仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第二十一章/雷牙の世界①

 

 

それから約一時間後。メンバー全員が起床して朝食を食べ終えた後、零は直ぐになのは達(勿論帽子を装着済み)と共に写真館の外へと出て新たに訪れた世界、雷牙の世界のミッドチルダを見渡していた。

 

 

零「雷牙の世界……つまり今度は雷の世界、か」

 

 

なのは「雷さんって、確かアレだよね?祐輔君の世界とかで、度々私達の助っ人に来てくれた」

 

 

姫「うむ。私の世界でも、幻魔達との決戦の際に手を貸してくれたな。まあそれは良いとして……零、君のその格好はなんだ?しかもアズサも」

 

 

早速写真館の外に出て雷牙の世界のミッドの町並みを眺めていた一同だが、姫は零とアズサの格好を見て訝しげに小首を傾げながらそう問い掛けた。零とアズサの格好……それは上下白を特徴とした制服(イメージは種死等のザフト軍白服)という何やら派手な格好となっていたのだ。

 

 

アズサ「おー……格好いい……」

 

 

シロ『にゃー!』

 

 

優矢「って、相変わらずマイペースだなアズサは……にしても、ホントに何なんだその格好?」

 

 

はやて「うーん……あぁ分かった!きっと特撮の撮影用の衣装や!」

 

 

セイン「いや違う、これは絶対コスプレイヤーだね!」

 

 

カリム「いいえ、多分コスプレ喫茶の制服ですよ!前に雑誌で見たことありますし♪」

 

 

シャッハ「……いつの間にそんな本を読んだんですか、騎士カリム……」

 

 

零「というより、全部ハズレだ」

 

 

はやて、セイン、カリムがそれぞれ職業を予想するも、零は溜め息混じりにそれを一掃しながら制服の胸のポケットから何かを取り出した。零が取り出したそれはどうやら身分証らしく、其処にはミッド語で『古代遺物管理部機動六課・レオン分隊所属、黒月零空曹長』と描かれていた。

 

 

スバル「機動六課……って、え?今回の役目は六課の局員って事ですか?!」

 

 

零「どうやらそうらしいな。ちゃんとレオン分隊所属の黒月零空曹長と……って、ちょっと待てっ。俺が空曹長?」

 

 

ギンガ「あ、ホントだ……この世界じゃ一等空尉じゃないんですね?」

 

 

リイン「リインと同じ階級みたいですね、何だかちょっと嬉しいですぅ♪」

 

 

零「……俺はなんだか複雑だがな……アズサの階級はなんだ?」

 

 

隣で嬉しそうに笑うリインと対照にちょっとブルーになりながらアズサに階級を聞くと、質問されたアズサもそれに気づきポケットを漁って身分証を取り出し、其処に記された自身の階級を読み上げた。

 

 

アズサ「私は……黒月アズサ二等空尉、だって……」

 

 

シグナム「ふむ。つまりアズサは私と同じ階級、という訳か」

 

 

ヴィータ「んじゃ、アズサは零の上司になるってことだなぁ♪」

 

 

アズサ「イエーイ……」

 

 

零「……まあ、別にそれはどうでもいいとして……今更だが、このレオン分隊ってのは何なんだ?」

 

 

なのは「うーん……多分、スターズやライトニングと同じ分隊なんじゃないかな?部隊名からしてもそんな感じだし。ねえ、フェイトちゃんはどう思う?」

 

 

フェイト「………………」

 

 

零とアズサの身分証に描かれてるレオン分隊について同じ分隊長であるフェイトに意見を求めるなのはだが、フェイトは何故か思い詰めた表情で俯いたまま何も答えない。そんなフェイトになのはも思わず首を傾げ、フェイトの顔を覗き込んだ。

 

 

なのは「フェイトちゃん?聞いてる?」

 

 

フェイト「……え?あ、ご、ごめん、聞いてなかった……なに……?」

 

 

なのは「いやだから、この身分証に描かれてるレオン分隊って、フェイトちゃんは何だと思う?」

 

 

フェイト「え……さ、さあ……どうかな……ちょっと分からない、かな……」

 

 

『……?』

 

 

何処か元気がなく、歯切れ悪くそう答えるフェイト。そんな彼女の様子に一同も違和感を感じ頭上に疑問符を浮かべるが、フェイトは俯かせていた顔を上げ零の顔を一度見つめると、再び暗い影を落としながら一同から背を向けた。

 

 

フェイト「ごめん……私、先にこの世界のこと調べてるね……それじゃ……」

 

 

はやて「え?ちょ、フェイトちゃん?!」

 

 

言うだけ言って、はやての焦る声を背にそのまま早足で街の方へと向かっていくフェイト。その背中を呆然と見送っていたなのはたちだが、すぐに何か気付いたように正気に戻り、一斉に零の方へとジト目を向けた。

 

 

零「……?何だ?」

 

 

チンク「黒月……お前まさか、また何か余計なことを口にしたんじゃあるまいな?」

 

 

零「は?何で俺が?」

 

 

優矢「いやだって、今一回お前を見て余計に暗くなってたぜ?また何かフェイトさんを凹ませるようなこと言ったんだろ?」

 

 

零「?いや、特に心当たりないぞ?確かに今朝ちょっと話したりはしたが、別段これといったことも話してないしな……」

 

 

なのは「そのこれといったことっていうのが信じられないんだけど……まあいいや。フェイトちゃんは私とヴィヴィオで追い掛けるから、此処からは別々に行動ね?行こっか、ヴィヴィオ?」

 

 

ヴィヴィオ「うんっ♪」

 

 

一同にそう言ってなのははヴィヴィオの帽子の位置を直すと、ヴィヴィオと手を繋ぎながらフェイトの後を追って街の方へと走っていき、それを見送ったはやても一同と向き合い此処からのチーム分けを始めた。

 

 

はやて「んじゃ、取りあえずチーム分けは私等八神家と教会組に姫さん、優矢君とFWとチンク達で、六課へは零君とアズサちゃん……ってな感じでええな?」

 

 

優矢「え、でもチンク達はヴィヴィオと一緒じゃなくて大丈夫なのか?」

 

 

ノーヴェ「ああ、それに関しちゃ心配ねえよ。アレに変身するのに、アタシ等とヴィヴィオの距離はあんま関係ねぇみたいだし」

 

 

セイン「呼ばれたらすぐにパーって飛んでいっちゃうからね、だから心配はご無用♪」

 

 

零「とのことだ……まあ、なのはとフェイトも付いている訳だから心配はいらんだろ。取りあえず、お前等はこの世界の詳しい情報を。俺達は六課に行って雷がいないか探してみるから、頼んだぞ?」

 

 

零がそう言うとはやて達も頷き返し、一同は写真館の前で別れてそれぞれ行動を開始したのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

因みに、零達が行動を開始したのと同時刻。光写真館のすぐ真後ろに建つ一軒の建物……霧島写真館の前で、三人の男女が物珍しげにミッドの町並みを見渡していた。

 

 

「うわっ、何このSFチックな街?!」

 

 

「すっげー……此処が次の世界なのか?紫苑」

 

 

「うん。多分、この世界があの手紙にも描かれていた外史ライダーの世界……なんだと思う」

 

 

ミッドの町並みを見て感動の声を漏らす小柄な青年の問い掛けに、紫苑と呼ばれた青年……以前零達が電王の世界で出会った風間紫苑とは、また別世界の存在である風間紫苑はそう答えてライドブッカーから一枚のカード……シルエットだけとなっている雷牙のカードを取り出した。

 

 

「それにしても、まさかほんとに九つの世界以外にもライダーの世界が存在してたなんて……まだそっちの方が驚きだよ……」

 

 

紫苑「だね。ま、それでも僕達がやることはあんまり変わらないだろうし。気楽にやれば良いと思う―ブオォォォォッ……―……ん?」

 

 

キョロキョロと落ち着かない態度で周囲を見回す少女を宥めようとした紫苑だが、突然紫苑の周りに歪みが発生して紫苑を包み込んでいった。そして歪みが止むと、紫苑の格好が零とアズサと同様に白を特徴とした制服姿へと変わった。

 

 

「う、うわっ!何だぁ?!いきなり格好が変わったぞっ?」

 

 

「あ、紫苑君は次の世界に着くと何時もこうなるの。でも、今度はいったい何の格好?」

 

 

紫苑「さあ……ん?なんかポケットに入ってる?」

 

 

制服姿へと変わった自分の身体をペタペタと触ってると、紫苑は制服のポケットに何かが入ってるのに気付きそれを取り出した。それはやはり、零とアズサが持っていたのと同じ機動六課の身分証であり、身分証にはミッド語で『古代遺物管理部機動六課・レオン分隊所属、風間紫苑三等陸尉』と描かれている。

 

 

「?これって……もしかして身分証?」

 

 

「うおっ、何語だよコレ?全然読めないしっ」

 

 

紫苑「古代遺物管理部機動六課……どうやら、これが今回僕の役割みたいだね」

 

 

「機動六課?つまり、其処に行く事が紫苑君の今回の役割って事?」

 

 

紫苑「きっとね。ま、取りあえず此処に行けば何か分かるだろうし、早速行ってみようか?光、勇輔」

 

 

そう言って紫苑は身分証を胸ポケットに仕舞い、早速身分証に描かれていた機動六課へと向かおうと歩き出していくが、光と呼ばれた少女は腕を組みながら首を傾げて……

 

 

光「……ところで紫苑君。その機動六課が何処にあるのか、知ってるの?」

 

 

紫苑「…………」

 

 

光にそう言われ、ピタッと両足を揃えて立ち止まってしまう紫苑。そしてその場で腰に右手を当てながら顎に手を添え、暫く何かを考え込むようにミッドの空を見上げると……

 

 

紫苑「――うん。その辺を探せば見付かるんじゃないかな?多分」

 

 

勇輔「つまり、場所知らない訳ねっ……」

 

 

首を傾げながら適当にそう告げた紫苑に勇輔も若干顔を引き攣りながら苦笑いし、光もそんな紫苑の無計画振りに溜め息を吐いて頭を押さえていたのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―クラナガン―

 

 

フェイト「…………」

 

 

一方その頃、零達と別れて一足先にクラナガンへ出たフェイトは道行く通行人に混じって何処かへと歩いていたが、その足取りは何処となく重く、帽子の下の顔も思い詰めたモノとなっている。その原因はやはり、今朝の光写真館での零との会話にあった。

 

 

『約束……?だから何の話だ?"そんな約束した覚えなんてないぞ"?』

 

 

フェイト(……やっぱり、どう考えても可笑しい……約束の事はともかく、自分が撮った写真の事まで忘れて、しかもその事に対する自覚がないなんて……)

 

 

ただ単に、本当に零が忘れてるだけなのではないか?自分が過剰に気にし過ぎてるだけではないか?何度もそう思い、もう一度脳裏に今朝の零の様子を思い返してみるが、やはりどう考えても違和感が拭え去れない。彼は、明らかにあの時の記憶を失っている。そうとしか言いようがないために、心を支配する不安の色が色濃くなるばかりだった。

 

 

フェイト(まさか……記憶喪失?もしそうだとしたら……でも、何で今になって?)

 

 

仮に彼が記憶喪失になっていると考えても、その原因が検討も付かない。普段の彼を見ていてもそれらしい様子は見当たらなかったし、至って何時も通りにしか見えなかった。だとすると……

 

 

フェイト(私達に、なにか大事なことを隠してる……?)

 

 

その可能性を考慮すれば、彼なら充分に有り得る。何か、人には言えない大事を密かに抱えていて、一人でそれを解決しようとして今みたいになってしまった。そう考えれば、彼が今朝のようにああなってしまった原因が何となく掴めてくる。

 

 

フェイト(きっとそうだ……また何か、私達に隠し事してっ)

 

 

彼が何を隠しているのかは知らない。しかし、きっとそれは彼に害を及ぼしてる何かに違いない。でなければ、あんな記憶を失うなどという恐ろしい事になる筈がないのだ。どうにかせねばと、フェイトは重い歩みを止め今からでも零を追い掛けようと決断し掛けた。その矢先……

 

 

「――あ、いた。フェイトちゃーーんっ!!」

 

 

フェイト「……へ?」

 

 

自分の名を呼ぶ聞き慣れた声。背後から聞こえたその声にフェイトが思わず声を漏らし、自分が来た道を振り返ると、其処には手を繋いで自分の下に駆け寄ってくる二人……なのはとヴィヴィオの姿があった。

 

 

なのは「はぁ…良かったぁ、やっと追い付いたよぉ」

 

 

フェイト「なの、は?それにヴィヴィオまで……どうしたの二人共?」

 

 

なのは「もう、どうしたのじゃないよ。フェイトちゃんがいきなり一人で別行動取るなんて言い出すから、慌てて追い掛けてきたんだからっ」

 

 

フェイト「え……あ、そっか……確か別行動で動く時は、ライダーに変身出来る人と一緒じゃないとダメなんだっけ……」

 

 

なのは「そーゆうこと。いざっていう時にライダーになれる人がいないと、怪人とか現れた時に対処出来ないからって、前に皆で話し合って決めたでしょ?」

 

 

フェイト「う、うん。そうだった……ごめん、ちょっとボーッとしてたから……すっかり忘れてた……」

 

 

申し訳なさそうにうなだれながら、反省する様に謝罪の言葉を口にするフェイト。しかし、なのはもそんなフェイトの様子を目にして、何処となくある違和感を感じていた。

 

 

なのは(やっぱり、今日のフェイトちゃん、ちょっと変だ……何か元気ないっていうか……どうしたんだろ……)

 

 

今こうして会話していても、何故か目を合わせようとはせず下ばかり見ている。やはり今朝零と話したという時に、また何か無神経なことを言われたのではないかとなのはが心配していると、今までうなだれていたフェイトの頭にある考えが過ぎった。

 

 

フェイト(そうだ……もしかしたら、なのはは私が見落としてる何かを知ってるかもしれない……他の世界でも、零と一緒に行動しているのが多いのはなのはだし)

 

 

ならば、自分が知らないところで、零が何か不自然な態度を取っていなかったか聞いてみるべきか。心の中でそう思考すると、フェイトは意を決したようになのはの目を見て口を開いた。

 

 

フェイト「あの、なのは?ちょっと、聞いてもいい?」

 

 

なのは「うん?何?」

 

 

フェイト「えと……あの、さ……此処最近、零の様子に、何処か可笑しいところとかなかった……?」

 

 

なのは「?可笑しいところって、どうして急に?」

 

 

フェイト「う、ううん……今朝零と話している時に、なんか元気ない感じだったから、ちょっと気になって……それで、何か知ってる?」

 

 

流石に、零が記憶を失っているとは言える筈もなく、どうにか理由をごまかしてなのはに再び問うフェイト。それに対しなのはは唸り声を上げて暫く考える仕草を見せると……

 

 

なのは「うーん……最近は余り、そういうのは見ないかな?この前までは悩みごとがあったみたいで元気なかったけど、相談に乗って話を聞いてから普通に元気になったし」

 

 

フェイト「………え?」

 

 

……今、なんと言った?

 

 

零が、相談?なのはに?

 

 

フェイト「……相談、って……それ、いつ頃に?」

 

 

なのは「え?あ、えと……確か最初は鷹さんの世界でだったかな?その後も稟君の世界とかで、ちょっと話を聞いたりとか」

 

 

フェイト「…………」

 

 

つまり、零は前から自分の悩みをなのはに打ち明けていたということだろうか?彼女にだけは、自分の弱音を……

 

 

ヴィヴィオ「――フェイトママ?だいじょうぶ?」

 

 

フェイト「……えっ?あ、ううん……なんでもない、よ……」

 

 

キュッ……と、フェイトは自分の左腕を掴んで心配げに顔を覗き込むヴィヴィオに力無くそう答え、暫く顔を俯かせた後、徐になのはとヴィヴィオから背を向けた。

 

 

なのは「?フェイトちゃん?」

 

 

フェイト「……ごめん、なのは……やっぱり私、先に行ってるね……」

 

 

なのは「え……?え、待って!フェイトちゃん?!」

 

 

その言葉に戸惑う隙もなく、フェイトはそのまま早足で先へと歩き出してしまう。それを見たなのはは慌ててフェイトを呼び止めようとするも、フェイトは一度も止まることなく人混みの中へと姿を消してしまい、フェイトの姿を見失ってしまった。

 

 

『――確か最初は鷹さんの世界でだったかな?その後も稟君の世界とかで、ちょっと話を聞いたりとか』

 

 

フェイト(――零、前から話してたんだ……なのはには、自分の悩み……)

 

 

そして、なのはとヴィヴィオと別れたフェイトは帽子の下で沈んだ表情を浮かべ、様々な通行人が行き交う街の中を一人歩いていた。しかしその足もピタリと止まり、フェイトはゆっくりとポケットに手を突っ込むと其処から数枚の写真……写真館で零に渡された花壇の花の写真を取り出した。

 

 

フェイト(私、なにも力になれてない……助けになりたいって思ってるのに……私……そんなに頼りないのかなっ……)

 

 

『苦しい事ならなるべく、自分以外の人に背負わせたくない……心配をかけたくない……だから言わない……』

 

 

ポツポツッと、写真を見下ろすフェイトの赤い瞳から急に大粒の涙が溢れ地面に落ちていく中、以前エクスの世界でアレンに言われた言葉が脳裏を過ぎる。

 

 

それは確かにそうなのかもしれない。でも、なら何故彼は親友の彼女にだけそれを打ち明けたのか。

 

 

自分は頼りにされていないのか?

 

 

そんなに自分は頼りないのだろうか?

 

 

そう思う度に、心の奥から悲しみと悔しさが滲み出て、ぐつぐつと沸き上がってくる。

 

 

次第に目の前の視界も止めどなく溢れる涙で霞んでいき、フェイトは帽子を深く被って泣き顔を隠し、血が滲み出るほど唇を強く噛み締めた。

 

 

『それでも、彼が弱音を吐いたら―――その時は受け止めてあげる―――それで、いいんじゃないですか?』

 

 

フェイト(私だって、そうしたい……そうなりたいっ……でも、どうしたらそうなれるのか……分からないよ……アレンさんっ……)

 

 

彼に頼られたい、力になりたい。でも、彼が唯一弱音を見せるのは、親友であるなのはの前だけ。

 

 

ならばきっと、自分が問い詰めたところで、彼は何も話してはくれないだろう。

 

 

助けになりたいと願っても、そうなれない自分。

 

 

なのはに対する嫉妬の感情、そして親友である彼女にそんな醜い感情を抱く自分自身に対する自己嫌悪。

 

 

それらを全部引っくるめて、今の自分が嫌で嫌で仕方ないフェイトはボロボロと泣きながら、零に忘れ去られた写真を胸に抱き、そのまま泣き崩れるようにその場にしゃがみ込んでしまうのであった……。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

そして、そんなフェイトの近くある路地裏では……

 

 

「――フフッ、随分良い顔ねぇ……見ていて気分良いわぁ」

 

 

路地裏に身を潜めながら、道行く人々の視線に気付かぬまましゃがんで動かないフェイトを静かに見つめる女性……長いコートと帽子を被って変装した、クアットロの姿が其処にあった。

 

 

クアットロ(んっふふっ。まさか現場の下見に来て、こんな面白い物が見られるなんてねぇ……せいぜい今の内に、好きなだけ泣いておきなさい?その顔、もっとグチャグチャにしてあげるから♪)

 

 

泣き崩れるフェイトの姿を愉快げに見つめ、ニヤニヤと笑いながら路地裏の奥へと去っていくクアットロ。その途中で前方から現れた歪みの壁に飲まれ、そのまま何処かへと姿を消してしまうのであった。そして其処へ……

 

 

「――ん?何だ?」

 

 

「……?映紀さん?どうかしましたか?」

 

 

映紀「うん?あーいや……何かこの先に誰かいたようが気がしてな……」

 

 

「…?誰もいないですよ?多分気のせいじゃないですか?それよりもほら、先を急ぎましょう」

 

 

映紀「うん?ん……ああ、分かったよ」

 

 

クアットロが消えた路地裏の前を取り掛かった二人組の青年。その内のひとりである映紀と呼ばれた青年が、路地裏に誰かいたような気を感じて路地裏を覗き込んでいたが、もうひとりの青年に先を促され、疑問が残りながらもその場を後にしたのだった。

 

 

 

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