仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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番外編⑯
番外編/『彼』の記憶の断片


 

 

 

――もしも、今ある平凡な日常を失った時、貴方ならどうしますか?

 

 

もしも、自分の命より大切な物を失った時、貴方ならどうしますか?

 

 

もしも、愛すべき人達、愛すべき世界、愛すべき仲間達全てを失った時……貴方ならどうしますか?

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

「―――はぁ…はぁ…はぁ…はぁ……!!」

 

 

荒れ果てた市街地に包まれたとある無人世界。

 

 

其処は文明も人類の歴史も途絶えた世界であり、無数に存在する平行世界の地球が辿り着いた結末の一つ。

 

 

その街の中に存在する一つの廃墟に、全身傷と汚れだらけになった青年が金髪の少女の手を引っ張り、息絶え絶えになりながら駆け込んでくる姿があった。

 

 

「ッ……はぁ……はぁ……此処まで……来ればっ……」

 

 

廃墟内に駆け込んだ青年は入り口の方を見て追っ手が追い掛けてきてないことを確認すると、安心して気が抜けたのか背中でズルズルと壁を引きずりながら地面に座り込むが、青年は自分の右手に握られた禍々しい形状をした剣を目にすると、悲しげに顔を俯かせてしまう。

 

 

「……パパ?」

 

 

「っ……どうして……どうしてこんな事にっ……」

 

 

心配げに声を掛ける金髪の少女を気遣う余裕すらなく思わず口にしたのは、何故こんな事になってしまったのかと、後悔の念が強く篭められた言葉だった。

 

 

一体何を間違えたのか、何処で間違えてしまったのか。

 

 

その答えが分からない青年が心の中で何度も自問自答を繰り返し、あの大戦世界で他の仲間達と共に失ってしまった"彼女"を抱き留めた際にこびり付いた血まみれの手で、前髪をグシャグシャに掻き分けながら泣き崩れてしまうが……

 

 

―……ギュッ……―

 

 

「……っ……?!」

 

 

どうしようもない絶望感と喪失感の前に心が折れ掛けていた青年の冷たい体が、不意に温かく、小さな両腕に抱き締められた。それに弾かれるように青年が顔を上げると、其処には自分と同じようにボロボロの金髪の少女が青年を優しく抱き締める姿がある。

 

 

「……ヴ■■ィ、オ……?」

 

 

「……大丈夫……大丈夫だよ……?だって、パパにはまだヴィ■■■が付いてるもん……ママ達の分まで、ヴ■ヴィ■が傍にいるから……だから、お願い……泣かないでっ……?」

 

 

「……ッ……!」

 

 

そう言って笑い掛ける金髪の少女の目には、うっすらと涙が浮かんでおり、その顔を見て絶望に屈し掛けていた青年もハッとさせられた。

 

 

彼女とて、大好きな母親と親しい人達を失って泣き出したいほど辛い筈なのに、それを懸命に隠して自分を慰めようとしている。

 

 

……本当ならそれは、父親である自分が彼女にしてあげなければならない事の筈なのに。

 

 

「……パパ……?」

 

 

無言のまま、嘗ての相棒と自分のベルトが一体化した禍々しい剣を手放して、力一杯彼女の身体を抱き締める。

 

 

僅かに苦しいのか、少女もくぐもった声を漏らすも嫌がる素振りを見せず、その小さな両手で父親の身体を抱き締め返す。

 

 

「ごめんっ……ごめんなっ……パパが情けないから……パパが間違えたからっ……ママ達を助けてあげられなかったっ……!」

 

 

「っ…………」

 

 

「お前だけは、絶対に守るから……!どんな事をしてでも、絶対に……絶対に、守り抜くからっ……!」

 

 

「パパっ……」

 

 

まるで残された希望に縋るように、傷んだ少女の髪を不器用に撫でながら彼女に約束を口にする青年。少女もそんな青年の肩に顔を埋めながら、必死に堪えてた涙をボロボロと流していく。が……

 

 

 

 

 

 

―パチッパチッパチッパチッパチッ……―

 

 

「いやぁ、美しいですねぇ。正しく親と子の愛、という奴ですか?」

 

 

『……ッ?!!』

 

 

 

 

 

 

二人しかいない筈の廃墟の中に、突如拍手と共に何処からか男の声が響き渡った。その声に反応して青年と少女も驚愕しながら周囲を見回し、青年が手放した剣を再び手に立ち上がると、廃墟の奥の闇の中から一人の男がゆっくりと姿を現した。それは……

 

 

「いやはや、探しましたよ世界の破壊者さん?ライダー大戦の世界から勝手にいなくなるんですかねぇ、探す方の身にもなって下さいよ?」

 

 

「ッ……!ユ■■……テ■ミ……!」

 

 

黒いスーツに黒い帽子を頭に被り、緑色の短髪に糸目の青年。一見物腰の柔らかそうに見えるその男を目にした青年は警戒心を露わにし、少女を自分の後ろへと下がらせて剣を構えた。

 

 

「何しに来たっ……!そもそも、どうやってこの場所をっ……!」

 

 

テ■ミ「そんなのはどうだっていいじゃないですか?それより、やっちゃってくれましたねぇ?紅さん達を皆殺しにしちゃうなんて。これはもう、我々ライダーへの宣戦布告と取られても仕方がないですよ?」

 

 

「ッ!ち、違うッ!あんなつもりはなかったんだっ……!ただあの時は我を忘れて、気が付いた時にはあんなっ……!」

 

 

テ■ミ「だーかーらー……そんなのはもう関係ないんですよって。貴方は紅さんと剣崎さん達をその手に掛けた。これだけでもう貴方はライダーの……いいや、全ての世界の敵になった訳なんですから。事実、全てのライダーが貴方を世界の敵と見做して、全力で排除する事を決定しましたし」

 

 

「ッ……!!」

 

 

軽薄な口調でそう語る緑色の髪の男……テ■ミの言葉に、青年は自分が犯した罪を思い出し悲痛な表情を浮かべた。

 

 

自分がアポロガイストにさらわれた"彼女"を助ける為に、あの大戦世界から出ていけと忠告した彼等の警告を拒否したせいで、彼等の世界は消滅し、彼等の大切な仲間達も消えてしまった。

 

 

其処から先は、何もかもが泥沼と化した……。

 

 

大切な仲間達と世界を消された怒りと悲しみから自分を倒そうとした彼等から、自分の仲間達もそれを阻止しようと自分を庇って次々と事切れ、遂には"彼女"さえも……

 

 

その先の記憶は一切覚えていない。

 

 

ただあの時、内から沸き上がる憎悪とそれに反応した"因子"が輝き出した瞬間に目の前が真っ暗になって、気付いた時には彼等だったものの残骸が足元に転がり、自分の姿も醜い姿に変貌していた……。

 

 

その後は自分の犯した大罪に戦慄し、唯一生き残ったこの娘を連れて、此処まで逃げてきた。

 

 

無論、自分が赦されない事をしたのは分かっている。けれども……

 

 

「……だったら、俺の事はいいっ……赦されない罪を犯した事は分かってる……だが、この娘だけは助けてやってくれッ!この娘には何の罪もないッ!この娘は何も悪くないんだッ!断罪なら俺がちゃんと受けるッ!だから、だからっ……!」

 

 

「パパッ……!」

 

 

テ■ミ「…………」

 

 

咎は受ける、だからどうかこの娘だけは助けてやって欲しいと、必死にテ■ミにそう頼み込む青年。それに対し、テ■ミはそんな青年をジッと見つめたまま無言で何も答えず、やがて薄く息を吐きながら徐に天上を仰ぎ……

 

 

 

 

 

 

テ■ミ「――寝ぼけたコト吐かしてんじゃねぇーよ、クソガキがァアッ!!!!」

 

 

「ッ?!!なっ……」

 

 

「ひっ……」

 

 

頭に被った黒い帽子を剥ぎ取り、突如先程までの柔和な表情から一変して狂暴な顔付きへと変わり、青年に吐き捨てるかのようにそう叫んだのだった。

 

 

緑の短髪が総立ち、糸目も開かれてその奥に妖しげに輝く金色の瞳が見える。

 

 

突然のテ■ミの変貌に青年は驚愕して身じろぎ、少女も怯えて恐怖する中、変貌したテ■ミは見下した態度で叫ぶ。

 

 

テ■ミ「"この娘だけでも助けてやって欲しい"だぁ?テメーはもう他のライダーや全部の世界の敵だっつったよなぁ?なのにそんな奴の娘を見逃して欲しい?そのガキは何も悪くない?……ヒャッハハハハハハッ!コイツは傑作だなぁオォイッ!」

 

 

「な、何がっ……」

 

 

テ■ミ「良いかぁー?耳かっぽじってよーく聞けよー?与えられた役目すら果たせずに世界を救えなかったテメーは、もう"ゴミ"なんだよ!ゴーミー!わかる?いなくてもいい、存在価値すらねぇゴミだ!そんな糞以下の価値すらねぇゴミのゴミなんざ生かして、一体俺ら仮面ライダーに何の得があるってんだぁ?」

 

 

「なっ……」

 

 

自分だけでなく、少女までもゴミ呼ばわりして貶めるテ■ミに絶句し言葉を失う青年。しかし、そんな彼の反応を他所にテ■ミは不気味に口端を吊り上げる。

 

 

テ■ミ「大体、テメェーの言う通りそのゴミ助けたところで、どうせソイツにはもう帰る場所なんざねーんだからなぁ。此処で仲良くテメーとおっ死んじまった方が、そのガキにとっちゃ寧ろ幸せなんじゃねーか?」

 

 

「っ……どういう事だっ……?」

 

 

テ■ミ「あ?どうって?決まってんだろ?

 

 

 

 

 

 

―――テメェー等の世界は、もうとっくに俺様の手で"滅びちまってる"ってコトだよ」

 

 

「…………え…………?」

 

 

 

 

 

 

一瞬、何を言われたか理解が追い付かず硬直した。

 

 

今、この男はなんと言った……?

 

 

テ■ミ「あれぇー?聞こえませんでしたかぁー?なら理解するまで言ってやんよ、テメェ等の世界は!もうとっくの昔に!ぶっ壊しちまったっつってんだよッ!」

 

 

「…………う、ウソだ…………どうして、お前達が其処までする必要があるっ?あの世界の連中には何の罪もっ…………!!!!」

 

 

テ■ミ「……はぁ……まだ分かりませんかねぇ?貴方はもう全ての世界の敵な訳ですよ?だったら、貴方が逃げて潜伏してそうな世界を徹底的に探し尽くすのは当然でしょう?そのために私が選ばれたんですよ。ま、後から行き違いで隠れられても面倒なんで、後腐れ残さず根絶やしにさせて頂きましたがねぇ」

 

 

「…………ウソ、だ…………」

 

 

信じられない。信じたくなどない。

 

 

世界を救うためとは言え、彼等がそんな非道をする筈がないと。

 

 

音を立てて崩れ落ちていく精神を必死に押し止めようと頭の中でそう否定し続るが、テ■ミは何処までも人をコケにしたような表情のまま懐からビデオカメラを取り出した。

 

 

テ■ミ「ああ、何だったら証拠にテメーの顔見知りの最期の瞬間を撮った映像でも見せてやろうかぁ?キレーに撮れてんぜぇ?絶望しながら死んでったあの愉快な光景がよぉ!何つったかなぁ?ほら、アレだよアレ。ライダー大戦の世界で、最期の最期にテメーを庇ってお涙頂戴な感じで愉快におっ死んだ頭の悪い馬鹿な女の家族……高村?高梨?」

 

 

「…………テッ――――」

 

 

 

 

 

 

テ■ミ「あ、ワリィワリィ、やっぱ思い出せねぇわー。死んだゴミの名前なんざ一々記憶に留めとくほど暇じゃねーんで♪」

 

 

 

 

「テ■ミィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッ!!!!!!!」

 

 

『KAMENRIDE:DIREED!』

 

 

 

 

何処までも人をおちょくり、挙げ句には自分を救ってくれた"彼女"と自分と彼女の家族まで鼻で笑いながら侮辱するテ■ミに遂に怒り、青年は何処からか取り出したカードを剣へと装填しながら飛び出し、赤黒色の禍々しい姿のライダーへと変身しながら憎悪のままにテ■ミに斬り掛かった。が……

 

 

テ■ミ「――キャンキャン喚くなや、クソガキ。殺すぞ?」

 

 

『Baind!Now!』

 

 

―ジャラァアアアアアアアアアアアアァッ!!!―

 

 

『―――ッ?!!なっ―ズガガガガガガガガガガガガガアガガガガアァッ!!!―ウグゥアァアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーッッッッッッ?!!!!』

 

 

「ッ?!!パ、パパァアッ!!!」

 

 

テ■ミが指輪を身に付けた右手を腹部の手形型の緑のベルト……普通のベルトに擬態化させてるウロボロスドライバーのバックルに翳した瞬間に電子音声が鳴り、直後に赤黒色のライダーの周囲の地面に現れた無数の緑色の魔法陣から先端に刃が取り付けられた無数の鎖が飛び出し、赤黒色のライダーの全身に容赦なく突き刺さっていったのだった。

 

 

そうして、赤黒色のライダーは全身から赤い血を流しながらダラリと両手をぶら下げて強制的に変身が解除されその場に倒れ込んでしまい、テ■ミはそんな青年の姿を見て愉快げに笑い出した。

 

 

テ■ミ「ヒャッハハハハハハハハッ!!!大丈夫ぅ?ねぇだいじょーぶぅ?だいじょーぶですかぁー?ククククク……馬鹿が。因子の力で神化したばかりのテメーに、その力がいきなり使いこなせる筈ねぇーだろうがぁ!」

 

 

―ドグオオォッ!!―

 

 

「ごあぁッ!!ガァッ……!!」

 

 

テ■ミ「とっとと忠告聞いて出ていっとけば此処まで拗れなかったものをよぉ、テメーの端迷惑な仲間意識のせいでこうなっちまったって分かってんのかねぇ?分かってる?分かってんだったらとっとと死ねやァ!テメェーの存在価値なんざもうそれぐらいしか残ってねぇんだからなぁ!ゴミはゴミらしくおっ死んで、さっさと俺様達の世界を救っときゃいいんだよォッ!」

 

 

「……止めて……も、もう止めてぇッ!!」

 

 

文字通りゴミのように瀕死の青年の身体を踏みにじるテ■ミを見て遂に我慢出来なくなったか、その光景を今まで見ていた金髪の少女が再び青年を踏み付けようとしたテ■ミの片足を泣きながら掴んで止めた。

 

 

「ッ……!ヴ■、■ィオ……!」

 

 

「パパは何も悪い事なんてしてないッ!!パパだって頑張ったんだよッ!!世界を救おうとして、いっぱい頑張ったんだよッ?!なのになんで、なんでパパをイジメるのッ?!お願いだから、もうパパをイジメないでぇッ!!」

 

 

テ■ミ「…………」

 

 

これ以上、自分の父親が誰かに責められる姿を見たくはないと、必死にそう泣き叫びながらテ■ミの足にしがみつく金髪の少女。そんな少女の姿をテ■ミは無言のままジッと見つめると、やがてヤレヤレと深く息を吐きながら上げた足を下ろし、ニコッと糸目で微笑みながら……

 

 

 

 

テ■ミ「―――しゃしゃり出て来てんじゃねぇよ、ガキ」

 

 

―ドゴオオォッ!!―

 

 

「ッ……!!?ァッ……!!!」

 

 

冷淡な声音と共にそう言い放ち、少女の腹に容赦なく足蹴を打ち込んで彼女を吹っ飛ばしてしまったのだった。

 

 

「ッ!!?ヴィ、ヴ■■ォッ!!!」

 

 

テ■ミ「『なんで?』だぁ?分かんねぇんなら教えてやんよガキ。それはなぁ、テメーの親父が糞の役にも立たねぇゴミだからだよォ!」

 

 

―バキィッ!バキィッ!バキィッ!―

 

 

「ぅああッ!!きゃ、いやぁあああああッ!!」

 

 

テ■ミ「ゴミをゴミ呼ばわりして何が悪い、えぇ?!テメーの親父がゴミなら、その娘のテメーもゴミ以下のクズだッ!お前たち親子なんざ、居なくなってもこの世界にゃ関係ねぇーんだよォッ!分かったんなら生意気に口答えしてんじゃねーぞクソガキがぁッ!」

 

 

「や、止めろッ!!!もう止めろォオッ!!!その娘は何も関係ないだろうがぁあッ!!!」

 

 

テ■ミ「!おっと……いやー、失敬失敬。ゴミがしゃしゃり出てきて調子に乗るもんだから、ついつい教育してあげちゃいましたよー……ま、幾ら教育しようとゴミはゴミなんですがねぇ。ククククク」

 

 

「ッッ……!!!!テ■、ミイィィィィィィィィッ……!!!!」

 

 

大の大人の力で容赦なく踏み躙られ、全身アザだらけになりながら嗚咽を漏らし泣きじゃくる金髪の少女に目もくれずおどけるようにクツクツ笑うテ■ミ。それを見て、青年も沸き上がる憎しみを糧にどうにか身体を起こすが、テ■ミは再び無数の鎖を操り青年に刃を向けさせていく。

 

 

テ■ミ「さーて、絶望したままおっ死ぬ覚悟は出来たか?なぁに安心しろ、テメーを殺った後にこの糞ガキも後を追わせてやんよ。あの世は一人でも多い方が、淋しくねぇからなぁッ!」

 

 

「グッ……!!」

 

 

無数の鎖が青年に目掛けて再び飛来して来る。だが、殆ど立つ事しか出来ない程消耗している青年には既に剣を振るうだけの余力はなく、無数の鎖の刃が青年の体を突き刺さそうと目前にまで迫った。その時……

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウェイクアップッ!』

 

『LORD MAXIMUM DRIVE!』

 

 

―チュドオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオンッ!!!!―

 

 

「……あぁん?」

 

 

「っ?!」

 

 

 

不意に何処からか電子音声が響き渡り、それと同時に青年に襲い掛かろうとした無数の鎖が何処からか飛来した閃光が飲み込んで吹っ飛ばしていったのだ。それを見たテ■ミも思わず動きを止め、青年もその光景を目にして驚愕していると、青年の前に二人の戦士……仮面ライダーエクスと仮面ライダーエンシェントロードが現れた。

 

 

「な……稟?!宗介?!」

 

 

Eロード『遅くなってすまないな、■』

 

 

エクス『此処は俺達に任せて下さい!■さんは今の内に、早く逃げて!』

 

 

「っ?!な、何言って?!―ガシッ―……?!」

 

 

テ■ミに向けて武器を構えながら早く逃げろと告げた二人に驚愕する青年だが、その時背後から誰かに腕を掴まれて思わず振り返る。すると其処には二人の青年……青年の片腕を掴む本郷滝と、いつの間にかボロボロの金髪の少女を抱き抱える御薙煌一の姿があった。

 

 

「滝?!煌一?!何でお前等まで……?!」

 

 

煌一「その話は後だ!」

 

 

滝「今の内に逃げるぞ!来い!」

 

 

驚愕する青年を他所に二人は青年を引っ張り、背後に歪みの壁を出現させて青年を連れていこうとする。

 

 

「は、離せ二人共!!二人が、稟と宗介が!!」

 

 

滝「いいから急げ!!あの二人も俺達も、お前を逃がす為に来たんだ!!お前が此処に居たら二人も満足に戦えない!!」

 

 

煌一「今のお前に何が出来る?!今はとにかく逃げる事だけを考えろ!!」

 

 

「アイツ等を置いてそんなこと出来るか!!離せ!!離してくれ!!!稟!!!宗介ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーっっ!!!!!」

 

 

二人の拘束から逃れようと必死にもがきながら悲痛に叫ぶ青年だが、そんな余力も残されていない為にその努力も虚しく、青年と金髪の少女は二人と共に歪みの壁に呑まれ何処かへと消えてしまったのであった。

 

 

Eロード『行ったか……』

 

 

エクス『あぁ……後は俺達で、滝さん達が■さんを連れて逃げる時間を稼ぐだけだ……!』

 

 

エクスとEロードは四人が歪みの壁に呑まれて消えたのを確認すると武器を構え直し、正面に立つテ■ミと対峙した。対してテ■ミはそんな二人を見て目を細め、呆れ呆れに二人に問い掛ける。

 

 

テ■ミ「貴方達ねぇ……自分が何やってるのか分かってます?前に話したハズでしょう?彼をこの世界から消し去らなければ、貴方達の世界も消える事になるんですよ?」

 

 

Eロード『ああ、知ってるさ……けどな、俺達は絶対にダチを手に掛けるような真似はしないっ!!』

 

 

エクス『俺達はアンタ達のやり方を絶対認めない!!世界の為と言ってあの人を殺して、それで手に入れた世界で生きていくなんて出来る筈ないだろっ!!』

 

 

テ■ミ「……やれやれ……これだから子供は嫌になるんですよ……」

 

 

二人を見て説得は無理だと判断したのか、テ■ミは頭に被る帽子を押さえながら溜め息混じりにそう呟くと、帽子で表情を隠したまま右手の指輪をけだるげに取り替えて腹部のバックルに翳した。

 

 

『Driver On!Now!』

 

 

再び電子音声が鳴り響き、手形型のバックルが緑色の禍々しい形状をしたベルトへと変化していき、テ■ミはウロボロスドライバーのバックルの手形を左手側に切り替えながら左手の中指に緑色の宝石の指輪を装着していく。

 

 

テ■ミ「――ほざく台詞が何もかも幼稚過ぎて、思わずブッ殺したくなっちまうからなぁ……変身……」

 

 

そう呟くと共にカチャッ!と緑の宝石の指輪のカバーを下ろし、テ■ミは左手をドライバーのバックルへと翳していく。そして……

 

 

『Change!Now!』

 

 

再度鳴り響く電子音と共にテ■ミの前方に緑の魔法陣が現れ、緑の魔法陣を潜り抜けると、テ■ミの身体は禍々しいオーラを身に纏う仮面ライダーに変身したのだった。

 

 

黒い縁取りにダークグリーンのロングコート、蛇の鱗を摸したような緑の宝石の鎧を四肢に纏い、何処となく白い魔法使いの面影を感じさせる緑の蛇の仮面を顔に纏った仮面ライダー……『ウロボロス』は軽く首の骨を鳴らし、Eロードとエクスと向き合っていく。

 

 

ウロボロス『この俺様に盾突きやがったんだ……ただ殺すだけで済むとは思ってねぇよなぁ?テメーら殺した後で、オメェらの世界の住民も後を追わせて皆殺しにしてやんよぉ』

 

 

エクスL『そんなこと、させると思うか……!』

 

 

Eロード『アイツを倒す以外の方法は必ず見つけ出す……その為にもお前を倒した後で、他のライダー達も絶対に止めてみせる!!』

 

 

ウロボロス『はぁあ?俺を倒す、だと?……ヒヒヒ、ヒャーッハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!全く、救いようがねぇバカ共だとは思ってたが、まさか此処までバカだったとはなァッ?!!ヤベぇヤベぇウケる、超ウケるッ!!!』

 

 

エクスL『……何だと……?』

 

 

頭と腹を抑えて身体をのけ反らせながら爆笑するウロボロスに、二人は剣を構えながら鋭く睨み付ける。しかしウロボロスは微塵も臆した様子もなく笑いすぎで息切れになりながら、ニヤニヤと笑いながら口を開く。

 

 

ウロボロス『ヒヒヒヒ……随分と思いきったことを吐かすじゃねぇか、ガキ共?テメェら、今一体誰を敵に回そうとしてんのか微塵も分かってねーだろォ?……折角だ。『本物の恐怖』ってヤツをきちんと理解させた上で、あの世へ送ってやんよ……』

 

 

そう言って、ウロボロスはまるで帽子を抑えるように、ゆっくりと頭に手を添えていく。そして……

 

 

 

 

 

ウロボロス『―――第666拘束機関解放……次元干渉虚数方陣展開……』

 

 

―……ドグンッ―

 

 

『『―――ッ!!!?』』

 

 

 

 

 

その瞬間、ウロボロスから放たれる殺気がより一層濃くなり、禍々しいとしか言いようがない妖気と魔力が迸る。

 

 

ただその姿を視界に捉えているだけなのに、それだけで意識すら霞みそうな波動を受け、二人の額に冷たい汗が浮かび動けなくなる。

 

 

Eロード『て……てめぇ、何をする気だ……!!?』

 

 

ウロボロス『ヒヒヒヒッ、ヒャハハハハハハッ!!!もう恐いかぁ?もう苦しいかぁ?!そォだ、ソイツが"恐怖"だッ!!"絶望"だッ!!よーく覚えとけよぉ?ソイツがテメェらが味わう最期の感情ってヤツだからなァアアッ!!!!』

 

 

狂い、だが何処か謡うように叫び、ウロボロスの纏う魔力もまた更に不吉に顕在化し始める。

 

 

ドクンッと、二人は胸がざわめき震え出すのを感じた。

 

 

ウロボロスから膨れ上がる暴力的な凶念と死の匂い。

 

 

それがまた、不吉な直感となって二人の全身を駆け抜けた。

 

 

 

 

 

 

ウロボロス『コード=SOL(ソウル・オブ・ランゲージ) 碧の魔道書(ブレイブルー)、起動ォオッ!!!見せてやるよ、『碧』の力をなァアッ!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

◇◇◆

 

 

 

 

煌一「――っ……此処まで来れば、一先ず安全か……」

 

 

滝「ああ……あの二人が足止めしてくれてるおかげってのもあるだろうけどな……」

 

 

「………………」

 

 

Eロードとエクスがウロボロスを止めて時間稼ぎしてくれている隙に、青年を連れてとある世界の廃墟内に逃げ込んだ滝と煌一。二人は外を覗いて追っ手が来ていないか確認すると、煌一は気を失う金髪の少女を優しく壁に寝かせ、滝は壁に背を預けて無気力のまま座り込む青年へと歩み寄り、膝を折って青年と目線を合わせ語り掛けた。

 

 

滝「今稟達があのライダーを食い止めてくれてる。お前も今の内にしっかり休んで――「……なんで、だ……」……ッ!」

 

 

彼の身に起きた出来事を全て知っているからか、青年の身を案じるようにそう声を掛けるが、青年はそんな呼び掛けに答えずボソリとそう呟いた。

 

 

「……なんで、俺なんかを助けたんだ……お前達も、奴等から聞いてるんだろ……俺を助ければ、お前達の世界も消えるって……なのに、なんで……稟も宗介も……"アイツ等"もっ……」

 

 

煌一「……■……」

 

 

「こんな筈じゃなかった……こんな筈じゃなかったんだっ……こんな筈じゃっ……!」

 

 

滝「…………」

 

 

クシャッと、"彼女"の血で血塗られた手で頭を抑えながらボロボロと大粒の涙を流して泣き叫ぶ青年の言葉に、二人も何も答えられなかった。

 

 

彼が……いや、彼等が歩んできた今までの旅路は、彼が望んだ未来へと辿り着ける旅路ではない無駄なものでしかなかった。

 

 

世界から敵だと認識され、今までの旅路で絆を紡いだ仲間達を失い、それどころか……彼が守りたかった筈の"彼女達"までも……。

 

 

「……もう……無理だ……限界だっ……頼む……頼む二人共っ……俺を、俺を殺してくれっ……!!殺してくれっ!!」

 

 

煌一「ッ!馬鹿な事を言うな■ッ!しっかりしろッ!お前がそんなんじゃどうするッ?!」

 

 

「もう、無理なんだ……俺達がしてきた事が全部無駄で……ライダーから世界の敵として追われて……世界を救う術がもう分からなくて……その上、アイツ等を見殺しにして、俺だけが助かるなんて……もう耐えられないんだっ……なァ、頼むよっ、殺してくれっ……殺してくれよっ……死なせてくれェッ……!!!!」

 

 

煌一「ッ……■……」

 

 

今の彼は、"彼女"を失ったあの時から、自分で自分の命を絶つ事が出来ない肉体になってしまった。

 

 

それでも、全てのライダーから敵として追われ、生きる目的を全て奪われ、絶望のあまり最早生きていたくはないと、煌一の足にしがみついて泣き叫び無様に懇願する青年。だが……

 

 

―グイィッ!―

 

 

「ッ?!―バキイィッ!!―グウゥッ?!」

 

 

―ガシャアァァァァァァァァァアンッ!!!―

 

 

滝「…………」

 

 

煌一「?!滝っ……?!」

 

 

そんな青年の姿を無言のまま見つめていた滝が青年の胸倉を掴んで無理矢理立たせ、いきなり青年の顔を殴り背後に積み重ねられたドラム缶の山にまで吹っ飛ばしていったのだった。煌一もいきなり青年を殴り飛ばした滝を見て思わず目を見開き驚愕してしまうが、滝は構わず倒れる青年の胸倉を再び掴み、青年の瞳を睨み付けた。

 

 

「ッ……滝っ……」

 

 

滝「いい加減にしろ、■……アイツ等を見殺しにして生き延びた事が耐えられないから、死なせて欲しい?お前がそんなんじゃ、本当に何かも全部無駄になっちまうだろうッ?!稟も宗介もっ、命を捨ててまでお前を守ったアイツ等の命もッ!!」

 

 

「……ッ……」

 

 

滝「お前等の旅が全部無駄だったっ?まだ全部が全部そうだと決まったワケじゃねぇだろっ!連中が時間が無いからって極端な手段に出ているだけかもしれないし、探せばまだ他に手はあるかもしれないっ!それに―――」

 

 

 

 

 

「…………パパ…………?」

 

 

 

 

 

滝が何かを言い掛けたその時、か細い声が聞こえた。その声を聞いてハッとなり青年が振り返ると、其処には今の騒音と滝の怒号で目を覚ましたのか、テ■ミに容赦なく踏み躙られてアザだらけになった少女の姿があった。

 

 

「……ヴィ、■ィオ……」

 

 

滝「……お前までいなくなっちまったら、誰があの娘を支える……?あの娘の親はもう、この世にお前しかいねぇんだぞ……!」

 

 

「ッ……!……ゥッ……ッ……!」

 

 

滝「だから諦めんな……まだ俺達がいるっ……!そうだろっ?」

 

 

力無く項垂れ、ボロボロと大粒の涙を流す青年にそう力強く告げる滝。そうして、青年も泣きながら少女の傍にまで寄り、まるで何かに縋る子供のように少女の身体を抱き締めた。

 

 

「……俺を生かせば……消えるかもしれないんだぞ……お前達も、お前達の世界も……」

 

 

煌一「……ふっ……そんなの、覚悟の上だ」

 

 

滝「簡単に消えてやるつもりなんてねぇさ。忘れたのか?俺達は無駄にしぶといんだぜ」

 

 

「……馬鹿野郎っ……」

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

そして、彼等のライダー達からの逃亡劇は数ヶ月にも及んだ……。

 

 

彼を逃がす為にウロボロスを足止めしていたエクスとEロードは、結局、彼等の下に戻ってくる事はなかった……。

 

 

ウロボロスとの戦いに敗れたのか、或いは彼を守ったせいで自分達の世界と共に消滅したのか……それすらも分からないまま……。

 

 

それでも……それでも彼は、希望を捨てずに何処までも逃げ続けた。

 

 

自分の隣には、まだこの子がいる。いてくれる。

 

 

彼女がいる限り、希望は捨てない。

 

 

必ず世界を救う違う方法を探し出し、彼女と共に生きられる未来を見付けてみせると。

 

 

 

 

 

だが、この時の彼は、まだ知らない。

 

 

この世界が、何処まで残酷で、悪意に満ちているのか。

 

 

"本当の悲劇"が、此処から始まるのだと知らずに。

 

 

 

 

 

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