仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
第二十一章/雷牙の世界
シリウスの世界でフリードと再会し、神威達と別れ次なる世界へと旅立った零達一行。その影で様々な思惑が蠢いているとは露知らず、一行は新たに訪れた世界で明日の捜索の為に早めに身体を休め、就寝していたのだった。
◇◆◇
―――暗い闇の中。
何処までも続く、一筋の光すら射さない深淵の暗闇。
この場所……見覚えがある……
これは、そう……夢だ。
多分、俺の夢の中。
長らく見てなかったせいか、思い出すのに少し時間が掛かった。
……いいや、違う……それだけじゃない……
なにか少し、違和感があるような……
以前見ていた夢とは、何処か違う気が……
……ああ、そうか……
いないんだ、『奴』が。
この夢を見る時に、何時も聞こえてくる『奴』の声が、何時まで経っても聞こえてこない……
『奴』は……何処に?
『――貴方のお名前、聞かせてくれるかな?』
ッ?!この声……『奴』?
いや、これは……
『私は、高町なのは♪貴方のお名前は?』
この声は……なのはの?
ああ、そうか……
これはアイツと……始めて顔を合わせた時の……
―……ピシィッ……―
『……誰?貴方もジュエルシードの探索者?』
『あ、うん。おおきにな、ありがとう♪』
これは……ああ、フェイトとはやてと始めて会った時の……
懐かしいな。
この頃はまだ、フェイトもあんな過保護になるとは思わなかったし、はやても今みたいに出世するとは夢にも……
―ピシッ……キシィッ……―
ああ、そうだ……まだまだあるな……
高町家の皆との生活……
アリサにすずか、真也達と学園で馬鹿をやったり……
休日には八神家でシグナムやヴィータに稽古に付き合ってもらったり、シャマルと料理をしたり、リインと一緒にザフィーラにもたれて昼寝したり……
クロノに任務で無茶した事で叱られ、ユーノがそれを宥め、エイミィとリンディさんが苦笑いと溜め息して……
教会でカリムやシャッハにヴェロッサ、陸士108部隊でゲンヤのオッサンやギンガに出会って……
六課でスバル、ティアナ、エリオ、キャロとフリードを教導し、不慣れながらもヴィヴィオの遊び相手をして、ヴァイスやシャーリー達と事件を解決して……
―ピシッ…ピシィッ…!―
まだまだある。
皆と過ごした記憶、思い出、時間……
一つ一つ、ちゃんと……
―ピシピシッ……ピシッ……―
フェイト『えっと……もし……もしもだよ?もし私達の世界を救って帰ってこれたら……』
ちゃんと全部、覚えて……
―ピシッ……ビシィッ!!!!―
覚え……て……?
フェイト『その……もう一度、この場所で―――』
―……ビシッ……ガシャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッッ!!!!!―
◇◆◇
―光写真館・零の自室―
零「――ハッッ?!ぁ……ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……今、の……?」
カッ!と、弾かれるように目覚めた零の視界に最初に入ったのは、見慣れた自分の部屋の天井。額に大量の汗が滲んでいるのを感じながら、零はゆっくりと僅かに顔だけ動かして部屋の中を見回していく。
零「今の夢……またか……最近夢見が良かったのに、何でまたっ……」
以前何度か見たのと同じ、わけの分からない終わり方をする夢。たかが夢だとは分かっているのだが、やはりあんな後味の悪い覚め方をすると気分が悪くなる。しかもここ最近は普通の夢ばかりで気を抜いていたのに、まるで不意を突くかのようにあんな夢を見せられたから尚更だ。憂鬱な気分になりながら吐息を漏らしふと部屋に掛けられた時計を見れば、時刻はまだ5時になったばかりのようだ。
零「……随分早く目覚めたみたいだな……まあいい。一足先に起きて、朝飯の仕込みでもするか……」
あんなの見たあとで二度寝する気分でもないしなと、零は一度溜め息を吐いた後にベッドから身を起こして私服に着替え、机の上に置いてあったカメラを首に掛けて部屋から出ていったのであった。
◇◆◇
―光写真館・リビング―
それから数十分後。朝飯の仕込みを一通り終えた後、暇を持て余した零は他の皆が起きてくるのを待とうとリビングのテーブルの上でカメラの手入れをしていた。
零「ふむ……まあ、こんなものだな……ついでに、後で爺さんに他に問題がないか見てもらうか」
最近色々と合ったから点検に出す隙もなかったからなと、零は手に持ったカメラを傍らに置いてテーブルの上に広げた手入れ道具を片していく。其処へ……
フェイト「――あっ、零」
零「む?……フェイト?」
手入れ道具を片していた零がいるリビングへと、起床したフェイトが入ってきたのである。フェイトは既に起きていた零を見付けてすこし驚きながらも、直ぐに気を取り直し零が座るテーブルへと歩み寄っていく。
零「何だ、もう起きたのか?いつもより随分早いな」
フェイト「あ、うん。何か急に目が覚めちゃって……零はこんな早くに起きて、何してるの?」
零「あぁ。朝飯の仕込みが終わって隙だったから、時間潰しにカメラの手入れを済ませておこうと思ってな。昨日は寝る前の手入れをし忘れたし」
フェイト「……ホントにカメラが好きだよね、零って(汗)」
そうか?と、苦笑するフェイトに答えて手入れ道具の片付けを続ける零。それを見たフェイトも片付けを手伝おうと手入れ道具を手に取ると、何かを思い出したように零に視線を向けた。
フェイト「そういえば、今回の世界で一緒に回るメンバーってもう決めたの?」
零「ん?いや、まだだ。取りあえずまた皆で外に出てみて、恰好が変わった連中がいればソイツ等と一緒に行動しようかと思ってる。まあもしその中でミッド組がいれば、軽い変装をしてもらう必要があるが……っと、コイツはこっちだったな」
手入れ道具を仕舞っていた中で、零はテーブルの上に置いておいた数枚の写真を見付けそれらを手に取り、隣の椅子の上に置いておいたアルバムをテーブルの上に広げ写真を仕舞っていく。
フェイト「あ、それって、今まで撮ってきた写真のアルバム?」
零「ああ、額に飾ってあるのとは別に仕舞っててな。こっちは見る用だ」
フェイト「へぇ……あっ、この写真……」
写真をアルバムに仕舞う零の作業を見ていたフェイトは、他の写真と同様にアルバムに仕舞われてる一枚の写真……以前祐輔の世界の臨海公園で撮影した花壇の花の写真に気付き、笑みを浮かべながらその写真を指差した。
フェイト「これって、祐輔の世界で撮った写真だよね?臨海公園の花壇の花の」
零「…………え?」
フェイト「あ、この写真も。それにこれと、これも、あとこれ。全部花壇に咲いてたよね?私、今でも覚えてる♪」
零「……………………」
フェイトが楽しげに次々と指差す花の写真を目で追っていく零だが、その様子は何処か可笑しい。だがフェイトはそれに気付かず椅子に腰を下ろし、再び何かを思い出したように両手を叩いた。
フェイト「そうだ……ねえ零?約束の件で少しお願いがあるんだけど、いいかな?」
零「……?やくそく……?」
フェイト「うん♪元の世界に戻ったら、臨海公園で私の写真を撮ってくれるって言ったでしょ?その後で、ちょっと一緒に行きたい所が色々あるんだけど、いいかな?」
零「…………………」
フェイト「昔ね?綾に教えてもらったオススメの和菓子屋さんがあったんだけど、まだ今でも営業してるみたいなんだ。彼処の和菓子がどれも凄く美味しくて♪あ、その後はちょっと町で買い物とかしたり、最後は翠屋で六課の皆のお土産を買おうって思ってて――」
零「……なあ……フェイト……」
フェイト「それと……ん?何?」
楽しそうに自分の考えたプランを口にするフェイトの話を遮った零に、首を傾げながら不思議そうに聞き返すフェイト。しかし、零はそんなフェイトを訝しげに見つめ……
零「――お前……
……"さっきから一体、何の話をしてるんだ"?」
フェイト「…………え?」
本当に、本当に訳が分からないといった口調で、そう問い掛けたのである。それを聞いたフェイトは、一瞬なにを言われたのか分からないといった顔を浮かべてしまうが、零は構わず話を続けた。
零「さっきから話しの見えない事ばかり言って、一体何言ってるんだ?お前」
フェイト「ぇ……な、何って……ほ、ほら……前に、祐輔の世界で……私の写真を撮ってくれるって、約束……」
零「約束……?だからなんの話だ?"そんな約束した覚えなんてないぞ"?」
フェイト「えっ……ぇ……え……?」
全く偽りがない様子で怪訝そうに告げる零の言葉に、ショックを隠せず瞳を震わせながら戸惑うフェイト。だが零はそれに気付かないままアルバムに目を落とし、祐輔の世界で撮った花壇の花の写真を訝しげに見つめる。
零「大体この写真だって、一体誰が撮った奴なんだ?こんなの知らんぞ?」
フェイト「……えっ?だ、誰って、それは全部零が……」
零「?俺が?馬鹿言うな。こんな写真撮った覚えなんてないぞ?きっと爺さん辺りがボケて、間違えて入れたんじゃないのか?」
フェイト「……………………………………」
そう言われて、フェイトは今度こそ絶句し言葉を失ってしまった。だがやはり、零はそれに気付かないままアルバムから次々と花壇の花の写真を躊躇なく取り出して纏め、椅子から立ち上がりフェイトに写真の束を差し出した。
零「悪いが、後で爺さんに渡しておいてくれないか?間違えて人のアルバムに入れるなって。俺はそろそろ上の連中を起こしてくるから、頼んだぞ?」
フェイト「……あ……」
そう言って写真の束をフェイトに握らせ、片手を振りながらリビングを後にしようとする零を引き止めようと手を伸ばすフェイトだが、引き止めてから何と言えば分からず躊躇してしまい、結局零の背中を見送るしか出来なかったのだった。
フェイト「……どう、して……どうしちゃったの……零……」
今の彼は、自分の目でも分かるぐらい明らかに可笑し過ぎた。確かに、今まで彼は自分達との約束を破ってしまう事は度々あったものの、あんな風に約束を忘れることなんて一度もなかった。何より、自分が撮った写真の事まで忘れるなんて、何時もの彼なら絶対有り得ない。なのに……
フェイト「……どうしちゃったの……零……」
もう一度繰り返すように、フェイトの声がリビングに虚しく響き渡る。だがそれに答えてくれる者など何処にもおらず、ただショックを隠し切れないその瞳で、彼が出ていった入り口を見つめていたのだった……。