仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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クロツキレイの物語
第二十一章幕間/クロツキレイの物語(せかい)


 

 

 

 

 

 

 

 

────くだらない話をしよう。

 

 

幼い自我が目覚めた時から、《男》は何処までも愛に貪欲だった。

 

 

 

 

────お前など産まなければ良かった。《母親》は泣きながら、後悔するように《男》に言った。

 

 

 

 

────俺達が欲しかったのは、お前ではなかった。《父親》は吐き捨てるように、憎悪を込めて《男》に言った。

 

 

 

 

ただの一度も親から愛を注がれず、誰からも愛されずに育ちながらも、幼かった《男》はそれでもなお人を愛し、優しくあろうとした。

 

 

誰かに好きでいて貰いたい。

 

 

愛して欲しい。

 

 

《男》が心の底から望んでいたのは、何の事はない、誰もが当たり前の様に思うありきたりな願いだった。

 

 

人に優しく生き続ければ、きっといつか、たった一人でも、誰かが自分を好きになってくれるかもしれないと。

 

 

 

────だが《全て》を失ったその時、《男》は思い知る事となる。

 

 

こんなにも苦しみ、哀しみ、後悔するぐらいなら

 

 

もう二度と、誰も愛したりはしないと。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―???の世界―

 

 

――――太陽も、星一つも存在しない灰色の空が何処までも続く不気味な世界。

 

 

 

灰色の空が照らし出すその眼下には、荒廃した大地が最果てにまで続いており、其処に命の息吹は一切感じられなかった。

 

 

ひと一人どころか、草木の一本すら存在しない。

 

 

 

だがその代わりに、大地の上には無数の"ある物"だけが存在していた。

 

 

―――数え切れないほどの数の墓碑。

 

 

世界の全てを埋め尽くす程の無数の『墓石』が地平線の彼方にまで並ぶ、異質な光景が唯一その世界に存在していたのだ。そして……

 

 

 

 

 

椛「―――ぅ……ぐっ……」

 

 

グラン「ゲホッ!ゲホッゲホッ!っ……此処はっ……?」

 

 

幸助「くっ……」

 

 

 

 

 

そんな異常窮まりない世界の中心にて、全身に被った砂を落としながら徐に身を起こす複数の人影……雷牙の世界から放り出されて闇の中に消えた筈の幸助達の姿があり、他の一同と同じように砂を被ったシズクが頭を軽く振りながら、一同の顔を見回して口を開いた。

 

 

シズク「皆、大丈夫っ?欠けている人はいないっ?」

 

 

カルネ「ッ……一応ね……クラウンとグラン坊やも、僕の力で何とか"アレ"から護れた……けど……」

 

 

全員の安否を確認し、一同は周囲に広がる墓地に目を向けて見渡していく。地平の彼方にまで無数の墓石が広がっているという異常な光景。其処はどう見ても、彼等が先程までいたハズの雷牙の世界のミッドチルダではなかった。

 

 

グラン「なんなんだ、此処は……俺達はさっきまで、雷牙の世界にいた筈なのに……別の世界へ飛ばされたのか?」

 

 

幸助「――いや……此処は雷牙の世界だ……それに間違いはない……」

 

 

グラン「……え?」

 

 

怪訝な顔で墓碑に覆われた不気味窮まりない世界を見渡すグランに、幸助が神妙な様子でそう言いながら近くにある一つの墓碑の前に近づいて立つと、膝を折ってその墓碑に刻まれた名前に指を這わせていく。其処には……

 

 

 

 

 

 

『AZUSA/ASUHA(アズサ/アスハ)』

 

 

 

 

 

 

墓碑に刻まれているのは、雷牙の世界で零を助けようとし、シルベルヴィントの手によって倒されたアズサとアスハの二人の名であり、それを見たグランは目を見開き驚愕してしまう。

 

 

グラン「ア、アズサの名前……?どういうことだっ?何故あの子の墓がっ?!」

 

 

クラウン『……いえ、どうやらアズサ嬢だけではないようです……』

 

 

アズサの墓を目にして驚愕を隠せないグランに、クラウンが何処となく複雑げな面持ちで他の墓碑を見回す。すると其処には、見知らぬ誰かの名が刻まれた他の墓石達に混じって、『YUUYA SAKURAI(ユウヤ サクライ)』、『SHION KAZAMA(シオン カザマ)』など、彼等が良く知る人物達の名前を含んだ無数の墓石が何処までもズラリと並んでいたのであった。

 

 

グラン「な、何なんだ……この世界は……此処は一体……?!」

 

 

カルネ「……幸助坊やの言う通り、此処が雷牙の世界である事は間違いないよ。いや、というよりは―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――雷牙の世界『だった世界』……そう言った方が正しいだろうな、この場合は」

 

 

『……ッ?!』

 

 

 

 

 

 

 

 

見知った知り合い達の名が混じった無数の墓石が何処までも続く不気味な世界。そんな異質窮まりない光景を目の当たりにして立ち尽くす事しか出来ない一同の背後から突然男の声が響き、幸助達が一斉に振り返ると、其処には……

 

 

 

 

 

 

―ザッ、ザッ、ザッ……―

 

 

八雲「――――ようこそ、この独りよがりの醜い物語(せかい)へ……歓迎するぞ、断罪達よ」

 

 

幸助「八雲……!」

 

 

 

 

 

 

無数の墓が立ち並ぶ荒野の向こう側から、黒いローブを風で揺らして歩み寄って来る一人の男……雷牙の世界で幸助達と対峙した八雲の姿があったのだった。そして幸助達は咄嗟に八雲の方へ向き直り構えていくが、それに対し八雲は身構えもせずに立ち止まりグルリと荒野を見回していく。

 

 

八雲「しかし、生きてこの世界に足を踏み入れたのはやはりお前達だけか……いや、どうやら難を逃れた連中もいるようだが、そちらは大した害ではないな」

 

 

グラン「……?何を言って……いや、それよりどういう意味だっ?!雷牙の世界だった世界だの、生きて足を踏み入れたのが俺達だけだの、それじゃまるで――」

 

 

八雲「"まるで"、ではない。言葉通りの意味だ。忘れたか?あの時言った、俺の言葉を……」

 

 

グランの言葉を遮るようにそう告げて、八雲はスッと、まるで舞台前の演説者を演じるように黒いローブの中から左手を出した。

 

 

八雲「『仮面ライダー雷牙の物語』は完全に書き換えられた。もう何処の世界にも存在しないとな……この世界は、その雷牙の世界という基盤を元に生み出された、新たな物語(せかい)といっても過言ではない」

 

 

グラン「雷牙の世界を基盤に……新しく生み出された物語(せかい)っ……?」

 

 

クラウン『……ではやはり、幸助氏達とカルネ氏の力で護られた私達以外の人間は……』

 

 

八雲「わざわざ俺に聞くまでもないだろう?お前達の目には今、その答えが嫌というほど見えている筈なのだからな」

 

 

おどけるように片目を伏せながら八雲が左手を広げて指すのは、幸助達と八雲の周りに地平の彼方まで並ぶ無数の墓碑。

 

 

……つまり、これが答え。

 

 

此処に立ち並ぶ無数の墓に刻まれている全ての名は、その墓石の主の証。

 

 

これが彼等の……"末路の姿"であるのだと……。

 

 

グラン「馬鹿な……こんな出鱈目な……こんな話がっ……!!」

 

 

カルネ「ッ……黒月八雲っ……貴様っ……!!」

 

 

八雲「俺を責めるのはお門違いではないか?確かに奴にそう仕向けるようにしたのはこの俺だが、この連中を直接手に掛けたのは俺ではない……あの出来損ないだ」

 

 

シズク「ッ……!零君……彼は今何処にいるのっ?!」

 

 

八雲の口から告げられた出来損ないというワードから、雷牙の世界から放り出された際に闇の中で垣間見た零の姿を思い出したシズクが身を乗り出し八雲に問い掛けると、八雲は無表情のまま視線のみをある方向に向けていき、それを追うように幸助達が振り返ると、彼等は其処で灰色の空に浮かぶ"あるモノ"の存在に初めて気が付いた。それは……

 

 

椛「――黒い、月……?」

 

 

そう、灰色の空に、まるで巨大な孔が空いているようにも見えるソレは、薄汚い黒に染め上げられた不気味な満月だったのだ。そして、幸助達がその黒い満月を睨み据える中、八雲は黒い満月を軽く顎で差しながら語り出した。

 

 

八雲「この不細工窮まりない物語(せかい)の出来前について文句があるのなら、"アレ"に直接言え……駄作になるのは目に見えていたが、俺とてまさか此処までとは思ってもいなかったのだからな」

 

 

 

 

 

 

『――――■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

シズク「―――うっ!」

 

 

カルネ「グッ?!」

 

 

グラン「な、なんだっ……この声はっ?!」

 

 

八雲がそう告げた直後に、黒い満月の向こうから突如"声"がした。耳にするだけで不快で、醜悪で、余りの不愉快さに思わず耳を塞ぎたくなるその声に苦痛で顔を歪めて一同が戸惑う中、黒い満月の向こう側で何かが蠢き、中からゆっくりと、二本の異形の腕がユラリとその姿を現した。

 

 

まるで、視えないナニかに救いを求める亡者のように。

 

 

いなくなってしまった母親をひたすらに捜し求める、赤子のように。

 

 

醜い両腕が伸ばされた満月の向こうから、ゆっくりと姿を現したのは……

 

 

 

 

 

 

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!』

 

 

 

 

 

全身に不気味な赤い紋様が刻まれ、まるで悪魔のような姿形と羽根を持ったグロテスクな異形……。

 

 

人間には理解出来ない言語で獣の如く吠えながら月の向こうから現れたその悪魔を目にし、目を見開く一同の間にざわめきが広がる。

 

 

カルネ「あ、あれはっ……まさかっ……!」

 

 

八雲「……どうした?驚いていないでもっと喜べよ、カルネ。今この瞬間、俺とお前の同類が新たに生まれ出たんだぞ?」

 

 

グラン「?同類……?」

 

 

クラウン『ッ……!まさか……!』

 

 

その言葉で何かに気付いたのか、クラウンは仮面越しに険しい表情で黒い月の向こうから上半身だけを乗り出す悪魔を見上げていくと、八雲も黒い月を見上げながら僅かに口を開いた。

 

 

八雲「―――カテゴリーは幹部クラスに該当する幻想・神話の異形か……一応は能力的にも申し分なさそうだが、理性を失っているようでは獣同然だな。全く、イレイザーとなっても出来損ないとは救いようがない……」

 

 

シズク「ッ!イレイザー?それに出来損ないって……まさか、あの怪人はっ……?!」

 

 

―ズシイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィインッ!!!―

 

 

八雲の言葉を聞いてシズクが何かを叫ぼうとするが、それを遮るように突如けたたましい爆音が響き渡った。そしてその音に釣られるように幸助達が爆音がした方に振り返ると、其処には黒い満月から抜け出て爆風の中から身体の全てを曝け出した悪魔の姿があり、八雲はそんな悪魔を見据えて淡々と語り出した。

 

 

八雲「醜い姿だろう……?アレが奴の"罪"の証。俺やシュレンのように、大罪を犯して物語から存在を許されなくなった者の末路の姿であり、雷牙の世界をこの不細工窮まりない物語に書き換え、この連中を手に掛けた張本人……"黒月零"のイレイザーとしての姿だ」

 

 

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!!!』

 

 

冷淡な口調でそう語る八雲の言葉と共に、黒い月から現れた悪魔のような姿形をした異形……零がその姿を変貌させた『アバドンイレイザー』はその醜い赤黒い両腕を掲げ、まるでこの世に生まれ出た自身の存在を世界に知らしめるように、漆黒の満月に獣の雄叫びを上げていくのであった。

 

 

 

 

 

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