仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
フェイト「私でも……零を救える方法……?」
『えぇ、貴女にもそれが出来ることが一つだけ残っていました』
ポツリと呟いた八雲のささやきに耳を貸してしまったフェイトが顔を上げて問い掛けると、八雲はそう言いながら機動六課のある方角へと目を向けた。
『貴女も知っての通り、彼は世界の破壊者としての力を芽生えさせ危険な存在になりつつあります。それは力を使えば使うほどその力を増していき、その代償として彼からあらゆるモノを奪い去っていく……それを利用して彼を手に入れようとしている者が、この世界にいるのですよ』
フェイト「ッ?!零を?!でも、誰がそんなっ……」
目の前の男の話を鵜呑みにする訳ではないが、可能性がないとも言い切れない。もしやこの世界の管理局の上層部や最高評議会が零に目を付けたか?そんな考えがフェイトの頭を過ぎるが、八雲はそれは違うと否定するように首を振った。
『いいえ、確かにこの世界の管理局はディケイドを警戒してはいますが、明確な敵意がある訳ではないようです。私が言っているのは、あなた方と最も深い因縁のある人物達……ジェイル・スカリエッティが生んだ戦闘機人達です』
フェイト「なっ…脱走した他の戦闘機人が、この世界に…?!」
『長らく行方を暗まして姿を隠していたようですが、その間に戦力を蓄えて復活の機会を伺っていた様ですね。そしてその手始めとして、彼女達は破壊者の力を目覚めさせつつある黒月零を手に入れようと企んでるのです』
フェイト「企んでるって…どうして貴方がそんな事を……?」
『知っているのかと?当然、れっきとした根拠があるからですよ。ほら』
ピラッと、八雲はそう言いながら何処からか一枚の写真を取り出してフェイトの膝の上に落とした。そしてフェイトがその写真を手に取って見てみると、其処にはミッドの何処かのビルの上に、レジェンドルガ達と二人のライダー……ロストとガリュウを従えて不敵な笑みを浮かべて立つクアットロの姿があった。
フェイト「クアットロ?!それに、このライダーって……!」
『……ああ、ガリュウですか?そういえば貴女は以前ライダー少女Wの世界で、彼女と戦った経験があるんでしたね。そう、ガリュウの装着者……ルーテシア・アルピーノもこの世界に訪れているんですよ』
フェイト「!!」
ルーテシア・アルピーノ。JS事件でエリオとキャロが救い出した少女であり、現在は再びスカリエッティの下に囚われてライダーとして無理矢理戦わされてる少女だ。写真に写っているもう一人のツートンカラーの仮面ライダーは初めて目にするが、優矢から聞いた特徴からして恐らくコイツがライダー少女Wの世界で零に重傷を負わせたというロストなのかもしれない。その二人を連れてクアットロがこの世界へと現れたというなら、半信半疑だった八雲の今までの話にも真実味が帯びていく。
『恐らく彼女達は、黒月零を手に入れる為に既に行動を開始しているでしょうね。どうやらキャンセラーの世界での暴走の件を知って、彼の力を手に入れる事により執着しているようですから』
フェイト「っ……」
つまり、彼女達はこの世界に自分達が訪れている事を知って追ってきたという事なのだろうか。だとしたら、このままクアットロ達を野放しにしておくのは危険過ぎる。彼女達がより零に執着してるのが自分のせいならば尚更だ。
フェイト「なのは達に……皆にも知らせなきゃ!急がないと!」
そうと決まれば、この事を急いでなのは達に知らせてクアットロ達を探さなければ。皆で協力すればきっとクアットロの居場所をすぐに突き止められる筈だと、フェイトは土手を後にして光写真館に戻ろうとする。しかし……
『――本当に良いのですか?彼女達に伝えたりして』
フェイト「……え?」
ポツリと、意味深な発言をこぼした八雲の言葉が気にかかり、フェイトは思わず足を止めて立ち止まり八雲の方へと振り返った。すると八雲はそんなフェイトの反応を見て肩を竦めながらやれやれと溜め息を吐き、淡々とした口調で語り出した。
『クアットロ達をこの世界に誘うことになったのは、キャンセラーの世界で黒月零が暴走した事による一件で彼に執着してるから……つまり、貴女に原因がある訳なんですよ?』
フェイト「っ……!だ、だけどっ……」
『ただでさえ貴女のせいで厄介事を引き込んだというのに、彼女達にまた余計な迷惑を掛けるつもりですか?先程まで貴女ご自身でもそんな事は出来ないと考えていたのに?』
フェイト「ぅっ……」
確かに、クアットロ達をこの世界に招いたのが自分のせいなら、自分の手で解決するべきなのかもしれない。だが、ルーテシアが変身したガリュウにも負けた自分一人ではクアットロ達を止める事もままならないのも事実である。ならば一体どうすれば良いのかとフェイトが顔を俯かせて悩んでしまう中、八雲がニヤリと笑みを浮かべながら懐に手を伸ばした。
『まぁ、ただライダーの力を使って勝てる相手でもないのは確かですからね……では、私から貴女にこれをプレゼントしましょう』
そう言って八雲はフェイトの手を掴むと、懐から取り出したある物をフェイトの手に握らせていく。それは金色に輝くバックルのようなモノであり、フェイトはそれを目にした瞬間、何故かとてつもない嫌悪感を感じて身を震わせた。
フェイト「これ、は…?」
『ディスペアバックル、私がとある人物から運用実験の為に渡された物でしてね。クアットロ達と戦う際にこれを使えば彼女達に遅れを取る事はないでしょう。最もかなり危険な品物ですので、奥の手として取っておく事をオススメしますがね』
そう言われフェイトがディスペアバックルを見下ろすと、確かにバックルから何か禍々しい物が感じられる。そのオーラからして八雲の言う通り危険な品物だと本能的に分かり、フェイトは今すぐにでも八雲にバックルを突き返したく思うが、八雲はそんなフェイトに構わずに話を続けた。
『クアットロ達の居場所は私が捜して貴女にお伝えしましょう。彼女達の居場所を突き止めた後は、貴女はクアットロ達よりも先に倒すべき敵を素早く撃退して頂きたい』
フェイト「!私が倒すべき、敵……?」
自分がクアットロ達よりも先に倒さねばならない敵。それが気になったフェイトが思わず聞き返すと、八雲はフェイトに渡した写真に写るライダー……ガリュウを人差し指で指差した。
『クアットロは黒月零の暴走の件を知って以来、彼を破壊者にさせ自分の手駒にさせる計画を立てていた様です。貴女の命が奪われたことで破壊者になったなら、その時と同じ状況を作り、彼を再び破壊者へと堕としてしまえば良い……彼女を使ってね』
フェイト「ッ?!そんなっ、まさかクアットロはっ……?!」
『今や圧倒的な戦力を持つ彼女からすれば、ライダーが一人欠けようと何の支障もありませんからねぇ……それに犠牲者にするなら、幼い子供の方が精神的苦痛も大きいでしょうから』
フェイト「っ……!!」
まさかあの時の……自分がヴェクタスに殺された時と同じ状況を作る為だけに、クアットロはルーテシアを犠牲にしようと言うのか?もし本当にそんな事になれば、零だけじゃない。彼女を必死の思いで救い出したエリオやキャロの努力も、大好きな母親と共にやり直そうとしているルーテシアの想いすらも犠牲になってしまう。それだけは……
フェイト「――絶対にダメ……絶対に……絶対に止めなきゃっ……!!!」
最早、フェイトに精神的な余裕など微塵もない。彼女の思考を埋め尽くしているのは、とてつもなく巨大な罪悪感やこんな事態に招いた自身に対する嫌悪感、零やルーテシアを救い出す事、クアットロの企みを絶対に阻止しなければならないという使命感だけだった。青白く染まった表情でガタガタと身体を震わせながら写真を見つめるフェイトの姿を見て、八雲の顔に張り付いた笑みが大きくなる。
『だからこそ、余計な犠牲を生まない為にも、貴女は私の言う倒すべき敵を必ず倒さねばならない……お分かりですね?』
フェイト「……誰を……誰を、倒せばいいのっ……?」
既にフェイトには、八雲の言葉を疑うだけの余分な気持ちなどない。今の彼女の中には、クアットロの企みを阻止して零とルーテシアを救い出すという感情しかないのだ。朧げな瞳で倒すべき敵が誰なのか問うフェイトの質問に、八雲は写真を差す人差し指をゆっくりと動かした。
『先程も話した通り、クアットロはルーテシア・アルピーノを犠牲にすることで黒月零の力を暴走させようと考えていますが、それは同時に、自分の手駒であるライダーを一人切り捨てることを意味します』
フェイト「…………」
『しかし、幾ら黒月零を手に入れる為とは言え、主力であるライダーを捨てることは彼女にとっても大きな痛手でしょう。彼女達には戦うべき敵が多いですから、戦力を余計に減らすことは出来るだけ避けたいハズ。ならば……ルーテシア・アルピーノを切り捨てることが出来ない状況にしてしまえば良い』
フェイトに説明しながら、八雲は人差し指を動かす手を止めず写真の上を滑らせていく。
『今現在、彼女達が戦力に出来るライダーシステムはアース、ロスト、ガリュウの三つ……。クアットロはガリュウを捨てることで代わりに黒月零を手に入れるつもりのようですが、もしガリュウ以外のライダーが作戦実行前に倒されれば、計画を続行出来る状況ではなくなる……だから――』
ピタッと、八雲の指が静かに止まった。彼が指差したのは、クアットロが従えるもう一人の仮面ライダー。そう……
『仮面ライダーロスト……ルーテシア・アルピーノが犠牲になる前に、コイツを倒してしまえばいい。貴女の手で、この世から完全に、ね……』
何も知らない彼女に、自分の姉と親友の家族を殺せと、彼は酷薄な笑みと共にそう告げたのであった。