仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―機動六課―
一方、はやて等と別れた零とアズサ(シロは六課に向かう前に栄次郎に預けてきた)は取りあえずこの世界での自分たちの役割であるレオン分隊と合流する為、この世界の機動六課に訪れてカウンターの局員に話し掛けていた。
零「失礼、今日から此処に配属する事になった者なんだが……」
「え?……あぁ、貴方達が例の?そちらの話でしたら事前に伺っています。では失礼ですが、一応身分証と階級の確認をさせて頂いても宜しいでしょうか?」
アズサ「ん……はい、黒月アズサ二等空尉です……」
胸ポケットから取り出した身分証を局員に見せ、それから自身の階級を口にするアズサ。局員も提示された身分証を見た後に機動六課のデータベースでアズサのそれが本物か確認して頷き返し、それを見た零もフッと不敵な笑みとともに胸のポケットから身分証を出して局員の前に突き付けると……
零「で、俺が同じくレオン分隊所属になった――黒月零"一等空尉"だ」
「……え……あ、えぇっと……あぁ、黒月零"空曹長"ですねっ。分かりました。では隊長をお呼びしますので、そちらでお待ちになって下さいっ」
零「…………………………………………」
結構自信満々に言ってみたものの、苦笑いで返された上に若干引かれてしまった。その局員の反応を見て零も「やはり駄目か……」と肩を落としながらトボトボとカウンターから離れ、アズサと共にロビーのソファーに腰を下ろした。
零「くそぅ……やはり勢いに任せて名乗っても事実が覆る訳じゃないか……」
アズサ「零、流石に嘘を付くのは駄目だと思う」
零「……別に嘘言ってる訳じゃないんだが……」
いやまあ、どうせ無駄だとは思ってましたよ?だけどそう簡単に空曹長への降格を受け入れるのも何か癪というか、ぶっちゃけあのリインと同じ階級というのが何か悔しいというか……。ちょっとぐらい世界に反抗してみても良いのではないかと、そんな出来心からあんな無謀なチャレンジをしてみたものの、局員に引かれた上にアズサから責めるような視線を注がれるぐらいならやんなきゃ良かったと、零は今更になって内心ちょっぴり後悔した。そうして、若干テンションただ下がりながらアズサと共に暫くソファーで待っていると……
「えーっと……あ、いた。其処の二人共ーっ!」
零(?あれは……あぁ、この世界のなのはか)
ロビーの奥から、教導官の制服に身を包んだこの世界のなのはが現れ、ソファーに座る零とアズサを見付け声を上げながら歩み寄ってきていた。それに気付いた二人もソファーから立ち上がると、肩を並べてなのは(別)の前に立つ。
なのは(別)「初めまして、君達が例の新人さん達だよね?私は高町なのは。此処機動六課で教え子達の教導兼スターズ分隊の隊長を勤めています」
零「ご丁寧にどーも……。本日よりこちらに配属することになった、黒月零一等――じゃなかった。黒月零空曹長だ」
アズサ「同じく、黒月アズサ二等空尉です……宜しく……」
なのは(別)「はい、宜しくね♪それで早速、この部隊について説明しようかと思うんだけど……」
零「いいや、一応それなりに知っているから必要ない……それより、ひとつ質問いいか?」
なのは(別)「ん?何かな?」
左手を上げて質問があると告げた零になのは(別)が首を傾げながら問い返すと、零は何かを探す様に辺りを見回しながら口を開いた。
零「気になってたんだが、レオン分隊の隊長や副隊長殿は来てないのか?普通自分の隊に配属することになる部下の迎えなんて、他所の隊の隊長殿がやる事じゃないだろう?まあ、アンタが普段からパシリ扱いされてるなら話は別だが」
なのは(別)「そ、そういう訳じゃないんだけどねっ。ただ、今はどっちも訓練中で教え子達の教導に手が離せなかったから、代わりに私が二人の案内に来たってこと」
零「……ほおう」
なら別に、こいつに続きを任せてソイツ等が来れば良かったんじゃないか?なんてツッコミは野暮かと。零は適当に考えながら首に掛けたカメラを構えてなのは(別)の写真を取り、なのは(別)はそれを見て苦笑いしながら踵を返した。
なのは(別)「それじゃあ、取りあえず八神部隊長の所に行こっか?先ずはちゃんと挨拶しておかないとだし」
零「ふむ……あ、待った。その前に先に訓練スペースの方に行ってもいいか?」
なのは(別)「え?どうして?」
零「いやなに、あの有名な八神はやて陸上二佐に会うとなるとどうも緊張してな。取りあえず失礼がない様に緊張を緩めたいから寄り道。ついでに俺達も使う事になる訓練スペースへの道を覚えておきたいんだが……駄目か?」
なのは(別)「うーん……別にはやて隊長なら全然気にしないと思うけど……でもまあ、時間もまだあるし、どうせそっちの方も案内する予定だったからいいかな?うん、じゃあ付いてきて?」
零「感謝しまーす、なのは隊長?」
片目を伏せてそんな軽口を叩くと、なのは(別)は歩きながら「にゃはは」と苦笑を返した。そして零もアズサと共にそんななのは(別)の後ろを付いて歩くと、隣を歩くアズサが小声で話し掛けてきた。
アズサ(零、どうする気なの……?)
零(…一先ず、レオン分隊とやらの面子の顔を拝もうと思ってる。そん中に雷の奴がいないかどうか確かめたいからな)
アズサ(?それだったら、今なのはに話を聞いた方が早いんじゃ……)
零(馬鹿。もしこの世界の六課が雷と敵対してる立場なら、そう簡単に聞ける訳ないだろう?何の因果か、今回はもしかしたら雷牙と敵対してる組織の一員……なんてこともあるかもしれしれないしな)
アズサ(……今回は結構慎重なんだ……)
零(一応な。それになんか……写真館出た時から、妙に嫌な予感するんだよ……まるで―――)
と、零は目の前を歩くなのは(別)の背中を見つめたまま不意に言葉を区切った。それに対しアズサも頭上にクエスチョンマークを浮かべて首を傾げると、零は誰にも聞こえない声でポツリとこう呟く。
零(―――まるで、何か嫌なモノが迫って来てるような……そんな気がしてならない……何故だ?)
心の奥底から沸き上がる、謎の不安感。以前にも幾度となく感じた事があるその感覚に、零も表情を厳しくさせてしまうが、すぐにそれを振り払うように思考を切り替えなのは(別)の後を黙って付いていくのだった。
◇◆◇
―クラナガン・ショッピングモール―
零達がこの世界の機動六課に着いたのと丁度同じ頃。クラナガンのショッピングモールの一角に存在するとあるコンビニ店に、一人の黒いスーツの青年が買い物カゴを片手に店の中を徘徊していた。
真也(ちっきしょおぉ……何で俺がアイツ等の食料を調達して来なきゃなんねえんだよっ……)
内心愚痴りながら、お菓子コーナーの棚に並ぶポテチとチョコ菓子を買い物カゴに投げ込んでいく青年……組織の任務でこの世界へと来ている筈の荒井真也は、ポケットから出したメモを頼りに次の商品を探しに向かう。
真也(クソッ……やっぱりあん時のジャンケンでグーじゃなくてチョキを出してればこんな事には――って、そういう問題じゃねえんだよっ。なんで俺、任務の最中に買い物カゴを片手にデザートコーナーのプリンをカゴん中に入れてんだよっ)
グチグチとそんな文句を垂らしながらも、同じ組織の一員である恭平リクエストのプッ〇ンプリンを乱雑に買い物カゴへと投げ入れる真也。ちなみに何故彼がこんな場所で買い物をしてるかと言うと、終夜の命令でサンダーレオンを捕まえにこの世界へ訪れ、さあ今回も頑張るぞと張り切ってた矢先に恭平が『腹減った』などと言い出して動かなくなってしまったのだ。
そうなってしまうと腹に何かを入れなければ梃でも動かない恭平なので、仕方なく腹ごなしという事で真也と恭平と薫の三人で誰がコンビニに行くかとジャンケンした結果、敗者となった真也がこうしてむざむざと買い出しに来てる訳である。
真也(しかも恭平の奴、これを見よがしに山ほど頼みやがってっ……えーっと、次は電〇レ?って、アイツまだこんなん読んでんのかよ?ったく、電〇レ、電〇レと……何処にあんだ?)
文句を言いながらも、素直に雑誌コーナーに足を運んで電〇レを探すも何処にも見当たらない。これはもしかしてないんじゃないか?と、真也は半ば諦めムードになりながら顔を動かして横を向くと……
姫「ふむぅ……やはりこの材料はこの武器でなければ入手困難か。だがこの武器はまだ作れてないし、ソロでは少々面倒だな……仕方ない。アズサやはやてにも協力してもらうか?他には―――」
真也「……………………………………………」
……横を向いた先に、何故かすんごい知ってる人間?が雑誌を開いて何やらブツブツ独り言を呟いていた。黒いロングヘアーの髪に、明らかに美人の類に入る顔立ち。確か彼女は、とある世界で黒月零と契約を交わしたという桜ノ神・木ノ花之咲耶姫のハズ。つまりは自分達組織とは敵対関係にある神……なのだが、その彼女が何故か自分のすぐ横で雑誌を手に立ち読みしていた。ホントに、何故か。
真也(な……何でだよ……何でよりによって会いたくない奴らの一人が、こんなとこで雑誌の立ち読みなんてしてんだよ?!アレか?俺にはコントの神でも憑いてんのか?!いらねー!!こんな笑いなんていらねえぞ神様ーっ?!)
ああいや目の前の女も神様なんだけどねと、一人ツッコミしていた真也は其処である事に気が付き、カッ!と両目をかっ開いて驚愕した。
真也(し、しかもコイツが読んでるの、恭平の奴に頼まれた電〇レじゃねっ?!何でよりによってそれ読んでんのコイツ?!これなんて俺虐めだよチクショウッ!!)
姫が難しい表情で立ち読みしてる雑誌。それが恭平に頼まれた電〇レであると気付き、真也はよりによってと内心頭を抱えながら絶叫した。何故ただのお使いがこんなハイレベルな任務にランクアップしちゃってんだよと、誰かに文句を言いたい気分だったが、生憎今の彼にそんな余裕などない。
真也(く、くそぉっ。どうする俺っ?このまま見付からない内にレジ行ってさっさとこっから出るって手もあるけど、それだと電〇レを諦めるしかねえっ。買って来なかったとなると恭平がネチネチ文句言って後々うっとうしいし、たかだか雑誌一冊の為に別の店に行くのもめんどくせぇし……しゃーない……此処はさりげなく話し掛けて譲ってもらうしかねえか……)
彼女に顔を見られるのはかなりマズイが、此処はただの一般人を装って雑誌を譲ってもらえば大した印象にも残らないだろう。そう考えた真也は一度姫から背を向けて気を落ち着けようと深呼吸を繰り返し、意を決して姫の方へと振り返った。
真也「……あ、あのぉ……ちょっといいッスか?」
姫「……ん?何だ?私か?」
真也「え、えぇ……お取り込み中のところ悪いんですけど、実はその雑誌が欲しくてですね……駄目ッスかね?」
姫「……ほう……成る程」
遠回しだが、雑誌を譲って欲しいという意思表示がなんとか伝わったのか、姫は真也と電〇レを交互に見た後に……何故か、ニヤリと笑った。
姫「つまりアレか……君はこの雑誌を譲って欲しいと言ってるわけか」
真也「え、えぇ、まあ……」
姫「なるほどなるほど……で?君は一体どのキャラが目当てなんだ?」
真也「……は?」
……何言ってんだこの女?そう言いたげな表情で姫に思わず聞き返す真也だが、姫はそれに答えぬまま雑誌をパラパラとめくってあるページを開き真也に見せると、真也はそのページを見てウッ?!と後退りした。姫が開いて見せたページには、なにかのギャルゲーのキャラと思われる女の子が、上に着ていたTシャツを今正に脱ごうとして無駄に巨乳な下乳が見えるか見えないかという、中々にえっちぃ絵が大きく載せられていたのである。
姫「君の本命はこっちなのだろ?最近は小学生の男の子も、半分はこーゆう絵を目当てに買う子が増えてるらしくてなぁ。いやはや、時代は移り変わってもこの辺りは全く変わっていないようだ」
真也「は、はぁっ?!んな訳あるか!俺は単にダチに頼まれただけであって!」
姫「皆まで言わなくていい、分かっているさ。最近は三次元より二次元が~っという若者が増えているようだからな。しかもその中には、偏った性癖の持ち主も多くいるらしい。君もそっち系のアレなんだろ?」
真也「ちっげぇーっ!なに勝手に人の性癖を捏造して哀れんでくれてんだよ?!つかアレってなんだ?!」
姫「だが恥じる事はない、それは男……いや、人なら誰しもが持っている性質だからな。寧ろない方が可笑しいさ」
真也「……ねえ、俺の話し聞いてる?さっきから微妙に会話のキャッチボールが成立してない気がすんだけど?」
姫「確かにそんな趣味を人に打ち明けるなど恥ずかし過ぎるし、なにより女子にバレてしまった時には一生モノの傷になること間違いないだろう。しかし、私は決して軽蔑したりしない!寧ろ暖かく受け入れようさ!さあ、君の素直な気持ちを私に打ち明けろ!さすればこの宝本を譲ろうではないか!」
真也「……お前、絶対自分が楽しんでるだけだろ?」
何処か楽しそうに爛々と電〇レを掲げる姫にげんなりした表情になる真也だが、此処で無駄に時間を喰う訳にはいかないし、あんまりこの女と関わる訳にはいかない。
姫「うん?どうした?ほれほれ。素直に言わないと、この本は私が買ってしまうぞ?」
真也「ぐぬぅぅぅっ……」
この女、恐らく自分が満足する返答をしなければ雑誌を渡す気はないのだろう。どう見ても顔にそう書いてある。こんな性悪女の手の上で弄ばれるのはかなり癪だが、此処は無難にことを済まさなければ……。そう思いながら拳を強く握り締め、どうにかこの怒りを沈めようと辛抱しながらワナワナ震えて……
真也「……あ、ああ、そうだよっ……俺は!!その微エロ画が見たいからその本が欲しいんだよ!!だからそれ譲って下さいどうかお願いします!!」
姫「うむ、君の真心、確かに受け取った!……因みに、先程から後ろにいる彼は君の知り合いか?君と同じ格好をしているが」
真也「…………え?」
一瞬、姫に何を言われたのか分からず小首を傾げてしまう真也。軽く下げていた頭を上げて彼女を見れば、姫は何故か真也の後ろに目をやっており、その視線を追うように背後にゆっくりと振り返ると……
薫「……………………」
……どうにも形容し難い、なんとも言えぬ顔で真也を見つめる薫の姿が、何故か其処にあったのだった。
真也「……し……しししし新人?お、お前、何でっ?」
薫「……いや……余りにも先輩の帰りが遅いから、何か問題が起きたんじゃないかと思って様子見に来たんですが……」
姫「ふむ…?どうやら君の知り合いで間違いないようだな。なら私はこれで失礼させてもらおう。早くしないと飲み物が温くなってしまうしな。ではな、好青年♪」
ポンッと、電〇レを真也の胸に押し付けて床に置いてあったコンビニの買い物袋を手に取り、満足げに鼻歌を歌いながらコンビニを後にする姫。そして残された真也と薫の間には、何とも言えぬ微妙な空気が漂い、真也は気まずげにゆっくりと重たい口を開いた。
真也「あ、あの……違うんだぞ、新人……さっきのはなんていうか……あの女の陰謀というか、俺も色々と苦悩した上での決断だったというか……」
薫「…………いえ、別に気にしなくて大丈夫ですよ?組織は毎日任務三昧だから、ストレスだって溜まるでしょうしね。なにかしらの方法で発散しないと身が持たないでしょう」
真也「思いっきし勘違いしてるよなお前?!声が一段と低いぞ?!いやだからそうじゃなっ――!」
―ササッ……―
真也「そうじゃっ――!」
―サササッ……―
真也「ちがっ――」
―ササササッ!!―
真也「………………」
なんとか誤解を解かねばと薫に歩み寄ろうとする真也だが、薫は真也が近付こうとする度に後退して一定の距離を保とうとする。しかも真也を見つめるその眼は明らかに冷たく、其処からなんとなく意思が伝わってくる。『これ以上は近付かないで下さい』、と。
真也「…………あの、新人君……?」
薫「……じゃあ、僕は先に恭平先輩の所に戻りますので。失礼します」
真也「待って?!頼む待て!!ちょっとでもいい!!お願いだから弁解させてくれ?!違うんだ!!!俺にこんな趣味なんてないんだよぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっっっ!!!!!」
そんな青年の悲痛な懇願も虚しく、薫は冷めた視線を真也に向けたままコンビニから去っていってしまった。そうして、先輩としての威厳とかその辺の色んな物を一度に失った真也は右手を伸ばした態勢のまま暫く固まり、そのままフラフラと床に膝を付き四つん這いになっていったのであった。
◇◆◇
そしてその頃、コンビニを後にした姫は買い物袋を手にはやて達の下へと向かう最中、突然ピタリと足を止め自身が来た道を振り返った。
姫(――さっきの青年……やけに邪な気を纏っていたな……まるで、死神にでも憑かれて生命を食われているような……)
何かが引っ掛かる。そんな心境を表すように難しげな表情を浮かべ、姫は顎に手を添えながら先程会話した真也と薫の顔を思い浮かべていく。
姫(しかし、話してみて特に変わった異常は見当たらなかったしな……それに、あの後から出て来た少年。何処かで会ったような気が……)
―PPPPP!PPPPP!―
姫「ッ!っと、携帯か……優矢から?」
思考に浸っていた中で突然響いた着信音に驚きながら携帯を取り出すと、ディスプレイには優矢の携帯番号が表示されている。早速何かこの世界での役目について掴んだのだろうか?と、姫は携帯の通話ボタンを押して耳に当てた。
姫「もしもし?」
『あ、もしもし?!姫さんですか?!』
姫「?その声……スバル?優矢じゃないのか?」
何故か通話に出たのは携帯の持ち主である優矢ではなく、彼と行動を共にしてるスバルだった。それに対し疑問げに聞き返す姫だが、スバルはそれに答えず焦りの篭った声でこう告げた。
スバル『そ、それより大変なんです!実は今、目の前で優矢さんが怪人と戦ってて……!』
姫「ッ!怪人?この世界のか?」
スバル『はいっ!場所は、えと……あ、クラナガンの第六エリアです!』
姫「第六エリア……分かった。すぐはやて達と一緒にそっちへ向かう!」
スバルにそう伝えると、姫は携帯の通話を切ってポケットに仕舞い、はやて達と合流すべく買い物袋を握り直しながら駆け足で走り出した。が……
―……ピタッ―
姫「…………………」
何故か、はやて達の下へと走り出した姫はすぐに足を止め、その場に立ち止まってしまったのである。姫はチラリと、僅かに顔だけを動かし自分の斜め後ろを覗き見ると、そのまま何事もなかったかのように正面を向いて歩き出すが、何故かその足が向かう先は道路脇にある路地裏へと繋がる道だった。そして、姫は暫く道を進んで人気のない広場へと出ると、ゆっくりと足を止めて口を開いた。
姫「――姿を見せろ。生憎私には、視姦される趣味はない」
目前に視線を向けたまま、凜とした声を言い放つ姫。すると、姫の真横に建つ建物の上からゆっくりと一人の青年が姿を現し、姫の前に飛び降りて姫を見据えてきた。
「お前が桜ノ神、木ノ花之咲耶姫……黒月零と契約したという神、だな?」
姫「ふむ?どうやら私も、それなりに有名になってるみたいだな……それで?私に何か用か?」
「お前というより、お前と契約した黒月零に用がある、と言った方が正しいな……」
姫「?なら何故私のところに来る?さっさと彼の下に行けばいいだろう?」
「ああ。ホントなら俺も、真っ先に奴の下へ行きたい……だが、その前に――」
至極真っ当な質問を投げ掛ける姫にそう言うと、青年は後ろ腰に手を引いて其処から一本の長剣を取り出し、それを見た姫は驚愕から険しげな表情となって青年を睨んだ。
「お前と奴が一つになって変身するアマテラスフォームとやらは、かなり厄介だ。奴と戦う時にそれを出されたら、流石に俺でも面倒になる」
姫「零と、戦う……だとっ?」
「……お前に怨みはないが、その片割れには暫く動けなくなってもらうッ!!」
怒号を飛ばすと共に、青年は姫に突っ込みながら剣を横薙ぎに振るって姫に斬り掛かっていった。姫は咄嗟に前へ飛び込むようにして剣をかわすと、態勢を立て直しながら何処からかイクサナックルとイクサベルトを取り出し、ベルトを腰に巻いた。それを見た青年も鼻で笑いながらポケットから一枚のカードを取り出し、姫と対峙していく。
「抵抗はしないでもらえると助かるんだがな……。神が相手となると、こちらも手加減が出来なくなる」
姫「すまないが、それは出来ない相談だな……私の身に何かがあれば、彼にまた涙を流させることになる。それだけは避けたいんだ」
「……随分と酔狂だな……そんなにアイツを悲しませたくないと?」
姫「君には分からないだろうが、彼に彼処まで強く思われるとそうなってしまうんだよ。だから私も、彼にはもう二度とあんな顔をさせない……そう決めてる。私も、彼を思う一人としてな」
『READY!』
イクサナックルのナックル正面を手の平に押し当てると、無機質な電子音が路地裏に響き渡る。対する青年もそれを見て、取り出したカードを剣へと装填した。
『KAMENRIDE――』
「神が人への恋を謡うか……中々ロマンチックな事だ。果たしてその結末は如何なるものか」
姫「恋……?フフッ、少し違うな。私が彼に抱いてる感情は、そんな可愛いモノじゃないさ」
「ほう……ではなんだ?」
姫「ふむ……正面切って言うのは少々照れ臭いんだが……絶対の信頼……『愛』だよ……変身ッ!」
『F・I・S・T・O・N!』
「……変身」
『DI-SWORD!』
二つの電子音声が二人の間で鳴り響き、それと共に姫は右手にイクサカリバーGモードを手にしたイクサFに、青年は自身を中心に辺りを駆け巡りながら現れたビジョンに重ねられアーマーを纏い、最後に上空に浮かんでいた紋章がプレートとなり青年の仮面へと刺さっていった。そして全てのプレートが刺さり終わると青年のスーツは紫へと変色してディケイドとディエンドに近い姿をしたライダーへと変身を完了し、二人は変身した互いの姿を見据えたまま警戒し、どちらからも全く動こうとはしない。そして……
イクサF『…………』
『…………』
―ヒュウゥゥゥゥゥッ……カンッ!―
イクサF『ッ!ハッ!!』
―ババババババババババババババッ!!―
『おおおおおおおッ!!』
風に乗って飛んできた空き缶が建物の一角に当たった音を合図に、イクサFが素早く右手のイクサカリバーGモードを青年に突き出し銃を乱射し、変身した青年……『ディソード』は咄嗟に自身の顔の前にディソードライバーを盾にするように出して銃弾を弾き、そのままイクサFに突進しディソードライバーを振りかざしたのであった。