイドを見て不敵な笑みを浮かべた。

 

 

リア「そう警戒しないでくれよ。今のところ、私は別に君達と殺し合いをしようなんてつもりはないのだから」

 

 

ディケイド『……何?』

 

 

なごみ「殺し合いをする気は……ない?」

 

 

首を左右に振りながらそう告げたリアの意外な言葉を聞き、ディケイドとなごみが思わずお互いに目を合わせると、リアはガシャッガシャッと鎧の音を立てて前に踏み出し再び口を開いた。

 

 

リア「そんなに驚くほどのコトかい?……いや、まあ当然か。君達からすれば、幻魔は君達の理屈も言葉も通じない怪物でしかないのだしね」

 

 

なごみ「……まるで自分はそうではない、みたいな口ぶりですね」

 

 

リア「実際に違うからね。数千年も昔……私が幻魔神として幻魔界を治めていた頃は、今より理性的な幻魔も多かったし。ただ、私が神権を次の幻魔神に譲ってからは、本能のままに人間を襲うようになったらしいのだが……その原因はギルデンスタンの増長にもあるらしい。そのせいで人間も悪戯に減らしてしまって、申し訳なく思ってるよ」

 

 

ディケイド『……ッ!まさか、あのギルデンスタンの死体はお前が……?』

 

 

リア「彼はもう私に仕えていた頃と違っていたのでね。私が再び神として蘇った以上、これからの私の目的の為には彼の快楽を満たすだけの実験で、これ以上人間達の数を悪戯に減らされるのは都合が悪い。幸いにも彼の代わりは他にも沢山いるようだし、彼には潔く消えてもらったのさ」

 

 

ディケイド『……お前の、目的……?』

 

 

ディケイドが険しげにそうリアに聞き返す。今までの話を聞いた限りだとリアは他の幻魔と違って理知的な人物かと思われるが、そう認識し切ることが出来ない怪異なワードを彼女は所々口にしていた。

 

 

"人間達の数を悪戯に減らされるのは都合が悪い"。

 

 

"幸いにも彼の代わりは他にも沢山いるようだし"。

 

 

そんな不穏を孕んだ言葉を聞き逃さなかったディケイドがリアを強く睨みつけると、リアは右腕を掲げ……

 

 

 

 

リア「―――簡単な話だよ。この世界を、我々幻魔の新たな"故郷"にするのさ。人間達のヒエラルキーの頂点に、我ら幻魔が人間達の上位種として君臨する事でね」

 

 

 

 

悪意も邪悪さを微塵も感じさせない透き通った声音で、人間に代わってこの世界の支配者になるのだとリアは高らかにそう宣言したのである。それを聞かされたディケイドは険しい表情になり、右の拳を固く握った。

 

 

ディケイド『それは要するに、人間を……この世界を支配しようって事か……?フォーティンブラスの奴のように……』

 

 

リア「ん?まぁ、結論から言えばそうなるね。ただ、フォーティンブラスと一緒にされるのはちょっとだけ心外だなぁ……彼は人間達を見下してこの世を幻魔で埋め尽くそうと考えていたらしいが、私は人間達の力を評価した上で、人間達の上に立とうとしているんだよ?此処まで時代が移り変わったのは、偏に人間達の向上心があったからこそだからね。果てには人間の力だけで宇宙にまで行った、これには目を見張るモノがあると私も思うよ」

 

 

謡うようにそう告げると、リアは柔らかい笑みを浮かべたまま更に続ける。

 

 

リア「だから、下手に人間の数を減らされると困るんだよ。彼等には幻魔の為にその力を活用してもらいたいからね。だからギルデンスタンは邪魔だったし、彼の技術を人間に教え込めば彼の代わりは幾らでも生み出せるのだしね」

 

 

なごみ「……つまり人間に、貴女達にとって都合よい奴隷になれという事ですか、それは?」

 

 

リア「人聞きが悪いな……別に彼等からこれまで通りの自由を奪うつもりなんてないさ。それに私達がこの世界を支配すれば、今よりも現状が格段に良くなると思うけど?」

 

 

ディケイド『……どういう意味だ?』

 

 

リア「そのままの意味だ。今もこの人間達の世には、貧困や紛争等が堪えず起きてるそうじゃないか?それどころか、現状の自分達の生活すらままならない所もあるときた……それが全てを物語ってるじゃないか?結局人間が人間を管理するなんて完全には出来ない事だって。獣が獣を管理するようなモノなんだから必ず粗が出るし、完璧になんてなる筈がないのさ」

 

 

ディケイド『…………』

 

 

リア「けど、私達にならそれが出来る。温暖化や破壊された緑を蘇らせる事も、貧困や紛争を塞ぎ止める力もある。優れた種が自分達より劣る種を管理し、生き長らえさせる……君達が人より劣る動物に安全に暮らせる場所を与え、食べ物を与えるのと同じだよ」

 

 

なごみ「だから支配する、と言うのですか?貴女達、幻魔が人間より優れているからと……」

 

 

リア「それはこれから証明するのさ。手始めに人間達に宣戦布告し、太平洋の海の真ん中にでも巨大な風穴を私の力で開ける……それで幻魔の力を世界中の人間に見せ付け、その後は私達に彼等の武器が通用しない事を思い知らせる。世界中の軍隊をかき集めようと、世界中の核武器を用いようと、私達には絶対勝てないという事実を突き付けて屈してもらう……あぁ、死人は極力出さないようにするから心配しなくていいよ。大事なのは、彼等に自分の無力さを思い知ってもらうって事だしね」

 

 

ディケイド『……何が心配するなだ……其処までして、お前達は人間の上に立ちたいっていうのか……?』

 

 

リア「そうしないと、幻魔はこの世界でまともに生きていけないんだよ。ただでさえ君達人間は、同じ人間であろうと肌の色が違うってだけで差別と迫害を行うだろ?そんな君達に人外である幻魔を受け入れてもらえる筈がない。共存は最初から不可能なんだ。なら、人間達の上に幻魔が立ち、逆らってはならない存在であると認識してもらった方が都合がいいに決まってるじゃないか」

 

 

ディケイド『ああ……そうかよ……大体分かった……』

 

 

そう呟くと、ディケイドは左腰のライドブッカーに手を伸ばしてソードモードに展開し、リアと対峙するように一歩前に踏み出て剣の切っ先を突き付けた。

 

 

ディケイド『要するにそれは、恐怖で人間を支配してこの世界を乗っとるって話だろう?回りくどい言い方しおって……最初からそう言っとけ。どうせやる事は変わらんのだしな』

 

 

リア「……?もしやと思うが……君、戦うつもりなのかい?私と?」

 

 

ディケイド『最初からそのつもりで此処まで来たんだ、当然の流れだろう……?大体アイツ等が守ったこの世界を勝手にどうこうしようっていうんなら、フォーティンブラスだろうがお前だろうが関係ない。あの世還りの死人には、もう一度あの世に帰ってもらうだけだ』

 

 

リア「本気かい?私を受け入れれば、この世界をより良い方向へと導く為の術を与えてあげられるんだよ?そうすれば誰も餓える事もなく、戦争根絶も出来る。一体何が不満なんだい?」

 

 

ディケイド『恐怖で人間達を抑え付けようってところがだ……この世界の人間はもう十分にソレを味わった。一度あの事件に関わった身としては、アイツ等が必死になって漸く守ったこの世界を、お前に壊されるのを黙って見てる訳にはいかないんだよ』

 

 

平穏を取り戻したこの街で、笑顔で生き続けると姫や自分に誓った雪奈のような人間もいた。

 

 

彼女だけでなく、彼女のようにあの事件の恐怖を抱えながら、それでも前を向いて生きようとしている人達もきっといるだろう。

 

 

そんな人々が今を生きるこの世界が再び恐怖で染まるなど、見過ごしていい筈がないのだ。

 

 

その意味を込めてディケイドが力強くそう告げると、リアはそんなディケイドの目を暫くジッと見つめ返した後……

 

 

リア「……ふぅ……困った物だね……出来れば無駄な争いは、極力控えたかったのだが―――」

 

 

 

 

 

 

―……ゾワアァァァッッッ……!!!!!―

 

 

 

 

 

 

『…………ッッッ?!!!』

 

 

 

 

 

 

やれやれと、リアが不本意そうに首を横に振りながらそう呟いた瞬間、その場にいる一同の全身の鳥肌が総立ちした。

 

 

今まで一切何も感じられなかったリアから、あのフォーティンブラスをも凌駕するとてつもなく強大で邪悪な、殺気とプレッシャーが屋上全体をあっという間に飲み込んで支配していく。

 

 

その圧倒的な力の差を嫌と言うほど思い知らされる感覚にディケイドとなごみが思わずザッ!と後退りしてしまう中、リアは頭全体に真紅の甲冑を纏うと、その身体がゆっくりと宙に浮き上がる。

 

 

『――そちらがその気ならやむを得ない、か……まあいい。どの道、後ろの彼のようにこの世界のライダーシステムとやらは全て破壊するつもりだったのだしね……アレは私の目的を揺るがすイレギュラーな力だ。だから、君のそのベルトも壊させてもらうよ?』

 

 

ディケイド『ッ……ふざけろっ、ソレは俺の専売特許だっ……勝手に真似してんじゃねぇよっ……』

 

 

『ふふっ、啖呵を切るほどの余裕はまだまだあるようだね?なら―――』

 

 

バシュウゥッ!!と、リアの右手から蒼い稲妻状の光が勢いよく放出され、光は蛇の様にうねりながら徐々に巨大な武器……リアの背丈を越えるほど巨大な深蒼の鎌を形作り、リアの手に握られた。

 

 

『――その戦意を根こそぎ絶たせてもらうよ。不本意だが幻魔の神として蘇った以上、私には彼等を導いて守る義務があるのだからね……圧倒的な恐怖と力を前に、是非とも絶望してくれ……』

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。