仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第二十一章/雷牙の世界⑪(後編)

 

 

―クラナガン・高層ビル屋上―

 

 

『――――ッッ!!』

 

 

メモリー『何だ……これは……?』

 

 

そして時を同じくして、その異常をメモリー達も察知していた。その原因を探るように一同が周囲を見回すと、八雲が目を細めながらメモリーに向けて語り出す。

 

 

八雲「俺が後先何も考えずに、今回の騒動の引き金を引いたとでも思ったのか、断罪の?」

 

 

メモリー『……何……?』

 

 

簡単に、淡々とした口調でそう語る八雲にメモリーが訝しげに問い返す。すると八雲は瞼を伏せながら首を軽く回し、僅かに開いた瞼の先に見える真紅の瞳でメモリーを見据えた。

 

 

八雲「これだけ大きな異変を引き起こせば、お前達が跳んで来るのは目に見えていたよ……だから敢えて、そうするように仕向けた。分かるか?お前達も、俺が用意した舞台の役者であり、お前達がいなければこの舞台は成立しなかった……言わば主演だ。寧ろ来なければどうしようかと、不安すら覚えたぞ?」

 

 

ジークローバーWDD9『何を言ってる……?どういう事なんだっ?!』

 

 

八雲の言っている意味が分からず、ジークローバーが声を荒げて問い詰めるが、八雲は構わず続ける。

 

 

八雲「今宵の舞台で、俺は前々から言い渡されていた目的を果たせねばならん。しかし、その前にお前達に敗れて消滅してしまうようでは、本末転倒も良いところだ。だからこう考えたのさ……俺の目的を果たし、俺自身の快楽を満たす舞台を完成させ、俺の力を増大させる同時の方法を実行すればいいだけだと……奴を利用してな」

 

 

素っ気なく、そんな有り得ない事をサラサラと告げ、八雲は此処から数十キロも離れた高層ビルへと視線を向けた。その直後だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「――Amor in aperto mundo(放縦な世への愛)……」

 

 

 

 

―ピキッ……ピシィッ……ビシィイイイイッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零達が戦っている高層ビル……いや、その周囲の風景ごと硝子に皹が入ったように、巨大な亀裂が走ったのは。

 

 

『なっ……』

 

 

ジークローバーWDD9『何だ……アレはっ……?!!』

 

 

その異常な光景に、ジークローバーやカルネは我が目を疑って驚愕し、クラウンやメモリーはその見覚えのある光景に忌ま忌ましげに顔を歪めた。

 

 

零達がいる高層ビルとその周辺が、まるでテレビ画面の一部に亀裂が入ったかのようにひび割れている。

 

 

それは、嘗てキャンセラーの世界でもメモリーとクラウンが目にした光景……零が因子暴走の際に臨海公園上空を破壊した時と酷似しており、亀裂は信じられない速さで広がり雷牙の世界を侵食し始めていた。

 

 

八雲「――"芽"自体は、既に『アルテマの乱』で大罪を犯した時にあの出来損ないの中に生まれていた……しかし、これがまた面倒な"奴"でな。よりにもよってアレの中にではなく、因子の中に住み着いてしまったんだ。負の感情が一番多く集まる部分だから、住み着きやすいとでも思ったんだろう。お陰でアレが因子を捨てた際に"奴"まで捨てられ、侵食も一切進まぬまま、アレが因子を取り戻すまで十年も経ってしまった」

 

 

メモリー『――ッ!!そうか……そういう事かっ……!!』

 

 

冥王『?幸助君……?』

 

 

まるで独り言のように語る八雲の言葉で何かを察したのか、メモリーは剣を握る手にグッと力を篭めていき、クラウンやカルネもまた何かに気付き彼と同じような様子を浮かべていた。

 

 

八雲「後はそう難しい問題じゃない。因子と共に"奴"を取り戻したアレにありったけの負の感情を喰わせ、もう二度と立ち上がれないような絶望の前に跪かせれば、取り込む事は簡単に出来る。キャンセラーの世界では度重なる横槍のせいで失敗したが、お陰で今回の良い対策になった」

 

 

メモリー『カルネッ!!お前の力でクラウンとグランを守れッ!!ソイツ等には俺やシズク達と違ってうっちゃんの加護はないッ!!このままじゃ"アレ"に巻き込まれるぞッ!!』

 

 

『ッ!だ、だが、雷坊や達や零坊やの世界のなのは嬢ちゃん達っ、紲那坊や達がっ……!!』

 

 

メモリー『無理だッ!!もう間に合わんッ!!』

 

 

既に亀裂は、その驚異的な速度でミッドチルダ全体にまで行き渡っていた。

 

 

雷牙達や真也達、デザイアドーパント達、インスペクターやレギオン達に、ディケイド(紫苑)とリイン達……。

 

 

イザナギディスペアとロスト、零達を救いに来た多くの異世界人達、零とフェイト達の帰りを信じて写真館で待つなのは達、機動六課で雷牙達の窮地を救う方法を必死に思案するはやて(雷)達……。

 

 

雷牙の世界のミッドチルダも、更に地球も、他の次元世界も、其処に住む大勢の人々も……。

 

 

彼等は今正に世界を襲っている異常に気付かないまま亀裂に侵食され、リモコンのボタンで一時停止された映像のように止まっていた。そして……

 

 

 

 

 

―ボゴオォォォォッ!!―

 

 

零「――ッ!!ごぁっ……ガッ……アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!」

 

 

 

 

 

世界が亀裂に覆われていく中、この異常事態を引き起こした元凶である零の身にもまた、異変が起き始めていた。

 

 

身体の内側から突如黒い泥のようなモノが溢れ出し、零の身体の至る所に纏わり付き、泥が付着した部分から徐々にその姿が変化していく。

 

 

左腕がまるで悪魔のような赤黒い不気味な異形の腕に。

 

 

右足が甲冑に似た黒い異形の足に。

 

 

そして顔の右半分が、悪魔のような造形の化け物の顔へと……。

 

 

八雲「――アルテマの乱の時と同様の大罪を犯せば、"奴は"更に強大な力を持って生まれ出る。それが俺の目的の一つだ。龍道 雷達からの疑心、自身の命より大事な仲間達を危機に追い込み、恐れていたフェイト・T・ハラオウンとロストの衝突……それらの過程の果て、リィル・アルテスタのクローンであるΦを嗾ければアレの心は折れる……その隙さえあれば、"奴"があの出来損ないを取り込むには十分だ」

 

 

メモリー『ッ!八雲ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!』

 

 

断罪の剣を振りかざして地を蹴り、咆哮と共に八雲に斬り掛かるメモリー。怒りや憎悪からではない。八雲の言うもう一つの目的が達成されれば、取り返しの付かない事態になると気付いたからだ。だが……

 

 

 

 

 

 

 

 

―ビシイィッ……ガシャアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアァァァンッッッッッッッ!!!!!―

 

 

メモリー『ッ?!!グッ、グオオオオオオオオッ!!』

 

 

ガイア『幸助ッ?!キャアアアアアアアアアアアアアッ!!』

 

 

クラウン『シズク嬢ッ!!クッ?!』

 

 

『ウアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアァァッッッ!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

メモリーの刃が八雲の額に届こうとした寸前、亀裂に完全に侵食されてしまった雷牙の世界が硝子のように砕け散り、メモリー達は上も下も存在しない暗闇の中へと投げ出され、奈落の底に落下していってしまう。その間際……

 

 

 

 

 

 

 

 

零『――ィ……アッ……!ァアッ……アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ……!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

ジークローバーWDD9『ッ?!れ、零っ……?!』

 

 

 

 

 

 

 

 

……遥か遠くの闇の中で、頭や胸を押さえ、苦しげに身体をくの字に折り曲げて絶叫する零の姿があったのだ。

 

 

だが、その姿は最早彼等がよく知る零の姿ではなく、身体の大部分が悪魔のような造形の異形の姿へと変貌してしまっており、人間としての名残は殆ど残ってはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

八雲「―――『仮面ライダー雷牙の物語』は、完全に書き換えられた……最早、この世界の何処にも存在はしない。あの時点での、俺とシュレン、お前達以外の大勢の人間ごとな」

 

 

 

 

 

 

広大な闇の何処からか、姿なき八雲の声が響き渡る。

 

 

何処までも無機質で、何処までも不気味で、そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

八雲「ああ、だが何、落胆することはない。代わりに、雷牙の物語だった世界を基盤に新しい物語が生まれたんだ。喜べ。お前達が良く知る男が描いた世界……哀れな出来損ないの、独りよがりの駄作の物語――」

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――ウゥゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

八雲「――黒月零という名の、哀れな『イレイザー』が創った世界に……お前達を招こうじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

……何処までも無慈悲な声で、全ての物語から存在を許されなくなった男の名を語ったのであった……。

 

 

 

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