仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―機動六課・医務室―
あれから数分後。なのは達を先に写真館に帰して機動六課に残った零は、自分の部屋に向かう前にアズサの様子を見るため医務室へと立ち寄っていた。零が立ち寄った時には既にアズサは意識を取り戻していたが、この世界のシャマル(別)の診断ではあまり激しい運動をすると背中の傷が開いてしまうので絶対安静を言い渡され、アズサに無理をさせぬよう彼女をベッドの上に横たわらせながら会話していた。
零「傷の具合はどうだ…?まだ痛むか?」
アズサ「ううん……大丈夫……前に翼を毟り取られた時に比べたら、全然平気……」
零「あぁ……そうだったな、お前はひ弱そうに見えて案外丈夫な奴だし。安静にしとけばその程度の怪我、すぐに治るだろう」
アズサ「…………」
冗談を交えて笑みを浮かべながらアズサにそう告げる零。しかし、そんな零を見つめるアズサは何故か元気がなく表情を曇らせており、何処か申し訳なさそうに目を伏せながら口を開いた。
アズサ「零―――ごめんなさい……」
零「……?何だ急に?何で謝る?」
何故かいきなり謝り出したアズサに訝しげに零が問い返すと、アズサは「だって……」と伏せていた瞼を開いた。
アズサ「あの時……私が怪我さえしなかったら……零が雷と戦う事なんてなかったから……」
零「……!」
アズサが気にしているのは、雷との戦いの中でサンダーレオンから零を庇った際、自分が怪我をしたせいで零と雷を止められなかったことらしい。あの時自分が怪我さえしなければ、零が雷に対し怒りを抱いて戦うこともなかったと。その事に対して申し訳なさそうに謝罪するアズサに、零も気まずげに視線を下げ一瞬口を閉ざしてしまうが、すぐにアズサに視線を向け首を左右に振った。
零「お前が謝る事はない。謝らないといけないのは、寧ろ俺の方だ……お前は身を呈して必死に戦いを止めようとしてくれたのに、俺は目先の怒りに囚われて、それを無駄にした……すまない」
それに、あの戦いでアズサを傷つけられた事に対して怒りを感じたのは事実だが、実際はそれだけじゃない。自分も信頼してた仲間に裏切られたと誤解して感情的になり、冷静さを失い雷と戦ってしまった。だから悪いのはアズサじゃないと零は頭を下げて謝罪し、アズサはそんな零を見てフルフルと首を振った。
アズサ「零……謝る相手が違う。私じゃなくて、雷に謝らないと……」
零「……え?」
アズサ「雷達は、何も知らないままただ自分達の世界を守る為に戦っただけで、私達も、雷達のことを誤解して戦った……」
零「…………」
アズサ「零は不器用だから……きっと、まだ雷達と仲直り出来てないと思う……だから、雷達とちゃんと、仲直りして……誤解されたままじゃ、何も分かりあえないから……」
まるで友達と喧嘩した子供を優しく叱る母親のように、零の眼を真っすぐと見つめながらそう促すアズサ。零はそんなアズサの言葉を聞き驚くように僅かに眼を見開くと、自嘲するように苦笑いを浮かべ、アズサに向けて小さく頷き返した。
零「ああ……分かった……雷達には俺から謝っておく、だからお前ももう休め。あまり無理すると、本当に怪我の治りが遅くなるぞ?」
アズサ「……うん……約束……」
苦笑いする零に向けて徐に頷くと、アズサはゆっくりと瞼を閉じて数分もしない内に寝息を立てながら眠りに付いていき、その就寝の早さに零も思わず苦笑いを深めてしまう。
零「まったく、まさかお前に説教される日が来ようとは……いや、それだけ俺が頼りないだけか」
改めて自分の不甲斐なさを思い知らされて力無く首を振ると、零はアズサの肩にまでシーツをしっかり掛け、医務室の扉を横目で見つめた。
零「――いい加減に入って来たらどうだ?盗み聞きをされるのは良い気がしない」
『……!』
零がそう呼び掛けた瞬間、医務室の扉の向こうで誰かが驚くような気配がした。そして少しの時間を置いて医務室の扉が開かれ、其処から一人の少年……紫苑が医務室の中へと入ってきた。
紫苑「気付いてたんですか、僕がいるの」
零「気配を感じ取ることに関しては、どっかのドSの扱きで人並み以上に鍛えられてるんでな……で?俺に何か用か?」
アズサと話してた時と違い、淡々とした口調で紫苑にそう問い掛ける零。しかしそんな零からの問いに紫苑は無言のまま何も答えず、ベッドの上で眠るアズサに視線を向けた。
紫苑「彼女には優しいんですね。その子と話してる時の貴方は、さっき雷さん達と話してる時とまるで違った」
零「……別に。怪我人相手にまで刺々しく接する必要はないだろ」
紫苑「本当にそれだけですか?……ずっと気になってたんですよ。何で貴方はあの映像や自分の力について何も弁解せず、雷さん達に対してあんな態度を取って、僕を庇うような事をしたのか」
零「そんなつもりはないと言ったハズだ……何が言いたいんだ?」
まるで全てを見透かしてるかのように回りくどく言う紫苑を鋭い目付きで睨む零だが、紫苑はそんな零に臆する事なく、零の目をまっすぐ見つめ返しながらハッキリと告げた。
紫苑「あの人達にあんな事を言ったのも、自分が世界を破壊する存在だと認めたのも、全部わざとじゃないんですか?自分に矛先を向けさせて、わざわざ自由に動けなくなる条件を呑んでまで僕を庇ったのも、何か意図があるからでは?」
零「…………」
紫苑「ちゃんと話してください。このまま貴方に借りを作られたままなんて僕は嫌です。何も聞かされないまま、貴方の思惑通りに動かされるのも」
自分の自由の代わりに零が犠牲になるという今の状況が気持ち悪いからか、零の目を見つめたまま真剣な口調でそう告げる紫苑。零はそんな紫苑の言葉を聞いて思わず紫苑の目から視線を反らしてしまうが、先程アズサに言われた言葉を思い出し、薄く息を吐きながらゆっくりと口を開いた。
零「―――お前も知っての通り、この世界の管理局という組織は、ディケイドを危険な存在だと警戒心を抱いてる。その原因となったあの映像と警告状を送った奴は、恐らく俺の『力』についてそれなりに知ってるに違いない。最初は俺の力を警戒してあんな物を送り付けたのかと思ったが、それなら俺の名前を書けばいいだけなのに、警告状にはわざわざディケイドとだけ書かれていた。多分アレは俺だけじゃない……俺とお前の両方をこの世界で動けなくさせる為に送った物だ」
紫苑「僕達を…?どうしてそんなこと……」
零「其処までは分からんが、恐らく向こうには俺達の存在は都合が悪いんだろう。だからあんな警告状を管理局に送り付けて、俺達を動きづらくした……そんな真似をするって事は、絶対に向こうは録なことを企んじゃいない。多分それが、この世界で起きる滅びなのかもしれん」
紫苑「……なら尚更、何故あの人達に弁解しなかったの?其処まで考えたのなら、彼等に全部話して――」
零「いいや……例え彼処で今の話を含めて弁解しても、俺達の自由が保証されるワケじゃない。何せあっちには怪人とも対等に戦えるライダーに、良く分からんライオンもどきみたいな奴がいる。もし『どんな異変が起きても俺達で対処するから、お前達は大人しくしてろ』などと言われてバックルを取り上げられた上に部屋に閉じ込められれば、この世界で異変が起きた時に対処出来なくなる。そうなるくらいなら、低い確率で両方を自由にしてもらうより、高い確率でどっちかが残る方が確実にいい」
紫苑「……だからあの映像に映っていた貴方はあんな態度を取って、弁解もせず彼等からの処遇を受けて、僕を庇ったと?」
零「どちらが危険なのかを明確にしておけば、雷達がお前まで危険視することは余りないだろうからな……それに、弁解する気なんて元々なかったさ。あの映像の件についても、俺は言い訳出来る立場じゃない……」
思い詰めた表情でそう呟く零の声には、何処か罪悪の念が篭められているように聞こえる。やはり祐輔達の世界を破壊しようとした事に対し未だに罪悪感を拭えないようだが、零はすぐに首を軽く振って思考を切り替え、真剣な表情で紫苑の顔を見つめた。
零「とにかく、今回の世界はこれまでの世界とは何処か違う。いつ何が起きても可笑しくはない……。何かが起きるとしたら、真っ先に狙われるのは間違いなくこの世界の仮面ライダーの雷牙だ。異変が起きた際、些細な事に時間を取られて対応が遅れるのはマズイ。だからお前には、雷から一時も目を離さないでもらいたい」
紫苑「それは別に構わないけど……貴方はどうするの?」
零「……俺とお前のどっちかが滅びを止めさえすれば、俺達がこの世界に居座る必要はない。もしもお前達だけで異変を解決出来たのなら、俺は大人しくこの世界から消えるだけだ」
紫苑「それは……雷さん達と何も話さないままでってこと?でも、その子と約束したんでしょう?絶対彼等の誤解を解くって……」
零「…………」
先程のアズサとの会話で、雷達の誤解を解いて絶対に和解するという約束。その事を指された零は口を閉ざして思わず黙ってしまうが、ベッドの上で静かに眠るアズサの顔を見つめると、視線を落として淡々と語り出した。
零「解くべき誤解なんて何もない。あの映像に映っていたもの全てが事実だし、俺が俺自身の力を御し切れていないのも、いつ力を抑え切れず暴走してしまうか分からないのも、仲間達を消し去ろうとしたのも事実だ」
紫苑「…………」
零「経緯がどうであれ、俺は使わないと決めていた力を使って仲間達を危険な目に遭わせて、個人的な理由で今もその力を使い続けている。……アイツ等が俺を危険と思うのも当然だろ」
自分の失ってしまった過去と向き合うためとは言え、一度は世界と仲間達を破壊しようとした力を捨てず、暴走の危険もあるのに今もその力を使って戦い続けている。そんな自分に、因子の力を危惧している彼等に『暴走なんてしない、安心しろ』などと言えるハズがない。
零(――それに、この世界に来てから妙に嫌な予感がする……表で目立って動くより、裏に回って何時でも動けるようにしておいた方が良いかもしれん)
機動六課に来てからも薄々と感じていた、嫌なモノが迫って来てるような感覚。それが気になってならない零は、最悪な事態に備えて何時でも動けるように逆に雷達から離れて様子を見た方が良いだろうと、首から下ろすアルティを握り締めながらそう考えていた。そして……
「――雷……」
雷「…………」
医務室の外では、雷と黒髪のショートカットの女性……"桜井 奈央"が廊下の壁に背中を預けながら今の零と紫苑の会話を聞いて佇む姿があり、奈央は何か言いたげな表情で雷の顔を見上げるが、雷は何も言わずに無言のままその場を後にしたのであった。
◇◆◇
―クラナガン―
クレア「いらない」
真也「……(ピクッ)」
クラナガンの街角の一角。大勢の人々が行き交う中、両足を組んでベンチに踏ん反り返るクレアがドドン!という壮大な効果音が響き渡りそうな態度でそう言い放った。そしてその言葉を向けられた真也は口の端をヒクヒクと小刻みに動かし、彼女に差し出した飲み物の入った缶ジュースを握り潰したい衝動を抑えながら口を開く。
真也「じょ、嬢ちゃんよぉ……俺ぁ、アンタが『喉が渇いたから飲み物を買って来て』って言うから、こうして俺が買って来て……」
クレア「そんなの飲みたくない、別なの買ってきて」
真也「……(ビキィッ)」
恭平「あー……真也君よぉ、此処は辛抱して、素直にもっかい買い直しに向かおうや、な……?相手は一応ゲストなんだし……」
額に青筋を浮かべる真也の肩に手を置き、苦笑い気味に恐る恐るそう告げる恭平だが、真也はそんな恭平の手を払い退けるように、缶ジュースを地面に思い切り叩き付けた。
真也「ざっっけんなぁ!!もっかいだとぉっ?!そう言ってさっきから何度買い直しに向かわされたと思ってんだっ?!『8回』だぞ『8回』っ?!何回自販機往復さすりゃ気が済むんだコラァっ!!!」
クレア「アンタがまずそうなもんばっか買って来るからでしょう?ったく、一体どんな感性してるのやら……」
真也「オメェの感性が飛びすぎてんだろーがぁっ!!大金持ちのお嬢様だか幹部だか知らねぇが、ちったぁ人を敬うってことを知りやがれぇっ!!俺ぁお前より年上だぞ一応っ?!」
クレア「あー……じゃあ、年上のアンタを敬って、今私が飲みたいものを特別に教えてあげる。ココナッツジュースね、天然物の」
真也「なに一つ敬ってねぇしんなもん自販機にあっかボケェェェェェェェェェェェェッ!!!!」
クレアの無茶な注文にぶちギレ怒鳴り声を上げる真也。その真也の叫びに驚いた通行人も変な物を見るような目で真也達の方へと振り向くが、クレアは気にした様子もなく深い溜め息を吐きながらベンチから立ち上がった。
クレア「アレも出来ない、コレも出来ない……男ってのはホントに使い物にならないわね。寛容さもなければ理解力も低い低脳だし、陰でグチグチ悪口を言って女々しいし、せいぜい子種出して子孫を残すくらいにしか使えないし、ホントに何でアンタ達って死なないの?ってか何が生き甲斐でそんな生きてるの?」
真也「こ、このアマァァァァァァっ……」
恭平(うはー、スッゲェー言われよう……)
薫(まぁ、あちらの組織でも男嫌いで有名らしいですからね、彼女。裕司さんが『彼女の扱いには気をつけろ』って言った意味が漸く分かったかも……)
雷牙の世界に向かう際に、裕司に言われた言葉を思い出して密かに溜め息を吐く薫。それを他所に真也は額に浮かべる青筋の数を増やしていき、クレアを睨みつけながら再び口を開いた。
真也「テメェっ……マジでいい加減にしろよっ。こちとらお前なんかいなくても、こんな任務熟すぐらいっ……」
クレア「出来ないと思われたから、私が呼ばれたんでしょ?キャンセラーの世界でも人質に取った女の子を逃がして戦況を不利にしたって聞いたし……なに?アンタもしかしてロリコン?きもっ……」
真也「――(ブチッ)」
薫「……先輩、止めなくても良いんですか?」
恭平「んー、良んじゃね?真也があの子の相手してくれんなら、こっちはこっちで作戦練りやすいし」
一触即発な空気を漂わせている真也とクレアを無視し、こっちはこっちで今の内に作戦を考えようと二人に背を向け、恭平はスーツの内側ポケットから雷の写真を取り出した。
恭平「今回の作戦は以前の阿南祐輔捕獲の任務の失敗を踏まえ、出来るだけ戦闘を避けてサンダーレオンを捕獲しようって考えだ。また異世界からバンバン増援来られたらキャンセラーの世界の二の舞になるし」
薫「戦闘を避けるって……戦わずに雷牙からサンダーレオンを奪うって事ですか?どうやって?」
恭平「なに、別に難しい事じゃねえさ。夜を待って、六課の局員全員が寝静まった隙に羅刹を使ってコイツの寝室に忍び込む。そんでコイツのドライバーを手に入れて、ライオンちゃんを捕まえて、それを餌に戦闘機人ちゃん達を罠に掛けておびき出すって訳よ」
薫「……確かに……下手に騒ぎを起こして、彼女達に僕達の存在が知られたら、警戒して逃げられる可能性がありますしね」
恭平「向こうも戦力が半減してっから、無駄な戦闘は避けたいだろうしな。まあそゆことだから、今は大人しくして夜を待とうや。今騒ぎを起こして連中と出くわしたら、この作戦もパァにな『キャアァァァァァァァァッ!!』……は?」
サンダーレオンを捕獲する為の作戦とこれからの方針について恭平が話している中、突如女性の悲鳴が響き渡った。慌てて周りを見れば、通行人の人々が何故か恭平と薫の背後を見て悲鳴を上げながら一目散に逃げ出していた。そんな彼等の視線を追って、恭平と薫が振り返ると、其処には……
オーガ『――こんのクソガキャアァァッ!!もっぺん言ってみろオォォッ!!』
『えーえー何度でも言ってあげるわよこのロリコン!あー、でもアンタ確か妹の為に戦ってるとかも言ってたけ?じゃあシスコンか、シ・ス・コ・ン!!SHI☆SU☆KON!!』
オーガ『こんのっ……?!シスコンの何が悪いんじゃゴルァアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーっっっ!!!!(゜д゜#)』
……其処には、先程まで口論していた筈の真也が変身したオーガと、クレアが『ディスペアバックル』を用いて変身した紫色の甲冑を全身に身に纏った怪人……オーディンディスペアが、道路のど真ん中で互いの剣と槍を打ち合い、目茶苦茶騒ぎを起こしまくってる姿があったのだった。
恭平「――おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!こんな公衆の面前で何堂々と暴れちゃってくれてんのアンタらぁぁぁぁぁぁ?!止めろぉお!!こんな騒ぎ起こしたらこの世界の六課に気付かれちまうぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
薫「……いや、手遅れだと思いますけどね、もう」
ドライバーとバックルまで持ち出して喧嘩する二人を必死に止めに入る恭平の横で、最早諦め切った表情で薫がそう呟いた。そして彼の言う通り……
◇◆◇
―機動六課・部隊長室―
―ビィー!!ビィー!!―
なのは(別)「ッ!緊急警報?!」
はやて(別)「まさか、またインフェルニティか?!」
案の定、彼等が街中で起こした騒ぎは機動六課に直ぐに伝わってしまい、同時に恭平の練った作戦は木っ端微塵に壊される事となったのだった。
◇◆◇
フェイト「…………」
その一方、なのは達に気付かれぬよう機動六課を抜け出したフェイトが向かった先は、六課から離れた場所に位置する土手……以前、NXカブトの世界でアズサが零と再会した同じ場所であり、フェイトはその場所で流れる川の水を思い詰めた表情で見つめながら佇んでいた。
フェイト(……どうすればいいの……零も記憶がなくなって、祐輔の世界での事を知られたせいで零が雷達から犯罪者みたいに扱われて……私のせいだ、私のっ……)
零の身に次々と異変が降り懸かっているというのに、彼の助けになり得そうな事が何一つ思い浮かばない。彼の喪失した記憶を取り戻す方法も、記憶喪失の進行を止める方法すらも。
フェイト(やっぱり、皆にも知らせた方が……だけど……)
彼女達にどう話せば良い?ただでさえ零のことで皆が不安がってる中、解決策もないのにこの事を話してもただ追い撃ちを掛けるだけではないか。そもそも零が雷達から信頼してもらえないのも、元はと言えば自分のせいなのに。
フェイト(分からない……私は一体どうすればいいの……分からないよっ……)
零の身に起きている異変を知ってるのに、なのは達に知らせる事も出来ず、彼を助ける方法すら分からない。零が忘れてしまった写真をポケットから取り出して見つめながら、自分の無力さを改めて思い知らされ、フェイトは瞳に涙を滲ませ俯いてしまう。その時……
『―――では、私が代わりに教えて差し上げましょう』
フェイト「……え……?」
不意に、背後から聞き慣れない何者かの声が聞こえた。それを耳にしたフェイトが顔を上げて背後へと振り返ると、其処には、河原の向こうからゆっくりと歩み寄って来るフードを被った男の姿があった。
フェイト「貴方…は…?」
『なに、そう身構えないで下さい。私はただ、黒月零の事で思い悩む貴女を救いに来ただけですよ、フェイト・T・ハラオウン……』
呆然と佇むフェイトに敵意がないと証明する様に両手を広げながら、フードで顔を隠した男……黒月八雲はそう言って、フードの下で怪しげな微笑みを浮かべていくのだった。