仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―光写真館―
紫苑「――という事なんだ。だから、黒月さんも心配しなくていいって」
なのは「……そっか……やっぱりそういう訳があったんだね……」
そしてその頃、写真館では六課から戻ったなのは達が光と勇輔を連れて写真館に訪れた紫苑から零の話しを聞かせられていた。そして紫苑の話しを聞き終えたと共になのは達は納得したように頷き合い、一同の間に流れてた沈んだ空気も少しだけ和らいでいた。
光「やっぱりって……皆さん気付いてたんですか?零さんの考えてたこと」
すずか「まあ、薄々だけどね……。この世界のはやてちゃん達と話してたときの零君、なんだか、いつもと比べてぶっきらぼうな面が不自然なくらい際立ってた、っていうか……」
シグナム「奴があんな態度を取る時は、大抵自分の気に喰わない相手に対してか、或いは何かしらの考えがある時のどちらか、なんだが……」
シャマル「あの子の場合、その考えっていうのが殆ど良からぬ事ばかりなのよね……」
はやて「せやから、私等も嫌な予感して止めようとしたのに……零君がそれを全部突っぱねてまうようなことばっか言うから……」
ハァ……と、一同は揃って深い溜め息を吐いてしまう。そんな一同の様子に紫苑達も思わず苦笑してしまうが、その時ザフィーラがゆっくりと口を開いた。
ザフィーラ「だが逆を言えば、これで黒月を危険から遠ざける事が出来るのではないか?例の警告文の内容からして、おそらくアレを送った人間は黒月の力についてもそれなりに熟知しているかもしれんからな」
チンク「まあ、キャンセラーの世界での黒月の暴走の件を知っているなら、その経緯についても知っているだろうしな……それを利用して黒月を再び破壊者に堕とそうと、向こうも黒月を狙ってくる可能性はあるかもしれない」
セイン「その点で言えば、私達も気をつけなきゃだよね。もし私らの誰かがやられたりしたら、それでまた零が破壊者になっちゃうかもなんだし……」
セッテ「ですね……私も、自分のせいであの人を世界を破壊する存在になんてしたくありませんから……」
暗い表情でそう呟くセッテの言葉に、なのは達もふと食堂で理央達に見せられた映像の事を思い出す。もし自分達の身に何かあれば、零は再びあの映像のように世界の破壊者となって今度こそ世界を破壊してしまうかもしれない。そうなれば彼がどんなに苦しんで後悔する事になるか……。そうならない為にも、自分達も常に何が起きてもいい様に警戒しなければと各々心の内で決意していた、そんな中……
はやて「――あ、そういえばなのはちゃん、フェイトちゃんの方はどうや?連絡ついた?」
なのは「え?あっ、ううん……さっきから何度も携帯に掛けてるんだけど、全然出なくて……」
そう言いながらなのははスカートのポケットから携帯を取り出してフェイトからの着信がないか確かめるが、着信履歴にフェイトからの着信はなく、なのはは気落ちする様に嘆息しながらフェイトのいない写真館の中を見渡した。
――零と別れて機動六課を出ようとした直後、何故かフェイトの姿がいつの間にか消えていた。もしかすると、あの映像と零の処遇の件に責任を感じて六課から飛び出してしまったのではと心配し、六課を出てから皆で手分けしてフェイトを捜してみたものの、結局何処を捜しても彼女を見つけることは出来なかったのだ。
はやて達と同様、行方が分からないフェイトが心配でならないなのはは彼女からの連絡を待ってるのだが、一向にフェイトから連絡が来る気配がない。
それが余計に胸の内の不安を掻き立て、なのはが暗い顔で携帯の画面を見つめていると、ヴィヴィオが心配そうになのはへと近寄り、そんなヴィヴィオの頭を撫でながら大丈夫だと笑顔を向けた。その端では……
優矢「――よし、決めた。やっぱり俺達も動こうぜ!そんで、警告状を送り付けた犯人を取っ捕まえてあの人達の前に差し出すんだ、そうすれば零だって自由の身にしてもらえるだろ!」
ヴィータ「バカ!んな簡単に見付かるなら、初めっからこんな事にはなってねーよ!」
ティアナ「この世界の私達も、未だ犯人の人物像すら掴めていないようですしね。そんな犯人を捜そうにも、今の私達だけじゃ……」
優矢「だからダイジョーブだって、こっちにはまだ別世界のディケイドがいるんだしさ」
紫苑「……え?僕?」
いきなり名指しされ、唖然とした表情で自分を指差す紫苑。すると優矢はそんな紫苑に人当たりの良い笑顔で頷き返し、ポンポンッと紫苑の肩を叩いた。
優矢「あの警告状を出した犯人は、ディケイドを警戒してあんな手紙をこの世界の管理局に送り付けたってことなんだろ?なら紫苑と一緒に行動して出歩けば、ソイツらも下手に動けなくなって異変も起きなくなるかもだし、もしかしたら尻尾を出して襲って来るかもしれないじゃんか」
勇輔「え、それってまさか……紫苑を囮に使うって事か?!」
優矢「まあ、有り体に言えばそうなるけど……」
優矢が語る計画に思わず声を上げて驚愕する勇輔だが、優矢はそれに対してごまかそうとせず肯定するように頷き返し口を開く。
優矢「でもさ、これは紫苑に囮として敵を引き付けてもらうのと同時に、紫苑の身を護るってことにもなるだろ?俺らと紫苑達が一緒に固まって行動すれば、向こうがどんなヤツが襲って来てもそう簡単に負けないだろうし」
アギト「まあ、紫苑と勇輔にこっちのライダーチームを合わせれば六人って事になるしな……ガチの化け物相手じゃなきゃ先ず負ける筈ねぇか」
優矢「だろ?紫苑達にとってもそんな悪い話じゃないと思うんだけど……駄目かな?出来たら、零を助ける為にもそっちの力があるとスッゲー助かるんだけど……」
紫苑「…………」
仮に滅びが起きたとしても、ディケイドである紫苑に協力してその元凶を倒せば零も自分達もこの世界に留まる必要がなくなる。そうすれば零も解放されてこの世界の雷達とこれ以上いがみ合う事もなく次の世界に去る事が出来るのだがと、その意味を込めながら紫苑に問い掛けると、紫苑は顎に手を添えて考える仕草を見せる。そして……
紫苑「……いいよ、やろうか」
勇輔「えぇ!?い、良いのかよ紫苑!」
紫苑が引き受けると思っていなかった勇輔が驚愕を隠せない様子で紫苑を見るが、紫苑は薄く溜め息を吐きながら口を開いた。
紫苑「ここで引き受けるにしろ断るにしろ、結局は僕たちも異変があるところに飛び込まなきゃこの世界での役目を果たせないでしょ。だったらこの人達と一緒に動いた方が、異変も早く解決出来るかもしれないじゃない」
光「それは、そうかもですけど……」
優矢「……ワリィ、そっちにとっちゃあんまり気持ちのいいやり方じゃないかもだけどさ……でも、俺達もアイツのことを助けてやりたいんだよ」
勇輔「えっ?」
申し訳なそうに謝る優矢の言葉を聞き、勇輔と光は訝しげな顔で優矢の方へ振り返った。すると優矢は頬を掻きながらなのは達の顔を見回し、物憂い表情で語り出した。
優矢「俺達ってさ、いっつも零の奴が大変な目に遭ってる時に、何も力になれなくてさ……キャンセラーの世界でのアイツの暴走の時だって、俺達も平行世界の皆から話し聞くまでそんなことが起きてたなんて微塵も知らなかったし。だから、力になれる事があるなら助けてやりたいんだよ」
ギンガ「……そうですね。零さんは何度も私達の事を助けてくれるのに、私達は肝心な時に何も力になれてないですし……」
優矢「うん……だからさ?俺達に出来る事があるなら、力を尽くしたいんだ……ほら!アイツには沢山借り作ってきたし、何時までも借りを作りっぱなしってのも格好悪いしさっ……」
照れ臭そうに後頭部を掻きながら笑ってごまかす優矢だが、実際は本当に零の身を案じて言ってるのだろう。そんな優矢に賛同する様になのは達も微笑しながら頷いていき、そんな彼等の表情を見回した光と勇輔も互いに顔を見合わせると、何かを決心したように頷き合った。
光「……分かりました、私たちも協力しますよ」
優矢「え……本当に?!」
勇輔「うん。この世界での俺達とそっちの目的も同じらしいし、それに、そんな風に頼まれたら断れないしさ。なあ紫苑?」
紫苑「ん……まぁ同じ旅をする者同士、助け合いっていうのも悪くないかもね」
優矢「そっか……そっか!ありがとな!別世界のディケイドが力を貸してくれるなら百人力だっ!ようし、栄次郎さん!この人たちにコーヒー出してやってくれよ!俺の奢りで!」
栄次郎「ん?ああはいはい、ただ今用意してるところだよ~」
姫「こら優矢、はしゃぐのはいいが少しは落ち着かないか!はしたない奴と思われたらどうする気だ!」
セイン「いや……それ姫が言う?」
協力を受け入れてくれた紫苑達に感謝して勇輔の手を取りブンブンと振る優矢。勇輔と光はそんな優矢に苦笑いし、姫も優矢を宥めようとする中、紫苑はそんな優矢達をジッと無言のまま見つめてある事を思い出していた。
紫苑(もし彼等や黒月さんが、彼……紅 渡の言ってた仲間だとするなら、僕達は彼等と一緒に戦うべきなのかもしれない。夢の中で彼の言っていた、『敵達』と戦う為にも……)
紫苑の脳裏を過ぎるのは、この世界に来てから始めて見た夢の中での紅 渡との会話だった。もし彼が警告していた『敵達』が今回の件と関係してるなら、その魔の手は既に自分達の目と鼻の先にまで迫っているということだ。ならば此処は優矢の提案を受け入れ共に行動した方がいいかもしれないと、紫苑は背景ロールの絵に視線を向けながら物思いに耽っていた。その端では……
カリム「…………」
ガヤガヤと優矢達が騒いでいる中、カリムはソファーに腰掛けながら両手に握る一枚の白い紙……この世界のはやて達に頼んでコピーしてもらった例の警告状を見下ろし、一人何かを考え込むような顔を浮かべていた。
シャッハ「……?カリム?どうかしましたか?」
カリム「……え?あ、シャッハ……いえ、その……これを見ていて、少し気になる事があって……」
はやて「?気になるって、何か変な部分でも見付けたんか?」
カリムとシャッハの会話を聞いたはやてが間に入ってそう問い掛けると、カリムははやての顔を見上げ一瞬思案する仕草を見せた後、自分が握る警告状に視線を戻して口を開いた。
カリム「変な、というより……何だか、胸騒ぎみたいなものを感じるの……」
シャッハ「胸騒ぎ、ですか……?」
カリム「えぇ……これを見ていると、これから何かとてつもなく嫌な事が起きるような、何だかそんな予感がして……」
そう言って不安げに脅迫状を見つめるカリム。そんな彼女の様子に釣られはやてとシャッハも不穏な表情を浮かべながら目を合わせるが、そんなカリムをどうにか元気付けようとはやてがカリムの手を握り締めた。その時……
―PPPPッ!PPPPッ!―
『ッ?!』
不意に突然、電子音のような音が部屋中に響き渡った。突然鳴り響いたそのけたたましい音に一同も驚きながら電子音が聞こえて来る方へと振り返ると、其処には紫苑が通信パネルを開いて応答する姿があった。
雷『聞こえるか、風間?』
紫苑「雷さん……?どうかしたんですか?」
雷『八神から出撃命令が出た。市街地の方でインフェルニティとは違う怪人と、ライダーのような姿をした奴が街への被害も顧みずに暴れ回ってるらしい。俺達はその戦いの鎮静化、もしくは双方の撃退に向かう事になった。お前も来い』
紫苑「?インフェルニティじゃない怪人にライダーに似た戦士?……分かりました、すぐに向かいます」
インフェルニティではない別の怪人とライダーと思わしき戦士というワードに疑問を抱きながらも取りあえず頷き返し、紫苑は通信を切って優矢達の方へと振り返った。
紫苑「雷さんから、たった今出撃命令が出たって。僕はこのまま市街地の方に向かおうと思うけど……」
優矢「もちっ、俺達も一緒に付いてくよ!」
なのは「あっ、なら私も!痛っ……?!」
スバル「なのはさんっ!」
自分も紫苑達に同行すべくテーブルの椅子から立ち上がったなのはだが、立ち上がろうとした瞬間に両手に激痛が走ってその場に疼くまってしまい、それを見たスバルとティアナとシャマルは慌ててなのはへと駆け寄り身体を起こしていく。
シャマル「無茶しちゃ駄目よなのはちゃんっ!ただでさえ酷い火傷で、普通にしてるのもやっとなのに!」
ティアナ「そうですよっ!大人しく安静にしてないとっ……!」
なのは「っ……で、でも、私だけこんなところでっ……」
零が動けず、フェイトも行方が分からないこんな状況の中で大人しくしてるのが我慢ならないのか、なのはは自分の怪我の事も顧みず戦いに向かおうとするが、そんななのはの前にはやてが無言のまま近付いて屈みなのはの腕からKウォッチを取り外した。
なのは「っ!はやてちゃん……?」
はやて「……なのはちゃんは此処で大人しく待機や。零君達のことで焦る気持ちは分からんでもないけど、そないな状態で戦いに向かわせる訳にはいかへん」
なのは「うっ……」
なのはの心境を見透かす様にジト目で見つめるはやてに、なのはも言葉が詰まり黙り込んでしまう。そしてそんななのはに苦笑いを浮かべると、はやては左腕にKウォッチを身につけ立ち上がった。
はやて「紫苑君達の手伝いは私が引き受けるから、なのはちゃんは安静にしてること。ええな?」
なのは「ぅ……はい……」
はやて「ん、宜しい。皆もなのはちゃんの事、宜しく頼むな?」
ギンガ「はい、分かりました」
シグナム「主はやても、どうかお気を付けて……」
はやて「うん、おおきに♪ほんならリイン、行こうか?」
『RIDER SOUL RIN!』
リイン「はいですぅ!」
Kウォッチの画面をタッチしながら呼び掛けるはやてに向けて敬礼し、その場で軽くジャンプするリイン。するとリインの身体が光に包まれてリインキバットへと変身し、はやての周りを何度か飛び回って彼女の肩に留まっていった。
光「え、えぇぇっ?!お、女の子が?!」
勇輔「キバットになったっ?!ど、どういう仕組みこれ……?」
セイン「あ、えーっと……それについては私達も良く分かってないっていうかぁ……」
ノーヴェ「まあ細かい事はあんま気にすんな。どうせ考えたって分かるもんじゃねぇし、アタシらも使えるもんを取りあえずで使ってるだけなんだしよ」
考えたって時間の無駄だしと、頭を掻きながら適当な調子でそう告げるノーヴェに光と勇輔も微妙に納得出来てない表情で互いに顔を見合わせるが、その時紫苑が前に出て口を開いた。
紫苑「そんな事はどうでもいいでしょ、今はとにかく雷さん達と合流しないと」
勇輔「わ、分かってるって!じゃあ、行こう!」
取りあえず今は一刻も早く雷達と合流して、市街地で暴れ回ってるというライダー?と怪人を止めなければならない。紫苑達と優矢達のライダーチームは互いに顔を見合わせ頷き合うと、部屋を飛び出して写真館を後にしていく。その時……
カリム「はやて!」
はやて「!……カリム?」
はやてが紫苑達に続き部屋を出ようとすると、カリムが突然大声を上げてはやてを引き止めた。そして呼び止められたはやてがカリムの方へ振り返って訝しげな表情を浮かべると、カリムは何処か不安げな顔を浮かべながら徐に口を開く。
カリム「気をつけて……今回の世界、何だか凄く嫌な予感がするから……」
はやて「?……ん、分かった。皆にもそう言っとくな?」
彼女の言う嫌な予感とやらが何なのかは分からないが、先程からのカリムの様子からして聞き逃していい事ではなさそうだ。皆に追い付いたら一応知らせた方がいいかもしれないと、はやてはそう考えながらカリムに向けて頷き返し、紫苑達の後を追って部屋から飛び出していくのだった。
◇◆◇
一方その頃……
―バチイィッ!!バチイィッ!!バチイィッ!!―
オーガ『チィッ!んの野郎っ!』
雷達と紫苑達が向かってる市街地の方では、些細な喧嘩から始まったオーガとオーディンディスペアの戦いが激戦と化しつつあった。上空に浮遊するオーディンディスペアが長槍を掲げて空から放つ雷撃がオーガに襲い掛かり、オーガは路上に乗り捨てられた車の上を跳び移りながら雷撃を避けて上空へ飛び、大剣を振り上げオーディンディスペアへと斬り掛かった。
―ガギイィィィィィィィインッ!!―
『ええいっ!しつっこい!いい加減にくたばりなさいよこのブ男っ!!』
オーガ『うるせぇッ!最近胸糞ワリィ任務に使われてばっかでイライラしてて我慢してたっつーのに、余計にイライラさせやがってっ!火ィ付けた責任は取ってもらうぞぉっ!』
―ドゴオォッ!!―
『グウゥッ?!』
未だ取るに足らない口喧嘩を繰り返しながら大剣と長槍で鍔ぜり合っていた中、オーガの蹴りが炸裂してオーディンディスペアを路上の車の屋根に叩き落とした。其処へ追い撃ちを掛けるようにオーガが大剣を振りかぶって勢いよく落下するが、それを見たオーディンディスペアは直ぐさま身体を起こしてその場から跳び退き、オーガの振り下ろした大剣はそのまま車を真っ二つに斬り裂き爆散させただけだった。
―ドガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!―
恭平「おぉぉぉぉい止めろぉぉぉぉっ!!止めないかお前らぁぁっ!!これ以上無駄に騒ぎを大きくするんじゃねぇぇぇぇっ!!」
『はぁ……彼女はともかく、先輩がまさか此処まで単細胞だったとは……』
恭平「冷静に言ってないで止めれるなら止めてくれよ後輩クンっ?!いつの間にか変身してんだからっ!」
『いえ、そうしたいのは山々なんですけど、僕もあの二人の喧嘩のせいで町に余計な被害を出さないようにするのに必死でして……』
そう言いながら、ダグバに変身した薫は二人の戦闘によって破壊され飛んできた瓦礫や車の破片などを片腕だけで弾き、町への余計な被害を出さないように忙しなく動き回ってる。そんなダグバの姿に恭平も眩暈を覚えふらついてしまうが、どうにか踏み止まって再び二人に視線を戻していき、自分やダグバを気に止めず喧嘩を続けるオーガとオーディンディスペアを睨みつけた。
恭平「にゃろう……お前らマジでいい加減にしろよっ!!変身っ!!」
いつまでも子供の喧嘩を続ける二人に痺れを切らし、恭平はアナザーアギトへと変身しながら二人に向かって飛び出した。そしてそのまま二人の間に割って入り、オーガの大剣とオーディンディスペアの長槍を掴み動きを封じていく。
オーガ『ぐっ!なにすんだ恭平っ?!邪魔すんなっ!』
『そうよっ!これはコイツと私のサシなんだからっ、邪魔しないでっ!』
アナザーアギト『アホかぁっ!!いつまでガキみたいな喧嘩してんだよこのバカチン共っ?!良いから早くこっから離れっぞっ!じゃないと、機動六課に見付かってマジで作戦がパァーに「其処までだっ!」……って、へ?』
二人の武器を封じて必死に説得する中、それを遮るかのようにこの場の誰の物でもない制止の声が何処からか聞こえた。その聞き覚えのある声を耳にした途端、アナザーアギトはまるで一時停止されたテレビ画面の出演者のように固まってしまい、それを他所にオーガとオーディンディスペア、ダグバは首を動かして声が聞こえた方へと振り向いた。其処には……
雷「――お前達がこの騒ぎの元凶だな?一体何者だ?」
アナザーアギト(いっ……いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ?!!!本命がキタァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーアァッ?!!!)
腰にベルトを巻き、一緒に駆け付けたなのは(別)達と共にアナザーアギト達を見据えて佇む青年……今回の任務のターゲットの一人である雷が静かに佇んでいたのだった。今一番会いたくなかったターゲット達との対面に仮面の裏側で滝汗を流しながら内心絶叫してしまうアナザーアギトだが、そんな彼の心境を知らずにオーガとオーディンディスペアは頭上に疑問符を浮かべながらアナザーアギトの顔を見つめ、ダグバは頭を抑えやれやれと首を振っていた。
スバル(別)「……あれ?報告じゃ怪人とライダーと思わしき戦士が戦ってるってあったのに、怪人が増えてる?」
ティアナ(別)「しかもまたインフェニティじゃないし……何なのあれ?クワガタとバッタ?」
「いや、バッタの方は怪人じゃなくないか?だってほら、マフラーしてるし」
「……兄さん。マフラーがヒーローの身につけてる物だからって、怪人じゃないとは限らないよ……?」
雷達の背後でスバル(別)とティアナ(別)と金髪の少年と少女……雷が部隊長を勤めるレオン分隊のメンバーの"カイル・レオンハート"と"レオナ・レオンハート"の会話が聞こえて来るが、そんな事を気にしてる余裕すらない。アナザーアギトはどうにか冷静になるべく小さく深呼吸を繰り返して二人の武器からゆっくりと手を離し、雷達の方に振り返って両手を上げていく。
アナザーアギト『えーっと……こ、こんちゃーっす!局員の皆さん、こんなとこで会うなんて奇遇っすねーっ!』
雷「……奇遇?」
理央「……奇遇もなにも、お前達が騒ぎを起こしたせいで俺達が出動する羽目になったんだがな……」
アナザーアギト『い、いやぁ、別に騒ぎって呼ぶほど大袈裟なもんじゃないっすよ?ただの喧嘩っていうか、痴情の縺れっていうかっ、あはははっ……』
どうにかしてこの場を切り抜けなければと必死に雷達に弁解しようとするアナザーアギトだが、どう言っても苦し紛れの言い訳にしか聞こえない。それは雷達も分かっているのか、一同はゆっくりと辺りを見渡し、燃え盛る車やビルを視界に捉え険しい表情でアナザーアギト達を睨みつけていく。
雷「……これだけの被害を出しておきながら、今更言い逃れをする気か?」
アナザーアギト『い、いやそうじゃなくて……だから、ねっ……?』
『……ねぇ、あれがアンタ達の言ってた例の獣の飼い主って奴?』
オーガ『あ?だから何だよ……?』
アナザーアギトが雷達への言い訳を必死に考える中、サンダーレオンの契約者の雷に興味を示すオーディンディスペアに訝しげに眉を潜めるオーガ。するとオーディンディスペアはニヤリと不敵な笑みを浮かべ……
『だったらさ、勝負方法を変えない?どっちが先に……アイツから例のライオン奪えるかってさぁッ!!』
―バッ!!―
オーガ『なっ、おいっ?!』
雷達『ッ?!』
アナザーアギト『うぇ?!』
そう言うや否や、オーディンディスペアは長槍を構え直しながら雷達に向かって飛び出していったのだった。そして突然襲い掛かってきたオーディンディスペアを見て雷達も驚愕しながらその場から飛び退いてオーディンディスペアの襲撃をかわすと、雷は左腰のケースから雷牙のカードを取り出しオーディンディスペアと対峙していく。
雷「チッ……!交渉で解決出来るならそうしたかったが、やっぱり無理だったか……変身っ!」
『CHANGE RAIGA!』
アナザーアギト『いやいやいやいやいやいやっ!!?まだ交渉の余地はあるよっ!!?今のはその娘が頭に血が上って勝手に暴走しただけだからっ!!?若さ故の過ちって奴だからっ!!』
理央「またそうやって騙し討ちする気か?その手にはもう乗らん。臨気凱装!」
オーディンディスペアの独断行動のせいで何を言っても聞き入れてもらえず、それぞれ変身動作を行い雷牙と黒獅子リオに変身し戦闘態勢に入っていく雷と理央。そうしてなのは(別)達もデバイスを構えてアナザーアギト達と対峙していき、それを見たオーディンディスペアは更に笑みを深めて身構えていく。
『いーじゃない、ようやくらしくなって来たって感じね。こういう命のやり取りがしたくてこの依頼を引き受けたようなもんなんだから、楽しませなさいよ?並行世界の仮面ライダァーッ!!』
アナザーアギト『……………………………………』
『……完全にパァーになりましたね、作戦』
オーガ『……あー……何かワリィ、俺も頭に血ィ上り過ぎたわ……』
アナザーアギト『謝るくらいなら最初からやんなよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!!!』
勝手に雷牙達と戦い始めたオーディンディスペアや、哀れみ目を向けるダグバや今更になって謝罪してくるオーガに対して腹の底から絶叫し、アナザーアギトはその場に崩れ落ちながら行き場のない感情をぶつけるように地面に拳を叩き付けていくのだった。
◇◆◇
そして、オーガ達と雷牙達が戦い始めたのと同じ頃。彼等から少し離れた場所に位置するビルの屋上では、ハル達を襲わせたのと同じレジェンドルガ達を従わせ戦いの様子を傍観する一人の女……クアットロが笑みを浮かべて立つ姿が其処にあった。
クアットロ「んっふふっ、やっぱり出てきましたね、追跡者達。私達が弱ってると思ってノコノコ追ってくるなんて、ほんとに馬鹿な連中……まぁ、そうでないとこちらも予定通りに動けないんですけどぉ」
雷牙達と戦闘を開始した三人……オーガ達の姿を眺めながら邪な笑みを浮かべてそう呟くと、クアットロは何処からかガイアドライバーを取り出して腰に装着し、懐から先程八雲から受け取った金色のガイアメモリを取り出しスイッチ部分を押していく。
『DESIRE!』
クアットロ「このメモリの性能も試したかったところでしたし、丁度良い実験台が見付かって助かりましたよ♪」
禍々しい電子音声が響くと同時にクアットロが笑みを醜く深めると、突然ガイアメモリが自我を持ったようにクアットロの手から離れ、自動的にガイアドライバーのスロットに挿入されていった。するとクアットロの身体がプラズマに覆われながら徐々にその姿を変貌させていき、黄金の甲冑を纏った女王のような外見をした怪人……デザイアドーパントへと変身していったのだった。
『あああああぁ……素晴らしいっ……!身体の奥から力が漲るっ!デザイア……『欲望』!ふふ、ふふふふふふふっ……私に相応しいメモリだわぁ……』
デザイアドーパントに変貌した自分の身体を見惚れるように見回し、身体の内側から溢れる強大な力に歓喜の吐息を漏らすクアットロ。そして変身したクアットロ……デザイアドーパントはゆっくりと背後へと振り返り、『道具』達を捕えるレジェンドルガ達を見回していく。
『しっかりと捕えておくんですよ?それはこの作戦に重要な『道具』なんですから、絶対に逃がさないように』
『『『ハッ!』』』
デザイアドーパントの指示にレジェンドルガ達がそう答えた瞬間、彼等が捕える『道具』達がより一層怯え出したのが目に見えて分かり、そんな『道具』達の様を見てデザイアドーパントは邪悪な笑みを深めていく。その時……
「――クアットロ、こっちの準備は終わったよ」
『うん……?』
不意に声を掛けられ、デザイアドーパントがその声が聞こえた方へ振り返ると、其処にはメカのような外見をした戦士達を背後に控え、こちらに歩み寄って来る二人の男女の姿があった。
『あら、流石に仕事が速いですわね"インスペクター"さん。探してた『因子』をやっと見付けて、貴方達も張り切ってるのかしらぁ?』
「ふん、アンタも人のこと言える口かい?それより、風間紫苑がアンタんとこの破壊者の仲間を引っ提げて此処に向かってるみたいだけど、どういうことだい?予定じゃ両方のディケイドをこの世界の六課に閉じ込め、アンタらが騒ぎを起こして雷牙達を引き離し、手薄になった六課をアタシ等が襲撃する予定だったろ?」
『あぁ……それに関してはこちらの世界のディケイドが余計な真似をしたみたいですね……まぁ、予定とは大分違いますが問題ないでしょう?貴方達はそのまま風間紫苑達を襲撃してください。戦況が危うくなれば、黒月零も大人しくしてる筈がないですから』
「ふぅん……ならアタシ等は予定通り、このまま風間紫苑を襲うけど……アレに付いてるオマケは、全員殺しても構わないんだろ?」
『どーぞどーぞ♪あ、でもお嬢様だけは殺してはいけませんよぉ?アレにはまだ利用価値がありますから、生け捕りにして下さいね?アギーハさん、シカログさん』
甘ったるい声でアレと示すヴィヴィオを殺さぬように、女……"アギーハ"に釘を刺すデザイアドーパント。すると、アギーハは軽く鼻を鳴らしながら何処からか蒼色のベルトを取り出し、それを横目で見た隣に立つ禿頭の男……"シカログ"もアギーハの物とは違う緑のベルトを取り出しそれぞれ腰に巻き付けると、カードを一枚ずつポケットから出していく。
アギーハ「善処はするよ、五体満足とは限らないけどね……変身っ!」
シカログ「……!」
『OG UP!SIRBELWIND!』
『OG UP!DRUKIN!』
変身の掛け声と共にカードをそれぞれのドライバーにカードを装填し、アギーハとシカログの姿が変化して違う姿へと変わっていく。アギーハは全身にバーニア・スラスターと姿勢制御用モーターを搭載し、高周波ブレードを両腕に装備した脚部を持たないライダー……『シルベルヴィント』に、シカログは両肩に砲身を装填した重装甲型のライダー……『ドルーキン』へと変身し、二人が変身を終えると共に背後から出現した歪みに配下の戦士達と一緒に飲まれ、何処かへと姿を消していった。
『……これで風間紫苑達に邪魔される心配はなくなりましたね……後は――』
シルベルヴィント達が歪みと共に消えたのを見届けた後、デザイアドーパントは背後へと振り返っていく。其処には、先程と変わらずレジェンドルガと『道具』達の姿があるが、その一番後ろ……
『………………』
レジェンドルガ達の背後に、無言で静かに佇む一人の少女の姿があった。全身に装甲のようなパーツを身に纏い、顔を隠すようにモノアイが特徴のバイザーを顔に身に付けるその少女からは、何処か不気味な雰囲気が漂っている。そんな少女に向けて、デザイアドーパントは微笑を浮かべながら口を開いた。
『貴女も彼女達と合流して、いつでも動けるように待機してて下さいね?』
『………………』
『ええ。勿論、生け捕りにした後は貴女の好きにして頂いて構いませんわよ?彼を真に愛せるのは貴女しかいない……そうでしょ?』
『………………………』
甘ったるい口調でデザイアドーパントがそう問うと、少女の口元が僅かに歪んだ。まるで、言葉にせずとも当たり前だと言うように。そんな少女を見てデザイアドーパントも口端を吊り上げながら、雷牙達に視線を戻し右腕を掲げる。
『さぁ、ではそろそろ始めましょうか。黒月零と風間紫苑、サンダーレオン鹵獲作戦を……ね』
ピキィッ!と、作戦開始を宣言するように指が鳴り、全てが始まったのだった。
クアットロの予想をも遥かに越える、黒月零にとって未来永劫決して忘れることが出来ない、"最大最悪の絶望的な悪夢"が……。