仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―機動六課・一室―
アラームが六課内に鳴り響く、数分前……
零「…………」
紫苑と別れ、アズサが眠る医務室を後にした零は現在、はやて(別)達が用意した自室にいた。ベッドの上に腰を下ろし、両腕と両足を組んで何をする訳でもなく俯きながらジッとしていたが、不意に顔を上げて天井を見つめながら嘆息した。
零「まったく……自分から呑んだ条件とは言え、やっぱりこのままってのは退屈だな……」
部屋で何をする訳でもなくジッとしているのに飽きたのか、天井を見上げる目を細めながらそんな事を呟く零。部屋から絶対出ないと彼等と約束したが、やはり何もしないでいるのは退屈でならない。機動六課内を動けるのはアズサの見舞いに行くときだけで、それも一日一回と決められている。つまり残りの時間はこの室内で過ごさねばならない訳なのだが……
零「参った……やることもないし、どうした物か」
部屋に閉じ込められた後にどうするかなど微塵も考えてなかった。話し相手もいないし、先程ミッドの番組をチラリと見てみたが別段面白そうな内容のテレビもなかったし、どうしたものかと零は再び嘆息しながら首に掛けたアルティに触れていく。
零「いつもならお前が話し相手になって退屈しないで済むんだがな……いつまで寝坊すれば気が済むんだ、お前」
未だに機能が停止しているアルティを見下ろしながらポツリと呟くが、アルティは何も答えない。一瞬何か言葉が返ってくるのではと期待したが、やはり無駄かと薄く息を吐き、零は再び天井を仰いだ。
零(そういえば……紫苑は今頃写真館に着いてる頃か?代わりになのは達に無事だと伝えて欲しいと頼んではみたが、どうなったか……)
食堂で話した時は雷達の前であった以上、なのは達に自分の真意を詳しく話す事が出来ずに心配させたまま帰してしまったが、紫苑に何とか自分が無事である事を知らせてもらえないかと頼んだ記憶が脳裏に蘇る。彼も立場的に考えて自由に外出させてもらえるかは分からないが、果たしてどうなったか。そんな事を考えながら零が静かに天井を見上げていると……
―…プシュウゥゥゥゥッ―
雷「…………」
零「――っ!雷……」
不意に部屋の扉が機械音を立てながら開き、其処からレオン分隊の制服を纏った雷が部屋の中へと足を踏み入れたのである。いきなり前触れもなく部屋に入ってきた雷に思わず驚きながらも、零はすぐさま無愛想な顔に戻って目を伏せながら俯いた。
零「何の用だ…」
雷「ご挨拶だな。一応俺は、この世界でのお前の隊長という役職なんだが」
零「…俺が上司を敬うような利口な人間に見えるのか?生憎、俺は元の世界でも上司の魔導師に喧嘩売ってボコボコにした経験があるんでな。そんなもの求められても困る」
まぁ、それも闇の書事件ではやてや守護騎士達が局員として働く様になった後、吐き捨てるように彼女達の悪口を口にする上の人間に喧嘩を吹っ掛けただけなのだが、今ではもう良い思い出だ。だが、勝負の最中に起きたトラブルで無茶した事をはやてに叱られたり、上の人間相手に軽率な行動をした事をクロノ達に散々絞られたりと、酷い目にも遭ったが……
雷「――一つ、お前に聞きたい事がある」
零「あ……?」
そんな昔の事を思い出して零が軽く首を振っていた中、雷が何処か真剣な口調で零にそう問い掛けた。それを聞いて零が思わず間抜けな声と共に顔を上げると、雷は真剣な眼差しを零に向けたまま更に問い掛けた。
雷「食堂で話した時、お前達は自分達の世界を救う為に同じように滅びに巻き込まれるつつあるライダーの世界を旅していると言ったな?それが自分達の世界も救う方法だと」
零「……それがどうした?」
わざわざ改めて聞くことか?と冷たく返しながら息を吐いて雷から顔を逸らす零。雷はそんな零を見て瞼を伏せながら苦笑いすると、再び零に視線を戻して言葉を続けた。
雷「なら……お前と風間がこの世界に訪れたのも、その滅びとやらがこの世界に迫りつつある、ということなのか?」
零「…………」
雷からそう問い掛けられた零はそれに答えようと何かを言おうとするが、すぐに思い止まるように口を閉じ、雷から顔を逸らしたまま目を伏せた。
零「だったらなんだ?別に何が起きようが、お前達がいれば問題なく解決出来るだろう?それに、俺みたいに無闇やたらに世界を破壊する心配のない紫苑もいるのだし、何が起きてもあの小僧がいれば大丈夫だろうしな。何れにしろ、俺には関係ない事だ」
ふっ、と鼻を軽く鳴らしながら変わらず無愛想な態度を取る零。だが、雷は零のそんな態度を見ても表情を変えず、薄い溜め息を一つ吐いた後に……
雷「―――いい加減、そろそろ本当のお前の言葉を聞かせてくれてもいいんじゃないのか?例え話しても、お前が心配している風間の処遇については今更どうこうするはつもりはない」
零「…っ?!」
呆れを交えた雷のその言葉を聞き、零は思わず驚愕を隠せない表情で雷の方へと顔を振り向かせてしまった。何故お前がその事を知っている?まさか紫苑が話したのか、或いは心を読まれたのかと考えたが、すぐにそれらの可能性を思考から捨てて雷を睨みつけた。
零「聞いてたのか?俺達が医務室で話していたのを」
雷「気になる疑問が幾つかあって、お前にもう一度話を聞こうと思って医務室に足を運んだ時にな。まぁ、それも殆どお前達の会話で解消されたが」
零「……盗み聞きとは良い趣味だな。余り褒められた趣味でもないが」
そう言ってバツが悪そうに舌打ちして雷から再び顔を逸らす零だが、雷は構わず両腕を組みながら部屋の壁に背を預けて口を開く。
雷「食堂でお前と話した時から可笑しいと思った……仲間を傷付けられた怒りで我を見失ったり、自分より他人の事を気にしたりするような奴が、世界や仲間達を自らの意志で破壊出来るとは思えないって」
零「……どうかな……お前がそう思っているだけで、ホントの俺は仲間の犠牲も省みない外道かもしれんぞ?」
雷「かもしれないな……。だが本当にそうなら、お前の仲間の高町達が彼処までお前を心配するとは思えん。違う世界の存在とはいえ、アイツ等にも人を見る目ぐらいはある筈だ。そんな連中がお前を信用しているなら、少なくとも、お前は血も涙もない悪魔ってわけじゃないんじゃないか?」
零「…………」
雷「話を聞かせて欲しい、お前自身の事、お前が自分の力についてどう思ってるのかを。少なくとも、俺もお前と敵対する気はないし、出来る事なら互いを憎み合うような関係にはなりたくない……もっとも、誤解とは言え話も聞かずに自分から襲い掛かった男の言葉など、簡単には信じられないかもしれないがな」
零「お前……」
そう言って苦笑いを浮かべながらも、零から一切目を離さず真摯に見つめ続ける雷。そして零もそんな雷の言葉を聞いて思わず視線を向け、暫く迷うような仕草を見せた後にゆっくりと口を開こうとするが、其処で表情を曇らせ顔を逸らしてしまう。
零(いや……本当に……話すべきなのか……?)
雷を信用していない訳じゃないが、此処で雷と話して和解してしまえば、彼まで自分の問題に巻き込まれてしまうのではないか?もしかしたら目の前の雷はこの出来事をきっかけにキャンセラーの世界に自分を助けに来て危険な目に遭わせてしまうのかもしれないし、もしくは全く別世界の住人となって、最終的に二人の雷を巻き込むことになるのでは?そうなれば……
『…………………………わ…………たし……………………を………………許し…………………て………………』
『……そう……か……私……みんなに迷惑……掛けちゃったみたいね………ふふふ……何やってるのかしら……私は……』
『……ありがとう、零……貴方に出会えて……ホントに良かった……』
『そもそもこうなったのも全部、零さんがこの世界に来たせいじゃないですか!!あの人の目的が零さんなら、零さんがいなくなればいいだけの話じゃないんですか?!』
……また、あんな犠牲者を増やしてしまうのでないか?それなら自分との繋がりを持たない方がいいのではないか?そんな不安が一瞬脳裏を横切り、零は迷って開き掛けた口を閉ざし黙ってしまった。そんな時……
―ビーッ!!ビーッ!!ビーッ!!ビーッ!!―
『…っ?!』
二人の間の沈黙を破るかのように、突如六課内に緊急警報が鳴り響いたのだった。それを聞いた二人は驚愕の表情を浮かべ、零も立ち上がり部屋の天井を険しげに見上げていく。
零「緊急警報?まさかまたインフェルニティか?一体どれだけ怪人の数が多いんだこの世界は……」
雷「いや、それにしては奴らの出現のペースが早過ぎる気が……とにかく、お前は此処にいろ。俺は八神達の所に向かう」
突然の警報に疑問を抱きながらもすぐに平静に戻った雷は零にそう言い渡すと、そのまま早足で部屋から出ようと扉へと近づいていくが、雷は何故か一度扉の前で立ち止まり、再び零の方へと振り返った。
雷「……黒月。お前が自分の事を話したくないなら、無理に話せとは言わない。だが、一つだけ忘れないでもらいたい」
零「……?」
雷「俺は出来ることなら、お前も救いたいと思ってる。別世界の住人とは言え、今はお前もこの世界に住む人間だからな。この世界の人々を守るのが、俺の……雷牙の役目だ」
零「……まあ、大抵の仮面ライダーはその世界を守る存在だからな。そう思うのも当然かもしれん」
雷「それはお前や、風間も同じだろう?お前達だって自分達の世界を救うために戦ってる……なら、お前達二人も俺とは何処も変わらない、仮面ライダーだろう?」
零「…………」
零も紫苑も、自分と同じ様に世界を救おうとする仮面ライダーであると、言葉を濁す事なくハッキリとそう告げた雷。そして雷はそれだけを伝えると部屋を後にしてはやて(別)達の下へと向かい、その言葉を投げ掛けられた零は無表情のまま雷が出ていった部屋の扉を暫く見つめた後、深く溜め息を吐きながら顔を逸らした。
零「くそっ……なのはと話して少しはマシになったかと思えば、まだグチグチとっ……」
舌打ちしながら毒づくその言葉は誰かに向けられたものではなく、自分に向けてのものだった。雷が自分を理解しようと向こうから歩み寄ってきてくれたというのに、後の不安を考えすぎて迷ってしまった。その事に対し少なからず後悔してしまう零だが、すぐに思考を切り替えるように頭を振った。
零「いや、今はそれよりも目の前のことが先だな……通信機能だけでも使えればいいが……」
インフェルニティが現れただけなら雷達だけでも対処出来るだろうが、もしかしたらという事もある。最悪の事態に備えておく必要はあるなと、零は首に掛けたアルティを握り締めながら部屋の扉を見つめていくのだった。
◇◆◇
そしてその一方、六課から離れた場所に位置する土手で八雲と邂逅していたフェイトは、八雲の突然の言葉に戸惑いを隠せず困惑していた。何故なら……
フェイト「ど、どうして、私が悩んでるって知ってるの……?」
そう、初対面であるはずの自分や零の事を知っているだけでなく、自分が零の事で悩んでいる事を何故言い当てられたのか分からず、フェイトは八雲に疑わしげな目を向けながら後退りしていく。だがそんな視線を浴びせられつつも、八雲はフードの下で口の端を吊り上げながらフェイトへ歩み寄っていく。
『何故私が彼の事や、貴女が彼の事で悩んでいる事を知っているのか疑問に思いますか?まぁ、そう思うのも無理はありませんよねぇ。なにせ私は貴女や、当の黒月零とは何の接点もない他人ですから』
フェイト「?接点がないって…じゃあ…どうして…?」
尚更分からない、何故目の前の男が自分の事や零の事を知ってるのかと。困惑の色が益々深まる表情でフェイトが戸惑いがちに八雲にそう問い返すと、フェイトの前に立ち止まった八雲はニヤリと笑みを深め……
『何故?そんなの決まっているじゃないですか』
フェイト「?」
『私が……あの“警告状”を彼等に送り付けた本人だからですよ♪』
フェイト「……えっ……」
全身がゾクリと凍えそうなほどの声で、嘲笑いながらそう告げた八雲の言葉を聞き、フェイトは一瞬目の前の男が何を告げたのか理解が追いつかなかった。
警告状……?
あの文を送ったのが…この男……?
フェイト「……貴方が……あの警告状をっ……?」
『えぇ、どうでしたかな?あの映像も良く撮れていたでしょう?正しく"世界の破壊者"と呼ぶに相応しい鬼気迫るあの姿……フフ、あの悪魔を危険な存在だと彼等に認識させるには、十分な証拠だったと思いますがねぇ』
フェイト「っ……!!」
放心状態のまま固まる中、頭の中の思考だけが状況を理解しようと自然と働いている。零と雷達の間に溝を作り、彼等やこの雷牙の世界の管理局がディケイドに世界を破壊する悪魔だという認識を植え付けさせたのもこの男だと。そのせいで零が今どんな目に遭わせられているのかを思い出し、全てを理解したフェイトの表情に怒りの感情が徐々に浮かび上がる。
フェイト「どう…して……貴方はっ……どうしてあんなものを!!あんなもののせいでっ、皆と雷達は戦わされて!!零は皆から信用してもらえなくて!!なのに!それなのにっ!!」
今まで心の内に溜め込んでいた行き場のなかった感情が爆発し、八雲にぶつける言葉を上手く纏められないまま怒号を上げるフェイトだが、八雲はそんな彼女の責め付けを受けても笑みを崩さない。寧ろフェイトのその姿を楽しむ様にフードの下で愉快げに笑い、こう告げた。
『まあ確かに、貴女が私に対して憎しみを抱くのも無理はない。貴女が彼をどんなに大切に思っているのかも承知してますからねぇ。しかし……
……貴女に私を責める権利があるのですか……?』
フェイト「……え……」
感情のない、冷たさだけを感じる淡々とした声。それを聞いたフェイトが思わず口を閉ざして八雲の顔を見上げれば、其処には八雲の顔が間近に迫り、フードの下から見える冷たい輝きを放つ赤い瞳でフェイトの顔を覗き込んでいた。
フェイト「ひっ…」
『だってそうでしょう?元を辿れば、彼が今も苦しんでる原因を作ったのは他の何者でもない……貴女じゃないですか、フェイト・T・ハラオウン?』
フェイト「っ…?!」
酷薄な微笑みと共に、フェイトの心をえぐるかのようにわざとらしく核心を突く八雲。フェイトもその言葉を聞いて絶句し何も言えなくなってしまうが、八雲は構わず言葉を続けた。
『キャンセラーの世界でのヴェクタスと彼等の戦いの際、貴女があんな真似をしなければ彼が破壊者としての力を目覚めさせることも決してなかった……。私が何故あんな警告状を彼等に送り付けたと思います?今の彼がどんな危険な存在なのかを誰よりも理解してるからです。ああしなければなくなったのも、全ては彼が破壊者としての力を芽生えさせたせい……その原因になったのは誰か、貴女も良く分かってるでしょう?』
フェイト「そ…それは……」
『それだけではありませんよ?貴女もご存知でしょ?今現在、彼の身に異常事態が起きている事を』
フェイト「え……?」
八雲に淡々とそう言われた直後に、フェイトの脳裏を一瞬ある光景……今朝の零との会話が横切る。それを思い出したフェイトは自然と自分の左手に視線を落としていき、自分の手の中に握られているもの……零が忘れてしまった写真達を見下ろした。
フェイト「まさ、か……」
『えぇ、そうです。黒月零の記憶喪失。あれも貴女が抱え込んでいる悩みの一つのようですが、何故突然、彼の身にそんな事が起きたのでしょう?その答えは極めて単純……"あれも貴女のせいだからですよ"』
フェイト「っ!!!?……えっ……?」
零が記憶を失ったのは自分のせい。八雲のその言葉を聞き、フェイトは声を震わせながら呆然と八雲に聞き返した。一体どういう事?そんな恐怖と疑問に満ちた瞳を八雲に向ければ、八雲は両手を広げながら笑って告げた。
『彼が記憶を失った一番の要因と言えるのは、あの時彼が破壊者として目覚めてしまった事に関係しているのですよ。可笑しいと思いませんか?あれだけの強大な力を使ったというのに、彼自身に何の負担もないなどと、そんな都合の良い話があるハズがない。ならばそのデメリットとは何なのか……此処までいえばもうお気づきでしょう?』
フェイト「ぁ……あ……」
八雲の言葉で、フェイトの頭に一つの可能性が浮かび上がる。だが信じたくない、信じられない。激しく瞳を震わせながら今すぐ逃げ出したい衝動に駆られるが、それを許すまいと八雲は無情な笑みを浮かべた。
『そう……その代償こそがあの記憶の喪失。つまり、彼がああなったのは貴女のせいなのですよ、フェイト・T・ハラオウン』
フェイト「………………」
一瞬、目の前が真っ暗になったような気がした。その絶望的な事実を突き付けられ、フェイトは余りの衝撃に目を見開いてその場から動けなくなってしまう。
フェイト「う、そ……そんなのっ……」
『信じられませんか?信じたくないですか?では何故彼は貴女にではなく、高町なのはに自分の弱音を吐いたのでしょうかねぇ?……それも全ては、貴女に頼れない理由があったからでは?』
フェイト「!!!」
わざとらしく、フェイトが抱えているもう一つの悩みにまで触れフェイトを動揺させる八雲。何故そんな事まで知っているのかとフェイトの中に疑問が浮かび上がるが、それよりも八雲の言葉が胸に突き刺さりそれ以外の事が考えられない。
フェイト「……私になにも話してくれなかったのは、私が原因だから……?話したら、私がその事で、自分を責めると思ったから……?」
それなら全ての辻褄が合うような気がした。彼が何かを抱えていてもそれを皆に話せなかったのは、話せば自分がその事に対し責任を感じてしまうと思ったからではないか?だからそのまま抱え込み続けたせいで、彼が記憶を失うなどという恐ろしい事になってしまったのではないかと。今まで解らなかったパズルが望まぬ形で次々と解かれていくような感じに、フェイトは頭を抱えながらそれを否定するように首を振っていく。
『なんとも哀しい事実ですねぇ。貴女は彼を思い、彼の苦しみを分かち合いたいと望んでいたのに、それはただ貴女を苦しめるだけの絶望でしかなかった……。どうです?彼が今まで我が身を削ってまで隠し続けた真意を知ったお気持ちは?』
フェイト「っ…や、めてっ……」
『おや?今度は掌を返してもう何も聞きたくないと?これはお笑いだ……一体誰のせいで此処までの事態になったと思いです?それとも、今更自分は関係ないとでも言うつもりですか?』
フェイト「ち、違っ…私はただっ……」
『救おうとしただけ、と?しかし彼を更なる苦行の道に進ませたのは紛れも無く貴女でしょう?それなのに彼を救いたい?助けたい?彼を地獄に突き落とした上に、親友に醜い感情を抱くような貴女に、そんな事が出来るとでも?……おこがましいにも程がある』
フェイト「っ!ち、違う!私っ、零やなのはにそんなつもりでっ……!」
『彼と彼女の仲を妬ましく思ったのでしょ?何故自分ではなく彼女なのかと……ふふっ、その訳が分かっただけでも良かったではないですか?彼が貴女を思って言わなかっただけなのだと。……ん?しかしそれだと、彼も少なからず貴女にも原因があると自覚していたという事になるんでしょうかねぇ?』
フェイト「や…め、て……もうやめてぇっ!!」
もう何も聞きたくないと、フェイトは悲痛な叫びと共にボロボロと大粒の涙を瞳から溢れさせながら耳を押さえその場にしゃがみ込んでしまう。零が苦しんでるのは自分のせいで、何かも自分が悪いのだと。罪悪感や悲しみといった負の感情が胸の中でグチャグチャに入り混じり、フェイトは目と耳を閉ざして絶望の淵にその身を浸らせてしまう。だからこそ……
『――ああ……ですが一つだけ、無いとも言い切れませんね。貴女が彼を救える方法が』
フェイト「……え…」
この悪魔のささやきに今の彼女が抗える筈がないと、八雲はそう確信して密かに笑みを深めたのであった。