仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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番外編/宇宙が生まれたばかりの、『人形』のお伽話

 

 

 

―――その昔、今とは違う全く別の宇宙が在った。

 

 

その世界は無駄を赦さず、現宇宙の意志からすべてが管理された世界だった。

 

 

人間達に自由はない。総てが宇宙の意志に管理され、物事全ての無駄を無くし、ただ人形のように死ぬまで働かされる奴隷でしかない。

 

 

意志は人間が嫌いだった。だから意志は、人間を自分好みの『人形』にする為に人間達を管理する。

 

 

才能を持つ人間のみを未来に残すため、愛し合ってない男と女を本人達の意志とは関係無しに結ばせ才能の優れた子供を生ませるように運命を操った。

 

 

何の才能もない人間の存在は決して赦さず、他の人間達はそんな彼等に罵詈雑言の限りを浴びせて非難し、生きる希望を失わせ自殺に追い込んだ。

 

 

利口な人間のみが築く世界、才能のない無駄しか持たない余分な人間の存在は絶対に許さない。

 

 

異常極まりない理。だが、管理される人間達はそれを可笑しな事だと疑問を持つ事はなかった。

 

 

それが彼等の住む宇宙の理、世界の概念だからだ。

 

 

才能を持たない人間は悪、無駄は嫌悪すべき物、社会が決めた奴隷の様に生きるルールが善であると、彼等は生まれた時はそう教え込まれたのだ。

 

 

正しく家畜。宇宙の意志の思惑通りに動く『人形』でしかなかった。

 

 

……だが、それを可笑しいと否定する者が現れた。

 

 

この世界は可笑しい、この世界のルールは間違ってると。そう唱える彼を、世間は狂人だと称してまともに相手にしなかった。

 

 

味方など誰もいない世界。しかし彼はそれでも世界の不条理を真っ向から否定し、そんな理を作った存在を探し戦い続け、遂に誰にも見付けられる筈がない宇宙の意志の下へと辿り着いたのだ。

 

 

お前は間違ってる――と、彼は意志を否定した。

 

 

私は間違ってない――と、意志は自分を肯定した。

 

 

相容れない二人は衝突し、長い長い戦いの末に―――彼は意志を打ち倒した。

 

 

敗れた宇宙の意志の不条理は破棄され、意志を下した彼が新たな宇宙を創造し、新たな理を創った。

 

 

それが今の宇宙。誰もが、人間らしく生きられる世界だった。

 

 

……だがしかし、敗北した前宇宙の意志は、前宇宙と共に消える寸前に現宇宙の意志への深い憎悪から一つの『人形』を生み出した。

 

 

自分と前宇宙の理を、再び世界へと流出させる為に、現宇宙の意志を滅する使命を『人形』に与え、前宇宙の意志は前宇宙と共に容れものの『人形』の中で深い眠りに付いたが、其処で前宇宙の意志の思惑外の事態が起きた。

 

 

 

 

彼が生み出した『人形』が自我に目覚め、現宇宙を愛してしまったのだ。

 

 

 

 

植え付けられた前宇宙の理しか知らなかった『人形』は、新しい理の中で自由に生きる人間達に興味を持ち、其処に生きる人々と接していく内に現宇宙と彼等に愛着を持ってしまった。

 

 

前宇宙では見られなかった心からの笑顔を浮かべて、信頼する友と共に過ごし、愛する人と添い遂げる。

 

 

管理などで決められたものではない、自らの意志で、名も知らぬ誰かを助けたりするそんな人間達の姿は、生まれたばかりの『人形』を心惹からせた。

 

 

もっとこの世界を知りたい。そんな好奇心から、自分を生み出した存在から与えられた使命を果たそうとせず、『人形』は様々な世界を渡り歩き、行く先々で数え切れない友を作った。

 

 

友人達もそんな『人形』に最初の内は驚いたり戸惑ったりしたものの、最後には暖かく迎え入れて、ソレを友人だと笑顔を浮かべて認めてくれた。

 

 

そんな彼等と接していく内に、『人形』もある確信を得た。

 

 

こんなにも素晴らしい彼等と宇宙の存在が間違ってる筈がない、間違ってるのは前宇宙の意志の方だと。

 

 

前宇宙の意志の理を否定し、現宇宙にすっかり愛着を持った『人形』はこの宇宙で何時までも生きていたいと望みつつあった。そんな矢先の出来事だった……

 

 

 

 

 

 

『人形』が初めて友人を作った世界に、ある神の手により異能の力を手に入れた転生者が現れたのは。

 

 

 

 

 

 

突如現れた転生者は神から貰った異能を使って思うがままに生き、多くの女達を手駒にし、友人達が働いていた時空管理局を壊滅した。

 

 

その中には、転生者に惨たらしく殺された『人形』の友人達の姿もあり、異常に気付いて『人形』が戻った時には、彼等は既に物言わぬただの死骸に変わり果てていた……。

 

 

屍を抱き締め、『人形』は悲しみ嘆いた。涙を流せぬ代わりに、ソレは絶叫した。

 

 

何故彼等が死なねばならぬのかと。彼等は何も悪行を成していないのにと。

 

 

友を殺され、『人形』の中にある感情が芽生えた……憎悪だ。

 

 

その初めて得た激しい感情を、ソレは押さえ込む術を知らず、『人形』は憎悪のままに使わぬと決めていた前宇宙の意志が授けた力を敵討ちに使ってしまった。

 

 

友等を殺した張本人である転生者は、最初の内は悦に入れさせてから徐々に追い詰め、四肢を喰いちぎり、圧倒的な恐怖と絶望を与えてから、何故こんな真似をしたのか問い詰めた。

 

 

友人達が働いてた管理局が、裏で非道な行いでもしていたのか。それとも友人達を初めとした多くの局員が、実は人を人とも見ぬ畜生だったのか。

 

 

とにかく訳を知りたかったのだ。彼等が殺され、掴む筈だった幸せを奪われるに足る動機を彼が持っているのかを。

 

 

……しかしその理由は、余りにも信じられないほど救いのない動機だった。

 

 

 

 

 

 

自分が転生する前の世界で初めて見た、とある創作物のお気に入りであるアンチ小説の主人公の真似事がしたかっただけ、と。

 

 

 

 

 

 

───意味が解らなかった。怒りのあまり、頭の中が真っ白になった。

 

 

気付いた時には、『人形』は転生者の腹を引き裂いて内臓をブチまけ、転生者は涙と鼻水と血でグチャグチャになった絶望に塗れた顔で死んでいた。

 

 

だが、友の仇である転生者を殺しても『人形』の胸を支配する憎悪と無念は晴れなかった。

 

 

転生者の力に心酔し、彼を英雄などと讃えて友人達を殺す手伝いをした裏切り者の局員と人間達を一人残らず駆逐した。

 

 

彼をこの世界に転生させた元凶である愚神の下に乗り込み、四肢を引きちぎってゴミのように踏みにじって惨殺した。

 

 

それでも収まらない憎悪のままに、暴れ、暴れ、暴れ───

 

 

 

 

 

 

───気付いた時には、『人形』は全てが荒廃した大地の上に独り佇んでいた……。

 

 

 

 

 

 

友人達の亡骸も、転生者や他の人間達の亡骸も、街も全て消滅して、自分が犯した馬鹿な復讐劇を思い返し、胸に残った虚無感に呆然となりながら、『人形』は暗雲に包まれる空を見上げ力無く呟いた。

 

 

 

 

 

 

「――嗚呼……この世界は……なんて――――」

 

 

 

 

 

 

これが、『人形』の軌跡の一つ。

 

 

もう気が遠くなるほど昔の、宇宙が誕生したばかりの頃の『人形』のお話だった。

 

 

 

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