仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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雷牙の世界
第二十※章/〃牙ノせ界⑫(前ぺ#)


 

 

―雷〆の世かイ・某所―

 

 

―……ブオォォォォォォォォォォォォォオッ―

 

 

―――雷牙の世界のクラナガンのとある建物の屋上。町中のあちこちにて激戦が繰り広げられてる中、其処に突如歪みの壁が出現し、歪みの向こう側から一人の青年……アタッシュケースを手に持った大輝が姿を現した。

 

 

大輝「――少々遅れて来て正解だったようだね。お陰で世界が破壊される余波に巻き込まれずに済んだようだし、"彼女"の力で雷牙の物語も無事に再構築されたようだけど……」

 

 

スッと、大輝は僅かに目を細めて街を見渡していき、小さく溜息して空を見上げていく。

 

 

大輝(……後の戦いや障害の為に必要な力とは言え、果たして今の君にこの業を背負い、乗り越えられるかどうか……出来なければ、待ってるのは"最悪の結末"だけだぞ、零?)

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

―シュウゥウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーッッッッッ…………バシュウゥゥンッッッ!!!!―

 

 

グラン「―――ウァアアッ?!」

 

 

カルネ「グォアアッ!!」

 

 

同じ頃、雷牙の世界が崩壊する寸前に幸助達と八雲が対峙していた高層ビルの屋上では、屋上の真上に突如純白の光が出現して弾け、其処から変身が解除されて元の姿に戻った幸助達と八雲が吹っ飛ばされるように姿を現したのだった。だが余りにも突然だったせいか、グランとカルネは上手く着地が出来ずにふらついて膝を付くが、幸助達とクラウンとメモリーBP、八雲は着地を成功させながら互いに距離を離し、周囲の風景を見回していく。

 

 

グラン「グッ……ッ……!な、何だっ?何が起きたんだ、一体っ……?!」

 

 

カルネ「ッ……確かあの時、光に飲み込まれて、それから…………ッ?!」

 

 

間近であの光に巻き込まれた事で目をやられたのか、暗転を繰り返す視界が漸く回復したカルネとグランは目の前に広がる光景を見て驚愕した。一同の目に映るのは、イレイザーとなった零によって破壊された筈の雷牙の世界の町並み。先程まで自分達が八雲等と激闘を繰り広げた灰色の荒野ではなく、塗り変えられ消滅してしまった筈の世界を目にした二人は我が目を疑い、忙しなく周りを見渡していくと、其処には……

 

 

 

 

 

―ドッガァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!―

 

 

シルベルヴィント『―――どうしたんだい風間紫苑ッ?!仲間をやられた途端に弱気になったかァッ?!』

 

 

ディケイド(紫苑)『クッ、このっ……!!』

 

 

 

 

 

―バチィイイイイイイイイイイイイイッ!!!!―

 

 

『逃がすかっ……!ロストォオオッ!!!』

 

 

ロスト『―――ッ!!!』

 

 

 

 

 

……この雷牙の世界と共に、イレイザー化した零の力によって有象無象の墓石となってしまったハズの彼の仲間達と敵対する者達……紫苑達一行が変身するディケイド達とインスペクター&センチュリオの大群、そしてイザナギディスペアに変貌しロストを徐々に追い詰めていくフェイトの姿が見え、先程まで起きていたハズの異常に気付かぬまま世界が破壊される前と同様に戦い続ける姿があったのだった。

 

 

グラン「こ、ここはっ……雷牙の世界っ?!元に戻ったのかっ?!だが、どうやってっ……?」

 

 

本来ならば、零を止めてから幸助達の手によって修復される筈だった雷牙の世界の町並みを見回して動揺を浮かべるグラン。そして、八雲も無言のまま視線だけを動かし周囲の状況を確認した後、此処から見える遥か遠くの建物……零達が戦っていたビルの屋上を見つめていく。

 

 

八雲「――愚かな女だとはつくづく思ってはいたが、まさか此処までとはな……魂だけの存在でありながら自身から進んでイレイザーになるとは……亡霊風情が、健気な事だ」

 

 

カルネ「ッ!魂だけの存在……亡霊……なら、やはりあのイレイザーは……!」

 

 

忌ま忌ましげでありながら何処か感心も含んだ口調でそう呟く八雲の言葉で何か確信を深めたのか、カルネは八雲の視線を追っていく中、幸助は僅かながら悔いるような様子でボソリと口を開いた。

 

 

幸助「再生の巫女、"リィル・アルテスタ"……先代の再生の因子の持ち主か……」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―高層ビル・屋上―

 

 

そしてその一方。零とヴリトライレイザー達が戦っていたこの高層ビルの屋上もまた、零により消え去ったハズのガリュウ達が世界が崩壊する前と寸分違わぬ姿のまま立ち並ぶ姿があった。だが、まるで全てが同じと言うワケでもなく、其処にいたハズなのに姿が見られない人物も見受けられる。ガリュウ達を従えていたヴリトライレイザー、そして……

 

 

 

 

 

―……ガシャンッ!!―

 

 

『―――ッ……ハァッ……ハァッ……ハァッ……ハァッ……!』

 

 

 

 

 

……彼女達がボロ雑巾の様に痛め付けていた零の姿が何処にもなく、代わりに、フェンスに寄り掛かりながら苦しげに肩で呼吸を繰り返す女神型のイレイザーの姿が其処にはあったのだ。

 

 

センチュリオ『――黒月零が……消えた……?』

 

 

センチュリオ『あの怪人は、一体……?それに、彼女は……?』

 

 

対してセンチュリオ達は、幸助達や八雲達と違い自分達と共に雷牙の世界を塗り替えられていたという先程の異常事態を認知しておらず、まるで零と入れ代わるように目の前に現れた正体不明の女神型のイレイザーの登場に困惑し、更に自分達と一緒だったハズのヴリトライレイザーの姿がいつの間にか消えている事に気付き、何が起きているのか理解が追い付けずにいた。そんな時……

 

 

 

 

 

 

―シュウゥゥゥゥゥッ……バシュウゥンッッ!!!―

 

 

『――――見付けたよォッ、この亡霊がァアアアアアアアアアッ!!!!』

 

 

『……ッ?!クッ!!』

 

 

―バゴォオオオオオオオオオオオオンッ!!!!―

 

 

 

 

突如高層ビルの屋上の上空に目眩い光が出現し、其処から一体の異形……幸助達と八雲よりも遅く帰還したヴリトライレイザーが上空から猛スピードで急降下しながら現れ、拳を振り上げて女神型のイレイザーに襲い掛かった。

 

 

そしてそれに気付いた女神型のイレイザーも慌てて地面を転がってヴリトライレイザーの襲撃を避けると、ヴリトライレイザーの拳は女神型のイレイザーが寄り掛かっていたフェンスを木っ端微塵に粉砕してしまった。

 

 

『チィッ!相変わらず子猿みたいにすばしっこい奴ね……"リィル"……!』

 

 

『ッ……シュレンさん……どうしてこんなっ……何で貴女がイレイザーにっ……!』

 

 

片膝を着き、必死に乱れる呼吸を整えようとしながら、彼女を知ってるような口振りでヴリトライレイザーにそう問い掛ける女神型のイレイザー……"リィル"。

 

 

だがそんなリィルに対してヴリトライレイザーは容赦なく拳を振りかざして追撃していき、遂に女神型のイレイザーの頭を捉えるも、女神型のイレイザーは咄嗟に障壁を張ってソレを受け止めた。

 

 

『ハッ、なんで?どうしてですって……?決まってんでしょ?アンタたち"姉妹"を見返す為よォッ!!』

 

 

―ドゴォオオンッ!!!―

 

 

『ッ、ウァアアッ!!』

 

 

怒号と共に障壁に捩り込む拳に業火を纏い、リィルが展開する障壁を粉砕し破壊してしまうヴリトライレイザー。そしてリィルもそのままノーバウンドで吹き飛ばされてフェンスに思い切り叩き付けられてしまい、ヴリトライレイザーはそんなリィルへと歩み寄りながら淡々と語り掛ける。

 

 

『終極の因子と再生の因子を持って産まれてきた姉妹……!片や村一番の天才剣士、もう片方は再生の神の神託を受けた再生の巫女……!そんなアンタ達がずっっと妬ましかったのよ……!特にアンタの姉にはねぇッ!』

 

 

『ッ……お姉ちゃん、がっ……?』

 

 

『そうよッ!!私がどんなに努力しても、すぐにまた私を突き放して軽々と先へと進んでいくあの才能もッ!!初恋の人を簡単に奪い去っていったあの美貌もッ!!私が求めても手に入らない何もかもを涼しい顔で全て持っていくあの女も、アイツに鬱陶しくべたつくアンタも憎らしかったッ!!だからこうして手に入れたッ!!アンタ達を超える為に、全ての物語を探しても存在しない、このイレイザーの力をねェッ!!』

 

 

ゴウゥッ!!と、そう言いながら火炎を纏った両腕を振り回してリィルに何度も執拗に殴り掛かるヴリトライレイザー。そんな彼女の言葉にリィルも障壁を張る余裕もなくひたすら避け続けるが、ヴリトライレイザーの踵落としを両手で受け止めて片膝を着いてしまう。

 

 

『ッ……!だからってっ、こんなっ……こんな事が許される筈がないよ!!零を苦しめる為だけに私のクローンを作って!!生まれたばかりのあの子の心を故意に歪めて!!それどころか、零や零の大切なあの子達の心も弄んで!!貴女達にそんな権利がある訳がない!!そんな事も分からないまでに堕ちたと言うの?!』

 

 

『権利ィ?死人の分際で、何を上から物を言ってんのよ?アンタはもうとっくに死んでんだろう?だったらいつまでも未練がましく昔の男に引っ付いてないで、でしゃばらずにあの世に引っ込んでろよォオオッ!!!』

 

 

―ドグォオオッ!!!―

 

 

『グゥウッ!!?』

 

 

リィルの言葉を嘲笑と共に切り捨てながら、リィルの胸を蹴り飛ばす。そして、ヴリトライレイザーは地を転がるリィルに目掛け飛び掛かり再びキックを打ち込もうとするが……

 

 

『ッ……アルテスタッ!!』

 

 

―ガギィイイイイイイイイイイイインッ!!!―

 

 

『ッ?!なっ……?』

 

 

リィルは咄嗟に態勢を立て直しながら、何処からか零のデバイス……アルティを取り出して掲げ、なんと、機能が停止しているハズのアルティがブレード形態に変形しヴリトライレイザーの足を受け止めたのだった。

 

 

―ギギッ、ギギギギィイッ……!!!―

 

 

『AIも無しに、デバイスを?……ああ……そういえばそのなまくら、AIは後付けで、剣とかの大部分は元々アンタのものだっけ?ならあのクズより使いこなせるのは当然なのか。けど……』

 

 

『ッ……!ヤァアッ!!』

 

 

そう語るヴリトライレイザーの言葉を遮る様に、アルティでヴリトライレイザーの足を押し退けながら間髪入れず斬り掛かるリィル。だが、ヴリトライレイザーはリィルが振るうアルティの刃を首を僅かに動かすだけで安易く回避していき、リィルの手を掴んで背後に回り込みながらリィルの膝裏を蹴り付けて跪かせてしまう。

 

 

『ァグッ!ゥッ……!』

 

 

『……あの女ならともかく、剣術で一度も私に勝てたことがないアンタが敵う筈ないでしょ?加えて、あのクズと一緒にイレイザーになったばかりで、その身体も使い慣れてなくイレイザーの力を完全に発揮し切れない……そら、勝ち目なんてある筈ないわよねぇ?』

 

 

―ボシュウゥウウウッ!!―

 

 

膝を着くリィルを見下ろしながら冷淡にそう言い放ち、ヴリトライレイザーは掌から何かを形作るように炎を勢いよく放出すると、炎が弾けるように消え去り、その中から一本の得物……禍々しい形状の紅蓮の魔剣が現れ、ソレを手にし刃の切っ先をリィルに突き付けた。

 

 

『私達に必要なのは、その出来損ないと、ソイツの中のイレイザーだけ。アンタはいらないのよ……だから今度こそ、私の手で殺してあげるッ!!』

 

 

―ブォオオオッッ!!!―

 

 

『クッ……!!!』

 

 

嬉々としたその口調と共に、リィルの後頭部に目掛け一切の躊躇なく突き出される紅蓮の魔剣。その迫り来る凶刃を目にしたリィルは思わず顔を逸らし、次の瞬間に訪れる激痛に備えて唇を噛み締めた。が……

 

 

 

 

 

 

 

 

―シュンッ……ガギィイイイイイイイイイイイイイイイイインッッッッ!!!!!―

 

 

『―――ッ?!!何っ?!―ドゴォオオオオッ!!―ガッ……?!!』

 

 

 

 

 

 

リィルの後頭部をヴリトライレイザーの凶刃が貫こうとしたその時、突如リィルとヴリトライレイザーの間を何者かが目にも留まらぬ速さで駆け抜けながら魔剣を弾き、更にヴリトライレイザーの頭部を蹴り飛ばしリィルから引き離したのであった。

 

 

その突然の展開にヴリトライレイザーも混乱しながらも咄嗟に態勢を立て直して距離を作り、リィルの方に振り返ると、彼女を守るように立ち塞がる一人の人物を目にしてその表情がみるみる内に歪んでいく。何故なら……

 

 

 

 

 

 

『――――お姉……ちゃん…………?』

 

 

 

 

 

 

ユリカ「………………」

 

 

 

 

 

 

『ユリカ……ユリカ・アルテスタッッッ……!!!!』

 

 

 

 

 

 

黄金の剣を振り上げ、鋭い眼光でヴリトライレイザーを射ぬく一人の薄紫色の髪の女性。それはリィルの姉であり、ヴリトライレイザーにとっては長年の怨敵である人物……ユリカ・アルテスタだったのだから。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―バチバチィイッ!!ズドォオオオオオオオオオオオオオオンッッッ!!!!―

 

 

ロスト『―――ッッッ!!!!』

 

 

その頃、ユリカとヴリトライレイザーが対峙する高層ビルのすぐ真下の戦場では、迅雷の如く速さで動きを掴ませないイザナギディスペアの猛攻の前にロストも徐々に追い込まれボロボロになり、上空から飛来した回避不可能の雷撃をまともに受け片膝を着いてしまっていた。

 

 

―……チャキッ―

 

 

ロスト『……ッ……!』

 

 

『―――これで、詰めだ……ロスト……』

 

 

そんなロストの目の前に、イザナギディスペアが薙刀の切っ先を突き付けながら立ち塞がった。それを目にしたロストは全身から黒煙を立ち上らせつつも戦闘を続行すべく立ち上がろうとするが、戦闘のダメージが想像以上に響いているのか上手く動けずにおり、イザナギディスペアはそんなロストに向け淡々とした声で語り掛ける。

 

 

『貴方が何者かは知らないし、個人的な恨みもない。もしかしたら貴方も、クアットロ達に利用されているだけなのかもしれないけど……それでも……』

 

 

カタカタと、僅かにだが、薙刀を握り締めるイザナギディスペアの手が震えてるように見える。自分の意志で、初めて誰かの命を奪い手に掛けるという恐怖に見舞われているのか。だが、脳裏にルーテシアや彼女を慕うエリオやキャロ、クアットロの策略により、ルーテシアを犠牲にすることで再び破壊者に堕とされようとしている零の顔が過ぎり……

 

 

『それでも……ルーテシアや……零達を守る為なら……私はっ……!!』

 

 

―ブォオオッ!!!―

 

 

ロスト『ッ……!』

 

 

最早迷いはすまいと、手の震えを振り切るように強く両手で握り締めた薙刀を大きく頭上に振り上げ、一気にロストの脳天に目掛けて振り下ろすイザナギディスペア。それに対してロストもただではやられまいと、残された力を振り絞り右手の槍をイザナギディスペアに向かって突き出した。が……

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――成る程。彼等の心を守りたいと言う貴女の気持ちとその覚悟は、痛いほど伝わりました。しかし……』

 

 

―ガギイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイッ!!!!―

 

 

『―――えっ……?』

 

 

ロスト『……?!』

 

 

 

 

 

 

ビル街に甲高く響き渡る、鉄と鉄が激突し合う金属音。だが、それは二人の得物がどちらかに突き刺さって起きた物ではなく、両者は目の前の光景を見て唖然とした様子を浮かべていた。何故なら……

 

 

 

 

 

 

プレシア?「―――だからと言って、貴女がその手を汚す必要なんてない筈よ。フェイト?」

 

 

クラウン『ええ。こんな事をしても、誰も浮かばれはしません……零氏達は勿論、貴女自身も』

 

 

『ク、クラウン……?それに、か、母、さん……?!』

 

 

 

 

 

イザナギディスペアが振り下ろした薙刀は、ピエロのライダー……幸助達と別れて彼女達の戦いを食い止めに来たクラウンにより指と指の間に挟んで受け止められ、ロストが突き出した槍はイザナギディスペアが良く知る女性……フェイトとアリシアの母親である"プレシア・テスタロッサ"が障壁を展開して防ぎながら突然現れたからである。更に……

 

 

「―――まっ、そういった間違いを犯させないと言うのも、ある意味じゃ僕達の役目でもあるけどね」

 

 

―ジャラァアアアアアッ!ガシィイッ!―

 

 

ロスト『―――ッ!!?』

 

 

何処からか聞こえたそんな声と共に、ロストの背後の地面から突如無数の鎖が伸びてロストを拘束したのである。その光景を目にしたイザナギディスペアは更に驚愕し、声が聞こえた方に振り返ると、其処には路地裏へと繋がる曲がり角からゆっくりと二人の男女……零の平行世界の友人である輝昌紲那の仲間の"エンド"と"黄昏華"が姿を現したのだった。

 

 

『エ、エンドに黄昏華?!じゃ、じゃあ貴方は、紲那の世界の私の……?』

 

 

プレシア(紲那)「……そう。この雷牙の世界で、貴方達の身に起きた騒動を知って駆け付けたの……彼等を手助けすると同時に、貴方を止める為に、ね」

 

 

『……え……?』

 

 

そう言いながらロストの槍を受け止めていた障壁を消し、イザナギディスペアを見つめるプレシア(紲那)のその言葉に怪訝な声を漏らしてしまうイザナギディスペア。そんな彼女に対し、エンドが黄昏華と共にプレシア(紲那)の隣に立ち並び語り掛けた。

 

 

エンド「フェイト……君の今のその姿……自分の目を凝らしてよく見てみるんだ。それを見て何も感じないかい?そんな姿になってまで、さっきの君が一体何をしようとしてたのか、その意味を本当に分かっているのか?」

 

 

『ッ!……そ、それはっ……』

 

 

エンドのその言葉を前に、イザナギディスペアは言葉を詰まらせて思わず後退りしながら、彼に言われるがまま自分の左手を静かに見下ろしていく。其処に映るのは、それだけで人を殺せてしまいそうなほどに鋭く尖った凶爪を生やした醜い異形の手。ロストを倒せねばならないという使命感に囚われるばかり、目を逸らしていた今の自分の身体を改めて見つめ息を拒む彼女に対し、クラウンは右手を伸ばしていく。

 

 

クラウン『フェイト嬢……今からでもまだ遅くはありません。変身を解き、そのバックルをこちらに渡して下さい』

 

 

『ッ……けど……それでも私はやらないといけないのッ!!私のせいでこんな事になってっ、零も……だから私がっ……!!』

 

 

エンド「だとしてもだっ!こんな方法で償いをした所で、君の望む結果には決してなりはしないっ!ましてやあの男の事だ、君がそうやって苦しんでいる事すらもただ愉しんでいるだけに違いないんだぞっ!」

 

 

『……えっ……?貴方達……あの男の事を知ってるの……?』

 

 

このバックルを渡したあの男の事を知っているような口ぶりのエンドにそう聞き返すと、エンドの代わりにクラウンが答える。

 

 

クラウン『フェイト嬢……零氏は今、貴方を止めようと決起し、それをある人物の手によって阻まれ窮地に追いやられています……』

 

 

『?!れ、零が……?!』

 

 

クラウンにそう言われ、イザナギディスペアは其処で漸くハッとなり慌てて周囲を見回していく。ロストを倒す事に気を取られ気づけなかったが、確かに、先程まで自分を必死に呼び止めていた筈の零がいつの間にか消えてしまってる。今になって漸くその事を知ったイザナギディスペアが動揺する中、プレシア(紲那)が真剣な眼差しで再び口を開く。

 

 

プレシア(紲那)「そして、彼を追い詰めるように仕向けた全ての首謀者は、貴方を誑かして、そのバックルを貴女に渡した男……彼の父親、黒月八雲なのよ」

 

 

『ッ!!!?父親、って……あの男が……零の、お父さんっ……?』

 

 

プレシア(紲那)の口から語られた衝撃の事実を聞かされ、イザナギディスペアは驚愕の余り口を抑え言葉を失ってしまう。あの土手で、零を破壊者と呼んで危険視するばかりか、雷達との間に溝を作ってこの世界の管理局にディケイドの存在を警戒させるように仕立て上げ、更に自分にロストを倒すようにこのバックルを渡した男が零の父親。そう聞かされ、イザナギディスペアは力無く首を横に振っていく。

 

 

『ど、どうして……?どういう事なの?何で零のお父さんが、そんなっ……だ、だって、血の繋がった実の父親でしょっ?!親子なんでしょっ?!なのに何で、こんなっ……!!』

 

 

黄昏華「それが、黒月八雲という男なのですわ……。あの男は、零様を実の息子として見てない所か、零様を産むべきではなかった、出来損ないと憎んで蔑み、捨て去ったのです……そしてその果てに、零様は貴女達の世界に流れ着き、漸く平穏の日々を手に入れたのですわ」

 

 

エンド「……けど、そんな彼の平穏すらも、あの男は自身の欲求の為に平気な顔で打ち砕こうとしてるんだ……君を誑かし、ロストを君に手に掛けるように仕向けて後戻りが出来なくさせ、零君を更に追い詰め苦しませる為にね……」

 

 

『…………そ……そん、な…………』

 

 

次々と彼等の口から聞かされる衝撃的な事実の前に、イザナギディスペアは頭で完全に理解するよりも前にとてつもない眩暈に襲われ立ちくらみを覚えた。

 

 

今回の件を仕組んだのは零の実父で、あの男は自身の息子を苦しめる為に自分をもその計画の一部に組み入れた。

 

 

知らず知らずの内にそんな計画に利用されていたのだという事実にもショックを隠せないが、何よりも辛いのは、零が長年に掛け知りたがっていた筈の実の親が、彼を憎悪し、産むべきではなかったと蔑み捨てられてたのだという事実だった。

 

 

まだ元の世界にいた頃、もし本当の親に会えたならと、そんな話を度々彼としていた記憶がふと蘇る。

 

 

その時に、零が興味がなさそうな素振りしながらも、何処となく期待を滲ませる顔を浮かべていたのを今でも鮮明に思い出せる。

 

 

……なのに、そんな彼とは対照的に、彼の実の父親は零に対しての愛情などなく、雷達に彼を危険分子だと認識させて対立を煽り、今もこうして自分をも利用し零を追い詰めようとしてるのだと。

 

 

そんな救いのない話、何かの間違いであって欲しい。そんな淡い希望を求めてクラウン達に顔を向ければ、プレシア(紲那)と視線がぶつかり、嘗ての自分が母親に拒絶された時の記憶を思い出して更に胸を締め付けられてしまう。

 

 

プレシア(紲那)「……フェイト?どうしたの……?」

 

 

『……なんでもない、です……そ、それで、私は一体どうすればっ……?』

 

 

エンド「取りあえず、君が今腰に巻いてるバックルをこちらに渡してくれればいい。その後、そのバックルは僕達の方で処分するから」

 

 

『……わ、分かりました……』

 

 

確かに、このバックルが自分達を陥れる為の物なら、もう自分には必要がない。そう考えながら、イザナギディスペアはエンドに言われた通り変身を解除すべく腰のバックルに手を伸ばしていく。が……

 

 

 

 

 

 

―ガシャンッ……ギュイィィィィィィィィィィィィィィィィィィイッ!!―

 

 

『……え?な、なに―――キャアァアアッ!!?』

 

 

―シュンッ、ガギィイイイイッ!!!―

 

 

ロスト『――ッ!!?』

 

 

プレシア(紲那)「?!なっ……?!」

 

 

エンド「フェイト君?!」

 

 

 

 

イザナギディスペアがバックルを取り外そうとした次の瞬間、突如バックルから不穏な起動音が響き渡り、直後にイザナギディスペアの姿が他の一同の視界から消え去ってロストへと斬り掛かったのだった。そしてイザナギディスペアはそのまま追撃の一撃をロストに加えようとするも、横からクラウンが間に割って入り薙刀の一撃を受け止めた。

 

 

クラウン『ッ!フェイト嬢っ!』

 

 

『ち、違っ……!違うっ!違うのっ!私じゃなくてっ、身体が勝手にっ―――!』

 

 

クラウン『えぇ分かっています!恐らくコレも……!』

 

 

エンド(黒月八雲っ……!何がなんでもフェイト君に彼女達を手に掛けさせるつもりか……!)

 

 

恐らくコレも、自分達のような障害の乱入やフェイトが戦意喪失した時に備えて八雲があらかじめ仕組んでおいた保険なのだろう。何処までも用意周到な八雲に対して一同が憤りを覚える中、イザナギディスペアはクラウンを強引に払い退けてロストに再び斬り掛かろうとするが、横合いから飛び出したプレシア(紲那)の魔力砲に阻まれ後方に後退した。

 

 

『グッ……!ダ、ダメっ、逃げて皆っ!このままじゃ、私っ……!』

 

 

クラウン『……いいえ。そういう訳にはいきませんよ、フェイト嬢』

 

 

黄昏華「こんな事で、貴女の手を汚させる訳にはいきませんわ。あの男の凶行も、貴女も、私達が止めてみせます!変身ッ!」

 

 

『ROSE TEIR!』

 

 

プレシア(紲那)「少しばかりの辛抱よ、フェイト……今助けるわ……!」

 

 

必ず助け出す。そんな強い決意と共にクラウンとプレシア(紲那)はそれぞれ得物を取り出し、黄昏華は腰に装着したドライバーに薔薇の意匠が施されたメモリを装填して『仮面ライダーRT(ローズテイル)』へと変身する。そしてイザナギディスペアもそんな三人を敵と認識したのか、フェイトの意志に反して薙刀を振り回し、稲妻を散らせて三人に目掛け斬り掛かっていったのだった。

 

 

エンド「――さて。彼等がフェイト君を止めてくれている間に、君をどうにかしないとね」

 

 

ロスト『――――』

 

 

そしてその一方で、エンドは自身の力により拘束されているロストと向き合っていく。ロストは未だに拘束を解こうと抵抗してるが、余程頑丈な拘束なのかビクともせず、エンドはそんなロストの額に右手を近づけていく。

 

 

エンド「先ずは、クアットロが君達に掛けた暗示を解かなければならないね。そうすれば、零君の負担も今よりかは―――」

 

 

 

 

 

 

「――ウェイクアップッ!」

 

 

『ハァアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!』

 

 

エンド「―――ッ?!何っ?!」

 

 

―チュドオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオンッ!!!!―

 

 

 

 

 

 

ロストに掛けられた暗示を解き、彼女達を解放する。それを試み様としたエンドの頭上から突如雄叫び声が響き渡り、エンドは驚愕を浮かべながらも直感のまま後ろへ飛び退くと、エンドが立っていた場所に何かが飛来して巨大な爆発が巻き起こった。

 

 

エンド「グッ……?!な、何だっ、今のは一体っ?!」

 

 

突然の襲撃。爆風に吹き飛ばされそうになる足を必死に踏み止まらせながら突然の事態にエンドが困惑する中、爆風が止み、何処からか吹き抜けた突風によって辺りを覆っていた黒煙が消え去り、目の前の視界がクリアになる。其処には……

 

 

 

 

 

 

―……バリィンッ!―

 

 

アース『―――なんてザマだ……。やはり、操り人形ではこの程度か……不甲斐ない』

 

 

ロスト『――――』

 

 

エンド「ッ?!君は、仮面ライダーアース……零君達の世界のトーレか……!」

 

 

 

 

 

 

黒煙が晴れた先に見えたのは、エンドの拘束を破壊してロストを解放する一人の仮面ライダー……魔界城の世界にて零達と敵対したナンバーズの一員、トーレが変身するアースだったのである。そして、突如現れたアースにエンドが動揺する中、アースはロストに視線を向けて淡々とした口調で口を開く。

 

 

アース『今回は裏方に専念しろとの指示だったが、そのザマでは戦闘続行は不可能だろう……貴様は離脱して、クアットロ達に合流しろ。コイツ等の相手は私が引き受けてやる……行け』

 

 

ロスト『――――(コクッ』

 

 

クイッと、顎で差しながらそう指示するアースの命令を受けて短く頷き、ロストは背後に歪みの壁を出現させてクアットロ達の下へと転移しようとする。

 

 

エンド「ッ!行かせはしないっ!!」

 

 

アース『それはこちらの台詞だっ!!』

 

 

アースキバット「ライド・インパルスブレード!」

 

 

―ガギィイイイイッ!!!―

 

 

それを目にしたエンドも、すぐさま先程と同じ無数の鎖を飛ばしロストの逃走を阻止しようとするが、それを阻むようにアースがバックルの止まり木に止まったアースキバットに深紫色のフエッスルを吹かせながら両腕両足の鎖を解き放ち、その下に隠された紫の装甲から放出される紫色の刃で無数の鎖を次々と叩き落としていき、その間にロストは歪みの壁を潜り抜け逃走してしまった。

 

 

エンド「クッ……トーレ、君は……!」

 

 

アース『……あんな人形とは言え、ドゥーエを失った今の我々にとっては貴重な戦力だ。やすやすと貴様等に明け渡してなるものか』

 

 

エンド「ッ!いい加減に目を覚ませっ!!こんな事を続けて何になるっ?!君達の世界のセッテだって、今も君を……!!」

 

 

アース『……敵対象の排除を開始する』

 

 

アースキバット「ライド・インパルス!」

 

 

エンド「トーレッ!!」

 

 

エンドが投げ掛ける言葉に聞く耳を持たず、アースはアースキバットの掛け声と共に目にも留まらぬ速さで駆け出してエンドへと斬り掛かり、エンドも悲痛な叫びと共に応戦していくのであった。

 

 

 

 

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