仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―無人島―
姫「――――ぅ…………っ…………ぁ…………?」
ルーノ達が黄金魔神像を食い止める為に戦闘に入ったその頃、黄金魔神像の一撃で遠方の無人島にまで吹っ飛ばされた姫は変身が強制解除され、島の大半が吹き飛び焼け野原と化した森林跡地でボロボロの姿で倒れ伏し、今漸く意識を取り戻し目を覚ましていた。
姫「…………ここ、は…………そうだ、私…………グッ?!」
グググッ……と、徐に身体を起こそうとして身体に激痛に走った。あまりの痛みに顔を歪めて自分の身体を見下ろしてみると、見たところ大した損傷はしてないようだが身体の至る所から流血しており、無理に動こうとすると痛みが走る。それを見て、姫も漸く先程までの出来事を完全に思い出していく。
姫「っ……あの距離からの攻撃で、何処も身体が吹き飛んでいないのは幸いかっ……アマテラスの頑丈さに救われたな……」
あの馬鹿げた威力の攻撃を正面から受けたのだ。意識を失う寸前に、身体の一部が消し飛ぶのではないかと覚悟していたのだが、どうやら杞憂で終わってくれたらしい。未だ目覚め切っていない頭でそう考えながら呆然と自分の掌を見下ろし静かに安堵していた姫だが、其処でハッと何かを思い出したように目を見開き顔を上げた。
姫「零……?そうだ、彼は……?!」
意識を失う寸前までは彼の身体の中に居たハズなのに、今は分離して離れ離れになっている。慌てて周りを見回してみても近くには誰もおらず、姫は痛みの走る身体を抑えて立ち上がり零を探して走り出した。
姫(まずいっ……私はまだいいがっ、零はただの人間だっ……幾ら彼でもあんな……!)
姫は零の身体の中に居たお陰でまだこの程度で済んでいるが、黄金魔神像の攻撃を直接受けた零のダメージは到底計り知れない。もしかしたら身体の一部が……などと、先程自分が危惧していた最悪の事態を考えて更に不安を覚え、とにかく急いで零を見付けなければと忙しなく辺りを見回し、焼け野原と化した周囲一帯を駆け回る姫。その時……
「―――――――――――――――は――――――――ぁ――――――――」
姫「……ッ?!今のは……?」
零を探す中、何処からか声の掠れた呻き声が聞こえた。それを僅かに聞き取った姫はその場に立ち止まり、耳を澄まして声が聞こえて来る方へ覚束ない足取りで進んでいくと、其処には……
零「―――――――――――――――ぅ―――――――――――――――」
姫「ッ!零ッ!!」
へし折れた木々の残骸が辺り一面に散乱しているその中心で仰向けに倒れる青年……血まみれの零の姿を発見し、姫は慌てて零の下に駆け寄っていくが、零の姿を間近で見た瞬間に目を見開き、思わず息を拒んでしまう。何故なら……
零の左脇腹が大きくえぐり取られて風穴が開き、その中身が曝されてしまっていたからである……。
姫「…………ぁ…………れ、零ッ!!しっかりしろッ!!おいッ!!!」
零「―――――――――――――――――――」
呆然と佇んでた姫は漸く我に返り零の傍に座り込んで必死に呼び掛けるが、零は意識が朦朧としているのか姫の呼び掛けには答えず、目の焦点も定まっていない。それを見て、零の容態が如何に危険な状態か余計に思い知らされて焦りを浮かべてしまう。其処へ……
「―――ねえ、ねえちょっと!其処のアンタ!」
姫「……!」
背後から突然女の声に呼ばれ、それを聞いた姫が振り返ると、其処には此処から離れた先に着陸してる大型ヘリからこちらに向かって駆け寄って来る金髪の女性……ルーノに指示され零達を回収しに来たノエルの姿があった。
姫「君は……確か魚見の……」
ノエル「はぁ……はぁ……アンタ、桜ノ神よねっ……?無事だったの……って、ディ、ディケイドッ?!」
姫を発見し一先ず安心して一息吐こうとしたノエルだが、姫の傍に倒れ込む零の存在に気付き、彼の左脇腹に空いた風穴を見て絶句し口を抑えながら後退りしてしまう。そして姫も思い詰めた表情で零の顔と左脇腹の傷を交互に見ると、自分の掌を見下ろして自分の中に僅かに残された神氣を確かめた。
姫(っ……これが最後の神氣っ……此処で力を使えば……いや、迷う必要なんてない筈だッ!)
―パァンッ!―
残された最後の神氣を此処で使えばどうなるか。それを分かった上で迷いを振り切るように両手を叩くように合わせ、神氣を纏わせた両手を零の左脇腹に翳していく姫。
ノエル「ッ!ね、ねぇなにやってんの?!早く何とかしないとソイツ……!」
姫「分かってるッ!!」
姫が何をしようとしてるのか分からず困惑した様子で呼び掛けるノエルに大声を張り上げて強引に黙らせ、残った神氣を零の左脇腹に集中させていく。すると、零の左脇腹が眩い光りに包まれ、欠損した部分をみるみる内に修復させていき、光りが弾けて四散したと共に風穴が空いた零の左脇腹は完全に治療されていたのであった。
ノエル「え……ウ、ウソ……?あんな大怪我が、一瞬で……?」
姫「ッ……これで、一先ずはっ……ぅっ……」
―フラッ……―
ノエル「ッ?!ちょ、ちょっとっ?!」
ノエルが綺麗に復元された零の左脇腹を見て信じられないものを見たように驚愕する中、零の治療を終えた姫が安堵して深い溜め息を漏らしながら力が抜けた様に身体を揺らして倒れそうになり、それを見たノエルが慌てて姫の身体を支えていく。その時……
零「――――ぁ……は……ぅ、ガハッ!!ゲホッゲホッ!!ガハァッ!!」
ノエル「ッ!ディケイドッ!」
姫「っ、零っ……!」
意識が朦朧としていた零が突然身体をくの字に折り曲げながら口から大量に血を吐き出し、苦しげに何度も咳き込んだのだ。そんな零を見て姫もノエルの手を借りながら慌てて傍に寄って心配げに零の顔を覗き込み、血を吐き出した零も漸く姫に気が付き呆然と姫の顔を見上げた。
零「はっ……ぁ……さく、や……?おまえ……けがっ……」
姫「私の事はいいっ!それより自分の事を心配しろっ!君は大丈夫なのかっ?!他に痛む所はっ?!」
零「ぇ……」
まだ意識が完全に戻っていないのか、呆然とボロボロの姫の顔に伸ばそうとした左手を掴まれ、必死な様子でそう問い掛けて来る姫の言葉を聞いて頭上に疑問符を浮かべる零。そして其処で漸く先程までの黄金魔神像との戦いを自然と脳裏に思い起こし、零はハッと目を開いて辛そうに上体を起こすと、綺麗に完治された左脇腹以外ズタボロの血塗れになった自分の身体を眺めていく。
零「っ……俺は……」
ノエル「えと……アンタ、さっきまで死に掛けてたのよ。でも桜ノ神がアンタを治療して……」
零「コーマット……そういう事、か……」
ノエル自身も姫がどんな力を使って零を治療したのか詳しく知らない為に簡潔にそう説明すると、不自然に綺麗な脇腹とその説明だけで何があったのか理解したのか、零はそう呟きながら徐に起き上がるが、途中で足がふらついて倒れそうになり姫に支えられた。
姫「ッ!無理をするなっ!治療したと言っても、まだ君の身体はっ……!」
零「ハァッ……これぐらいどうって事はないっ……それより木ノ花、お前の力は今どれぐらい残ってる……?」
姫「……君の治療で使ったのが最後だ……今はもう、転移する力すら残ってない……」
零「……なら、アマテラスは?」
姫「神氣が残ってない今の状態では無理だ……それに例え僅かにでも残ってたとしても、限界時間を過ぎた以上、これ以上アマテラスを行使すれば君の命に関わる……」
零「……そうか……」
アマテラスフォームは使用不可。姫自身にももう力は残されてはいない。それを確認した零は深く溜め息を吐き出すと、姫から離れて額から流れる血を拭いディケイドライバーを取り出す。
零「ならお前はコーマットと一緒に此処を離れろ……俺は戻る……」
ノエル「は……?も、戻るって……まさか、戦うつもりなの?!正気?!そんな身体で何が出来んのよ?!」
姫「彼女の言う通りだ!離脱するなら君がそうするべきだろう!後は私が……!」
零「神氣が空っけつのお前に何が出来る……?俺ならまだあの像に対抗する術は残っているが、お前はそうじゃないだろうが……良いから言う通りにしろ……」
姫「出来る訳がないだろうそんなのっ!!君こそ自分の身体を良く見てみろっ!!そんな状態で戦えば次は本当に死ぬぞっ?!分かっているのかっ?!」
零「分かってるっ……ただちょっと動き辛いだけで、別に戦えないワケじゃな「分かっていないっ!!」……ッ!」
けだるげにそう言ってディケイドライバーを腰に巻き付けようとした零だったが、姫が零の言葉を遮るように声を張り上げて叫び、零とノエルもその声に驚いて姫に視線を向けると、姫は顔を俯かせて肩を震わせていた。
零「木ノ花……?」
姫「ぜんっぜん分かっていないっ……君はさっきまで死に掛けてたんだぞっ……私に力が残っていなければ君だって今ごろ死んでたんだっ……アマテラスで駄目だったのに、そんな身体で無茶をすれば今度こそっ……」
零「…………」
声を震わせながらそう語る姫を見て、零も何も言えず無言のまま視線を落としてしまう。確かに、現段階で黄金魔神像とまともにやり合える対抗策のアマテラスフォームももう使えず、姫に治療された左脇腹以外はリアや黄金魔神像との戦いで負った怪我も残っている。
加えて先程まで死に掛けて、そんな姿を目の当たりにした姫とノエルからすれば今から死にに行くと言っているようなものだ。しかし……
零「――別になにも考えも無しに戦うワケじゃない。さっきの戦いであの金ぴかの弱点も掴んだ……あとはアシェン達の力を借りて、どうにかしてあの像の中に侵入して内側から叩く……他のライダーの力を使えばそれぐらい可能だろうしな……」
姫「だからっ、君一人じゃそれは危険だと言っているだろうッ!第一そんな身体で簡単に近づける程、アレは安易い相手じゃないんだぞッ!」
零「ッ……!この……だったら他に方法があるのかッ?!お前だってもう力が残ってないんだろうッ?!」
姫「まだ私には不死の身体があるッ!私なら君が死ぬような攻撃を受けても死にはしないッ!その後に君の言うようにアレの中になんとか侵入して内側から……!」
零「それじゃぁ俺と大して変わらんだろうがッ!お前にそんな馬鹿をさせられるかッ!いいから俺に任せてお前は離脱しろッ!何度も言わせるなッ!」
姫「君こそ何度言わせる気だッ!大体馬鹿なことだと自覚してるなら……!」
ノエル「ちょ、ちょっとアンタ達いい加減にしなさいよッ!今は言い争いなんかしてる場合じゃなっ――!」
俺がいく!私がいく!と、平行線の言い争いをいつまでも続ける零と姫を仲裁しようとノエルが大声を張り上げて叫ぼうとした、その時……
『teleport now!』
魚見「――デュアルチョップ!」
―ズビシイィッ!!―
零「アイタァッ?!」
姫「ひぎぃっ?!」
ノエル「……へ?」
何処からか鳴り響いた電子音声と共に、言い争う零と姫の横合いに突如魔法陣が出現し、其処から姿を現した魚見が二人の頭上にいきなりチョップを打ち込んで無理矢理言い争いを止めたのであった。
姫「イッタィッ!なに?!え、魚見?!」
零「ぐおぉぉぉぉっっ……て、てめえぇっ……仮にも出血してる怪我人の頭になんて事しやがるうぅっ……!」
魚見「お二人がいつまでも似たような話を繰り返しているからでしょう。ノエル、貴女だけに二人をお任せしてすみません」
ノエル「ウ、ウオ?アンタ、今まで何処で何して……!」
魚見「幻ま――いえ、ある人物の応急処置が長引いてしまいまして……。それで治療を終えて上役に彼女を任せた後、こちらへ向かう途中で指輪の力で戦況を確認していたのですが……何をしてるんですか貴方達は……」
腰に両手を当てて呆れる様に溜め息を吐きながら零と姫を見つめると、二人はあからさまに気まずげに魚見から目を逸らした後、零がビシィッ!と姫を指差して叫んだ。
零「いやっ、こうなってるのは木ノ花がまた性懲りもなく無茶しようとして話が長引いたからだっ!!確実性のない方法で無謀な策に出ようとしたからっ!!」
姫「な、はぁっ?!それを言うなら君の方だろっ?!そんなボロボロの癖にまた無茶な真似をしようとしてっ!!無謀だというなら君の方じゃないかっ!!」
零「身一つで正面から突っ込もうとするお前に言われたくはないわっ!!俺ならまだ他のライダーの力でどうとでもなるが、今のお前は跳ぶ力すら残っとらんだろうがっ!!」
姫「誰も無策に真正面から挑むとは言っていないじゃないかっ!!それに君のその傷じゃ死ににいくようなものだろうっ!!私は不死で死にはしないっ!!だから君は私に任せて大人しく休んでればいいんだっ!!」
零「だからお前にそんな事させられないんだと言ってるだろうがっ!!大体お前もソイツも、神だからって自分を軽視し過ぎなんだよっ!!少しは自分を大事にしたらどうなんだ女の癖にっ!!」
姫「お、女の癖にと言ったかっ?!差別だろそれはっ!!大体自分を大切に云々で君が叱れる立場じゃな――!!」
魚見「シャラップ」
ピシャリッと、感情のない冷淡な声で魚見が零と姫を黙らせた。その声音は氷のように何処までも冷たく、言葉を向けられた本人達はともかく、魚見の隣に立つノエルまでもが顔の筋肉を引き攣らせながら魚見の顔を見つめ、魚見も無表情のまま零と姫を目だけで交互に見た後に深く溜め息を吐いた。
魚見「……要するに、ディケイドは神氣が残ってない桜ノ神が単身で向かう事に反対で、桜ノ神は満身創痍のディケイドが一人で黄金魔神像に挑むのに反対して、議論がいつまで経っても決着が付かない……簡潔に纏めると、そういう事ですね?」
姫「む……まあ……」
零「……そうなるな」
気まずげに姫が、無愛想に零がそっぽを向いて魚見の問いに対し素直に肯定する。そしてそれを聞いて魚見も顔を俯かせて何かを思案するように瞼を伏せ、暫くそうした後に、ゆっくりと目を開いて地面に座り込む零の下へと歩み寄った。
魚見「ではディケイド……いえ、零……私から貴方に提案があります」
零「……何だ?言っておくが、お前と木ノ花に任せて此処を離れろって言う提案ならお断りだぞ。今の木ノ花を行かせるぐらいなら、俺が奥の手を使ってでも――」
魚見「いえ、そうではありません。私も今の桜ノ神を戦線に戻すのに反対なのは、貴方と同意見ですし」
姫「は?お、おい魚見っ?!」
零「……じゃあ何だ……?お前が俺をエスコートして、あの像の所まで送り届けてくれるのか?」
魚見「いえ……ですが、当たらずとも遠からず……といった所でしょうか」
零「あ……?」
何やら回りくどい言い方で、しかし何処か気恥ずかしそうに視線を逸らして頬を赤らめる魚見に怪訝な顔で聞き返してしまう零。だが、ルーノ達と黄金魔神像が戦闘を行っている戦域の方で零達の下にまで響くけたたましい轟音と共に巨大な爆発が巻き起こり、それを見た魚見は咳ばらいと共にいつもの無表情に戻って零と向き直った。
魚見「あまり回りくどいやり取りをしてる時間もなさそうですね……率直に言います、零」
零「だから何をっ――」
魚見「――此処で……私と契約して下さい。桜ノ神と同じように」
零「……は?」
姫「ぶふっ?!」
胸に手を当てて魚見が零に告げたのは、姫と同じように自分と契約して欲しいという提案だったのである。流石に予想外過ぎたのか、その言葉を向けられた零も目を見開いて固まり、姫も思わず噴き出してしまうが、今の発言を聞いて目を点にし唖然としていたノエルが我に返って慌てて魚見へ詰め寄った。
ノエル「ちょ、ちょっとウオっ!アンタいきなりなに言って……?!」
魚見「……私と契約すれば、限定的にですが私の力をアマテラスフォームのような形で具現化出来る。無論私も水ノ神の神権を封印された状態ですから失敗する可能性も大いにありますし、無駄に終わってしまうかもしれませんが、もし成功すれば黄金魔神像に対抗出来る力が得られる。そうすれば内側から私がサポートして、貴方も怪我の心配をせずに戦闘に専念する事が出来ますが……」
零「…………」
確かに、魚見の話が本当であるなら自分達が危惧している心配もする必要はなくなる。だが、自分は既に姫と契約した身だ。他の神と契約なんかして大丈夫なのかという不安や心配も色々あるが、真っ先に思うのは姫を差し置いてそんな真似をしていいのかという迷いだ。横目に姫を見れば彼女も「ぁ……えーと……」と言い淀んでおり、零はそんな姫を見て軽く溜め息を吐きながら立ち上がり……
零「確かに現段階じゃそれが一番の最善策だろうが……一体どういう風の吹き回しだ?分かってるのか?俺はお前達の上司共が危険視している――」
魚見「分かっています……ですがどちらにしろ、このまま黄金魔神像を止められなければ保身派の上役達にとっても宜しくない事態に陥るのは目に見えていますし、結果的にアレを止めさえすれば、保身派達も貴方達や私を強くは言えないと思います。それに――」
其処で一拍言葉を区切ると、魚見はまるで近所の困った子供を見るような目で姫と零を交互に見つめながら……
魚見「――私がそうでもしないと、貴方も桜ノ神もまた無茶をするでしょう?現に今も、どっちもどっちな無謀な真似をしようとしていましたし……」
零「っ……た、確かに馬鹿な真似しようとしてたのは認めるが……お前、忘れてないか?俺は既に木ノ花と契約した身なんだぞ?」
そう、問題は其処だ。自分はもう姫と契約を交わし、既に彼女というパートナーがいるのだ。なのにまた他の神と契約など、幾らそれが親友とは言え姫だって嫌と言うに決まって……
姫「ぁ、いや……私は別に契約自体は構わないぞ……?確かに他の神だったなら複雑だが、魚見なら別に嫌とは思わないし……」
零「ハアァッ?!!」
魚見「彼女もこう言っていますし……後は貴方の心変わり次第では、問題ないと思いますが?」
零「ぐっ……」
姫にも確認を取り、僅かに首を傾げてそう問い掛けて来る魚見だが、零は顔を引き攣らせながら後退りしてしまう。
――正直に言おう。すごい嫌だ。目茶苦茶断りたい。
ただでさえ今でも姫一人で手一杯なのに、姫と同じく変神の片鱗がある魚見まで増えられては容量オーバーでほんとに倒れてしまうし、魚見に付いて来られたらなのは達にどんな目に遭わされるか分かったもんじゃない。
しかし今は一刻を争うし、魚見の提案を受け入れなければまた姫が自分の代わりに戦うなどと言い兼ねないし、急がねば黄金魔神像を食い止めてくれてるアシェン達の身が危なく……嫌だとは言えない。なので……
零「――――分かったっ……だが、一つ条件付きだ……」
魚見「?条件?」
零「そうだ……お前と契約するのは今回の戦いだけの一回切り、あのデカブツを倒すまでの間のみ!あの像を倒した後はちゃんと切ってもらう!いいな?!」
魚見「……"一回切り"?」
姫(……あー……)
念を押して、ちゃんとこの場を切り抜けた後に契約を絶つことを前もって魚見に伝える零。しかし、それを聞いた魚見は何故か訝しげに首を傾げながら疑問符を浮かべ、姫も閥が悪そうに冷や汗を流しながら露骨に零から目を逸らしていたが、魚見は気を取り直して零に右手を差し出した。
魚見「とにかく、交渉成立ですね……。ただ一つだけ注意しておきますが、先程も言った通り今の私は神権を封印された状態にあります。なので、今から貴方との契約でその封印を一時的に強引に解放しますが……そのせいで力が不安定と化してしまう事になる。ですから……」
零「短期決戦に持ち込め、と言いたいのか?」
魚見「はい。……二分半、その間に決着を付けて下さい。それ以上は貴方の命に関わる」
零「……思ったよりシビアだな……俺の命が約束されてるのはカップ麺が作れる時間以下かよ……」
頭を掻きながら愚痴っぽくそう呟くと、零は恐る恐る魚見が差し出す右手に手を伸ばして魚見の手を握り、魚見も零の手を握り返しながら姫とノエルに向けて口を開いた。
魚見「ノエル、桜ノ神、貴女達はヘリを飛ばして出来るだけ遠くにまで避難して下さい。……この辺一帯、少々荒っぽくなるかもしれませんので」
ノエル「……分かったわ。アンタが決めた事なら私ももう何も言わない。でも……」
姫「私に出来るのもヘリを守るぐらいだろうしな……二人共……いや、皆、無事に帰って来てくれよ?」
零「まぁ、無傷は多分無理だろうが……一応頭の中には入れておくさ」
若干苦笑いを浮かべながらそう告げると、零は真剣な表情に変わって魚見の目を見つめ、魚見もそんな零に向けて小さく頷き返すと共に、祈るように瞳を閉じて口を開いた。
魚見「―――我が神名……水ノ神・市杵宍姫ノ命の名の許に、此処に、新たなる契りを立てる……」
魚見が口にしたのは、あのフォーティンブラスとの戦いにおいて姫が瀕死の零を救う為に行った契約の永唱。それと同時に魚見と零の足元に巨大な水色の魔法陣が展開され、膨大な神氣が辺りに放出されていき、そして……
◇◆◇
―海上―
―ドグオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーオォンッッッ!!!!!!―
ルーノ『ヤッベッ?!にょおおおおああああああああああああっっっ!!!?』
―ドバアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーアァンッッッ!!!―
龍王『?!ドールッ!!!』
そしてその一方、海上では桜ノ町に向けて進行しようとする黄金魔神像をルーノ達が粘り強く食い止めようとしていたが、黄金魔神像が瞳から放った赤い閃光を両手の剣で受け止めようとしたルーノを吹き飛ばして海ほと叩き付けてしまっていた。
『……この世界のライダーと過去の遺物の人形共の力も、所詮はこの程度か……』
『アハハハハハハハハハハハハハハッ!!』
『ヒャハハハハハハハハハハハハハッ!!』
鬼王『クッ!コイツ等っ!』
アシェン「振り切れないっ、数が多すぎますっ……!」
無数に分裂して執拗に追い掛けて来る面を振り切ろうと縦横無尽に飛び回る鬼王とアシェンだが、無数の面は何処までも二人を追尾して離れようとせず、龍王も黄金魔神像の瞳から矢継ぎ早に放たれる閃光のせいで取り付く事も出来ない。
龍王『クッ?!このっ!!』
『これ以上、貴様等に付き合っている時間もない……一瞬で消してやろう』
無数の閃光を紙一重で回避し続けながら黄金魔神像に近付こうとする龍王の姿を見つめながらポツリとそう呟くと、銀色の魔人は舵を勢いよく回し、それに応えるかのように黄金魔神像が莫大な神氣を口に収束させ始めていく。
―ギュイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィィィィイッッ……!!!!!―
鬼王『ッ……!まずいっ!紗耶香っ!!』
龍王『分かっているっ!!』
アレを撃たせてはならない。直感的にそう感じ取った鬼王が龍王に叫ぶと龍王も同じ物を感じ取っていたのか、二人はどちらからでもなく同時に空を翔けて黄金魔神像の攻撃を阻止しようとするが、二人の死角から不意を突いて男面と女面が飛び出し鬼王と龍王を捕らえてしまった。
アシェン「?!紗耶香様っ!!桜香様っ!!」
鬼王『しまっ……グッ!』
龍王『ぐうぅっ?!』
『さらばだ……纏めてあの世へ堕ちるがいい』
無数の面に抑えられ身動き一つ取れない鬼王と龍王に向けて黄金魔神像が狙いを定め、激しく光り輝く口を大きく開いていく。そしてそれを目にしたアシェンは慌てて二人の下へ向かって二人を拘束する面達を蹴り砕いていくが、面達の数が多すぎてすぐには助け出ずことが出来ず、その間にも黄金魔神像が口に収束させた神氣を放出し三人を纏めて消し飛ばそうとした。その時……
―シュウゥゥッ……ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオォンッッッ!!!!!!―
『……むっ!』
『グ……オオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ……?!!!!』
―ザッバアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーアァァンッッッ!!!!!―
アシェン「っ!」
鬼王『え……?』
龍王『な、何だ……今のは……?』
黄金魔神像の口から砲撃が放たれようとしたその寸前、突如黄金魔神像の横合いから巨大な水色の砲撃が放たれて黄金魔神像の側面に直撃し、黄金魔神像はそのままバランスを崩して海に倒れてしまったのであった。その光景を目の当たりにしたアシェン達も驚愕で目を見開き、今の砲撃が放たれてきた方角に目を向けると、其処には……
二枚の機械的な深蒼の翼を広げて浮遊し、金のラインが所々に走るロイヤルブルーのボディ。
赤い瞳を輝かせるロイヤルブルーと白の仮面を纏い、その両手には銃口から白い煙りが立つ二丁の神々しいデザインの蒼いライフルを握り締めたロイヤルブルーのライダー……この場に居る一同も初めて目にする姿に変わったディケイドだったのだ。
『ッ……何だ、あれは……?!』
アシェン「あれは……零様?ですが……」
龍王『アマテラスじゃ……ない?』
黄金魔神像の攻撃から三人を守り、アマテラスフォームとは違う別の姿となって駆け付けたディケイドの姿を見て呆然となる鬼王達。そして、ディケイドも蒼いライフルを持つ手を下げながら何処か辛そうに深く息を吐くと、徐に起き上がる黄金魔神像を見て舌打ちした。
ディケイド?『クソッ……一撃で仕留めるつもりだったんだが、やはりまだ力の加減が上手くいかんっ……』
『――出力を修正しました。やはり強引に神権を解放して変身したせいか、力が不安定のまま安定しない……長引くとこちらが不利になります』
ディケイド?『たった二分で決めろっていう条件付きだしなっ……速攻で一気に決めるぞ、魚見っ!』
魚見『えぇ、"スサノヲ"の制御はお任せを……!』
ディケイドの内側から響く声……魚見がそう叫ぶと同時に、ディケイドの背中の機械的な深蒼の翼が大きく広げられて翼の先が分離し、八基の武装……スサノヲはまるで意志を持ってるかのようにディケイドの周囲に展開されていき、魚見と契約し新たな姿に変身したディケイド……否、『ディケイド・ツクヨミフォーム』は両手の蒼いライフルを回転させながら黄金魔神像に目掛けて突っ込んでいくのであった。