仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第二十一章/雷牙の世界⑬(前編)

 

―クラナガン・市街地―

 

 

デザイアドーパントからの残酷な取り引きによって、人質である子供達を救う為に雷牙が苦渋の末に真也の命を奪おうとしたその時、ソレを阻む様に突如現れた一人の女……小坂井ハルの乱入に、雷牙だけでなく他の一同までもが呆然と彼女の顔を見つめていた。

 

 

雷牙『ぁ…………アンタ、は…………?』

 

 

ハル「通りすがりの旅人ってところだよ。それよりもホラ、君もいい加減その爪を下げるんだ。こんな茶番、君が其処まで真摯に受け取る必要なんてないさ」

 

 

真也「…………せん…………ぱ、い…………?」

 

 

恭平「せ……先、輩……?ア、アンタ、小坂井先輩なのかっ?!!」

 

 

ハル「む?ああ。久しぶりだね、真也君に恭平君?出来ればこんな血生臭い所で再会なんてしたくなかったんだけど、まあ、積もる話はまた後でね?」

 

 

レジェンドルガに人質に取られる恭平、真也も意識が朦朧とする中で現れた女性が嘗て学生時代の自分達の先輩であり、自分達の世界で今まで行方不明になっていた小坂井ハル本人なのだと気付き驚愕を露わにするが、そんな二人の反応とは裏腹にハルは小さく手を上げながら呑気に軽く挨拶し、目の前へと歩み出てデザイアドーパントと対峙していく。

 

 

『……何ですか貴女は……一体何者です……?』

 

 

ハル「うん?何ですか、と聞かれたら、そうだね……まあ簡潔に言えば、其処の二人と、黒月零君、それから高町なのはさん達の学生時代の先輩ってところかな?名前は小坂井ハル。ただの一般人の、うん」

 

 

『……小坂井、ハル?』

 

 

その名前に聞き覚えがあるのか、デザイアドーパントは何かを思い出そうとするかのように顎に手を添えて思案に浸り、その名に該当する一人の人物の事を記憶から掘り当てた。

 

 

『ああ、そう……何やら聞き覚えがある響きだと思ったけど、聞いた事がありますわ。私達の世界で起きた滅びの原因とその解決策を探して、あっちこちの世界をコソコソ嗅ぎ回っているネズミがいるとか何とか』

 

 

ハル「恥ずかしながらね。まあ、一応それなりに知ってもらえているようで安堵したよ。どうも私は昔から説明下手というか、その辺の物語りが特に苦手でね?しかも自己紹介とかなると、私自身の説明とかいつも相手に伝わり辛く手こずってしまうんだ。いやー、やはりその辺の事を昔から福会長や書記とか周りの人達に任せて治そうとしてこなかったのが悪かったんだろうね、きっと」

 

 

『…………』

 

 

呑気に笑ってそう言いつつ頬を掻くハル。そんなこの緊迫した空間に似つかわしくない空気を漂わせるハルを見て雷牙達は呆気に取られてしまい、デザイアドーパントも思わずたじろいでいる。が、途端にハルは顔から笑みを消し、無表情のままデザイアドーパントを見据えて口を開いた。

 

 

ハル「ま、そんな与太話も適当に切り上げるとして……風の噂で聞いた話じゃ、君にはうちの後輩達が随分と世話になったようだね。零君然り、高町君達然り、そして今の彼らに然り、ね」

 

 

『……ふふっ。ええ、思えば私達は、貴女の後輩さん方とはどれも浅からぬ因縁がありますねぇ。で、それが何か?……もしや、彼らの仇討ちでもしに私達の前に現れたとか?』

 

 

ハル「いや?生憎私は其処まで酔狂な人間ではないよ」

 

 

一番可能性として有り得る問いを投げ掛けるデザイアドーパントだが、それに対してのハルの返答はNO。髪を揺らしてあっさり否定するように首を振るそんなハルを見てデザイアドーパントもいよいよ困惑で眉を潜める中、ハルは自身を指しながら話を続けた。

 

 

ハル「こんな事を自分から口にするのもアレだけど、私はどうも、昔から悪徳というモノに対して怒りや憎しみといった感情を沸き上がらせる事が一切と言っていい程なくてね。無意識と言うべきなのか、私が基本第三の視点からものを見る気があるせいか、其処にその人達なりの道理や言い分があるのなら、例え悪徳であろうとも特に私の方から言う事はない。君の非道に対してもね」

 

 

シグナム(別)「なっ……」

 

 

ヴィータ(別)「お前っ、何を言ってっ……!」

 

 

『ふぅん……それじゃあ何かしら?貴女は私達の行いを悪徳と知りながら、それを良しとして容認すると?』

 

 

ハル「君達が悪で、間違いや非道ではないのかと問われれば間違いなくそうだと断言出来るが、君達の立場からするなら合理的な判断ではあるんじゃないかい?君達の目指す目的を一度ならず二度までも邪魔した彼等に復讐の念を覚えるのも致し方ないとしても、それだけで此処まで彼等の弱点や行動を研究し尽くしてるのはある種の感心を覚えるよ」

 

 

『あら、お褒め頂いて大変恐縮ですわぁ。……けど、それなら余計に解せませんね。貴女の言い分なら、貴女が私達の邪魔をする理由はない筈でしょう?なのに、何故彼を止めたのかしら?』

 

 

悪徳に怒りや憎しみの念を抱く事もなく、相手なりの道理や言い分があるのならそれでも良いと語るなら、何故この場に横槍を入れるように邪魔しに出て来たのか。それが理解出来ず問い掛けるデザイアドーパントの質問に対し、ハルは片目を伏せながら首を竦ませた。

 

 

ハル「基本的にはそうなんだけどね。ただ、此処まで茶番が過ぎると流石に口を挟みたくもなるさ。だってそうだろう?余りにフェアじゃない。雷牙君が自身の信念に反してまでその子達を救おうとしているのに、君がそんなんじゃ白けると言うものさ。……観客からのブーイングが嫌なら、下らない屁理屈を捏ねて、守る気のない約束なんか最初からするもんじゃないよ?」

 

 

『ッ?!』

 

 

あっさりと、何の気無しにハルが軽い口調でそう口にしたのは、雷牙が真也を殺害した直後に実行に移そうとしていたデザイアドーパントの次の作戦。それを聞かされたデザイアドーパントは目を見開いて驚愕し、雷牙達の間にどよめきが広がっていく。

 

 

雷牙『守る気のない約束、だって……?どういう事だ、クアットロっ……貴様、騙していたのかッ?!』

 

 

『ッ……フッ、何を根拠にそんな―――』

 

 

ハル「えっ?寧ろ根拠しかないじゃないか?此処までの身勝手な暴挙をしておいて、彼から召喚獣を奪った後で雷牙君達をそのまま野放しにしておくなんて事、慎重且つ性悪な君がする筈ないだろ?どうせこの茶番も、雷牙君に多大な精神的ショックを与えて彼を弱らせる為の作戦なんだし……その方が彼の手からサンダーレオンを奪いやすくなるだろうし、ウンウン、実に良く考えられた策じゃないか♪」

 

 

『グッ……!!』

 

 

いやーアッパレアッパレ、と脳天気に笑いながら拍手までしてデザイアドーパントに賛辞を送るハルだが、そんな彼女とは対照に雷牙達は怒りを煮えたぎらせながらデザイアドーパントを睨みつけている。

 

 

当然だ。子供達の身を盾に約束を取り付けておきながら最初からソレを守る気もなく、半ば脅迫に近い形で雷牙に真也を殺せと強要させたのだから、その怒りも最もだろう。

 

 

その策を全て目の前でバラされたデザイアドーパントは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべ、未だ笑いながら拍手の音を繰り返すハルをキッと睨み据えた。

 

 

『あ、貴女っ、一体何なんですかっ?!私達のやり方を容認するような口ぶりをしておきながら、これじゃ言ってることとやってることが――!!』

 

 

ハル「あ、因みに一つ伝えなきゃいけない事があるんだけど」

 

 

矛盾しているじゃないっ!、と怒鳴り付けようとしたデザイアドーパントの声を遮るように、ハルが忘れ物を思い出した調子で笑顔を浮かべ、

 

 

ハル「私なんかの戯れ事に耳を貸してる間に"後ろががら空きになっているけど、大丈夫かい"?」

 

 

『…………は?』

 

 

そんな訳の分からない台詞を口にされ、理解が追い付かずデザイアドーパントが思わず口を開けてそう聞き返した。次の瞬間……

 

 

 

 

 

 

 

 

―ガギイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィインッ!!!!―

 

 

『『ギッ、ガ……!!!?グゥウウァアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!!?』』

 

 

―ドッガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!!!!―

 

 

『ッ?!なっ……?!』

 

 

雷牙『な、何だ?!』

 

 

 

 

デザイアドーパントの背後から突如悲痛な断末魔の声が響き渡り、雷牙達とデザイアドーパントはその声に驚愕してそちらの方へと思わず振り向いていく。すると其処には、子供達と恭平を人質に取られていた筈のレジェンドルガ達が次々と地に倒れ伏して爆発を起こしていく光景があり、それを目にしてハルを除く一同が目を見張る中、徐々に収まる爆発の向こうに人影が見えた。其処には……

 

 

 

 

 

―ビュンッ!―

 

 

「―――ったく、いきなりネタバレしてこっちに話を振るんじゃねーよっ。本気でヒビって慌てて飛び出すハメになったじゃねぇかっ!」

 

 

 

 

 

人質を捕らえていたレジェンドルガ達を一度に倒した張本人だと思われる素朴な青年の姿があり、その後ろには拘束を解かれた人質の子供達の姿もあった。

 

 

外見は黒いシャツとズボン、黒いフード付きのマントを身に纏った格好に、髪の一部に白髪が入った首まで長い茶髪の男。

 

 

そしてその手には、レジェンドルガ達を一掃した武器と思われる三叉槍が握られており、茶髪の青年は巧みな槍捌きで振り回した三叉槍を肩に担ぎ、ハルに向かって文句を口にした。

 

 

『な、何なのあの男っ?!……ッ?!まさか、貴女の仲間っ?!あの男に人質を救わせる為にわざとっ……!!』

 

 

ハル「……え?あ、いいや?別に仲間ではないよ?今が初対面だし。なんか後ろの方で人質救出の機会を伺ってたみたいだから手を貸してみたんだが……おーい!君って誰だー?!すまないが名前を教えてくれるとスッゴい助かるーッ!!」

 

 

「って、知らずにこっちの手伝いしてたのかよッ!!いや、まあ、どうせ名乗るつもりだったがよ……ほら、お前達はとっとと逃げろ、チビ共」

 

 

女の子A「は……はいっ!」

 

 

男の子C「ありがとうっ、お兄ちゃんっ!」

 

 

茶髪の青年は大手を振って叫ぶハルに呆れつつも助け出した子供達に若干乱暴な口調で逃げるように促すと、子供達は揃って茶髪の青年にお礼を告げてからこの場から離れる為に走り出し、その背中を見送った茶髪の青年は前に出てデザイアドーパントと対峙していく。

 

 

「ゴホンッ!んじゃまあ、気を取り直して……全員、耳の穴をかっぽじってよーく覚えときな!俺様の名は高岡 映紀ッ!そしてまたの名を――」

 

 

高らかに叫びながら茶髪の青年……"高岡 映紀"は服の内側ポケットに左手を突っ込むと、其処から一枚のカードを取り出し、三叉槍の下の部分を開いてカードをセットした。

 

 

『KAMENRIDE―――』

 

 

『ッ?!その槍……まさか……?!』

 

 

映紀が手にする三叉槍に見覚えがあるのか、デザイアドーパントは顔に浮かぶ驚愕の色を更に深めて映紀を見つめるが、映紀はそれを他所にカードをセットした三叉槍を大きく振り回し、そして……

 

 

映紀「変身ッ!!」

 

 

『DISPAR!』

 

 

映紀が高らかに叫ぶと共に、槍を振り回す勢いにより三叉槍の下の装填口がスライドされて電子音声が鳴り響いた。そしてそれと共に無数の残像が出現して映紀を中心に辺りを駆け巡り、残像が映紀に重なると灰色のアーマーとなって映紀の身体に身に纏われ、最後に三叉槍から複数のプレートが飛び出して映紀の仮面へと横に突き刺さり、灰色のボディが銀色に光り輝く美しい色へと変色して全ての変身を終え、デザイアドーパントに指を差し向けた。

 

 

『ディスパー、仮面ライダーディスパー!!テメェの悪行をストレートにぶった切る男の名だッ!覚えときなぁッ!』

 

 

映紀が変身した銀色の仮面ライダー……仮面ライダーディスパーは高らかに熱く、そして力強く叫んでデザイアドーパントに三叉槍を突き付けていき、デザイアドーパントも新たに現れた予想外の乱入者を前に思わず後退りをしていく。

 

 

『ディスパー……ディスパー、ですってっ……?あの荒くれ者が、どうしてこの世界にっ?!』

 

 

ハル「ほほう、これはまた予想外な闖入者が現れたものだね。……で?どうするかなクアットロ君?これはいよいよ君の計画が破綻し出してきたと思うけど」

 

 

『ッ……いいえ……まだ、まだよっ!』

 

 

ディスパーの登場に動揺を浮かべながらも、デザイアドーパントが右腕を頭上に振り上げて周囲に歪みの壁が出現させると、其処から無数のセンチュリオ達が現れ、デザイアドーパントを守るように雷牙達とディスパーと対峙していく。

 

 

『手札はまだあるっ!策は考えれば幾らでも絞り出せるっ!この程度で私の計画が瓦解する事なんて、ありはしないっ!』

 

 

ハル「頑張るねー、流石の諦めの悪さだ。その気概は私も嫌いじゃないよ。……でも」

 

 

新たに軍団を用意するデザイアドーパントの不屈さに素直に感心しつつも、ハルは小さめの溜め息を吐いて空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハル「それじゃあ、"まだ足りない"。もうちょっと捻りを効かせるべきだったと思うよ?」

 

 

―バシュウゥッバシュウゥッバシュウゥッバシュウゥッバシュウゥッ!!!!!―

 

 

センチュリオ『グッ?!』

 

 

センチュリオ『ッ?!』

 

 

―ドッガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!―

 

 

『ッ!!?なっ……!!?』

 

 

 

 

 

 

空を見上げるハルが小首を傾げてそう告げた次の瞬間、デザイアドーパント達の遥か上空から無数の銃弾の雨が降り注いだ。

 

 

それらはセンチュリオ達が展開するレルム・Dを突破してセンチュリオの装甲を次々と貫通していき、デザイアドーパントが呼び出したセンチュリオ軍団は一人残らず爆発を起こし散っていったのだった。

 

 

その間、13秒。

 

 

あまりに突然の急展開にデザイアドーパントは勿論、雷牙達でさえ呆然と佇む中、ディスパーが三叉槍を肩に担ぎ空に向かって叫ぶ。

 

 

ディスパー『おーい、遅ぇぞー!!今まで何やってたんだお前!!』

 

 

『―――すみません。この辺り一帯に逃げ遅れた人達が残っているのを見掛けて、その人達の避難誘導をしていたら合流に遅れてしまって……』

 

 

ディスパーの声に応じる様に返ってきたのは、申し訳なさそうな青年の声。それを聞いてその場にいる一同が声が聞こえた上空に目を見遣ると、其処には、センチュリオ達を撃退した先程の銃弾を放った張本人と思われる戦士……否、"悪魔"の姿があった。

 

 

黒と金を基礎としたボディに、二本の悪魔のような角を持つ緑色の複眼。そして何より、悪魔と称する以外に表現のしようがないその異形染みた外見。

 

 

傍目に見ても異質としか感じられない姿をした悪魔のような戦士は、ディスパーに向かって謝罪するように軽く頭を下げながら空からゆっくりと地上に降下し、そんな悪魔のような戦士にディスパーは馴れ親しんだ調子で歩み寄り彼の肩を拳で突いた。

 

 

ディスパー『そういうコトなら先に連絡の一つぐらい寄越せ!お前の方で何かあったんじゃねぇかって思って、一瞬探しに行こうかと迷ったじゃねーか!』

 

 

『だ、だからすみませんって!いや、ほんと、お詫びに後で何でも奢りますから痛い痛い痛いッ!!イタいですって映紀さんッ!!』

 

 

心配掛けさせやがってと、自身の首回りに腕を回して締め上げるディスパーの腕を何度もタップしまくりながら謝罪を繰り返す悪魔の戦士。そんな二人に対し、デザイアドーパントは募る苛立ちの余り荒々しく片腕を掲げ、背後に再び歪みの壁を出現させた。

 

 

『何なの……何だって言うのっ……次から次へとッ!貴方は一体何者なのよォおおッ!!』

 

 

ハル、ディスパーと続いて更に現れた第三の闖入者、未知の敵に向かって怒号を上げるデザイアドーパントの激情に呼応して呼び出されるように、歪みの壁から複数のセンチュリオ、更にレジェンドルガの増援が飛び出してディスパーと悪魔の戦士に目掛けて突進していく。

 

 

そして二人も迫り来る敵の軍勢を前にじゃれるのを止めてディスパーは三叉槍……ディスパランサーを、悪魔の戦士は金のラインが入った黒い大型銃を取り出して構え、銃口を一体のセンチュリオに突き付けてこう告げた。

 

 

『―――守護者ベルグバウ……海斗、海道 海斗……お前を倒しにきた者さ』

 

 

―ズガァアアンッ!!―

 

 

デザイアドーパントの質問に答え、己の名――守護者としての名と、父と母から貰った名の両方を口にしたと同時に、悪魔の戦士……『ベルグバウ』の銃が火を噴いたのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―ズガガガガガガガガガガガガガァアンッ!シュンッ、ガギィイインッ!―

 

 

『グッ!!この、止まっ、ウァアアッ!!』

 

 

プレシア(紲那)「ッ!フェイトっ!無理をしないで私達に任せなさいっ!下手に抗えば、貴方の身体に余計な負担が掛かり兼ねないわっ!」

 

 

『で、でもっ!ううっ!』

 

 

そして同じ頃、八雲が細工を施したバックルが故意に暴走を起こした事により、フェイトの意志に反し戦い続けるイザナギディスペアを止める為、クラウン、プレシア(紲那)、RTが様々な攻撃方法でイザナギディスペアを止めようと挑み掛かるも、事はそう単純ではなかった。

 

 

暴走状態にありながらイザナギディスペアの戦闘力は変わらず、その能力も遺憾無く発揮され、全身に雷を纏い高速移動による撹乱、襲い来る斬撃と雷撃の雨、更には三人の戦闘データもプログラムされてるのか、イザナギディスペアは三人を相手に有効な戦術を次々と活用して引けを取らずにいた。だが……

 

 

『ハァッ……ハァッ……ハァッ……ぅっ……っ……』

 

 

クラウン(ッ!まずいですね……あの動き、中の人間(フェイト)に耐えられる動きじゃない。完全に彼女への負荷を無視している……このままではフェイトが……!)

 

 

今のイザナギディスペアは常時フル稼動の状態にある。そんな状態であんな動きをし続ければ、どう考えてもフェイトの身が持たない。時間を掛ける事は許されないのだが、三人のデータをプログラムされてる以上は向こうもこちらの戦法を上回る為の戦術を駆使し、その度にフェイトの身体に負担が掛かる。そんな堂々巡りをする訳にはいかない。ならば……

 

 

クラウン『(私達が"先ず、絶対にやろうとは思わない戦法"……それならば……)……プレシア嬢!フェイト嬢にありったけの追尾弾を放って下さい!黄昏華嬢!貴女はその間にマキシマムドライブの発動準備を!』

 

 

プレシア(紲那)「え?」

 

 

RT『クラウン……?一体何を……』

 

 

クラウン『フェイト嬢の動きを止めます。詳しい方法は彼女の前では話せませんが、プレシア嬢にはその隙を作る為、黄昏華は私が動きを止めた隙に貴女の技で彼女のバックルへのハッキングをお願いしたい……頼めますか?』

 

 

二人の顔をジッと見つめてフェイト救出の為の協力を求めるクラウン。そして、二人もそんなクラウンから真剣な想いを感じ取ったのか、互いに顔を見合わせた後、力強く頷いた。

 

 

プレシア(紲那)「分かったわ。それがフェイトを救うことに繋がるなら……喜んで」

 

 

RT『決め手は任せてください、彼女の捕縛は貴方に任せます!』

 

 

クラウン『ええ……頼みました』

 

 

そう言いながら二人に背中を向けて、ナイフを取り出して両手に握り締めるクラウン。そしてRTも必殺技発動に備えてバックルからメモリを抜き取っていき、プレシア(紲那)は杖を操りながら自身の背後に次々とスフィアを生成し、背後の空間を埋め尽くす程の数にまで練り上げる。その数、500超。

 

 

『っ……!す、凄い……!』

 

 

プレシア(紲那)「これだけの数なら……行きなさいっ!」

 

 

―バシュウゥウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!―

 

 

『ッ!ァッ……くぁっ!』

 

 

短時間の内にあれだけの数のスフィアを展開したプレシア(紲那)の凄さにフェイトが状況を忘れ圧倒されるも、プレシア(紲那)が杖を掲げて号令を飛ばすと共に数百のスフィアがイザナギディスペアに目掛けて放出され、イザナギディスペアは高速移動を用いて上空へと避難しスフィアを振り切ろうとする。

 

 

だが誘導付きのスフィアはイザナギディスペアの後を執拗に追跡していき、イザナギディスペアもただ逃げてるだけでは振り切れないと感じたか、薙刀を使ってスフィアの数を徐々に減らしながら上空を駆け回り、何とか追跡から免れようとするが……

 

 

―シュンッ!―

 

 

クラウン『…………』

 

 

『?!ク、クラウン?!』

 

 

無数のスフィア群から全速力で逃げ回るイザナギディスペアの進行方向の先に、クラウンが突如現れ目の前に立ち塞がった。

 

 

このまま行けばクラウンと衝突する。しかし背後には無数のスフィアがすぐ後ろまで迫って来ており、立ち止まったり急転換してる間に追い付かれて背中を撃ち貫かれてしまう。

 

 

――――ならば、残る可能性としてこのまま目前の敵を打ち破るだけだと、イザナギディスペアはスピードを緩める所か更に加速し、クラウンを串刺しにすべく薙刀を突き出した。

 

 

『ッ!ダ、ダメッ……!!逃げてクラウンッ!!』

 

 

クラウンを迎撃すべく勝手に動く自分の身体に抗いながら必死に叫ぶフェイト。

 

 

だがクラウンには聞こえていないか、或いは聞こえた上での行動か、ジェット機を彷彿とさせる猛スピードで迫り来る驚異(イザナギディスペア)に対して両手のナイフを徐に振り上げ、そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

その手に持つナイフを、ゆっくりと手放した。

 

 

 

 

 

―ブザァアアッッッ!!!―

 

 

 

 

 

『…………え…………な、んでっ…………?』

 

 

クラウン『――――……ッ……グッ……!』

 

 

 

 

 

ぶつかり合う二つの影。

 

 

だがその間には、鋭い刃が備え付けられた薙刀の存在がある。

 

 

そんな物がある状態で二人がぶつかり合えばどうなるか、想像も難しくはない。

 

 

―ビチャッ……ビチャァッ……!―

 

 

『ぁ……ど……っ……ど、どうして……何でこんなっ―――?!』

 

 

―ズドドドドドドドドドドドドドドォオンッッッ!!!!―

 

 

『ッ?!うっ、キャアァアアッ!!?』

 

 

目の前で起こった出来事に対しフェイトが動揺と驚愕を露わにする中、背後から無数のスフィアが飛来してイザナギディスペアの背中へと絶え間無く次々と撃ち込まれ、イザナギディスペアの動きが怯んだ。

 

 

そしてクラウンもその隙を見逃さず、イザナギディスペアの肩と薙刀を握る彼女の腕を目一杯の力で掴み、地上のRTの向けて叫ぶ。

 

 

クラウン『黄昏華嬢ォおッ!!!』

 

 

RT『!!クッ!!』

 

 

『ROSE TAIL!MAXIMUM DRIVE!』

 

 

クラウンらしくもない無茶な行動を目の当たりにしてプレシア(紲那)共々呆気に取られていたRTだったが、正気に戻ってすぐに左腰のスロットにメモリを装填し、クラウンが押さえ込むイザナギディスペアのバックルを目に捉える。そして……

 

 

RT『ローズ、ハッキングッ!!!』

 

 

―キュイィィィィィッ…………ジジジジジジジジジジジジジジィイッ!!!!―

 

 

『!!?ぁ……!ぅっ……な、なに……ァ……?!』

 

 

RTの雄叫びと共に発動された強力なハッキング能力。それはイザナギディスペアのバックル内に侵入し、彼女を暴走させている要因となるプログラムを次々と分析、無力化し、更にフェイトとバックルを無理矢理に繋ぎ合わせている中心部に侵入して解析していく。そして……

 

 

RT『あと、少しっ…………………………出来ましたわッ!!クラウンッ!!!』

 

 

クラウン『!!』

 

 

―ガチャッ!!―

 

 

バックルの解析をし終えたRTの呼び掛けと共にクラウンがイザナギディスペアの腰のバックルを掴み取ると、イザナギディスペアの姿がフェイトに戻りながら脱力した様子でクラウンにもたれ掛かり、それを確認したクラウンはバックルを上空に投げ捨て……

 

 

―バシュウゥッ……ドガァアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!―

 

 

プレシア(紲那)「――取りあえず、これで一先ず安心……ね」

 

 

クラウン『……そう、ですね』

 

 

プレシア(紲那)が地上から放った魔力砲で木っ端微塵に破壊されたバックルの始末を見届けながらそう呟き、クラウンはフェイトをしっかり抱え直しながら地上にゆっくりと降下していくと、フェイトが力無く顔を俯け、疲れきった様子で口を開いた。

 

 

フェイト「……どうして……あんな、無茶な真似……其処までして、私なんか……」

 

 

クラウン『……私なんか、などと自分を卑下するのはお止めなさい……やり方は確かに間違えてはいましたが、貴女は貴女なりに零氏の身を案じて、貴女なりに考えた方法で彼やエリオ氏やキャロ嬢、ルーテシア嬢本人も守ろうとした。……その気持ちまで、否定する気は私にはありませんよ』

 

 

フェイト「そんな……そんな純粋な気持ちだけなんかじゃないっ……私は、零に頼られたなのはを羨んで、嫉妬なんかしてっ……自分もそうなりたい、だなんて……そんな疚しい気持ちもあって……だからっ……」

 

 

クラウン『……それは何か悪い事、なのですか?』

 

 

フェイト「……え……?」

 

 

クラウンにそう問われて、思わず顔を上げるフェイト。クラウンはそんな彼女の瞳を静かに見つめ返し、

 

 

クラウン『確かに、嫉妬という感情は基本、人の目には醜いものとして映る事が多い。中にはそれを悪い事だと訴える人も多く存在しますが……私はそうは思いません。そういった感情もまた、誰の心の内にも必ずしはあるもの……それを悪だと罵るなら、嫉妬なんて感情を生み出す世の全ての人間はみな統べからく悪人という事になる。違いますか?』

 

 

フェイト「っ……けど私、なのはに……親友相手にっ……」

 

 

クラウン『親友なのだから嫉妬なんかを覚えてはならない、なんて決まりもありません。寧ろ私は健全ではないかと思いますよ?昔日から、親友は良きライバルとも言われていますから。お互いに意識して競い合い、自分より上を行く相手に時には嫉妬しながらも高め合い、より良い自分を磨き上げていけばいい。何より貴女となのは嬢は同じ少年を好きになった本物の競争相手でもあるのですから、それをマイナスとして捉えるのではなく、スポーツの一種としてでも捉えてみればいい。そうすれば貴女も、少しは前向きになれると思いますよ』

 

 

フェイト「……でも……」

 

 

それでもまだ、心に根付いた自己嫌悪を消し去る事が出来ない。自分の中の醜い感情から始まった今回の件の事を考えると、一体どんな償いをすればいいのか分からない。そんな風に悩み思わず胸をわし掴みながら険しい表情を浮かべるフェイトの心境を悟ったのか、クラウンは額から流れる汗を感じながらももう一度口を開く。

 

 

クラウン『フェイト嬢……人は何かを成すにしても、先ずは、自分という人間を好いて、自信を待たなくてはいけません……そうでなくては、この先何をやろうとも、貴女は何に対しても満足する事も納得する事も出来なくなってしまう……そんな貴女の姿を見れば、零氏もなのは嬢達もきっと哀しみます』

 

 

フェイト「……好きになりたくても……それ以上に、自分の事を許せなかったら……?」

 

 

クラウン『それなら先ずは、貴女が貴女自身を許してあげることです』

 

 

フェイト「えっ……」

 

 

そう言われ、フェイトは目を点にしながら思わず顔を上げる。気のせいか、クラウンは僅かに息が上がっているように見えるが、クラウンは構わず真っすぐフェイトを見据え言葉を続ける。

 

 

クラウン『罪の意識から、自分を責め続けても、その先には何も生まれはしない……ただ貴女が貴女自身を苦しめ続けて、余計に自分を追い詰めるだけです……本当に零氏達に対して罪悪の念を感じるなら、先ずは、貴女が自分を許してから、貴女なりの方法で彼等に謝ればいい……大丈夫ですよ。こんな事で違えるほど貴女達の絆が脆くないのは、貴女達と敵対してる私の目から見ても明白なのですからね』

 

 

フェイト「…………」

 

 

気のせいか、そう語るクラウンの仮面の奥に、何故か一瞬知っている"誰か"の顔が幻のように過ぎったような気がする。しかしそれが誰なのか思い出すに至らず、その代わりに疑問を投げ掛けた。

 

 

フェイト「どうして、其処まで……貴方と私達は、敵同士なのに……」

 

 

クラウン『……敵に塩を送る、ではありませんが……零氏にはまだ、っ……我々ショッカーにとっても利用価値がありますからね……貴女を失う事で、使い物にならなくなっては困るだけですよ』

 

 

フェイト「……そう……――――」

 

 

嘘つき…、とクラウンの耳に聞こえないように小声で呟き、先程の戦闘での疲労から遂に気を失ってしまうフェイト。そしてフェイトが気を失ったと同時にクラウンが地上に着地すると、プレシア(紲那)、黄昏華、そしてアースと戦っていたエンドがクラウンの下へと駆け寄っていく。

 

 

黄昏華「クラウン!フェイト様は?!」

 

 

クラウン『今は気を失っていますが、見たところ大事ありません。ですが、あのバックルを使用した後遺症がないとも言い切れませんからね……一度検査をしてみる必要があるかもしれません』

 

 

エンド「そっか……こっちはトーレに逃げられたよ、フェイトの暴走を止められた途端にね……どうして彼女は……」

 

 

クラウン『……彼女も意地になっている、のかもしれませんね。魔界城の世界でセッテ嬢を一度見捨ててしまった以上、後戻りは出来ないと、っ……』

 

 

プレシア(紲那)「ッ!クラウンっ!貴方もいい加減傷の治療をなさいっ!貴方もさっきの戦いで……!」

 

 

思わず大声で怒りながら、プレシア(紲那)は先程イザナギディスペアを止める為にその身を壁にして薙刀を受け止めたことで貫かれ、今もなお血が溢れ出るクラウンの脇腹の傷を見て詰め寄ろうとするが、クラウンは手で制止して首を左右に振った。

 

 

クラウン『この程度なら、私の方で治療出来ますから心配入りませんよ』

 

 

黄昏華「しかしっ、フェイト様を助ける為とは言え、あんな無茶を……!」

 

 

クラウン『向こうには、私や貴方達の行動パターンは全て見通されてしまってる。時間も掛けられなかった以上、あの方法しかないと私なりに考えたまでですよ。幸いと言うべきか、私が人よりも頑丈な方だから出来た事です』

 

 

エンド「……だからって、あんな極端なやり方以外にも方法は色々あっただろうに……」

 

 

クラウン『そうですね。私も柄になく気が焦っていたようだ……ともかく、フェイト嬢を安全な場所にまで運んであげて下さい。私は、彼等の下に戻ります』

 

 

プレシア(紲那)「……分かったわ……私達が付いていっても足手まといにしかならなそうだし……気を付けるのよ……?」

 

 

クラウン『貴方達も。では―――』

 

 

プレシア(紲那)達に助け出したフェイトを預けると共に、クラウンは目前の高層ビルを見上げて地を蹴り、ビルの屋上……其処で今も八雲と対峙し合っているでだろう幸助達の下を目指し、一気に跳び上がっていくのだった。

 

 

 

 

 

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