仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―クラナガン・市街地―
―ドゴォオオッ!!ドグオォッ!!バキィイイッ!!―
真也「ごはぁあっ!!ぐっ、うがぁああああっ!!」
恭平「真也ぁああッ!!!」
『アッハハハハッ!どうしたのかしら追跡者さ~ん?まだまだ始まったばかりよ?この程度で、貴方達に対して溜まりに溜まった私の鬱憤はまだまだ晴らせないわぁアッ!!』
雷牙『……ッ……』
そして同じ頃、デザイアドーパントの驚異的な能力により恭平を人質に取られ、変身解除にまで追い込まれてしまった真也はデザイアドーパントからの一方的な暴力で徹底的に痛め付けられていき、血へどを吐きながら地面を転がりはいずり回るという無様な姿を曝け出していた。
そんな光景を目の前で見せ付けられる雷牙達も思わず飛び出したくなる衝動に駆られるも、デザイアドーパントの能力、何より子供達を人質に取られてる以上は身動きが取れない。
なにも出来ない無力さと苛立ちに雷牙達が見舞われる中、デザイアドーパントは真也の胸に足底を叩き付け踏みにじり、なにかを思い出したように雷牙に視線を向けた。
『ああ……そういえばそろそろ決心が付きましたか、雷牙さん?サンダーレオンを引き渡すか、あの子達を見殺しにするか、いい加減決めてもらわないと、私も痺れを切らして何をするか分かりませんよぉ?』
雷牙『クッ……』
わざとらしく演技するかのように両手をヒラヒラさせ雷牙に挑発的な笑みを浮かべるデザイアドーパント。そんな彼女からの再通達に雷牙も仮面の奥で歯を噛み締め、左手に握るサンダーレオンのカードを見つめて葛藤し続け、デザイアドーパントはそんな未だに煮え切らない雷牙を見て小さく溜息を吐いた。
『そうですかー、決心するにはまだ見せしめが足りないと?なら――――いえ、そうですね……』
雷牙『ッ……!何だ、今度は一体何をっ……!!』
まさかまた子供達の誰かを利用する気なのか。思案をするように顎に手を添えるデザイアドーパントを睨みつけて雷牙達は警戒心を更に強めると、デザイアドーパントはニヤリと薄く笑い、
『―――良いですよ、雷牙さん?私もいい加減飽きて来ましたし、今はまだサンダーレオンを渡せないなら、また日を改めて別の日に再度交渉する……というのはどうでしょうか?』
黒獅子リオ『……何……?』
雷牙『日を改め……?どういう事だっ、何を企んでるっ?!』
『別にぃ?ただ私も余り暇ではないので、一度の交渉でこうダラダラ長引かせられたらこちらの予定も狂ってしまいますから、貴方に考える時間を与えるという意味でも日を改めようと言ってるんですよ。その方が貴方も決心が付くでしょ?なんなら、人質の子供達を解放させてあげても宜しいですよぉ?』
雷牙『なっ……』
交渉はまた日を改めて、更には人質の子供達も此処で解放する。そう言われ希望の光が射したような感覚に見舞われるも、いいやと、そんな甘い考えを否定するようにかぶりを振ってデザイアドーパントを見据えた。
雷牙『そんな上手い話は信用しないぞ……お前の事だ、代わりに何か俺達にそれ相応の条件を要求するつもりなんだろっ?』
『あら素敵!其処まで頭が平和ボケしてなくて安心しましたわ♪ええ、無論タダで人質を解放なんてしませんよ?彼等を解放し、私達にこの場から退いて欲しいなら……』
ドゴォオッ!と、デザイアドーパントは踏み付ける真也を雷牙の前まで躊躇なく蹴り飛ばし、彼を顎で差しながら……
『……其処の彼、貴方の手で始末してください。雷牙さん?』
雷牙『…………え…………?』
『なっ……?!!』
お前の手で、その無抵抗の重傷人の命を奪えと、何となしにそんな残酷な要求を提示したのであった。
『あっれぇ?何を驚いてるんです雷牙さぁん?彼等はさっきまで貴方達と戦っていた敵だったでしょ?何も躊躇する事なんてないじゃないですかぁ♪』
恭平「テメッ……!!!」
フェイト(別)「ふざけないでッ!!!人質を解放して欲しければ人を殺せなんて、そんな目茶苦茶な要求がっ……!!!」
『はぁああ?なに甘ったれたこと言ってるんですぅ?誰かを助けるって事は、誰かを助けないという事でもあるんですよ?幼い命か、さっきまで敵対していた敵の命か、天秤に掛けて此処まで上等且つ好条件の取り引きはそうそうないと思いますよぉ~?私みたいなぁ、わ・る・も・の、相手にはねえ♪』
雷牙『貴様ぁっ……!!!』
握り締めた拳から血を吹き出しそうだった。最早怒りを通り越して憎しみに近い激情を乗せた眼差しでデザイアドーパントに突き刺す雷牙。だが、そんな物で奴がどうとなるワケでもない。
『どうしたんですか?ほら、優柔不断もいい加減にしてさっさと決めちゃって下さいよ?……それとももう一度、誰かに犠牲になってもらわないと決められないのかしらぁ?』
女の子A「!!!?」
雷牙『ッ!!!止めろッ!!!…………ッ…………わ…………分かったっ…………!』
黒獅子リオ『ッ!雷ッ!!』
人質の女の子に人差し指を向けるデザイアドーパントからの脅迫に圧され、苦悩の末に了承してしまう雷牙。そしてその返答を聞き、デザイアドーパントは口元を歪めながらニッコリと雷牙に笑い掛けた。
『それじゃ、他の皆さんにも分かりやすく見えるように、そのご自慢の爪でバラバラにしっかり解体してくれますぅ?あ、他の皆さんは動いたり口を挟んだりしないで下さいねぇ?でないと、この子達の頭が一度に吹き飛ぶかもしれませんから♪』
スバル(別)「グッ……!!」
レオナ「雷さん……!!」
人質の為とは言え、自分達の目の前で雷が人を殺めようとしているのに、それを止める事も叶わない。デザイアドーパントへの怒りと悔しさのあまりFW陣の目尻にも涙が浮かび上がるが、雷牙はそんな彼等の視線を背中に受けて無言のまま徐にカードを取り出し、バックルへとセットする。
『ATTACKSPELL:RAIGA CLAW!』
何時になく無機質に聞こえる電子音声と共に、雷牙の両腕にライガクローが装備される。そして一歩、また一歩と歩みを進め、雷牙はゆっくりとボロボロの姿で倒れ伏す真也に歩み寄っていく。
真也「―――――…………ッ…………?ら…………ィ、ガ…………?」
雷牙『ッ…………』
少しの間だけ意識を失っていたのか、ビチャッ、と血を垂らしながら顔を上げて雷牙の見上げる真也を見て、雷牙は思わず躊躇し足を止め立ち止まってしまう。
『何をやってるんですか、雷牙さぁん?さぁ、子供達を助けたいならその男を殺しなさい!大丈夫、幼い命を守ろうとする貴方は紛れもなく『正義の味方』なのだから、なに一つ間違ってなんていませんよ!弱気を助け、強気をくじく!自信を持って!貴方は、世界を守る雷の牙なんだからァ♪』
雷牙『ッ!!!』
どの口で、と思わず吐き出しそうになった言葉を飲み込む。如何な理由があるとは言え、無抵抗の人間の命を奪うようなことが、何が世界を守る牙か。今正に、ソレに反する非道を行おうとしている自分の今の姿に吐き気すら覚えるというのにと、未だに苦悩と葛藤にもがき苦しむ雷牙のそんな姿をデザイアドーパントは鼓舞するが……
(…………なーんて。そんな上手い話があるワケないでしょうってねぇー)
その心の内では、やはり……否、それ以上に醜い感情でそんな雷牙の姿を嘲笑っていた。
(っていうか普通、いくら追い詰められてるからって私の言う事なんて信用しますかねぇ?……まぁ、それだけ精神的に追い込まれているというのなら仕方ないのかもしれませんけど)
そうさせてる私が言うのもアレなんですけどねー、と内心笑い、真也を見下ろす雷牙の行動を見届ける為に、ジッと目を離さず見つめ続ける。
(今の彼の精神は疲弊し、正しい判断が出来なくなっている。そんな状態のまま無抵抗の人間を手に掛けたとなれば、彼の心は不屈の精神を失い折れやすくなる……。我ながら中々エグイ策を思い付きますよねぇ、なんか可哀相だし、人質は約束通り解放してさしあげましょうか)
ゆっくりと、雷牙が右腕の爪を振り上げる。彼の背後のなのは(別)達が最早見ていられないと目を逸らし、そして……
(―――まあ、"何時約束を果たすか"までは決めてはいないですけどねぇ~)
悪意に満ちた笑みを口元に浮かべるデザイアドーパントに見届けられるように、雷牙の凶爪が真也を突き刺すべく振り下ろされた――――。
――――はずだった。
―ガシッ―
雷牙『…………え?』
振り下ろした筈の凶爪が、横から伸ばされた肌色の手に止められてしまった。
信じられない力で掴まれ、身じろぎ一つ出来ない。
目の前で起こった急展開に頭が追い付かず、呆然と雷牙が顔を上げた視線の先には……
ハル「―――ダメだよ。君のその手は、何かを守る為に振るわれるモノ。一方的に、何かを奪う為に振るうモノじゃないだろう?」
まるで、母が子を諭すような口調で語り掛け、小さく微笑む女性の姿があったのだった。