仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―ビュウウゥゥゴオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!!―
ジークローバーWDD9『ッ?!な、何だ、この竜巻はッ?!』
NEOカオスがシルフの力で巻き起こした無数の竜巻。禍々しい精霊の力で発生したそれらは、メモリー達から離れた場所でアバドンイレイザーを食い止めようと奮闘するカルネとグランが変身したジークローバーの周りにも大量に発生し、カルネとジークローバーに牙を剥き襲い掛かっていた。
―バゴオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーオォオオンッッッッ!!!!!―
『グゥッ?!僕達を狙っている……?それにこの力は、精霊の……?!』
『■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!』
カルネとジークローバーを集中的に狙う無数の竜巻を二人が必死に避け続ける中、二人の頭上から突然獣のような雄叫びが響き渡った。その声に釣られて思わず二人が頭上を見上げると、其処には空高く上空に跳躍したアバドンイレイザーが両手の鋭い爪を振りかざしながら二人に目掛けて落下して来る姿があり、それを見た二人はすぐさまその場から跳び退いたが……
―ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーアンッッッッッ!!!!!!―
『ッ?!地面がッ!』
二人に目掛けて振り下ろされた両手はそのまま地面に叩き付けられ、一瞬で地盤が沈没し無数の瓦礫が宙に浮き上がったのだ。しかしカルネとジークローバーは崩れそうになったバランスを咄嗟に立て直して着地し、それぞれの剣にエネルギーを纏い素早く駆け出してアバドンイレイザーに斬り掛かっていくが、アバドンイレイザーは片足を上げて二人の剣の受け止めながら回転してカルネを殴り飛ばし、ジークローバーの剣撃と打ち合っていく。
―ガギイィッ!!ギィンッグガアァンッズガガガガガガガガガガガガガガガアァンッ!!!―
ジークローバーWDD9『クッ……!もう止めろ零ッ!!これ以上暴走すれば、お前はっ……!!』
『■■■■■■ァアアアッッッ!!!!』
―ドグオォオオオオッッッ!!!!―
ジークローバーWDD9『ウグアァァッ?!!』
『グラン坊やッ!!』
必死にそう呼び掛けるジークローバーの説得にも耳を傾けず、アバドンイレイザーはとてつもない馬鹿力の前蹴りでジークローバーを吹っ飛ばしてしまう。それを見たカルネもすぐにジークローバーを援護しようと背後からアバドンイレイザーに飛び掛かり剣を振りかざすが、アバドンイレイザーはまるで背中に目が付いているのかのように咄嗟に反応して振り向き様にソレを蹴りで払い退け、カルネの胴体に斬撃を叩き込んで後退りさせてしまう。
『ガアァッ!!グゥッ……零坊やっ、イレイザーの力に飲み込まれては駄目だッ!このままでは戻って来れなくなるぞッ!』
『■■■ァ……!!』
斬り刻まれた胸から白い煙を立たせながらも剣を構え直して諦めずに呼び掛けるカルネだが、アバドンイレイザーはただただ獣のような唸り声と共に白い吐息を吐きながらそんなカルネに迫り、両腕に不気味な黒い炎を纏わせて再びカルネに襲い掛かる。それに対してカルネも咄嗟に剣で捌いてどうにか凌ごうとするも、アバドンイレイザーは追撃の速度を更に速めていき、カルネの一瞬の隙を突いてその身体を貫こうとした。次の瞬間……
『Attack Function Cosmo Slash!』
ジークローバーWDD9『ハァアアアアアアアッ!!!!』
―ズバアァアアアアッッッッ!!!!!!―
『……!』
―ガギイィィッッッ!!!チュドオォオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオォォンッッッッッッ!!!!!―
『ッ?!コレは……!』
アバドンイレイザーの鋭爪がカルネの右胸を貫こうとしたその時、不意に響いた電子音声と共に先程吹っ飛ばされたジークローバーがアバドンイレイザーに向け背後から剣を振るい巨大な斬撃波を放ったのだった。
そしてそれにいち早く反応したアバドンイレイザーが振り向き様に突手を放って斬撃波と激突した瞬間に巨大な大爆発が巻き起こってアバドンイレイザーを飲み込み、その隙にジークローバーは素早くカルネの腕を掴んでその場から離れた。
『グラン坊や……!』
ジークローバーWDD9『一旦離れるぞッ!奴と俺達とのパワーの差がダンチ過ぎるッ!このまま打ち合い続ければこっちが――!』
このまま正面から戦い続けては何れ押されてしまうと冷静に分析し、アバドンイレイザーが足止めを受けている隙に一度カルネと共に離脱して作戦を立て直そうとするジークローバー。しかし……
―シュウゥゥッ……バシュウウゥゥッッッ!!!!!―
『『……ッ?!!―ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアァァンッッッッッッ!!!!!―ぐああああああああああああああああっっっ?!!!』』
アバドンイレイザーの姿が消えた爆炎の向こうから、音速を越える速度で一発の朱い光弾が放たれ、ソレは一瞬で二人に迫って直撃し再び巨大な爆発を起こしたのである。不意を突かれる形で直撃を受けてしまった二人はそのまま爆風で吹っ飛び、無数の墓石に激突しながら地面を滑る様に叩き付けられていき、ふらつきながら上体を起こして光弾が放たれてきた方に視線を向けると、其処には……
―シュウゥゥゥゥゥゥゥッ…………―
『■■■■■■■ァァァァァァァッ……!!!!』
轟々と燃え盛る赤い炎の中に佇む黒い悪魔……ジークローバーの必殺技を受けたハズのアバドンイレイザーの姿があった。しかしその姿は先程までと僅かに違い、身体が生々しかった肉の体からまるで西洋の鎧に、顔全体が甲冑を連想させるような仮面を身に付けた姿へ変貌していたのだ。
ジークローバーWDD9『な、なんだ……?姿が変わっているっ?!』
『肉体を変換させた……?いや……もしかしてあのイレイザーは、状況に応じて自分の外見を複数の姿形に使い分ける事が出来るのかっ?!』
予想外な特殊能力で自身の外見を変化させたアバドンイレイザーを見据え困惑と驚愕を露わにするカルネとジークローバーだが、甲冑姿に変身したアバドンイレイザーはそれに構わず何処からか赤黒い槍のような武器を取り出すと、二人に目掛けて地面を勢いよく蹴りながら再び襲い掛かっていくのだった。
◇◆◇
一方その頃、メモリー達はNEOカオスがノームの力を行使して地形を操り無数の巨大な岩山を作り上げられたせいで分散させられてしまっていた。だが四人は怯む事なく各自それぞれに動き出し、NEOカオスがいる一番巨大な岩山の上を目指そうとしていたが……
―ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッ!!!!!!ドゴオォオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオォォンッッッッッッッッ!!!!!!―
冥王『グウゥッ!ウゥアァッ!!』
クラウン『クッ?!椛嬢ッ!!』
NEOカオスがシルフの力で呼び起こし、更に墓石の破片を孕んだ無数の竜巻が、岩山の頂上を目指そうとするメモリー達を阻むように絶え間なく襲い掛かっていたのだった。道中で合流を果たしていたクラウンと冥王は四方八方から息遣いをする隙もなく襲い掛かる竜巻を必死に回避し続けるが、その余りの数の多さに避け切れずに冥王が直撃を喰らって吹き飛ばされてしまっていた。更に……
―バシュウゥゥッッ!!!ドッガアァアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアァンッッッッ!!!!!!―
ガイア『熱っ、クッ?!』
『何処を見ているのさァッ!!!』
また他の場所では、冥王達と同じように頂上を目指すガイアが竜巻の上に乗ったヴリトライレイザーが放つ広範囲の火炎放射に追われ、まるで蛇のように襲い掛かる炎を全力で回避した矢先に頭上から落下してきたヴリトライレイザーの踵落としを咄嗟に両腕で防御して受け止め、地面が大きく沈没してしまった。そして……
―ガギイイイイイイイィィィィィィィッッッ!!!!―
メモリー『チイィッ!!グッ、うおおおおおおおぉッ?!』
同じく単独で岩山の頂上を目指して険しい岩山を駆け登り続けるメモリーにも、上空から無数の竜巻が迫り襲い掛かっていた。
しかしメモリーも負けじとメモリアルブレイドの一刀でどうに無数の竜巻を打ち消しながらなんとか崖の上を駆け登るが、メモリーが駆ける足元の地盤が幾度の竜巻の激突によって崩壊してバランスを崩してしまい、その隙を突くように無数の鋭利な破片を孕んだ竜巻がメモリーを飲み込んでしまったのだった。
クラウン『クッ……ッ?!幸助氏ッ!!』
無数の竜巻を退けてた最中にその光景を偶然にも目の当たりにしたクラウンは思わずその場で足を止めてしまい、直ぐさまメモリーの救出に向かうべく走り出そうとする。しかし……
―ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……ドシャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーアァッッッッ!!!!―
クラウン『ッ?!―ズバババババババババババババババババッ!!!―グゥッ、ウゥアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!』
クラウンの足元が突如激しく震動し、直後にクラウンの真下の地中から別の竜巻が飛び出しクラウンを飲み込み吹っ飛ばしてしまったのだ。そして、無数の鋭利な破片の数々がクラウンの全身を突き刺しながらそのまま地上に思いっきり叩き付けてしまい、それを見た冥王が慌ててクラウンの傍へと駆け寄った。
冥王『クラウンッ!!』
―ピシッ、ピシィ……パラパラパラッ……―
アレン「―――ゥッ……ッ……幸助君ッ!!!」
―バシュウウゥッ!!!―
顔に被るイツワリの仮面の一部が皹割れて素顔が露わになりながら身体を起こし、クラウン……否、アレンは竜巻に囚われるメモリーに目掛けて左手から一筋の光りを放った。そして光りはまるで流星の如く竜巻を突き抜けてメモリーの下へ辿り着いた瞬間、円形状の透明なバリアに変化し竜巻と無数の破片の猛威からメモリーを守っていく。
メモリー『ッ?!これはっ……!』
―ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガアァッッッ!!!!!!!!!!―
だが、竜巻と無数の破片の脅威は止まらない。障壁に守護されるメモリーの真下から無数の破片達が構わず突き刺り続けていき、NEOクロノスがいる岩山の頂上にまで押し上げ、遂にそのまま岩山の頂上の上空まで辿り着いた瞬間……
―ビシイィィッッ……ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアァァンッッッッッッ!!!!!―
NEOカオス『……ほう』
冥王『?!幸助君ッ!!』
アレン「ッ!椛ちゃんっ!貴女一人ではっ、グッ……!!」
無数の破片が痛々しく突き刺さったバリアが遂に限界を迎えてしまい、メモリーを内側に抱えたまま大爆発を巻き起こしてしまったのだった。その様子を遥か地上から目にした冥王は慌てて頂上を目指して駆け出していき、アレンも咄嗟にその後ろ姿を止めようとするも、先程のダメージが響き身体を抑えてうずくまってしまう。そして……
メモリー『グゥッ、ぅおああああああああああああッ!!!』
―ガシャッ!ガシャアァンッ!ズシャアァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!―
バリアの爆発に巻き込まれたメモリーは上空から岩山の頂上へと滑るように叩き付けられていくが、その姿は既に此処に辿り着くまでに受けた数々のダメージで痛ましい姿になっていた。激しい突風に揺れる背中のマントや、ボディの所々が泥や傷でボロボロと化しており、NEOカオスはそんなメモリーの姿を見てNEOカオスブレイドを右手に握り締めながら目を細めていく。
NEOカオス『そんな足枷にしかならない仮面と鎧に縛られた状態でまだ、俺と戦うつもりか……?』
メモリー『ッ……貴様には十分なハンデだろうッ!!』
そう怒号を飛ばすと共に、メモリアルブレイドを杖代わりにふらつきながら駆け出してNEOカオスに斬り掛かるメモリー。だがNEOカオスもメモリーが振りかざす斬撃をNEOカオスブレイドで次々と弾き返していき、メモリーが剣撃を払われた際に生まれた一瞬の隙を突く様に瞬時に冷気を纏わせた左手をメモリーに目掛けて振るい、それを見て直感的に危険を感じたメモリーは咄嗟に後方へと跳躍するも僅かに掠ったのか、左腕が指先から肘に掛けてまで凍り付き始めていた。
メモリー『ッ……!今度はセルシウスの氷か……!』
NEOカオス『……本来なら僅かに掠った程度でも、人間の全身を凍り付かせる程の冷気なのだが、やはり貴様が有する対魔力の前では無意味に等しいな……が―――』
―シュンッ!―
冥王『ハアアァッ!!!』
NEOカオスが淡々と何かを言い切ろうとした直前、メモリーを追い掛けて頂上へと辿り着いた冥王がNEOカオスの背後から頭上へ飛び出し、その両手に握り締めた薙刀をNEOカオスの首級に目掛けて躊躇なく振り下ろし斬り裂いた。が……
―…ブオォンッ!―
冥王『ッ?!消え――!』
NEOカオス『―――闇の精霊、シャドウの力を応用して生み出した"影"だ』
―ガシイィッ!!―
冥王『グッ?!ウアアァッ!!』
メモリー『?!椛ッ!!』
冥王が振り下ろした薙刀に斬り裂かれたNEOカオスが影の様に消え去り、それを見て動揺する冥王の背後にいつの間にか回り込んだNEOクロノスが冥王の後頭部を左手で掴んでその体を持ち上げてしまったのだ。そして身体を宙吊りにされジタバタともがく冥王の姿を見上げながら、NEOカオスは仮面の下で意味深な笑みを浮かべてメモリーに語り掛ける。
NEOカオス『懐かしい図だ……そういえばこの女の"最期"も、コレと似た状況だったか』
メモリー『ッ……!!』
NEOカオス『同じ悲劇の焼き直しなど俺の趣味ではないのだが、折角だ。再会を祝してもう一度再現するか、断罪の?……『あの時の光景』を』
メモリー『クッ!!』
その言葉と共に、メモリーの脳裏を一瞬だけある光景……生前、スバルの仇討ちの際になのはが八雲に殺害された時の惨劇が過ぎり、その記憶に弾かれるようにメモリーは冥王を助け出すべく凍り付けにされた左腕を無視してNEOカオスに突っ込もうとし……
―ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーオォォンッッッッ!!!!!!!―
メモリー『?!ウオオォッ?!』
その僅かに芽生えた焦りが油断へと繋がって反応が遅れたのか、メモリーの頭上から不意を突くようにまた別の竜巻が降り注ぎ、メモリーを襲って吹っ飛ばしてしまったのだった。
冥王『ッ?!こ、幸助君っ……!!』
―シュタッ―
『――フフッ』
その竜巻に乗って頂上へと上ってきたヴリトライレイザーがNEOカオスの隣に静かに降り立ち、それと入れ代わるようにメモリーが頂上から投げ出されてしまう中、先程メモリーを吹き飛ばした竜巻がメモリーを追尾し……
―ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガアァッッッッッッ!!!!!!―
メモリー『グ……グゥオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!』
落下するメモリーを竜巻が飲み込み、それと共に無数の鋭利な破片がメモリーの全身を容赦なく串刺しにしていったのだった。そしてメモリーは悲痛な叫び声を上げながら遥か地上へ落下して叩き付けられていってしまい、漸く動けるようになるまで回復したアレンがその轟音に気付いて顔を上げると、遥か岩山の頂上の崖端に佇むNEOカオスに後頭部を掴まれて宙吊りにされる冥王の姿が見えた。
アレン「ッ?!椛ちゃんッ!!」
冥王『うぅっ、うぁあああっ!』
NEOカオス『断罪には僅かに劣るが、貴様も大した対魔力を備えてるようだな……だが――』
―シュウゥゥゥゥゥゥゥッ……バシュウウゥゥッッッ!!!!!―
冥王『――?!!』
NEOカオスが其処で言葉を区切った次の瞬間、冥王の後頭部を掴む左腕から凄まじいまでの冷気が放出され、冥王の全身が白煙に覆われながら一瞬で凍り付けにされてしまったのだった。そして……
NEOカオス『――奴ほどの対魔力がなければ、この凍気には抗えんよ……』
―パッ……―
NEOカオスがそんな冥王の後頭部から手を離すと、凍り付けにされて身動きが取れない冥王は重力に逆らえずそのまま地上に目掛けゴロゴロと勢いよく岩山を転げ落ちていってしまうが、地上からその様子を目にしていたアレンは慌ててその場から飛び出し、地上に叩き付けられる寸前の冥王をギリギリ抱き留めていった。
―ガバァッ!!―
アレン「グッ!はぁ、はぁ……椛ちゃん、大丈夫ですかっ?」
冥王『――ぅ……ぐっ……これ、ぐらい……!』
冥王の身を案じてアレンが顔を覗き込むと、頂上から転げ落ちてきた際に岩場に激突して砕けてしまったのか、冥王の仮面部分が破損し素顔が露わになっている。しかもセルシウスの氷で全身を凍り付けにされ未だ身動きは取れず、頂上からその様子を見下ろしていたNEOカオスはすぐに思考を切り替えて左手の掌の上に一つの黒いエネルギー球を形成すると、左手を頭上に掲げて、暗雲に覆われた灰色の空にエネルギー球を打ち上げた。次の瞬間……
―バチッ、バチバチバチィッ…………ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオオォンッッッ…………!!!!!!!!―
アレン「ッ?!アレは……?!」
NEOカオスが打ち上げた黒いエネルギー球が暗雲の向こうに消えたその直後、巨大な火花が撒き散らったと共に空を埋め尽くす暗雲が徐々に退けられていき、雲が晴れた空の向こう側には異様な光景……高々と聳え立つ岩山の上空に、巨大な次元の裂け目が発生していたのであった。
『……随分デカイ目印ね。ちょっと目立ち過ぎじゃない?』
NEOカオス『"向こう側"に伝わるようにするなら、これぐらい大袈裟でなくては意味はない……ともかくこれで―――』
―ガギイィィッッ!!!―
何かを言いかけたNEOカオスの言葉を遮るように、背後で突如金属の激突音が響き渡った。だがNEOカオスは特に大した反応もないまま背後に振り返ると、其処にはNEOカオスに目掛けて降り抜いた拳をヴリトライレイザーの右足に遮られたライダー……ガイアの姿があり、ガイアは受け止められた拳を見て舌打ちしながら咄嗟に二人から距離を離した。
NEOカオス『残るはお前だけだな、天満シズク』
ガイア『ッ……一体何をしたの、八雲っ?これは一体っ……!』
NEOカオス『大した事は何もしていないさ。ただ、俺の仕事の"最後の仕上げ"をしたまでだ』
ガイア『……?仕上げ?』
不可解なワードを口にするNEOカオスに怪訝な顔を浮かべるガイア。それに対してNEOカオスは無言のまま上空に発生した次元の裂け目を見上げると、淡々とした口調で続きを語り出す。
NEOカオス『もう少し分かりやすく説明するなら、あの裂け目は所謂"道標"という奴さ……今まで向こう側に追放されたある連中を、こちら側へ誘う為のな』
ガイア『ある連中って……ッ!まさかっ?!』
NEOカオスのその言葉で何かを察したのか、ガイアは目を見開き、NEOカオスはその反応に僅かに口元を歪めながら口を開いた。
NEOカオス『そう……"今まで追放されてきた無数のイレイザー"……あの裂け目は向こうに追いやられたその連中を、こちら側へ誘う為の出入り口なのさ。直に奴らもあの裂け目の存在に気付き、一度に此処を目指して押し寄せて来るだろうよ』
ガイア『そんな……分かっているの?!そんな事をすれば、一体どんな事になるか……!』
NEOカオス『今まで追放された全てのイレイザー共がこちら側へ侵入し、様々な世界に散らばっては自分勝手に都合のいい物語を書き換え始める……だろう?だからこそだ』
冷淡な声でそう答え、NEOカオスはガイアに再び目を向ける。
NEOカオス『あの出来損ないに書き換えられたこの世界は駄作以外の何物でもないが、此処がイレイザーの手で作られた世界である事に変わりはない……それだけでも利用価値はあるんだよ。この世界は既にメモリアルの管轄から切り離された物語であり、他のイレイザーにとってはこちら側へと戻って来れる、唯一の"抜け穴"でもあるからな。そうして奴らがこちら側で好き勝手に改変を繰り返し、他のイレイザーが活動しやすい環境にしてくれれば、残りの"クリエイト"達もこちら側へ来られるようになる……』
ガイア『ッ……それも貴方の目的の一つだったんだねっ……』
"クリエイト"……上級イレイザー達で構成され、八雲とシュレンもその一員として加入している組織の名だ。恐らく八雲は、向こう側にいる自分とシュレン以外の他のクリエイトの面々をこちらへ誘うという目的も含み、零をイレイザーに堕としたのだろう。
NEOカオス『俺の目的というよりは、クリエイトの目的に過ぎんさ。俺が命じられた役目を全て果たした以上、此処からどのような結果になろうと俺の知ったことではない。寧ろ―――』
チャキッと、NEOカオスが静かに身構えたNEOカオスブレイドの刃が妖しく輝き、刀身にジェネシックの姿が映し出される。
NEOカオス『―――此処からが俺個人の、本当の愉しみなんだ。今度は簡単に殺されてくれるなよ、破壊の女神……?』
ガイア(……?"今度"は……?)
拳を身構えながらNEOカオスの言い回しに違和感を感じるガイアだが、思考に浸らせる余裕など与えられはしなかった。口火を切るようにヴリトライレイザーが両腕に火炎を纏いながらガイアに飛び掛かって拳を飛ばし、ガイアが咄嗟に身を屈めそれを回避した直後にNEOカオスの剣がガイアに襲い掛かったのであった。