仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

440 / 519
第二十一章/雷牙の世界⑩(前編)

 

 

―クラナガン・上空―

 

 

シュロウガ『デエェアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!』

 

 

シルベルヴィント『ハアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!』

 

 

―ガギイィンッガギイィンッガギイィンッガギイィンッ!!!グガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!―

 

 

そして同じ頃、クラナガンの上空では黒と緑の二つの閃光……最早常人の肉眼で捉える事の出来ない速さで縦横無尽に空を駆け抜けるシュロウガとシルベルヴィントが互いの得物を何度もすれ違い様にぶつけ合う姿があり、二人の戦いも未だに終わりが見えない激しい激闘と化していた。

 

 

―ガギイィィィィィッ!!―

 

 

シルベルヴィント『ハッ!やるじゃないかい小娘がッ!あたいの速さに付いて来れる奴なんざ、そうそういないってのにさぁッ!』

 

 

シュロウガ『へえ?じゃあアンタの周りにはレベルの低い奴らしかいなかったんだぁ。この程度のスピードにも追い付けないなんて、確かにお笑いよねえ?オ・バ・サ・ン?』

 

 

シルベルヴィント『ッ!!このっ、口の減らないガキンチョがッ!!』

 

 

シルベルヴィントの高周波ソードを受け流しながら、余裕げに笑ってみせて挑発しシルベルヴィントの怒りを買うシュロウガ。だが、シュロウガのそのマスクの下の顔は汗にまみれて苦痛に満ちた顔が浮かび上がり、その表情は声と反して既に余裕がなくなっていた。

 

 

シュロウガ(っ……チッ……思ったより限界が来るの速かったわねっ……ったく、アズサもよく麻酔も無しにこんなんで六課から此処まで来られたもんだわっ……)

 

 

熾烈なハイスピードバトルを長時間続けていく内に、腹部の傷口が更に広がって先程よりも多く血が流れているのが直に分かる。それと共に意識が吹っ飛そうな程の激痛が今も襲っており、シュロウガもこのままではこのアズサの身体が危ないと危機感を抱き、徐々に焦りを感じ始めていた。

 

 

―ガギギギギイィッ!!!ガギイィィィィィィィィィィィィィインッ!!!―

 

 

シルベルヴィント『ほらほらほらぁっ!!どうしたんだい小娘がぁっ?!口では偉そうに言って足が止まってるじゃないかいっ!!』

 

 

シュロウガ『っ……ハッ、アンタがあんまりにも遅いからつまんなくて加減してあげてんのよ。そんな事も分からないのかしら?足も遅ければ理解するのも遅いのね、もう年なんじゃないの?』

 

 

シルベルヴィント『こっ……?!』

 

 

だからそうなってしまう前に、急いで決着を付けようと先程からずっとシルベルヴィントを挑発して彼女の怒りを買い続けてるのだ。そうすれば彼女は自分への怒りの余り動きが段々粗くなり、隙が多くなって反撃の糸口が見えやすくなる。実際シュロウガは先程からその隙の部分に反撃を繰り返して少しずつにだがシルベルヴィントにダメージを与えていき、それが実を結んでか相手の動きが徐々に鈍くなり始めている。

 

 

シュロウガ(よし……後はタイミングを見計らって、大技を打ち込めばっ……)

 

 

アズサ(っ……アス……ハ……)

 

 

シュロウガ(ッ!アズサ、もうちょっと持ちこたえなさいよっ……!もう少しでコイツを倒して終わらせるからっ!)

 

 

アズサ(……うんっ……)

 

 

タイミングを見計らい何時でも必殺技を放てるように身構えるシュロウガにそう言われ、先程よりも元気がなくなり始めてる心の中のアズサは素直に頷き返し、シュロウガに戦闘を任せて心の奥で再び眠ろうとする。が……

 

 

 

 

「――――ッ――――」

 

 

 

 

アズサ(……?あれ……は……?)

 

 

 

 

再び眠りに付こうとした心の中のアズサの視界の端に、ふと何か動く物が見えたような気がしたのだ。それが気になりアズサがそちらに目を向けていくと、建物やビルなどが多過ぎて一瞬見失ってしまうが、すぐにまた視界の端でそれが動いたのが見えて見付ける事が出来た。それは自分達から少し離れた先にあるビルの屋上で動く物で、アズサは持ち前の人間離れした視力でそれが何か確かめようと集中していくと、アズサのその表情はみるみる内に血の気を失い青ざめていった。何故なら……

 

 

 

 

 

 

 

 

零「――ぅ――ぁ――は――」

 

 

『フフフフッ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

アズサ(……れ……い……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

見知らぬ真紅の異形が妖気に笑いながら、ポタポタと全身から赤い血を流して今にも死にそうな姿に変わり果てた青年……零の襟首を掴んで持ち上げていく光景。それがアズサが見付けたものの正体であり、アズサはその光景を見て先程まで感じていた激痛や睡魔などが全て吹き飛び、頭の中が一瞬で真っ白に染まっていた。

 

 

アズサ(どう……して……どうして零が、彼処に……何で零が……あんな……)

 

 

彼は確か機動六課にいるのではなかったのか?その彼が何故あの場所で、あんな惨い姿に変わり果てて、今にも死にそうになっているのか……?

 

 

何故?なぜ?ナゼ――?

 

 

分からない。何故彼がああなってしまっているのか、その経緯を知らない自分には何も分からない。

 

 

ただ……ただ一つ、分かるとすれば――

 

 

 

 

 

『CHANGE UP!ANGELG!』

 

 

アンジュルグ『――れえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーいっっっっ!!!!!』

 

 

アスハ(っ?!!ア、アズサっ?!!)

 

 

シルベルヴィント『なっ……?』

 

 

 

 

 

……零が今正に殺されようとしている。その事実だけを理解したアズサはアスハを自分の中に無理矢理引っ張り込んで表に入れ代わりながらアンジュルグに変身し、今までアスハが戦ってたシルベルヴィントを無視して零達の姿が見える高層ビルの屋上に目掛け全力で翼を羽ばたかせたのだった。

 

 

アスハ(ちょ、ちょっと!待ちなさいアズサ!何なのいきなり?!どうしたのよ?!)

 

 

アンジュルグ『零っ……!零が、零がっ……!!!』

 

 

アスハ(零……?)

 

 

冷静さを失って取り乱しながら零の名を連呼するアンジュルグに怪訝な顔を浮かべてしまうアスハ。だが、そんなアンジュルグを見て一瞬呆気に取られてたシルベルヴィントがすぐに我に返り、高周波ソードを振りかざしながら背後からアンジュルグを追い掛けて来ていた。

 

 

アスハ(ッ!!アズサっ、後ろぉッ!!)

 

 

シルベルヴィント『待ちな小娘ッ!!此処まであたいを焚き付けておいて、何処に行く気だいッ?!』

 

 

アスハが悲鳴にも似た声で叫んだと共に、アンジュルグの背後へと一瞬で肉薄したシルベルヴィントがアンジュルグの背中に目掛けて高周波ソードを振り下ろし、振り下ろされた凶刃はアンジュルグの背中を容赦なく貫こうと迫る。が……

 

 

 

 

 

―ブオォンッ!―

 

 

シルベルヴィント『――っ?!な……に……?!』

 

 

 

 

 

シルベルヴィントが振るった高周波ソードはアンジュルグを貫く事なく空を斬り、アンジュルグはノイズを走らせながら突然その姿を消してしまったのであった。その光景を目にしてシルベルヴィントも目を見張り思わず動きを止めた、次の瞬間……

 

 

『――ミラージュ……サイン……』

 

 

シルベルヴィント『ッ?!―ズバアァッ!!―ガァッ……?!!』

 

 

背後からまるで囁くように聞こえた冷たい声。その声に釣られるようにしてシルベルヴィントが振り返ろうとした瞬間、いつの間にか後ろに回り込んだアンジュルグがミラージュソードを手にすれ違い様にシルベルヴィントの身体を斬り付け怯ませたのだ。だが攻撃の手はそれだけに終わらず、シルベルヴィントの死角にアンジュルグの分身が現れシルベルヴィントを上空へ斬り上げ、更に無数の分身が次々と出現し何かを描くように四方八方からシルベルヴィントを斬り上げて遥か上空にまで持ち上げていき、そして……

 

 

―ギュイィィィィーーーーーーーーイィンッ……!!―

 

 

シルベルヴィント『っ?!な、なんだいこりゃっ?!身体がっ……?!』

 

 

分身達がシルベルヴィントを攻撃すると共に描いていた巨大な五芒星が展開され、シルベルヴィントの身体を拘束し動きを封じたのだ。そしてシルベルヴィントが五芒星に囚われて身動きが取れない中、本体であるアンジュルグが遥か上空に幻影の如く美しく姿を現し、華麗に回転しながら右手にイリュージョンアローを出現させて左手に生成したエネルギー矢を弓につがわせ、そして……

 

 

『FINAL CHARGE RISE UP!』

 

 

アンジュルグ『コード……ファントムフェニックスッ!!!』

 

 

―チュドオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオンッ!!!!―

 

 

シルベルヴィント『ッ?!うぁっ……あああああああああああああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっっ!!!!』

 

 

―ドッガアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーアンッッッ!!!!!!―

 

 

電子音声と共に金色の弓矢から放たれた、炎の鳳凰。それは五芒星に捕えられたシルベルヴィントを安易く飲み込み、炎の鳳凰はそのまま遥か地上に轟音を撒き散らしながら激突し、巨大な爆発を巻き起こしていったのだった。

 

 

アスハ(ウソ……アズサ、あんた……)

 

 

アンジュルグ『はぁっ……はぁっ……はぁっ……!!』

 

 

零を助けるという底力からか、重傷の怪我を抱えてるにも関わらずシルベルヴィントを一瞬で撃退したアンジュルグに驚きを隠せないアスハ。だが今のアンジュルグにとってそんなことはどうでもよく、腹部の傷が開いたせいで走る激痛に顔を歪めながらも、それにすら構わず高層ビルの方へと視線を戻していくのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―ギリギリギリィッ!!―

 

 

零「カッ――ぁ――は――!」

 

 

『フッ、何?もう終わり?もう少しぐらい抵抗してくれないと、私も退屈で仕方がないのだけれど?』

 

 

そしてその一方、再び変身解除にまで追い込まれた零はヴリトライレイザーに首を掴まれて持ち上げられ、宙吊りにされながら徐々に首を締められて呼吸もままならない状態に陥っていた。その血まみれの姿は既に戦いを続行する事も不可能だと人目で分かるほどズタズタに引き裂かれた瀕死の状態であり、最早零が戦うことも出来ないと知った上で、ヴリトライレイザーは挑発的にそう言いながら零を乱暴に地面に叩き付け、ゴミを踏みにじるように零の頭を踏み付けた。

 

 

零「ぐあぁっ!!ぁっ……うぁっ……!」

 

 

『残念……もう少し遊べると期待してたのに、玩具にすらならないなんてねぇ。ホントに出来損ないなのね、あんたぁ?』

 

 

零「っ……!クッ……ソォッ……ぁっ……!」

 

 

侮蔑するように吐き捨てるヴリトライレイザーに反抗しようと震える片腕を支えに起き上がろうとするが、最早自力で立ち上がる余裕すらなく再び地に伏せてしまう。そんな零を見てヴリトライレイザーも失望するように溜め息を吐き、もう用はないと言わんばかりに零を蹴り飛ばそうと右足を上げた。その時……

 

 

 

 

 

 

『――止めてえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえッ!!!』

 

 

零「……っ?!」

 

 

『……あん?』

 

 

 

 

 

ヴリトライレイザーが零を蹴り飛ばそうとした直前、突如上空から悲痛な叫び声が響き渡ったのだ。それを聞いたヴリトライレイザーはピタッと動きを止め、零もその聞き覚えのある声に手放し掛けた意識を繋ぎ止め、慌てて声がした方へと視線を向けた。すると其処には、シルベルヴィントを倒して零達の下に上空から向かって来るアンジュルグの姿があった。

 

 

零「アズ、サっ……?!なんでっ……駄目だっ、来るなあぁッ!!」

 

 

『へえ……まだあんな玩具が残ってたんだぁ……』

 

 

アンジュルグ『はああああああああああっ!!』

 

 

コイツは闇雲に手を出して敵う相手ではない、生半可な力で挑めば間違いなく殺されてしまう。だが、それを知らない上に零の危機を前に冷静さを失ってるアンジュルグは迷いなく左腕に内蔵されているミラージュソードを素早く抜き取り、剣を振りかざしヴリトライレイザーに斬り掛かろうとした。が……

 

 

 

 

 

 

 

 

―ドバァアァァァァァァァァァァァァアッ!!!!―

 

 

アンジュルグ『……………………え…………?』

 

 

『!』

 

 

零「……なっ……」

 

 

 

 

 

 

 

その刃が、異形に届く事はなかった。

 

 

何故なら、アンジュルグの背後から突如目にも止まらぬ速さの一筋の黒い閃光が飛来し、アンジュルグの腹を背後からベルトごと貫き、剣を振り下ろそうとした彼女の手を止めてしまったのだから……。

 

 

零「……ア……アズ……サっ……?」

 

 

アンジュルグ『……………………ぁ………………ッ………………ぇ……………』

 

 

今、一体何が起きた……?

 

 

余りに一瞬の出来事だったために理解が追い付かず、ただ疑問だけが脳内を埋め尽くし、零も、そしてアンジュルグ自身も困惑し呆然と固まっている。

 

 

ふとアンジュルグが視線を落してみれば、彼女の目に飛び込んだのはバチバチッと無数の火花を散らす破壊されたベルトと、黒く焼き焦げて穴が開いた自分の腹。

 

 

それらを見て、漸く自分が何者かの攻撃を受けたのだと理解したと共に、変身が解除されアンジュルグからアズサへと戻ってしまい、そして……

 

 

 

 

 

 

―バチッ……バチッバチッ……―

 

 

『――いけませんねぇ……今宵の舞台は既に満員……貴女の役は既にないのですよ』

 

 

 

 

 

 

零達のビルから、数十キロも離れた先のビルの屋上。其処には人差し指から黒い稲妻状の火花を散らす黒いローブを身に纏った男……アズサを貫いた黒い閃光を放った張本人である八雲が屋上に立ち、口の端を吊り上げてそう呟く姿があったのだった。更に……

 

 

―……ボシュウゥッ!!!―

 

 

シルベルヴィント『――よ……くも……やってくれたねえぇっ……小娘えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!』

 

 

アスハ(ッ?!アズサアァッ!!!)

 

 

アズサ「…………ぁ…………」

 

 

地上で轟々と燃え盛る炎の中から、アズサが倒したと思われたシルベルヴィントがアズサへの激昂から復活し、両腕の高周波ソードをクロスさせながらアズサに目掛け襲い掛かってきたのだ。この最悪なタイミングで再び襲ってきたシルベルヴィントにアスハが悲痛な声でアズサに呼び掛けるが、既に瀕死の状態で回避や防御を取る余力すら残されていないアズサにそれを避ける事が出来る筈がなく、そうして……

 

 

 

 

 

 

『CHANGE UP!SYUROGA!』

 

 

―ズシャアァァァァァァァァァァアァッ!!!―

 

 

シュロウガ『――ッ!!!がぁっ……ァッ……ああああああああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーッッッッ?!!!』

 

 

アズサ(ッ?!!ア……ス……?!)

 

 

零「っっっ!!?アズサァッッ!!!!」

 

 

シルベルヴィントの刃に貫かれようとしたその寸前、心の中のアスハが無理矢理アズサを引っ張る様に入れ代わりながらシュロウガへと瞬時に変身し、アズサの代わりにシルベルヴィントの刃に貫かれたのだった。

 

 

そしてシルベルヴィントの高周波ソードはシュロウガのベルトを貫通して深々と腹部に突き刺さり、シュロウガも激痛のあまり悲痛な絶叫を上げながら仮面の下から血の塊を吐き出すが、シルベルヴィントは攻撃の手を緩めずにシュロウガの腹を突き刺したまま上空に空高く上昇して胸部の砲身にエネルギーを溜めていき、そして……

 

 

零「ッ?!やめっ――!!」

 

 

シルベルヴィント『粉々になっちまいなあぁッ!!!』

 

 

シュロウガ『―――ッ……!!!』

 

 

零「やめろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!!!」

 

 

―ドバアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーアァッ!!!!―

 

 

零の悲痛な叫びも虚しく、シルベルヴィントの胸部の砲身から撃ち出された極太の砲撃が零距離からシュロウガを呑み込んで吹き飛ばし、シュロウガを呑み込んだ砲撃はそのままリイン達が戦う戦場へと着弾し巨大な爆発を起こしたのだった。

 

 

―ドッガアアアアアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーアンッ!!!!―

 

 

リイン『ッ?!な、何やの、今度は?!』

 

 

ディケイド(紫苑)『攻撃っ……?何処からっ?!』

 

 

又もや敵の増援からの攻撃かと思い、それぞれが戦う敵の攻撃を躱しながら警戒を強め辺りを見回していく一同。すると、砲撃が着弾して発生した黒煙が徐々に薄れ砲撃が飛来した場所の中央がクリアになっていき、リイン達はその先にある物を見付け目を見開き驚愕した。何故なら……

 

 

 

 

 

 

 

 

―……バチィッ……バチッ……!―

 

 

アズサ「―――――――――――――――――――――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

其処にあったのは、手足を無造作に投げ出し、地面に撒き散らされた赤い鮮血の上に力無く倒れる彼女達の仲間……。

 

 

全身をズタズタに引き裂かれて真っ赤に染まり、穴が開いた腹部から夥しい量の血を流し、全壊して無数の火花を散らすシュロウガのベルトを腰に巻いた少女……シルベルヴィントに敗れ、見るも無惨な姿に変わり果てたアズサだったのだから。

 

 

シャマル「そ、そんな……あれってっ……?!」

 

 

リイン『ア……アズサちゃんッ!!!―ドガアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーアンッ!!!―キャアァッ?!』

 

 

もう既に死んでいる、そう言われれば疑いなく信じてしまいそうなほど惨い姿に変わり果てたアズサを見て思わず固まり絶句していたリイン達はすぐさま正気に戻り、慌ててアズサの下に駆け寄ろうとするも、上空から飛来した一発の砲撃が戦場に降り注いでそれを止めてしまった。

 

 

そして突然の攻撃に怯みながら一同が砲撃が放たれてきた上空を慌てて見上げると、其処にはゆっくりシルベルヴィントが空から降下して来る姿があった。

 

 

ディケイド(紫苑)『アギーハッ?!』

 

 

シルベルヴィント『邪魔はさせないよ?シカログっ!その生意気な小娘を、その自慢の鉄球でブッ潰しちまいなっ!!』

 

 

ドルーキン『……!』

 

 

―ジャラアァッ!!!―

 

 

ナンバーズ『ッ?!駄目っ、アズサさぁんッ!!!』

 

 

ディケイド(紫苑)『クッ!!ヴィヴィオッ!!コイツは僕に任せて、君は彼女をッ!!』

 

 

ナンバーズ『ッ!は、はいッ!!』

 

 

シルベルヴィントの指示に従い、ドルーキンが優矢とシャマルの守りに専念するテンガをセンチュリオ達に任せてアズサに狙いを定め巨大ハンマーを振り回すのを見て、ナンバーズはセンチュリオRの相手をディケイド(紫苑)に任せアズサを助け出そうと走り出した。だが……

 

 

センチュリオR『――行かせません』

 

 

―シュウウゥッ……バシュウゥッバシュウゥッドガガガガガガガガガガガガガガアァンッ!!!―

 

 

ディケイド(紫苑)『ッ?!ヴィヴィオッ!!危ないッ!!』

 

 

ナンバーズ『……え?―ドグオォォォォォォォォォォォォォォォォオンッ!!!―キャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!』

 

 

センチュリオRはそれを逃すまいとして、ディケイド(紫苑)のライドブッカーと鍔ぜり合いになりながら空いた左手に大型ランチャーを形成し、その銃口をナンバーズに向けて混同射撃を放ったのだ。ナンバーズはそれに気付くのが遅れ無数の銃弾をまともに受けてしまい、身体から煙を立たせながら膝から崩れ落ち、変身も解けてヴィヴィオへと戻りその場に倒れ込んでしまった。

 

 

シャマル「ヴィ、ヴィヴィオちゃんッ!!!」

 

 

ドルーキン『!』

 

 

―ジャラァッ!ビュウオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッッッ!!!!!―

 

 

リイン『ッ!!あかんっ、アズサちゃんッ!!!』

 

 

シルベルヴィント『邪魔はさせないて言ったろうっ!』

 

 

シャマルの悲痛な声が響き、それと同時にドルーキンの巨大ハンマーがアズサに向かって容赦なく振り下ろされた。それを見て直ぐにアズサの救出に向かおうとするリインの前にシルベルヴィントが立ち塞がって足止めしてしまい、アズサの頭上から迫る巨大ハンマーは無慈悲にもアズサを押し潰そうとした。が……

 

 

 

 

 

 

 

 

―ガギイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイッ!!!!―

 

 

姫「――ぐううぅッ!!!うぐっ……あっ……!!!」

 

 

リイン『?!ひ、姫さんッ?!』

 

 

 

 

殺人的な速度でハンマーがアズサを押し潰そうとしたその時、アズサと同じように瀕死の状態でありながらセンチュリオ達と戦ってた姫がアズサの傍に駆け付け、頭上に右腕を掲げて障壁を展開し巨大ハンマーからアズサを紙一重で守ったのであった。だが、その身体は既に限界間近な上に片腕しか使えない為、姫の右腕からは大量の血が噴き出しており、加えてハンマーは勢いが止まらず姫ごとアズサを押し潰さんとばかりにその勢いを増し続けていた。

 

 

―ブシャアァァァッ!!!―

 

 

姫「うああッッッ!!!!ッッッ……!!!!はっ、早くアズサをッッッ!!!!急げえぇッッッ!!!!」

 

 

リイン『ッ!!ヤアアァッ!!』

 

 

―バキャアァッ!!―

 

 

シルベルヴィント『ウアァッ?!』

 

 

巨大ハンマーの威力に耐え切れず破裂し掛けてる右腕から大量に血を噴き出しながらも、早くアズサを救い出せと必死に呼び掛け持ち堪える姫。そんな姫の気迫に促され、リインはシルベルヴィントを蹴り飛ばして怯ませた隙に全力でアズサの下へと滑り込み、アズサの身体を抱き抱えてその場から避難した。

 

 

リイン『ッ……!!姫さんッ!!アズサちゃんは助けましたッ!!姫さんも早くっ……!!』

 

 

姫「――ふ……ふふっ……そう……か……」

 

 

―ビシッ……ビシィッ……―

 

 

リイン『ッ?!姫さん?!なにしてるんですかッ!!早く――ッ?!』

 

 

アズサも助け出し、鉄球を受け止める障壁にも徐々に皹が入り始めているにも関わらず逃げようとしない姫に叫ぼうとするが、其処でリインはハッと気が付いた。

 

 

――障壁を張ってハンマーを受け止める姫の両足が、裂傷して肉が裂け、目も当てる事が出来ないほど悲惨な有様になっている事を。

 

 

その足の所々には、自分達が戦ったあのセンチュリオの持つブレード・ルミナリウムの破片らしき物が深々と突き刺さっており、その有様は最早歩くどころか立つ事すら出来る筈ないと、自分の目から見ても分かる状態だった。

 

 

それでも、彼女がああして立っていられるのは、仲間の危機を救うために無茶をしたのだと、リインは目を見開いて力無く微笑む姫の顔を見た。

 

 

姫「ッ…………すま…………ない…………はや、て…………その娘を…………頼―――」

 

 

―ビシィッ……ピシッ……バリイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィインッ!!!!―

 

 

リイン『ッッッ!!!!!ひっ、姫さああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーんッッッッ!!!!!!』

 

 

―ドシャアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアァンッッッ!!!!!!―

 

 

虚しく音を立て、硝子細工のように砕け散った障壁。それを見てリインが悲鳴にも似た声で叫び声を上げ、姫が自嘲するように苦笑を浮かべたと共に、姫の頭上から振り下ろされた巨大な鉄球が轟音と共に赤い鮮血を辺り一面に撒き散らしたのであった……。

 

 

 

 

 

◇◆◆

 

 

 

 

 

『あらあら、どうやらまた一人やられちゃったみたいねぇ?』

 

 

零「な…………ぁ…………ア…………」

 

 

――そして、その光景を零も目にしていた。ヴリトライレイザーに襟首を掴まれ無理矢理立たせられ、次々と倒れていく仲間達の姿を見せられた零は激しく瞳を揺らし、そんな零の様子を見て更に笑みを深めながら零の耳元に口を寄せ、ヴリトライレイザーが囁くように呟く。

 

 

『ほら、どうするぅ?何処ぞの預言者を裏切った人造人間は死に掛けで、桜ノ神も不老不死の身体とは言え、物言わぬ『肉片』にされてしまえば無事じゃあ済まない……しかもこの下じゃロストとあの娘が殺し合いの真っ只中……アッハハハハハハハハッ!サイッコーに盛り上ってきたじゃない!こんなところでグズグズしてる場合じゃないんじゃないのぉ?!』

 

 

零「ッ……!!!!クッソオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!」

 

 

『KAMENRIDE:DECADE!』

 

 

零の中の焦りを煽り立てるようなヴリトライレイザーのその言葉に弾かれるように、零は瀕死の身体に鞭を打って瞬時にディケイドに変身し、ヴリトライレイザーの手を力づくで振り払いヤケクソ気味に殴り掛かる。だが、ヴリトライレイザーはそんなディケイドの拳を軽々と受け止め……

 

 

『アハッ♪』

 

 

―ボキャアアァッ!!!―

 

 

ディケイド『ッッ?!!!ァッ――――?!!!!!』

 

 

ディケイドの左腕の上から強烈な馬鹿力による肘打ちを打ち込み、ディケイドの左腕の骨を軽々と粉砕してしまったのであった。その余りの激痛にディケイドも悲鳴を上げられず、ブラリと力無く垂れ下がる左腕を押さえて怯んでしまうが、ヴリトライレイザーは容赦なく続けざまに回し蹴りを放ちディケイドを蹴り飛ばしてしまった。

 

 

ディケイド『グアァッ?!ァッ……ウァッ……ッ……こ……のぉっ……!!』

 

 

『あら?殆ど死に体の上に左腕の骨を砕いてやったのに、まだ立ち向かって来るなんてねぇ……諦めの悪さは一人前ってワケ?まぁ、そんな身体じゃもう何をしようが無駄だと思うけど?』

 

 

ディケイド『ッ……!!』

 

 

今更どう足掻こうが、格下、それも歯を食いしばって全力を出さねば立ち上がる事も出来ないディケイドが何かをしようと無駄であると、余裕の態度を崩さずに倒れるディケイドの周りを歩き回るヴリトライレイザー。

 

 

そしてディケイドも苦痛で顔を歪めながらそんなヴリトライレイザーを見上げて睨み付けると、視線だけを動かし屋上を見渡していく。

 

 

ディケイド(どうするっ……どうやってコイツ等を撒いてフェイト達の下に向かうっ……!)

 

 

屋上を見渡して逃げ場所を探し、同時に思考を駆け巡らせヴリトライレイザー達から逃げ切る方法を必死に考える。

 

 

屋上から飛び降りる?駄目だ、それでは下に辿り着く前に追い付かれてやられるだけだ。

 

 

他のライダーの力を使う?それも駄目だ、こんな有様じゃカードの力を使っても身体が付いていかない。

 

 

なら、後に残る方法は……

 

 

『ATTACKRIDE:BLAST!』

 

 

『ん?』

 

 

ディケイド『ハアアァァッ!!!』

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガガアァッ!!―

 

 

ガリュウ『ッ!』

 

 

左腰のライドブッカーをGモードへと切り替えながら取り出した一枚のカードをドライバーに装填し、電子音声と共にライドブッカーGモードを振り回してヴリトライレイザーやガリュウに向けて無数の銃弾を乱射し一瞬だけ怯ませていった。

 

 

そして、ディケイドは二人が怯んだ隙に全力で立ち上がって屋上の扉に向かって一目散に走り出すが、その扉の前に金髪の少女が飛び出して立ち塞がってしまう。

 

 

ディケイド『ッ!!邪魔だッ!!退けえぇッ!!』

 

 

『…………』

 

 

一度でも立ち止まれば、その瞬間にこの体は動けなくなる。疾走したまま足を止めず金髪の少女に向かって突っ込み怒号を上げるディケイドだが、金髪の少女は空手のまま退く素振りを見せない。

 

 

ディケイド『ッ……!だったらッ!!』

 

 

フェイトとロストの戦いを止め、雷と紫苑達の救出の邪魔をするなら、例え生身の人間だろうとこちらとて容赦はしない。障害となる少女を退けるために右手に握るライドブッカーを瞬時にソードモードに切り替え、ディケイドは金髪の少女に目掛けて突っ込みながらライドブッカーを下段から容赦なく振り上げ、金髪の少女を躊躇なく斬り裂こうとした。が……

 

 

 

 

 

 

 

 

―……ドグゥンッ!!―

 

 

ディケイド『――ッ?!!なっ……ハッ……?!』

 

 

―ガギイィィィィィッ!!―

 

 

『っ…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

ライドブッカーの刃が金髪の少女の顔を斬り裂こうとしたその寸前、不意に突然ディケイドの左胸の心臓が痛みを感じるほど、大きく高鳴ったのである。

 

 

一瞬呼吸が止まってしまいそうになったその不可解な感覚にディケイドも思わず驚愕して手元が狂い、少女の顔に目掛けて放たれた筈のライドブッカーの刃が数cmほどズレて、少女の顔を隠していたバイザーのみを真っ二つに斬り裂いただけとなった。

 

 

そうして、二つに斬り割れたバイザーはそのまま乾いた音を立てて地面に落ち、金髪の少女も思わず何歩か後退りするが、ディケイドは苦痛に顔を歪めて左胸を抑えながら地面に膝を付いてしまう。

 

 

―ドグゥンッ……ドグゥンッ……ドグゥンッ……!―

 

 

ディケイド(グッ……ァッ……ッ……な、何だ、これはっ……なんで心臓が……こんなにっ……っ……)

 

 

左胸の心臓の不快な高鳴りは、一向に治まる気配が感じられない。

 

 

寧ろ動悸は徐々にその激しさを増しているようで、胸をえぐるような痛みが走る。それこそ、心臓が止まりかねない程の。

 

 

……けれどそれは、まるでこの心臓が何かを訴え掛けて警告しているようだと、ディケイドは何故だかそう思ってしまった。

 

 

――顔を上げるな、なにも見るな。見てはいけない。

 

 

――逃げなければ駄目だ。

 

 

――此処に居てはいけない。

 

 

 

 

――そうしなければ、お前はもう戻れない……!

 

 

 

 

そんな良く分からない確信が徐々に動悸が増していく心臓を通して脳にまで這い上がり、不安となって胸を支配する。顔を上げることすら身体が何故か拒否しているが、いずれにせよこの先の扉を潜らねば此処から逃げることも出来ないのだ。

 

 

急がなければ全てが手遅れになる。そうなる前に早くフェイトの下に向かわねばと、ディケイドはそう決心して眩暈と共に胸の不安を振り払うように頭を振り、顔を上げて目の前の少女を睨み付けた。が……

 

 

 

 

 

 

 

 

―ポタッ……ポタッ……―

 

 

ディケイド『……え……』

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、ディケイドが呆然とした声を上げ、その目が大きく見開かれた。まるで見てはいけない物を見た、有り得ない物を目にしてしまったような。そんな顔を浮かべるディケイドの瞳に映ったのは、前髪で隠れ、先程ディケイドが振るったライドブッカーの刃が僅かに掠って斬れた額から血を流す金髪の少女の顔。だが、その顔は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―ポタッ……ポタッ……―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディケイド『………………………リィ…………ルっ…………?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リィル?「―――うん……久しぶり、零……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

儚げに微笑むその顔、誰をも優しく包み込むような暖かなその声は

 

 

まさしく、彼が失った記憶の中の大切なその人だった

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。