仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第二十一章/雷牙の世界⑩(後編)

 

 

 

 

ディケイド『………………………リィ…………ルっ…………?』

 

 

 

 

リィル?「久しぶり……元気そうだね、零」

 

 

 

 

身に付けていたバイザーを失い、露わになった少女の素顔。それはディケイドが今まで何度も旅の中で救われ、彼が僅かに取り戻した過去の記憶の中で笑い掛けていた少女の顔だった。見間違う筈のないその顔を目にしたディケイドは戦意を削がれて変身が解除され、零に戻りながら呆然と口を開いた。

 

 

零「本当、に……リィル……お前……なのかっ……?」

 

 

リィル「うん?何?もしかして、私の顔忘れちゃったの?酷いなぁー、私は零の事、しっかり覚えてるのにぃっ」

 

 

零「……ぁ……あ……」

 

 

その懐かしさを覚える声は、祐輔の世界で因子が暴走した時、あの暗闇の世界で自分に語り掛けた声と全く同じだった。頬を膨らませながら拗ねる目の前の少女のそんな顔を見て、零は未だに我が目を疑い見開いた眼球を震わせ、ゆっくりと右手を上げて少女の頬へと引き寄せられるように自然と伸び掛けたが、ふと彼のその手がピタッと止まった。

 

 

零「けど、何でっ……どうしてお前がっ……此処にっ……?」

 

 

リィル「?どうしてって……ふふっ。やだなぁ、そんなの決まってるでしょ?」

 

 

零「……え……?」

 

 

屈託のない笑顔を浮かべる少女の言葉の意味が判らず、零は思わず間抜けな声を漏らして少女に聞き返した。そして彼女もそんな零を見て「しょうがないなぁ……」と困ったように苦笑いすると、零の両肩を両手で掴み、彼の胸に額を押し付けながら軽く寄り掛かった。

 

 

零「っ!リィ、ル……?」

 

 

リィル「……私、ね……?ずっとずっと、零に会いたくて仕方がなかった……零に会う為に、今こうして此処にいるんだよ?」

 

 

零「っ……!」

 

 

ギュッと強く、それでいて優しく肩を掴んでそう語る懐かしい声を聞き、零は思わずその目から涙が溢れそうになった。未だに彼女の記憶を全て取り戻せた訳ではないが、それでも彼女が自分にとってどんなに大切な存在だったかはこの心が覚えていた。嘗ての自分にとって全てだったと言っても過言ではなく、旅の中で何度も自分を救ってくれた少女。そんな彼女の体温を感じながら、こぼれそうになる涙を堪え、零は震える右腕を少女の背に回そうとする。

 

 

リィル「会いたかった……ずっと離れてなきゃいけなくて……ずっと苦しかった……」

 

 

零「っ……そん……なの、俺だってっ……俺だって、お前にっ――――!」

 

 

伝えねばならない事も沢山ある。謝らねばならない事も山ほどある。だが、それよりも真っ先に伝えたい、言い尽くせぬ感謝の言葉を彼女に告げようと、零が口を開いて彼女に救われた礼を告げようとし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―ズシャアァァァァッ!!―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「…………ぇ…………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……それが彼女に伝わる事はなかった。

 

 

何故なら、零の左肩を掴むリィルの手に突如一本の剣が握られ、そのまま剣を持つ左腕を躊躇なく振り下ろし零の左肩を斬り裂いてしまったのだから。

 

 

―ビチャアァッ……ビチャッ……!―

 

 

零「…………ぁ…………え…………リィ…………ル…………?」

 

 

斬り裂かれた左肩から勢いよく噴き出した血が地面に撒き散る光景を見ても、零は何が起きたのか分からず呆然とリィル?を見つめ、リィル?がその顔を上げると、彼女の瞳は先程までとは違い、光を失った冷たい目付きに変貌していた。

 

 

 

 

 

 

リィル「だって、私……ずっと零に『復讐』がしたくて、仕方がなかったんだから……」

 

 

 

 

 

 

零「……………………………………えっ…………?」

 

 

 

 

 

 

―――一瞬、彼女がなにを言ってるか分からなかった。だが、自分に向けられたその闇のように暗い眼差しには確かな憎悪が込められてるのに気付き、零は目を震わせて左肩を抑えながらリィル?から離れ思わず後退りした。

 

 

零「リィ、ルっ……何でっ……どうしてっ……?!」

 

 

リィル「……どうして?それを貴方が聞くの?私から全てを奪ったクセに……私を"裏切った"クセに、それすらも忘れたというの……?」

 

 

零「っ?!俺が……お前を裏切ったっ?何を言ってるんだ、何の話をしてるんだリィルッ?!」

 

 

自分がリィルを裏切った。冷え切った瞳で零を見つめ返してそう告げるリィルの身に覚えのない言葉に零は益々困惑してしまうが、リィルはそんな零の反応を見て憎悪を宿した目を更に細めた。

 

 

リィル「本当に何も覚えてないんだ……自分は嫌な記憶は全部かなぐり捨てて、新しい人生始めて、あの娘達と仲良く世界を巡る旅に出て……随分良いご身分になったね、零……?」

 

 

零「ッ……そ、それはっ……」

 

 

リィル「ううん、隠さなくてもいいんだよ?ぜーーんぶ知ってるよ?私の事も、私と過ごした記憶も、私の世界の事も、貴方はこの旅を始めるまで何一つ思い出さなかった……その程度の価値だったって事でしょ?私は」

 

 

零「ッ!違うッ!!お前は俺にとって掛け替えのない存在だッ!!お前がいてくれたからっ、今も俺はこうしてっ「じゃあなんで……?」……ッ?!!」

 

 

リィルの言葉を否定して大声で叫ぶ零の声が、冷淡な声に遮られた。その声の冷たさに零も思わず震えて黙り、リィルはそんな零を他所に前髪で顔を隠しながら俯き、ポツリポツリとか細い声で語り出した。

 

 

リィル「なんで貴方は私を裏切ったの……?なんで私の事を忘れてたの……?なんで私がこんな目に遭ってるのに助けに来てくれなかったの……?なんで……なんで―――」

 

 

零「リィ……ル……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リィル「――なんで……"私を殺したの"……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「――――――――――――――え――――――?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の口から放たれた信じ難い一言に、零の思考が一瞬で凍り付いた。

 

 

どういう意味だ?

 

 

何の話だ?

 

 

頭に浮かんだそんな疑問を思わず彼女に投げ掛けようとした、その時だった。

 

 

 

 

―ザザァッ……ザザザザザザザザザザアァッ……!!―

 

 

 

 

久しく忘れ掛けていた、あのノイズが脳裏を過ぎったたのは……。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

――暗雲に包まれた紅蓮の空……。

 

 

轟々と燃え盛る炎に包まれ、焼け落ちる村……。

 

 

逃げ惑う人々の、断末魔と悲鳴……。

 

 

そんな地獄絵図と呼ぶに相応しい光景が広がる村から、遠く離れた場所に位置する丘があった。

 

 

何処にでもあるような何の変哲もない、綺麗な海が見えて花畑に囲まれた丘の上。

 

 

その丘の上に存在する一本の大樹の下には、二人の男と女が向き合う姿があり、そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

―ピチャッ……ピチャッ……ピチャッ……―

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………れ………………ぃ………………どうし………………て………………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

零「……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

その男の手には、少女の腹に深々と突き刺さる漆黒の剣が握られていた。そして剣の切っ先から流れる赤い血が地面に生える花に滴り落ちて赤く染め上げていき、少女は悲痛な顔で口から大量に血を流しながら自分の腹を無言のまま突き刺す男を見上げ、呆然と彼の名を呼んだのであった……。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

零「――――あ……ぁあっ……ぅぁっ……ああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっっっ!!!!!!」

 

 

――脳裏に再生された鮮明な映像。それが最後まで脳に流れたと共に、零は這い上がって来る嘔吐感をこらえながら悪い夢なら覚めてしまえとでも言うように、何度も何度も地面に頭を叩き付けていく。

 

 

額が割れ、鮮血が飛び散っても、頭を叩き付けるのを止められない。嘘であってくれ、信じられない、信じたくない記憶を否定するように頭を何度も打ち付けているのに、頭はこれ以上にないほどクリアだった。

 

 

つまり、それが答え。

 

 

この記憶が、紛れも無い、自分が失った"過去の一部"なのだと。

 

 

リィル「やっと思い出した?そう。それが真実なんだよ、零?」

 

 

零「アッ…………ぁっ…………ち、ちがっ、ちがうっ……ちがう……違うッ……違うぅッッッ!!!!!!こんな、っ…………こんな記憶っ……こんなの出鱈目に決まってッッ……!!!!!!」

 

 

リィル「事実だよ」

 

 

零「!!!!?」

 

 

取り戻してしまった記憶を必死に否定して崩壊寸前の意識を何とか持ち直そうとするも、リィルの冷たい一言が頭上から降り懸かる。それに弾かれるように顔を上げれば、其処には記憶の中で自分が剣を突き刺した少女が、憎しみを篭めた瞳で見下ろす姿があった。

 

 

リィル「私は貴方に殺された……貴方に大切なもの全てを奪われた……それを嘘とは言わせない……言わせはしないッ……」

 

 

零「っ……!!リィル……なら、お前はっ……」

 

 

リィル「漸く思い出したんでしょ……?じゃあ次は、何で貴方に殺された私が此処にいるのか……答えは簡単、クアットロが生き返らせてくれたんだよ?あのロストの二人みたいに……貴方を追い詰める為の道具にする為にね……」

 

 

そう言いながら、リィルは自分の身体を両手でまさぐって下へ下へと下ろしていく。しかしその顔には、明かな嫌悪感が滲み出ていた。

 

 

リィル「たったそれだけ……ただそれだけの為に、墓を荒らされて、骨を掘り出されて、実験でこんな作り物の体を造られて……静かに眠る事も許されなかったッ……!!!なんで……?ねえなんで……?なんで私ばかりがこんな目に遭うの……?こんな偽物の醜い身体に魂を無理矢理入れられて、人形みたいに戦わされて……なのに私をこんな目に遇わせた貴方は、なんでそうやって平然と笑っていられるの……?」

 

 

零「ぁ…………あ…………ぁっ…………」

 

 

リィル「私がなんで憎い貴方をキャンセラーの世界で助けたか知ってる?貴方を私の手で殺す為だよ?他の誰かに殺させなんてさせない。赦さない。死ぬなら私の手で死んでよ。それが普通でしょう?当たり前だよね?だって私がこんな惨めな姿になったのは、貴方のせいなんだよ?その為に今回の作戦をクアットロに進言したんだから」

 

 

零「ッ?!まさか、そんな……この騒動を、お前がっ……?!」

 

 

リィル「だって貴方には、もっともっと苦しみながら死んで欲しかったから。私がクアットロに捕まって、何度も何度も実験の痛みで苦しんで、止めてって、助けてってどんなに泣き喚いても、貴方はあの娘達だけを救って私なんか助けてくれなかった……言ってくれたよね、零?どんな事があっても、私を守ってくれるって?…………アハッ…………アハハハハッ…………嘘つき……嘘つき、嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つきッッッッッッ!!!!!!!!!!こんな仮面で顔を隠されただけでっ、私の事なんて気付きもしなかったクセにィィィィィィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイッッッッッ!!!!!!!!」

 

 

零「───────」

 

 

矢継ぎ早に、リィルの口から放たれる呪詛。その圧倒的な悪意と殺意と呪いは極大な恐怖となって零を縛り付け、それと同時に失った過去の記憶の中で優しい笑顔を浮かべていた彼女を此処まで醜く変えてしまったのは自分のせいなのだと改めて思い知られ、零は言葉では言い表せない程の巨大な絶望感と罪悪感の余りボロボロと大粒の涙を流しながら、その場に力無く跪いてしまった。

 

 

零「…………俺、が…………お前を…………苦しめたのか…………?…………俺なんかがいたから…………お前を…………其処まで追い詰めてしまったのかっ…………?」

 

 

リィル「…………」

 

 

リィルは何も応えない。ただ何処までも底の見えぬ憎悪を秘めた眼差しを零に浴びせ、零は涙を流しながらそんなリィルの目を見て彼女の憎悪が本当に本物である事を悟り、力無く首を左右に振ると、ゆっくりと右手を地面に付けて頭を深く下げた。

 

 

零「すまっ……っ……すまないっ……リィルッ……すまないっ……すまないっ……すまないっ……すまないっ……!!」

 

 

リィル「……………」

 

 

零「赦してくれなんて言わないっ……赦して欲しいとは思わないっ……赦される資格がない事は分かってるっ……俺が憎いなら俺を殺してもいいっ……それでも足りないならっ、気が済むまでいたぶってくれても構わないからっ……だからっ……だからっ……!!!」

 

 

リィル「…………」

 

 

零「フェイトはっ……紫苑達はっ……雷達だけはっ、助けてやってくれッ!!!俺は死んでもいいからッ、お前の気が済むまで殺してくれてもいいからッ!!!だからっ……!!!だから頼むからっ、アイツ等だけはっ……俺への復讐にっ……巻き込まないでくれっ……!!!お願いだっ……お願いだからっ……おねがいしますッ……おねがいしますッ……おねがいしますっ……おねがい……しますっ……!!!!」

 

 

唯一動く血まみれの右手を震わせ、地面に滴り落ちる涙で顔をグチャグチャにしながら頭を下げ、無様を曝してフェイト達を自分への復讐に巻き込まないで欲しいとただひたすらリィルに懇願し続ける零。そんなみっともなく情けない姿を曝す零の姿を無言のまま見下ろし、リィルの口から出た言葉は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リィル「――――ぷっ……んぐっ……ぐっ……あは……あっははははははははははははははははははははっ!!!も、もう無理っ!無理だよシュレンっ!あはははははははははははっ!!」

 

 

零「……………………………………………ぇ……………………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……罵声でも、呪いの呪詛でもない。先程までのそれらとは全く違う、まるで、悪戯が成功した子供のような明るい声と笑顔を浮かべ突然笑い出したのだった。

 

 

そんな彼女の突然の変わりように、零も思わず呆然となって涙でグチャグチャになった顔を上げてしまい、その様子をガリュウと共に離れて見ていたヴリトライレイザーが口元をニヤ付かせて二人へと近付いた。

 

 

『あらら、駄目じゃないの"Φ"?折角面白い所だったのにぃ』

 

 

リィル「アッハハハハッ。だってぇ~、"Rey(レイ)"がスッゴく面白くて抱き締めたくなるくらい震えてるから、笑いが堪え切れなかったんだもぉん♪」

 

 

零「……………………………………リィ…………ル…………………?」

 

 

先程までの憎悪の塊のような様子と違い、まるで人が変わった様に明るい様子で目尻に浮かぶ涙を拭いヴリトライレイザーと仲良く会話を交わす目の前の少女を呆然と見上げる零。すると、そんな零の呟きを聞いたリィルはやっと零の様子に気付いたように人当たりの良い笑顔を浮かべ、こう告げた。

 

 

リィル「違うよぉーRey((レイ)?私の名前はリィルじゃなくって、ファイって言うんだよぉ♪」

 

 

零「…………ファ…………イ…………?」

 

 

リィル「そっ♪正式名称はNo.Φだから、Φ♪そして貴方の本当の理解者!初めましてだねRey(レイ)♪私に会えて嬉しい?嬉しいよね?そうだよね!そうに決まってるよね♪」

 

 

零「……………………………………………………」

 

 

……意味が、分からなかった。

 

 

リィルと同じ顔をしていて、先程まで自分に恨み辛みの限りを浴びせていた彼女はリィルではなく、Φなのだと。

 

 

突然の告白に理解が追い付かず、ただただ呆然とニコニコと笑顔を向けて来る彼女を見上げる事しか出来ない零の隣をヴリトライレイザーが通り、リィル……Φと呼ばれた少女の隣に立って彼女の肩に手を置いた。

 

 

『どーおぉ?良く似てるでしょ?アンタの為に私達が用意した、アンタの大事な大事なリィル・アルテスタ……その女の血液を使って造り出した『クローン』、ふふふふっ、喜んでくれたかしら?』

 

 

零「……ク……ローン……?」

 

 

Φがリィル・アルテスタのクローン。そう言われて思わず口にして聞き返すが、未だに脳が理解出来ない。誰が、誰の……?

 

 

『感謝してくれても良いのよ?ロストやガリュウとの再会だけじゃ物足りないと思って、アンタがもう一度会いたいだろうと思ってるあの女の顔に似せて作ってあげたんだから』

 

 

零「……………………………………どう……いう……ことだ…………?なら…………なら、さっきの、は……?俺を赦さないって………………俺に、殺されたっていうのはっ…………?」

 

 

『……ハァ?何?まさか、アンタまだ分かってない訳?』

 

 

零「え…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

『そんなのぜぇーーんぶ、この娘があの女に成り済まして『演技』してたに決まってるじゃない?あの女が殺されたっていうのは本当らしいだけど、アンタを憎んでるかどうかなんて知る訳ないでしょ?幾らあの女に似せてるからって、あの女の心まで似せれる訳ないんだし』

 

 

Φ「えっへへ〜♪クアットロが書いた脚本を全部覚えたんだよ?凄いでしょー?私、頭も良くて演技力も凄いんだから♪ねえねえ、褒めてよRey(レイ)?私、凄いよね?凄いに決まってるよね?!あはははははっ♪」

 

 

零「……………………………………………………………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

───眩暈がした。

 

 

───吐き気を覚えた。

 

 

今度こそ、頭が真っ白に染まり切った。

 

 

リィルのクローン?

 

 

リィルの偽物?

 

 

全部、縁起だった?

 

 

アイツの顔を使って、アイツの声を使って……

 

 

俺に吐き出した憎悪も殺意も憤怒も全部

 

 

嘘?

 

 

 

 

零「―――――――――――――――ァ―――――――――――――――――」

 

 

 

 

───眩暈が止んだ。

 

 

───吐き気が止まった。

 

 

真っ白に染まった頭がグツグツと熱く煮え返り、目に見えるもの全てが赤に染まり、大きくかっ開いた眼球が血走る。

 

 

ふざけるな。

 

 

ふざけんな。

 

 

よりによって……

 

 

よりにもよって―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『大丈夫……貴方はもう、誰かの人形なんかじゃない……私にしてあげられなかった事を……あの子達に……してあげて?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『約束だよ―――零』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――よりにもよって……アイツの声を、姿を利用してッッッッッッッッッ……!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

零「――ふざけ、るなよ…………このっ、クソ野郎ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

強烈な力を籠めて強く握り締めた掌や全身から血が噴き出し、"頭が破裂する"。

 

 

破壊の因子とか、この世界のはやて達との約束とか、雷や紫苑達の事とか、全部綺麗に弾け跳ぶ。

 

 

内側から莫大な力が沸き上がり、彼の両目が禍々しい紫色の妖しい輝きを放つ。

 

 

破壊の因子の発動。あまりに強大過ぎる憎悪の感情に呼応し、コンタクトを外していないにも関わらず破壊の力が解放されるも、彼はそれに気付いてか気付いていないでか、それに構わず口元をニヤつかせ嘲笑するヴリトライレイザーに迷いなく飛び出した。

 

 

リィルの存在を利用したあのクソ野郎だけは、この手で血祭りにあげる。

 

 

身体の内側からブチブチと何かがちぎれる不快な音を聞きながらも、今の彼の頭にはそれだけしかなく、万物例外なく全てを破壊する右腕がヴリトライレイザーに向かって伸びた。が……

 

 

 

 

 

 

 

 

―ズシャアァッ!!!!―

 

 

 

 

 

 

 

 

零「………………………………………え…………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

直後だった。

 

 

何もない真下から真上へと、巨大な剣が跳ね上がったのは。

 

 

それは零の右脇の下を潜る形で、一気に右肩へと向かっていった。

 

 

回避する時間も、受け流す余裕もなかった。当然だった。

 

 

信じられないほど簡単に、"黒月零の右腕が肩の所から切断された"のは、彼が痛みを感じるよりも速かったのだから。

 

 

零「――――――な――――――ぁ――――――」

 

 

くるくると、赤のラインを描きながら黒月零の右腕は宙を舞って、零から離れた場所に軽い音と共に落下した。

 

 

断面からは大量の血が噴き出してる。赤い血飛沫が頬を濡らし、地面が赤く染め上げられていく光景を凝視しながら、零は激しく眼球を震わせながら何か言葉を発しようと、喉の奥から声を絞り出そうとするが……

 

 

 

 

―ザシュウウゥゥッ!!!―

 

 

零「――――ッ?!!!!ぁ――――――は――――――ッッッ?!!!!」

 

 

Φ「――駄目だよ零ィ……ちゃんと私を見てくれないとォ……ねっ?」

 

 

 

 

零の懐へと、金髪の少女が軽快な足取りで飛び込んだ。まるで、大好きな恋人に彼女が甘えて抱き着くかのように。その手に握られた可愛らしい外見に似合わぬ大剣で、零の腹を躊躇なく突き刺し貫いていったのであった。

 

 

Φ「Rey(レイ)?さっき私が言った言葉、覚えてる?貴方に会いたかったって……あれね?縁起なんかじゃなくて、あれだけは私の本心なんだよ?」

 

 

―グチュウゥッ……グチャアァッ!!―

 

 

零「――ッッッ!!!!?――――――――――――――――ッッッ!!!!!!!!!?」

 

 

突き刺された大剣が、腹の中で上下左右に動かされる。まるで内臓を掻き回されているような、その形容し難い気持ちの悪い感覚と信じられない激痛に、零は天を仰ぎ声にならない絶叫を上げる。そんな零の様子をウットリと見つめ、Φは頬を上気させ愛おしむように言葉を続けた。

 

 

Φ「だってねぇ?ファイは、Rey(レイ)と一つになる為に生まれて来たんだよ?一つになって、溶け合って、世界をぜぇーんぶ壊すの♪それがファイの存在理由、ファイのやりたいこと、クアットロやヤクモが私に与えてくれたファイの生きる理由なんだよ♪」

 

 

零「――――――ぁ――――――ぐ――――――ごぶおぁ――――――!!!!!」

 

 

強烈な嘔吐感が襲い、零は口から赤い血液を吐き出しΦの顔にぶちまけた。だがΦは不快な顔を一切せず、寧ろ自分の顔を赤く濡らす血に嬉しそうに笑いながら舌で舐め取り、まるで媚薬でも口にしたかのように興奮を露わにしていた。

 

 

Φ「Rey(レイ)も私と同じなんだよね?世界をぜんぶ壊したいって思ってる。だからファイと同じ"ソレ"を持ってるんでしょ?何もかも壊したいから♪」

 

 

零「――――――な――――――に――――――いっ――――――て―――――――?」

 

 

血が張り付いた喉を強引に動かし、息を吸い込んで、漸く言葉を発してそう問い返した。そしてΦは笑みを浮かべたまま顔を上げて、ある部分を変化させる。

 

 

零が破壊の因子を用いる時に起きる現象と全く同じ、右目を禍々しく妖しく輝く紫色の瞳へと。

 

 

零「――――ッ?!!!!ま――――――さか――――――――」

 

 

Φ「うんっ♪Rey(レイ)が持ってる、ファクターから削れた欠片!この子も言ってるよ?Rey(レイ)が持ってるファクターと一つになりたいって♪」

 

 

零「――――ッッ!!!」

 

 

破壊の因子の欠片。そんな物があった事にも驚いたが、それ以上に、そんな物を自分の体に埋め込んでるにも関わらず嬉々として笑うΦに恐怖を覚えた。こんな悪魔みたいな力を受け入れて、世界を全部壊したいなどと正気の沙汰じゃない。コイツは異常だと、視界が暗転して身体の体温が急激に消え失せていくのを感じながらそう確信する中、Φは零の首筋に流れる血を舐め取り、そのまま零の唇に自分の唇を重ねた。

 

 

Φ「嗚呼……だから、凄い嬉しいィ……Rey(レイ)がファイの物になってくれて……スッゴく嬉しいィ……」

 

 

零「―――――――――――――――ぁ――――――――――――――――」

 

 

自分の血を口に含んで恍惚の表情を浮かべるΦの顔を最期に、視界が完全に真っ黒に染まり、何も見えなくなった。

 

 

Φ「これからは、ファイがずっと一緒にいてあげる。もう離さない、離れない、離れてあげない……」

 

 

零(ッ――――――畜生――――――畜生っ――――――畜生ぉっ――――――)

 

 

――寒い。今度は身体から熱が消えた。

 

 

零(こんなところでっ―――――――オレが――――――不甲斐ない――――――せいでっ――――――)

 

 

―――今度は、呼吸が出来なくなった。

 

 

――――舌が動かなくなる……喉、から、声が出なくなる。

 

 

零(――――――ァ――――――ァッ―――――――――――――――――)

 

 

―――――僅かに残ってた感覚が、身体から消えた。

 

 

そして――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Φ「大好き……大好き……大好き……大好き……大好き……大好き……大好き………これからは、ずっと、ずぅーーーーーっと、一緒だよぉ?Rey(レイ)……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――そんな艶やかな声を最期に、黒月零の意識は、完全に闇の中へと消えた。

 

 

 

 

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