仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第二十一章/雷牙の世界⑨(後編)

 

 

 

―クラナガン・市街地―

 

 

『――さぁ、どうしますか雷牙さん?このまま子供達を見殺しにするか、サンダーレオンを差し出すか……勿論答えは既に出ていますわよねぇ?』

 

 

雷牙『ッ……!!』

 

 

人質の子供達に加え、瀕死の男の子を人質に取り雷牙に手を差し延べながらそう告げるデザイアドーパント。

 

 

そんなデザイアドーパントを強く睨みつける雷牙だが、彼女の望む返答を出さなければまた人質の子供の誰かが犠牲になってしまう。

 

 

しかもこのまま時間を掛け過ぎれば、瀕死の男の子の命までもが危ない。答えが出せない中で、迷いと焦りが募るばかりのそんな雷牙を見つめデザイアドーパントが嘲笑う中、オーガ達は……

 

 

オーガ(……おい、恭平)

 

 

アナザーアギト(わーってるよ……こっちはいつでもオーケーだ……)

 

 

デザイアドーパントの意識が雷牙に向けられてる隙にオーガとアナザーアギトがなにやらアイコンタクトを交わし、オーガはアナザーアギトの反応を確認すると、今度はオーディンディスペアに向けて念話を発した。

 

 

オーガ(おい、我が儘娘。ちょっと聞きてぇことあんだが……)

 

 

(あん?何よ?っつか誰が我が儘だってっ?)

 

 

オーガ(いいだろ其処は別にッ!……それよりお前、そのバックルの能力の一つに超高速とかあったりするか?)

 

 

(?……あるにはあるけど、それがなんだってのよ?)

 

 

質問の意図が読めず怪訝に問い返すオーディンディスペア。それに対しオーガはデザイアドーパントに視線を向けたまま、右手に握る大剣を握り直しながら足幅を僅かに広げながら答えた。

 

 

オーガ(なら、お前はそれであの瀕死のガキを連れてこっから離れろ……。あの機械人形共は俺らで何とかする)

 

 

(は?何とかって、まさか……あんたアイツら助ける気なワケ?)

 

 

オーガ(バーカ、良く思い出せ。俺達の任務は、奴らと奴らの企みを潰すことだ。このまま雷牙達に不利が続いて根負けしてサンダーレオンを渡すなんてことになっちまえば、折角弱体化させた奴らの戦力の増強を許すことになる……そんななのはうちのボス達が許さねぇ。だから雷牙達が不利になる要素は潰していくしかねぇんだよ……)

 

 

アナザーアギト(このままじゃやっこさん方、本気でライオンちゃんを渡し兼ねない空気だしな……不本意かもしんねぇけど、嬢さんも協力してくれ。じゃないと俺らの首が危ねぇしさ)

 

 

(……チッ……まあ、私もあのクソ女に一泡吹かせたいってのもあるし……しゃーない、今回は言う通りにしてやるわ)

 

 

(ッ!なら先輩、僕も……!『駄目だ』ッ?!)

 

 

あまり乗り気ではない様子のオーディンディスペアを説得する二人の会話を聞き自分も協力を申し出ようとするダグバだが、オーガがそれを遮るように冷たくそう言い放ち、オーガは振り返らないまま淡々とした口調で言葉を続けた。

 

 

オーガ(羅刹の使えねぇお前に出来る事なんざない。大人しくジッとしてろ)

 

 

(ッ!でもっ!)

 

 

オーガ(……ハッキリ言わねえと分かんねぇのか?足手纏いなんだよ、ガキ共を助けたいならすっこんでろ)

 

 

(……っ……)

 

 

アナザーアギト(まあそうピリピリしなさんなって。新人君もよ?気持ちは有り難いが、此処は真也の言う通りに待機しててくれや。……いいな?)

 

 

(……はい……)

 

 

デザイアドーパントを前に苛立ちを露わにするオーガを見てオーガが本気なのだと悟り、大人しく頷き返すダグバ。そうしてアナザーアギトはそんなダグバの肩の上に手を置くと、オーガとデザイアドーパントと目を合わせて小さく頷き合う。

 

 

『ふぅ……なんだか待たせ過ぎるから、イライラしてきましたわねぇ……。あともう一人ぐらい誰か傷付けないとハッキリしないのかしらぁ?』

 

 

雷牙『ッ!止めろッ!!』

 

 

その一方、未だにサンダーレオンを差し出すかどうか迷う雷牙に痺れを切らし、もう一人犠牲者を増やすべきかと人質の子供達に歩み寄ろうとするデザイアドーパント。それを見た雷牙は慌ててデザイアドーパントを呼び止め、苦悩の表情を浮かべながら俯き『最早条件を飲むしかないのか……』と、徐に左腰のホルダーに触れていく。その時……

 

 

 

 

 

『――羅刹の七、電光石火ッ!!』

 

 

―シュンッ!―

 

 

『…!』

 

 

雷牙『……え?』

 

 

―ガキイィィィィィィィィィィィインッ!!!―

 

 

『ッ?!グハアァッ!!』

 

 

 

 

 

雷牙が半ば諦め掛けサンダーレオンのカードを取り出そうとした瞬間、オーガとアナザーアギトが突然怒号を放ってオーディンディスペアと共に姿を消したのである。それを聞いた雷牙達とデザイアドーパント達の意識が一瞬オーガ達の方に向けられると、それと共に瀕死の状態の男の子を人質に取ったレジェンドルガが突然吹っ飛んでいったのだ。そして……

 

 

―シュンッ!―

 

 

『――よし、確保……』

 

 

男の子B「……ぅ……」

 

 

『ッ!貴様ァ!―ガギイィッ!―ウガァッ?!』

 

 

瀕死の状態の男の子の傍にオーディンディスペアが姿を現し、男の子を抱き抱え肩に背負っていく。それに気が付いた他のレジェンドルガ達は慌ててオーディンディスペアを止めようと駆け出すが、それを阻むように信じられないスピードで駆ける何者かに跳ね飛ばされていった。

 

 

なのは(別)「な、なにっ?なにがどうなってっ?!」

 

 

『あらあら……これはまた意外な方々が助っ人になるとは』

 

 

―ガギイィッ!!―

 

 

オーガ『――チィッ!!』

 

 

姿の見えない何者かの突進を受けて吹っ飛ばされてくレジェンドルガ達の姿を見て冷静な口調でそう呟き、デザイアドーパントが右に素早く右腕を突き出すと、電光石火を用いて高速移動しデザイアドーパントへと斬り掛かったオーガの大剣を安易く受け止めてしまい、そのままオーガを裏拳で横殴りに吹っ飛ばしてしまった。

 

 

『ッ!ブ男ッ!』

 

 

オーガ『ッ……構うなッ!オメェはさっさとそのガキ連れて離れろッ!急げッ!』

 

 

『……ッ!』

 

 

―シュンッ!―

 

 

奇襲に失敗してデザイアドーパントに殴り飛ばされるオーガを見て一瞬その場に踏み止まるオーディンディスペアだが、オーガにそう言われ自分の役目を果たすために再び超高速を用い、男の子と共に戦線から離脱していく。そしてデザイアドーパントはそれを横目で見ると、再びオーガに視線を向けて可笑しそうに笑みを浮かべた。

 

 

『これは驚きましたわぁ。目的の為ならば手段を選ばない『追跡者』のメンバーが、まさか子供を救い出すなんて……まさか、くだらない正義感に目覚めちゃったんでしょうか?』

 

 

オーガ『……ハッ……んな訳あるかよ。俺らの任務はテメェ等の企みを潰す事だ。このままテメェ等を見逃せば、俺らの首も危ないんでねっ……』

 

 

……ついでに言えば、子供を人質に取るデザイアドーパントを見てるとあのヴェクタスに従ってしまった時の記憶を思い出させられて気に入らないというのもあるのだが、それは口には出さず大剣を杖代わりにして立ち上がり、デザイアドーパントに向けて剣を構えていくオーガ。だが……

 

 

『――フフフ、命惜しさに形振り構っていられない訳ですか……でも、貴方達は一つだけ見落としてしまってる事がありますわよ?』

 

 

オーガ『……何?』

 

 

口に手を添えて余裕の態度を見せ付けるように嘲笑うデザイアドーパントの言葉を聞き、オーガは仮面の下で眉を潜めて思わず問い返した。その時……

 

 

―ドガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!!―

 

 

『があああぁっ!!!』

 

 

『……ッ?!』

 

 

突如、オーガ達の上空からけたたましい爆発音と共に爆発が発生し、悲痛な悲鳴が響き渡ったのであった。オーガとダグバ、雷牙達は突然の出来事に驚愕し爆発が巻き起こった空を思わず見上げると、オーガ達から少し離れた場所になにかが落下して地面に叩き付けられた。それは……

 

 

 

 

 

 

『――ウフフフッ……』

 

 

―ギリギリギリィッ!―

 

 

恭平「ぐあぁっ……ぐあああああああああっ……!!」

 

 

オーガ『ッ?!恭平ッ?!』

 

 

『先輩ッ!!』

 

 

黒獅子リオ『なっ……クアットロが、"もう一人"だとっ……?!』

 

 

 

 

 

 

そう、地面に落下した物の正体とは、人質の子供達を救出すべく羅刹を使ってレジェンドルガを撃退しようとしていたハズの恭平と、その恭平を踏み付けクスクスと可笑しげに笑う『もう一体のデザイアドーパント』だったのだ。ボロボロの姿に変わり果てた恭平を踏み付けるもう一体のデザイアドーパントを見てその場にいる一同は驚愕を隠すことが出来ず困惑し、オーガと対峙するデザイアドーパントはそんな彼等の様子を見て高らかに笑い出した。

 

 

『アッハハハハハハハッ!残念でしたねぇ、おバカな追跡者さぁん?作戦を実行に移す前に、もう一つ警戒すべき懸念を見落とすからこうなるんですよぉ?』

 

 

オーガ『ッ!何だとっ……?』

 

 

愚か者を見下すような口調でそう告げるデザイアドーパントを睨み付けオーガが剣を構え直すと、デザイアドーパントはクツクツと笑いが収まらぬまま徐に右手を上げて指を鳴らし、なんとその身体からもう一体のデザイアドーパントを生み出したのである。

 

 

オーガ『なっ……』

 

 

『これがデザイアメモリの力……』

 

 

『私自身が望めば望むほど、力は増し、私自身が望む能力を得ることが出来る。この分身能力も、その一つ……』

 

 

『欲望が大きければ大きいほど、メモリはそれに呼応して私に強大な力を授けてくれる!それこそ無限に!何処までも!お分かりですか追跡者さん?貴方達など、最早私達にとって恐れるに足りない存在ということですよ?アハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!』

 

 

オーガ『ッ……クソッタレっ……』

 

 

愉快げに耳障りな笑い声を上げる二体のデザイアドーパントの話を聞き、オーガはデザイアドーパント達の言う通り、自分達の認識の甘さに後悔して思わず毒づいた。

 

 

以前ドゥーエとトーレが率いる軍勢との戦いで勝利しドゥーエを捕らえた経緯がある為、クアットロ程度が何に姿を変えようが自分達なら問題なく捕らえられると思っていたが、彼女自身ではなく彼女が持つメモリの能力を確かに警戒すべきだった。

 

 

後悔先に立たずとはこの事かと、悔しさから拳を強く握り締めていくオーガだが、デザイアドーパントはニヤニヤと笑いながらもう一体のデザイアドーパント……デザイアドーパントBに踏み付けられる恭平を指差した。

 

 

『人質の一人を逃がされたのは残念ですが……まあ、貴方達に有効な人質が手に入ったのだから良しとしましょうかしら?見たところ仲の良いお仲間さんのようですし、使い道は色々あるでしょうから、ねぇ……?』

 

 

オーガ『…………』

 

 

恭平「ッ……構うな真也ッ!!俺なんかの事よりっ、ソイツをっ―ドグオォッ!―ぐああぁぁッ!!!」

 

 

『ッ!先輩ッ!―バッ!―……っ?!』

 

 

自分に構わずクアットロを止める事を優先しろ。そう言い放とうとした恭平の腹をデザイアドーパントが容赦なく踏み付けて黙らせてしまい、それを目にしたダグバが踏み出そうとするも、ダグバの前にデザイアドーパントCが立ち塞がってそれを阻んでしまう。

 

 

『余りに下手に動かない方が身の為ですよぉ?あの彼のように呆気なくやられて、貴方まで人質にされたくはないでしょう?』

 

 

『クッ……!』

 

 

立ちはだかるデザイアドーパントCにそう忠告されてダグバが人質の方に視線を向けると、恭平の他にもレジェンドルガ達がいつの間にか態勢を立て直して再び子供達を人質に取っており、それを見たダグバは悔しげに唸りながら握り締めた拳を緩めてしまう。そしてオーガもその様子を横目に見ると、目の前のデザイアドーパントに視線を戻して淡々と言葉を紡いだ。

 

 

オーガ『それで……?うちの馬鹿野郎を人質に取って、一体何して欲しいってんだよ?』

 

 

『あら、物分かりが良くて助かりますわぁ。そうですねぇ……先ず、変身を解いてもらいましょうか?またさっきのような力を使われたら、面倒ですから♪』

 

 

オーガ『……だろうな……』

 

 

予想通りの要求をされ口の中で小さく舌打ちすると、オーガは徐にバックルに手を伸ばしてオーガフォンを掴み、オーガフォンを操作してオーガから真也に元に戻っていった。

 

 

恭平「ッ……!真也っ……!」

 

 

真也「……これでいいのか、クアットロさんよ?」

 

 

『えぇ♪口は悪いですけど、意外に素直な人で助かりました……わッ!!』

 

 

―バキイィッ!!―

 

 

真也「?!ウグアァッ!」

 

 

『ッ!真也先輩ッ!』

 

 

変身を解除した真也を見て上機嫌にそう言いながら、デザイアドーパントは一瞬残像のように姿を消した後に真也の前に現れ、真也を裏拳で容赦なく殴り飛ばしてしまう。突然の不意打ちだったために真也も受け身を取れずゴロゴロと地面を転がって倒れ込んでしまい、デザイアドーパントは愉快げに笑いながら真也へと歩み寄り雷牙達に向けこう告げた。

 

 

『貴方達も、よぉーくその目に焼き付けておいてくださいねぇ?私を出し抜こうなんて馬鹿な真似をしたら、どうなるかってことを、ねぇッ!!』

 

 

―ドグオォッ!!―

 

 

真也「ごふうぅっ?!がっ……?!うあぁっ……!」

 

 

恭平「真也ァッ!!!」

 

 

雷牙『クッ……』

 

 

わざわざ雷牙達に見えやすい位置から、無抵抗の真也を執拗に痛め付けていくデザイアドーパント。真也も規格外な怪人の力の一方的な暴行の前に口から血の塊を吐き出して悶え苦しみ、雷牙達も先程まで戦ってた敵とは言え、生身の人間が一方的にやられる光景を前にグツグツと怒りを滾らせていくも、何もすることが出来ずただその光景を黙って見ているしか出来ないのだった……。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

フェイト(――何で……)

 

 

そうして同じ頃、ヴリトライレイザー達の猛攻の前に変身解除にまで追い込まれていた血まみれの零の前に現れたフェイト。先程土手で八雲に言われた通り、彼からの指示を受けてロストとガリュウを探しにこの場に誘導されたフェイトは、零の姿を目の当たりにして絶句してしまっていた。

 

 

零「……おま、え……なんでっ……?」

 

 

―ビチャァッ……!―

 

 

フェイト「っ……!!」

 

 

一方で零も、何故フェイトが此処にいるのか分からずあからさまな動揺を浮かべ瞳を激しく揺らすが、今のフェイトには零の言葉より、全身から赤い血液を流す零の惨い姿しか目に映らなかった。しかし……

 

 

―……ザッ―

 

 

ロスト『…………』

 

 

フェイト「ッ!ロストっ……?!」

 

 

フェイトの前に、ロストがスピアグレイブを手に立ち塞がった。突然現れたフェイトを障害と判断して排除しようとしてるのか、ロストは右手に握るスピアグレイブの切っ先をゆっくりとフェイトに向けていくと、フェイトは自分に向けられたその槍の先端を見てハッと気付いた。スピアグレイブの先端に、ロストが零を奇襲した時にこびりついた赤い血があるのを……。

 

 

フェイト「……ま、まさか……貴方、が……?」

 

 

ロスト『…………』

 

 

震える声でそう問い掛けても、アリシアとリインIの意志を封じられてるロストは何も答えようとはせず、代わりに銀槍を振るい先端に付いた血を地面に撒き散らした。端から見れば挑発のようにも見えるそれを目にしたフェイトは、右手の金のバックルを握り締める手に力を込めロストを鋭く睨みつけていく。

 

 

フェイト「よ……くも……よくも、零をっ……!」

 

 

―……シュウウゥッ……―

 

 

ロストを見据えるフェイトの表情がみるみる内に怒りへと染まり、心の奥底から荒波の様に迫る激しい感情がフェイトの心を支配していく。そして、それに呼応するようにフェイトの右手に握られた金色のバックル……ディスペアバックルが淡い光を放ち、フェイトがそれを腰に当てると、バックルの端からベルトが出現しフェイトの腰に巻き付いていく。

 

 

零「ッ……?!フェイ、トっ……?」

 

 

フェイト「ハァッ……ハァッ……ハァッ……!」

 

 

零はフェイトが身に付けた見慣れないバックルを見てフェイトに戸惑いと困惑の眼差しを向けるが、既に今のフェイトにはそんな零の姿も見えておらず、ロストを見据えたままゆっくりとディスペアバックルのバックルに手を伸ばし、そして……

 

 

―ガチャッ!―

 

 

『IZANAGI!』

 

 

―バシュウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!―

 

 

零「ッ?!!なっ?!!」

 

 

ロスト『ッ!!』

 

 

フェイトがバックル部分を開いたと同時に電子音声が響き渡り、フェイトの身体がディスペアバックルから発生した凄まじい勢いの雷に飲み込まれたのである。フェイトが呑まれた雷はそのまま天をも貫かんばかりの勢いで空高く立ち上り、零やロスト達はその光景を前に圧倒されて驚愕し、雷は徐々に細く小さくなっていくと、その中から一体の異形がその姿を露わにしていく。それは……

 

 

 

 

 

『ふうぅっ……ふうぅっ……ふうぅっ……!』

 

 

 

 

 

銀色に輝く仮面、後頭部の隙間から流れる金髪の髪。その体はフェイトのバリアジャケットと同じ黒の装甲の上に金のラインが入った漆黒のコートを纏い、その右手に槍に近い形状の金の薙刀を握り締めた異形……ディスペアバックルを用いてフェイトが変貌した雷の化身・イザナギディスペアだった。

 

 

零「ッ?!フェイトっ……お前っ……?!」

 

 

センチュリオ『!』

 

 

センチュリオ『!』

 

 

突然異形の姿へと変貌してしまったフェイトを信じられない物を見るような目で見つめ言葉を失ってしまう零だが、センチュリオ達はイザナギディスペアに変貌したフェイトを新たな敵と認識して一斉にブレード・ルミナリウムを構えてイザナギディスペアへと飛び掛かり、イザナギディスペアは僅かに顔を上げてそんなセンチュリオ達を見据えた瞬間……

 

 

 

 

 

―フッ……ズバババババババババババババババババババババババババアァッ!!!!―

 

 

『……っっ!!!?』

 

 

―ドッガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!!―

 

 

零「――なっ……!!?」

 

 

 

 

 

無数の稲妻状の火花を宙に撒き散らして音もなく消え、その直後に無数の斬撃の嵐がセンチュリオ達を襲い、その身体を何百回と斬り刻んでいったのである。

 

 

そうして、センチュリオ達は一瞬の内に四肢や胴体を何分割にも斬り裂かれ無残な姿に変わり果て、稲妻状の火花を散らしてイザナギディスペアがセンチュリオ達の背後に姿を現した瞬間、センチュリオ達は一斉に爆発を起こして粉々に散っていき、イザナギディスペアは爆発を背にロストに向けて薙刀を突き付けた。

 

 

『ロストっ……貴方は私が……貴方だけはっ、私がッ!!!』

 

 

―ドバアァッ!!!―

 

 

ロスト『ッ!?―ガギイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィインッ!!―ッ!!?』

 

 

零「ッ?!フェイトッ?!」

 

 

爆炎を背にロストに向けて金の薙刀を突き付けながらそう告げたと同時に、イザナギディスペアは稲妻状の火花を撒き散らしながら地を蹴ってロストへと一瞬で肉薄し、薙刀を振りかざしロストを斬り付けていったのだ。それを見た零は一瞬呆気に取られるが、すぐに我に返って慌ててカードをドライバーに装填し、素早くスライドさせながらイザナギディスペアに目掛けて駆け出した。

 

 

『KAMENRIDE:DECADE!』

 

 

―ガシィッ!!―

 

 

『ッ?!零っ?!』

 

 

ディケイド『止めろフェイトッ!!!よせッ!!!』

 

 

ロスト『ッ……!』

 

 

―バッ!―

 

 

零は再びディケイドに変身してイザナギディスペアを後ろから羽交い締めにしてロストから無理矢理引き離し、ロストはその隙に二人から距離を離し態勢を立て直そうと飛び退くが、イザナギディスペアはディケイドの腕を振り払ってロストを追おうとし、ディケイドは慌ててイザナギディスペアを引き止めていく。

 

 

『ッ!!離してッ!!邪魔をしないで零ッ!!』

 

 

ディケイド『止めろと言ってるだろうッ!!一体どうしたんだッ?!大体なんでお前が此処にいるッ!!その姿はなんだッ?!なのは達と一緒じゃなかったのかッ?!』

 

 

『ッ!』

 

 

興奮気味に暴れるイザナギディスペアを強引に押さえ込み、混乱と困惑が収まらないまま次々と疑問を投げ掛けるディケイド。そんなディケイドの方に振り返りイザナギディスペアも思わず何かを言い掛けるが、その時、彼女の脳裏に八雲のあの言葉が過ぎった。

 

 

 

 

―そう……その代償こそがあの記憶の喪失。つまり、彼がああなったのは貴女のせいなのですよ、フェイト・T・ハラオウン―

 

 

―クアットロ達をこの世界に誘うことになったのは、キャンセラーの世界で黒月零が暴走した事による一件で彼に執着してるから……つまり、貴女に原因がある訳なんですよ?―

 

 

 

 

『……ッ……』

 

 

ディケイド『っ?フェイトっ?』

 

 

――話せない。クアットロ達をこの世界に招いたのは自分が不甲斐ないせいで、零を今もこんな目に遭わせてしまっているのは自分のせいなんだ。何より、ルーテシアが彼を破壊者にする為だけにクアットロ達に殺されそうになってるなど、どう説明すればいいのか。これ以上、彼が傷付くような事に巻き込みたくはない。

 

 

『――私は……私はもう、約束のことなんてどうでもいいの……』

 

 

ディケイド『……え?』

 

 

ボツポツと、イザナギディスペアがか細い声で何かを呟くが、声が小さく上手く聞き取れなかった。思わずディケイドが問い返すと、イザナギディスペアは勢いよく顔を上げて何処か泣きそうな声で叫び出した。

 

 

『私はただっ、零にもう何も忘れて欲しくないっ……それだけでいいのっ!!私の事もっ、なのは達の事もっ、私達が一緒だった記憶もっ……もうこれ以上っ、何も忘れて欲しくないだけなんだっ!!』

 

 

ディケイド『忘れる……?いきなりなに言ってるんだお前っ?俺はなにも忘れてなんかいないっ!!』

 

 

『ッ……』

 

 

嘘でもごまかしでもない、本気でそう思い込んでからのディケイドのその言葉を聞き、イザナギディスペアは悲痛な顔を浮かべ俯いてしまう。だが其処へ、態勢を立て直したロストが二人の間を割って入るようにスピアグレイブを振りかざして斬り掛かるが、イザナギディスペアがディケイドを突き飛ばし薙刀で槍を受け止めた。

 

 

ディケイド『ッ!フェイト?!』

 

 

『……ロストは、私が倒す……コイツさえ倒せばっ、もう誰も犠牲になんかならないからっ!!!』

 

 

―ガギイイィィッ!!!―

 

 

ロスト『ッ!!!』

 

 

ロストを倒しさえすれば、クアットロはルーテシアを捨て駒として使えず彼女達の作戦を潰す事が出来る。その為にも、クアットロが介入して来る前にロストを倒さなければと、イザナギディスペアは薙刀を振るいロストを斬り飛ばして追撃していくが、ディケイドはイザナギディスペアが口にした言葉を聞き衝撃を受けていた。

 

 

ディケイド(ロストを……倒すっ?何でっ、フェイトがそんな事をっ……)

 

 

フェイトが此処までロストに敵対心を抱くことなど、今まで一度もなかった筈だ。なのに何故突然、こんな最悪なタイミングでと動揺を隠せないディケイドだが、そうしてる間にも自分の目の前でイザナギディスペアとロストの戦いは続いていく。

 

 

――自分が最も恐れていた、姉妹と親友の家族の殺し合いが……。

 

 

ディケイド『――駄目だっ……止めろフェイトッ!!違うッ!!ソイツはっ……―ドグオオォォッ!!!―がっ!!?』

 

 

―チュドオォォォォォォォォォォオンッ!!!―

 

 

最早形振り構ってる場合ではない。手遅れになる前にイザナギディスペアに事実を話し二人の戦いを止めるしかないと、イザナギディスペアに向かって一目散に走り出すディケイドだが、突然横から飛び出してきた何かに吹っ飛ばされ、そのまま真横に立つ廃棄ビルの壁に叩き付けられ壁を突き破り建物内に連れ込まれてしまったのだ。

 

 

そして建物内に吹っ飛ばされてしまったディケイドが激痛で悶え苦しんで当然の事態に困惑し、辺りを白い煙が覆う中、壊されたビルの壁の向こう側から一人の人影がゆっくりと姿を現した。それは……

 

 

 

 

『………………』

 

 

ディケイド『ッ?!お前、はっ……?!』

 

 

 

 

その正体は、無表情のまま地面に倒れるディケイドを静かに見下ろすバイザーで顔を隠した女……先程ヴリトライレイザーと共に何処かへ消えた筈の金髪の少女だったのである。更に……

 

 

『――駄目じゃない。せっかくの姉と妹の感動の再会よ?邪魔するのは無粋ってもんでしょ?』

 

 

ディケイド『ッ?!貴様っ!!』

 

 

その背後には、金髪の少女と共に何処かへと消えた筈のヴリトライレイザーの姿もあったのだった。先程は逃げたと思っていた二人を見てディケイドは驚愕し、ヴリトライレイザーは先程の金髪の少女の不意打ちのダメージからまともに動けないディケイドを見下ろしいやらしい笑みを向けると、建物の外に視線を向けて楽しげに喋り出した。

 

 

『にしても、まさかこうも簡単にことが上手く運ぶとは思わなかったわ。全く、なんだか上手く行き過ぎて逆に怖いくらいよ』

 

 

ディケイド『何っ……?』

 

 

やれやれとわざとらしく肩を竦めてそう語るヴリトライレイザーに訝しげな顔を浮かべると、ディケイドは其処で何かに気付いたように目を見開きハッとなった。

 

 

フェイトが何故あんな見慣れないバックルを手に異形に変身し、彼処までロストに対し敵対心を抱いているのか。

 

 

不可解な事態が立て続けに起こったせいで、その原因と思われるモノが何なのか分からなかったが、コイツは自分の前から消える時に確かに言っていたではないか。

 

 

もうじきアンタみたいなのを助けようと、カワイイ"お姫様"が駆け付けてくれるんだから、と――。

 

 

ディケイド『――お前達が……お前達の仕業かッ!!アイツにロストをけしかけるように差し向けたのはッ!!』

 

 

『あん?人聞きの悪いこと言わないでくれるぅ?私達はただ心が傷付いた可愛そうなあの娘を、だぁーいすきなお姉ちゃんと会わせてあげただけよぉ?ほら、今も仲良くやってるじゃない?姉妹同士の殺し合い、ってやつ?』

 

 

ディケイド『ふざけるなぁッ!!アイツ等は戦ってはいけないんだッ!!アイツにとってアリシアはっ……アリシアがどんなに大切な存在なのかっ、知りもしないクセして利用してッ!!貴様等わぁッ!!!』

 

 

『ハッハハハハハッ!利用価値があるから利用するんじゃない?今もああやってその大切なお姉ちゃんを殺そうと馬鹿みたいに必死に頑張って頑張って、笑えてくるでしょ?最後には自分が誰を斬ったのかを知って絶望の淵に堕ちて、私達に都合の良い人形として利用されるだけだってのに……クアットロの依頼で新しい玩具が欲しいって話だから、あの女とその下部に雷の獅子がちょうどいいのよ。その為の道具も揃ってるんだからねぇ?』

 

 

ディケイド『ッ?!』

 

 

つまりクアットロは、この世界で弱体化した自分達の戦力を増強させる為に新たな戦力として、フェイトと雷のサンダーレオンを取り入れようとしているのか。

 

 

そのために自分と雷達の間に溝を作り、ロストを……アリシアとリインIを利用して……。

 

 

ディケイド『――だから……だからあの映像と警告状をこの世界の管理局に送り付けたのかっ……雷達から俺や紫苑を引き離してっ、俺達を管理局に捕らえさせてっ、戦力を分断させる為にっ……!!』

 

 

『そっ、邪魔物は少ないに越した事はないもの。まあアンタが余計な真似をしてくれたおかげで、風間紫苑が自由にされたりとかして予定を幾つか変更させる羽目になったけど、アンタがまだあの娘達にあの二人のことを隠しててくれたのは助かったわ。じゃないと、あの女が彼処までロストを倒そうなんて意気込む事も出来なかった訳だし?』

 

 

ディケイド『ッ……!!!』

 

 

そうだ、こんな奴に構っている場合ではない。急いでフェイトを止めなければ、彼女は何も知らずに自分の姉と親友の家族を手に掛けてしまうのだ。そうなる前にと、ディケイドは直ぐにライドブッカーからカードを一枚取り出しドライバーに装填してスライドさせていった。

 

 

『KAMENRIDE:RYUKI!』

 

 

D龍騎『ハアアァッ!!』

 

 

―バシュウンッ!―

 

 

『……あらら……ふふっ、無駄な事を……』

 

 

電子音声と共にD龍騎へと変身してすぐ、近くの鏡に飛び込んでミラーワールドに侵入するディケイド。そしてミラーワールドに侵入して直ぐにD龍騎はビルの外に出ると、近くのビルの窓にイザナギディスペアが薙刀を振るいロストに容赦なく斬り掛かる姿が映し出されていた。

 

 

D龍騎『ッ!フェイトッ!止せぇッ!!』

 

 

二人の姿を見付け、D龍騎は一目散にイザナギディスペアとロストの姿が映し出された鏡に向かって全力で走り出した。が……

 

 

 

 

 

『ADVENT!』

 

 

―バゴオオォンッ!!―

 

 

『グオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオッ!!!!』

 

 

D龍騎『……ッ?!!なっ―バキイイィィィッ!!―うぐああぁぁっ!!?』

 

 

 

 

 

何処からか突然鳴り響いた電子音声と共に、D龍騎の足元の地面がいきなり破裂し、其処から一体の巨大な漆黒の龍が飛び出したのだ。漆黒の龍はそのまま突然の襲撃に一瞬怯んで動きを止めるD龍騎に噛み付いて遥か上空にまで上昇し、そして……

 

 

―ドガガガガガァッ!!!ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガアァンッ!!!!!―

 

 

D龍騎『ガアアァッ!!?ウグアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーッッッ?!!!!!』

 

 

高層ビルに接近し、D龍騎の上半身をビルの壁に激突させて引きずり、そのまま高層ビルの屋上にまで上昇していく。そして漆黒の龍は高層ビルの屋上の上空へ飛び上がり、頭を勢いよく振るい屋上の扉の窓ガラスに目掛けて全身ボロボロに変わり果てたD龍騎をボールのように投げ入れたのである。そして……

 

 

―ドシャアアァッ!!―

 

 

『――ハァイ、おかえりぃ~♪』

 

 

ガリュウ『…………』

 

 

零「うああぁッ……ぐぁッ……ァ……ぁ……」

 

 

ミラーワールドから現実の世界に弾き出されたD龍騎はビルの屋上の地面に叩き付けられたと共に強制的に変身を解除させられ、先程よりも惨い姿に変わり果て血塗れになった零に戻ってしまい、そんな零が戻って来る先に先回りしていたヴリトライレイザーと金髪の少女、そして漆黒の龍……ドラグブラッガーを呼び出した張本人であるガリュウの姿が其処にあったのだった。

 

 

 

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