仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
グラン「あ、あの怪人が……零、だと……?」
『■■■■■■■■■■■■■■■■■■アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!!』
漆黒の月に吠える悪魔……アバドンイレイザーの正体が零だと聞かされたグランは驚愕を露わに目を見開き、他の面々も苦々しい表情を浮かべる中、幸助が無言のまま八雲に目を向け強く睨み据えた。
幸助「これがお前の目的の一つか、八雲……零の中に眠っていたあのイレイザーを完全に目覚めさせ、雷牙の世界を書き換えて大勢の命をアイツに奪わせ、零を大罪人として仕立て上げる……そうして、アイツが犯した大罪をお前の『力』として取り込む事が……」
八雲「……物語一つの改変と大量殺人……これだけの大罪を奴が犯してくれれば、俺のイレイザーの能力で俺の力は倍加される。そうなれば、俺の属性の相性の悪さでお前と対峙する事によって弱体化されたとしてもお前達に引けを取る事はなくなる……加えて、俺に課せられていたイレイザー集めのノルマもこれで達成された。正に一石二鳥、という事だ」
シズク「ッ!ふざけないでッ!仮にも自分の息子を、貴方はっ……!」
八雲「それこそ心外だな……俺はあの出来損ないを、息子と認めた事など一度もないぞ?まぁ、生まなければ良かったと思った事は、幾度となくあったがな」
カルネ「ッ!貴様っ!!」
何の気兼ねもなく軽く鼻を鳴らしてそう告げる八雲に憤りを覚え、カルネが咄嗟に怪人態となって剣を構えながら八雲に切り掛かろうとする。が、それを幸助が左腕を制して止めさせた。
『ッ!幸助坊や……』
幸助「……八雲は俺達が引き受ける。お前とグランは零を止めろ。あくまで予想だが、まだあいつの理性は完全にイレイザーに呑まれてはいない筈だ。それに――」
―シュウゥゥ……ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアァァンッッッッッッ!!!!!!―
『……ッ!』
幸助が言葉を言い切る前に、突如けたたましいまでの爆発音が響き渡り、一同がその音が放たれた方へ振り返ると、其処には……
―シュウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッ…………―
『■■■■■■■■■■■■■■■■ァァァァァァァァァァッッッッッッ…………………!!!!!!!』
……アバドンイレイザーの正面から数キロメートル先までの地平と墓石が丸ごと消滅し、削られてしまっていたのである。恐らくアバドンイレイザーが放った何かの攻撃の威力なのだろう。最果てが視認出来ない彼方まで放たれたその威力にカルネは目を見開いて言葉を失い、幸助は目付きを鋭くさせて八雲を見据えながら口を開いた。
幸助「これ以上、零にこの世界を傷付けるような真似はさせるな……俺達の力でこの世界は再生出来たとしても、これ以上の破壊は、アイツ自身を傷付ける……」
グラン「……!」
書き換えられた雷牙の世界の改変は幸助達の力があればまだ何とか出来る。だが、その物語改変を行った零自身がこれ以上この世界を傷付け、事実を知れば……。幸助の言わんとしてる事を察し、カルネとグランは何かを思案するように顔を俯かせた後、互いに顔を見合わせて頷き合いアバドンイレイザーの下へと急いで向かっていったのだった。
八雲「……これは驚いた。まさか執行者である貴様が、世界改変を行った重罪人を救う手助けをするとは。どういう風の吹き回しだ?アレは既に世界の……いや、お前の断罪の対象のハズだが?」
幸助「……それもテメェの目的の一つなんだろう……仲間を、世界を、大勢の命を奪いイレイザーになった零を、俺の手で断罪させる……そうして零達の物語をテメェが望む悲劇に仕立て上げ、お前は傍観者を気取ってそれを愉しむ……胸糞の悪い、お前が考えそうな趣向だ。俺達をこの舞台の主演とほざいたのも、その為なんだろ……?」
八雲「……それもある……が、別にお前の手であの出来損ないを断罪せずとも、それはそれで俺は構わんのだよ。断罪の」
クラウン『?どういう意味です、それは……?』
友人である断罪の神の手によって断罪され、黒月零の物語を悲劇という形で終わらせる。だが、別にそれでなくても構わないと告げる八雲の言葉の意図が判らずクラウンがそう問い返すと、八雲は淡々とした口調で答える。
八雲「言ったハズだろう?俺がこの騒動を起こしたのは、お前達を呼び寄せる為でもある。仮にお前達があの出来損ないを救い出し、雷牙の世界を再生させようともそれはそれで構わない……俺にとって重要なのは、あの出来損ないに、物語改変と大量殺人を行ったという事実を確立させ大罪を着させること……それだけなんだよ」
シズク「――ッ?!まさかっ……!」
何かに気付いたかのようにハッとした様子でシズクが八雲を見据え、八雲は僅かに口元を歪めながら周囲の墓石達を指し……
八雲「奴が自らのその手で、自身の命より大事な仲間と、大勢の人間を手に掛け、世界を書き換えて、自らも化け物となった……今はイレイザーになって理性を失っているとは言え、その事実を、奴が都合よく覚えていないとでも思うか?」
『……ッ!』
零の手による雷牙の世界の改変、零のイレイザー化、それらも確かに八雲の目的ではあるが、彼にとっての一番の目的は『黒月零に、自身が行った大罪の記憶を根強く植え付けること』。それが八雲の今回の目的の根本であり、例え此処で零を救い出して雷牙の世界を元に戻そうとも、最早八雲にとってそんな事はさほど重要ではないのだ。
八雲「フェイト・T・ハラオウンを殺されたぐらいで復讐心で我を忘れ、キャンセラーの世界を破壊しようとした罪悪感を未だに引きずっているような奴だ……例えお前達が全てを元に戻したところで、あの出来損ないが自身の仲間達と多くの人間を手に掛けた事実は消えはしない。果たして奴は、その事実を許容し正気を保っていられるかどうか……さぞ面白い見物になると思わないか?」
椛「ッ……!」
八雲「いや、そもそもイレイザーは、全ての物語から存在を許されなくなった刻印の証だ……奴の存在が許されるのは、奴自身が書き換えたこの駄作の世界でのみだ。雷牙の物語を再構築すれば、奴は今度こそ存在を許されず全ての物語から追放され、お前達や、高町なのは達にも二度と会えなくなる。俺やカルネのように、ルールを破りさえすれば物語に侵入する事は可能だろうが……そうなると、何らかのイレギュラーが発生して物語が破綻するやもしれん……なにせ"俺達"やカルネの存在もあって、こちら側は既に許容範囲を越えているだろうからな」
幸助「……要するに、此処で零を人間に戻せたとしても、アイツを破滅に追い込む術は幾らでもあるって言いたいのか……」
八雲「フッ……何なら物語改変や大量殺人の事実を奴の記憶から消して、アレの中のイレイザーも取り除いて全てをなかった事にするか……?俺はソレでも構わんぞ?それはそれで、また別の計画に利用する事が出来るのだからな」
幸助「…………」
スッと目を細めて笑う八雲のその言葉を聞き、幸助達は八雲を睨み据える目付きを鋭くさせる。八雲は既に、零を破滅に追い込む為の計画を何重にも考えている。零が大罪を犯したという事実がある限り、これから先も八雲は容赦なく其処を突いて来るだろう。自分が臨む"悲劇"を見たいが為に。
幸助「―――犯した罪業は二度と消えはしない。死ぬまで背負い続けるしかない。それはイレイザーでなくとも同じ事だ……」
クラウン『…………』
幸助「経緯がどうであれ、零が赦されない罪を犯したのも確かに事実だ。だからこそ、奴にはその罪と向き合い、罪を償ってもらう。場合によっては、俺自らの手でアイツを断罪する事もやぶさかじゃねぇ……だがな――」
―ジャキッ!―
そう言って幸助は何処からかメモリアルブレイドを抜き取ると、ギラリと鋭く光る刃の切っ先を八雲に突き付けた。
幸助「―――アイツを断罪する前に、先ずは貴様が先だ……八雲……!」
八雲「……ほう……こんな大惨事を引き起こした張本人が貴様等の前で暴走しているというのに、奴より俺を優先すると?」
幸助「当然だろ……貴様のようなヤツがいる限り、この世界の住人や零のような犠牲者がまた増える事になる……それを分かっててみすみす見逃すほど、俺達は馬鹿じゃねぇのさ」
幸助のその言葉に続くかのように、シズクと椛がそれぞれ腰にベルトを装着し、クラウンも両手にナイフを装備して戦闘態勢に入る。そしてそれを目にした八雲は……
八雲「――成る程……倍加した今の俺の力が何処まで貴様等に通用するのか……それに、兼ねてから開発を進めていた"アレ"の実験……それを試すにはちょうどいいかもしれんな……」
幸助「……何?」
意味深な発言をする八雲に幸助が訝しげな表情で聞き返すが、八雲はそれに対し何も答えず無言のまま右手を上げて指を軽く鳴らすと、八雲の背後に歪みの壁が出現し其処から深紅の異形……雷牙の世界で零を追い詰めたヴリトライレイザーがゆっくりと姿を現した。
『―――なあに、八雲?話はもう終わったワケ?』
八雲「ああ……此処から先はお前の好きな殺し合いだ。存分に暴れるといい……ただし、断罪の神は俺が相手をする」
『そ?じゃあ他は貰ってもいいってワケね。……もうさっきみたいな加減はしないわよ』
そう言いながら炎を宿した左手を軽く振るい、オレンジ色の線を宙に描くヴリトライレイザーだが、そんな彼女を目にした椛は僅かに眉を吊り上げ八雲を睨んだ。
椛「私達も随分と嘗められた物なの。そんな三下に、私達の相手が勤まるとでも思っているの?」
八雲「これでもお前達の相手を出来る人選を選んだつもりだ。それに、お前達を纏めて相手にするとなると俺も加減が難しくなるからな……そうなるとこの世界を破壊するだけでなく、こうして貴様等と揃って再会した上に"コレ"の試作運転も出来なくなる」
そう言って八雲は幸助達を見据えながらコートの内に手を伸ばし、其処から一つのバックルのようなモノを取り出して腰に当てると、バックルの端からベルトが伸びて八雲の腰に装着されベルトとなり、そのベルトを目にした幸助達は驚愕の表情を浮かべた。何故なら……
幸助「それは、まさか……ゲートベルト?!」
八雲「いいや、これはゲートドライバーであってゲートドライバーではない……俺の記憶の底に根強く残っているある知識を元に、貴様が生前使っていたカオスの性能に俺なりに改良を加えた試作品。『真』に至る為の『NEO』だ」
『CHANGE UP!NEO CHAOS!』
八雲がそう呟くと共に電子音声が鳴り響き、八雲の姿がまばゆい光に包まれた。そして光が一瞬で収まると、八雲の外見が両肩、両腕、両足が鋭利な造形をした金のラインが走る禍々しい漆黒のボディに、鋭い赤い複眼。腰から黒いコートを靡かせるその姿は、時の神時代の天満幸助が変身したカオスに酷似していたのだった。
シズク「なっ……NEOカオス?!」
椛「ッ……!どういう事?わざわざ幸助君のカオスの偽物を作ったって事なのっ?」
幸助「……いや、違う……あのカオスはっ……」
クラウン『?幸助氏……?』
NEOカオス『――流石に技術者の貴様には分かるか……そう、このNEOカオスは貴様が以前に変身していたカオスのスペックや性能を遥かに上回っている以外、貴様が変身していたカオスとの相違点は一切存在しないのさ』
シズク「ッ?!相違点がないって……それって幸助のカオスと、同じって事!?」
八雲が変身してみせたカオスは、嘗ての幸助が変身していたカオスとはその性能差以外に相違点はない。衝撃的でもあり簡単には受け入れ難いその事実を聞かされ幸助以外の面々は驚愕の様子を浮かべるが、八雲が変身したカオス……『NEOカオス』は、自分のこめかみに人差し指を当てながら淡々と語り出した。
NEOカオス『実のところ、俺自身にもまだ詳しくは分かってはいない。だが、どうやら俺は貴様等のベルトの設計やその技術を記憶しているようでな……このNEOカオスも、その記憶と技術を元に俺の手で完成させた試作品の内の一つでもある』
幸助「……"試作品の内の一つ"、だと……?」
椛「まさか……そのベルト以外にも、私やシズクちゃんのベルトもっ?!」
NEOカオス『……ああ。このベルトと同時期にお前達のベルトを元にした新型機の開発も進めていた……だが、その途中で俺はある事実を知ってしまってな。残念ながらそれらのベルトの開発は断念し、このNEOカオスのベルトに改良を加えて実用化させたのさ』
クラウン『?ある事実……?もしや……』
八雲がゲートドライバー以外のベルトの開発を断念した理由。その理由に何か思い当たる節があるのか、顎に手を添えるクラウンがハッと顔を上げると、NEOカオスは腰のバックルに触れながら話を続けた。
NEOカオス『このベルトや貴様等のベルトの新型機を開発する事は俺にも可能のようだが……そのベルトの真価を完全に発揮するには、どうあっても貴様等が持つ"因子"が必要不可欠のようでな。例えベルト自体を完成させたとしても、それらが揃わなければベルトは真の意味で完成しない……そんなモノに労力を注ぐなど、単なる時間の無駄でしかない。だから完成間近だったこのベルトは予定を変更し、俺の力のリミッターとして完成させたのさ……要するに貴様のメモリーと同じという意味だよ、断罪の』
幸助「……大した自信じゃねえか。俺達相手に、自分の力を抑える余裕があるとはな」
NEOカオス『そうでもしなければ俺が"全力"を出せない事は、貴様がよく分かっているだろう……?これでもお前達との再会を密かに愉しみにしていたんだ。それなのに全力を出せないなど、そんなのは嘘だろ?』
幸助「……そうか。そっちがそう望むなら、こっちも容赦はしねぇ――」
力強くそう答えると、幸助は腰にメモリドライバーを装着しながら横目でカルネとグランを見る。あちらもアバドンイレイザーの暴走を止めようと奮闘している。ならばこちらも、八雲達があちら側に余計な介入をせぬよう止めるまでだと、NEOカオスとヴリトライレイザーを睨み据える。
幸助「―――貴様との因縁も、今度こそ此処でケリを付けさせてもらうっ……!」
『変身ッ!!』
『CHANGE UP!MEMORY!』
『GATE UP!』
『Mei-O Form!』
幸助とシズクと椛は一斉に変身を動作を行い、メモリー、ガイア、冥王に変身したのだった。そしてそれを横目にクラウンが先に先制を打つべく一歩前へ踏み出そうとするが、変身したメモリーがクラウンの肩を掴んで強引に引き戻しながらNEOカオスとヴリトライレイザーに目掛けて駆け出した。
クラウン『ッ?!幸助氏ッ!!』
メモリー『おおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!』
背中のマントを風で激しく揺らしながらNEOカオスとヴリトライレイザーに向かって突っ込み、メモリーは右手に握ったメモリアルブレイドを振りかざし二人に目掛けて飛び掛かろうと勢いよく跳躍した。が……
NEOカオス『――大地を揺らせ、ノーム……』
―ブオオォォッッ!!!!ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオォォンッッッッッッ!!!!!!―
メモリー『ッ?!ぬ、おっ?!』
―ガシャアアアァァンッッッッ!!!!!!―
ガイア『ッ!幸助ッ?!』
NEOカオスが静かにそう呟きながら見えない何かを掬い上げるように右手を軽く上げた瞬間、それに呼応するかのように突如メモリーの真下の大地が巨大な崖となって勢いよく迫り上がりメモリーと激突したのであった。
そして巨大な崖の上に押し上げられ滑るように倒れ込んでしまいながら咄嗟に身を起こすメモリーだが、NEOカオスとヴリトライレイザーが立つ大地までもが巨大な崖となって勢いよく浮上しメモリーが倒れる崖を軽々と越え、更にNEOカオス達の崖の上から紫色の雷光が降り注ぎメモリーに浴びせられた。
―バチィイイイイイイイイイイイイイイィッッ!!!!!!―
メモリー(グゥッ……?!この攻撃の感覚、ヴォルトの雷っ……?!それに大地を動かしているこの力は、ノームの……?!)
―……言ったハズだろう?このNEOカオスは貴様が以前変身していたカオスとの相違点はスペック以外存在しない。生前の貴様が手に入れた能力をも再現した上で改良を加え、こうして貴様が使役していた精霊共の力も行使出来るというワケだ―
メモリー『ッ……!チィッ!』
困惑するメモリーの疑問にわざわざ答えるかのように、メモリーの頭にNEOカオスからの念話が送られてきた。それを聞いて忌ま忌ましげに崖の上を睨み付けると、メモリーはその戯言ごと振り払うように全身に浴びせられる雷を打ち払いながらNEOカオスがいる崖の上を目指して勢いよく駆け出し、NEOカオスは崖の上からそれを見下ろしながら大地に向けて左手を伸ばし……
NEOカオス『吹き荒れろ、シルフの暴風……』
―ゴゴゴゴゴゴゴゴオォッッ……ビュゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオォォッッッッッッ!!!!!!!―
NEOカオスの言葉と共に、荒野の数ヶ所にて無数の墓石を破壊しながら暴力的な風が巻き起こって巨大な竜巻が複数発生した。それらは無数の墓石の破片をも取り込んで殺傷力が増しており、無数の竜巻はまるで個々に意思を持っているかのように、メモリー達に牙を剥いて襲い掛かっていくのであった。