仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第二十一章/雷牙の世界⑬(後編)

 

 

―クラナガン・高層ビル屋上―

 

 

八雲「―――クアットロも退いたか……あれだけ調子に乗り過ぎるなと釘を刺したと言うのに、所詮は出来損ないの傀儡か……」

 

 

そうして、街中で起きていた数々の激闘が沈静化していく中、それらの戦いを静観していた八雲はつまらなさそうに深く溜め息を吐き、自身が今も対峙している目の前の怨敵達……幸助ファミリーとグランとカルネ、そしてメモリーBPに目を向けた。

 

 

八雲「それで、お前達はどうする気だ?あの亡霊……リィル・アルテスタが再生の因子の力を"暴走"させた事で、あの出来損ないに破壊された雷牙の世界はこうして再構築され、俺が連れてきたシュレンもエイラに連れられて俺一人になった訳だが……この場でもう一度、先の闘いを続きでもするか?」

 

 

シズク「……幸助……」

 

 

幸助「…………」

 

 

それでも俺は構わないぞ、と両手を広げて不敵に笑う八雲。だが幸助はそれに対して険しげな表情で八雲を睨み付けたまま動こうとはせず、代わりにカルネとグランが武器を手に前に踏み出した。

 

 

グラン「お望みとあらば、次は俺達が相手をしてやるさっ」

 

 

カルネ「零坊やが元に戻った以上、最早遠慮する事は何もない……此処で今度こそ、引導を渡してやるぞっ!」

 

 

クアットロ達も退けた以上、最早八雲は孤立無援でしかない。ならばこの好機を逃す手はないと、グランとカルネは八雲に向けて武器を構えながら対峙していくと、其処へ、フェイトを止めたクラウンと、ヴリトライレイザーを退けたユリカがその場に駆け付けた。

 

 

グラン「っ!クラウンっ!それに……」

 

 

カルネ「……ユリカ嬢ちゃん……」

 

 

ユリカ「…………」

 

 

駆け付けたユリカを見て僅かに驚きを浮かべるカルネ。だがユリカは幸助達を横目で一瞥しただけで何も言わず、八雲を睨み付け両手に銀の双銃を取り出した。

 

 

クラウン『遅れて申し訳ありません……。フェイト嬢の方は、プレシア嬢と黄昏華嬢の協力もあってどうにかなりました。後は……』

 

 

グラン「黒月八雲を仕留めるだけ、か……!」

 

 

クラウンとユリカが揃った今の戦力なら、仲間のいない八雲を今度こそ追い詰められる。カルネとグランはそう確信し、八雲に向けて飛び掛かるべく身を屈めて突撃しようとする、が……

 

 

 

 

 

―ズギャアァンッ!!―

 

 

幸助「――っ!」

 

 

カルネ「ッ?!なっ……」

 

 

グラン「何ッ?!」

 

 

八雲に仕掛けようとしたその時、二人の足元に突如銃弾が撃ち込まれて八雲への攻撃を阻まれてしまったのである。一同もソレに驚愕して銃弾が放たれてきた方に目を向けると、其処には、何故かユリカが銀の銃をグランとカルネの足元に向ける姿があった。

 

 

カルネ「ユリカ嬢ちゃん……?!」

 

 

ユリカ「動かないで。……貴方達にはまだ、この男を倒させる訳にはいかないわ」

 

 

八雲「……ほう……」

 

 

グラン「なっ、何を言ってんだっ、アンタッ?!」

 

 

八雲に手出しはさせない。そう言って左手の銃を幸助達に向けるユリカの意図が分からずグランが困惑の声を荒げるが、ユリカは無言のまま何も言わず、直ぐに右手の銀の銃を八雲に突きつけた。

 

 

幸助「ユリカ・アルテスタ、お前……」

 

 

八雲「……フフッ、正気か?その程度の武装でこの場の全員を敵に回すような真似──」

 

 

ユリカ「余計な発言は控えてもらえるかしら……貴方はただ、私の質問に黙って答えればそれでいいの……」

 

 

八雲「……質問?」

 

 

静かにそう語るユリカに、八雲は僅かに首を傾げて聞き返す。そしてそんな八雲に対し、ユリカは銃口を突き付けたまま鋭い目付きで睨み付ける。

 

 

ユリカ「貴方が知っている全てを、此処で全て吐いてもらうわ……私が知らない、あの子の過去に何があったのか……何故あの子の中に、リィルの魂が在るのかを……」

 

 

八雲「……ハッ。何を言い出すかと思えば、そんな昔話を今更聞きたいと……?わざわざ俺なんぞの口から聞かずとも、貴様なら自身の手で如何様にもその真相に辿り着き、知る事など造作もないだろう?」

 

 

そもそも俺が餓鬼に寝物語を聞かせるような人間なぞに見えるのか?と、片手を軽く振りながら馬鹿らしげに笑う八雲だが、ユリカも引こうとはしない。

 

 

ユリカ「確かに……その顛末を調べる事は私にでも出来るし、正直、この件はあの子が全ての記憶を取り戻すその時まで、あの子自身の口から直接聞き出すまで詮索しないでおこうと思っていた……だけど……」

 

 

グッと、銃を握り締める手に力を込め、八雲を見据えるユリカの瞳に憎しみが宿る。

 

 

ユリカ「……そうして傍観者を気取ったせいで、あの子も、リィルも、貴方と同じイレイザーにしてしまった……まだ生きているあの子はともかく、死んだリィルが魂だけとは言え完全にイレイザーとなってしまえば……」

 

 

八雲「――そうだな……イレイザーになると言う事は、全ての物語(せかい)からの追放、即ち世界のルールからの脱却を意味する。それは死後に関しても例外ではない。魂までもがイレイザーとなった者が死ねば、その魂は輪廻転生の環に還らず、ただ無に帰すのみ。その点で言えば、リィル・アルテスタはもう、二度目の生を受けて生まれ変わる事は不可能と言えようさ」

 

 

カルネ「……ッ……!」

 

 

一度イレイザーとなってしまった者の末路。八雲の口から聞かされるその内容に同じイレイザーであるカルネも複雑げに眉を寄せ、ユリカは険しい表情を浮かべる。

 

 

ユリカ「もっと早く、こうしておけばと今更になって後悔してるわ……貴方の力を恐れ、近づかまいとして、あの子から事実を聞き出す事に拘って、そうした結果がこのザマよ……だからこそ、これ以上手遅れになる前に、あの子達の間に何があったのかを知る貴方には―――」

 

 

八雲「全てを吐いてもらう、か……とは言え、此処で俺が話せる事実など、お前も既に知っている顛末ばかりだと思うが……まぁいい……俺自身、今の現状の再確認も踏まえて語ってやっても構わんかもしれんな」

 

 

ユリカが放つ威圧感も何処吹く風と、八雲はつまらなそうにそう言いながら背後のフェンスに背中を預け、ユラリと片手を広げる。

 

 

八雲「貴様も知っての通り、俺達の世界には嘗て、創造神と呼ばれた神・アルテマが存在していた……俺達の世界の並行宇宙を管理・存続させる存在として、俺達の世界の『座』に君臨してな」

 

 

グラン「……『座』?」

 

 

ユリカ「私達の世界を支配、或いは世界のルール(理)そのものを変える事が出来ると言われてる世界の中心……其処にあるシステムのようなものよ……最も其処へ行けるのは、"世界"に選ばれた存在となった神だけと言われていて、実際に見たことはないけど、神となった者が其処に立てば、それだけで、ソイツが望むように世界を塗り替えることも出来るとも聞くけど……」

 

 

八雲「事実だ。……だが、その為にはその神自身の力が世界を塗り替える程の力を持っている事が大前提でな。力が足りなければ、例え世界を塗り替えたとしても、その後に生まれる世界は欠損が目立つ不完全な世界にしかならない。……アルテマの平行宇宙のようにな」

 

 

そう言いながら何かを思い出しているのか、八雲は僅かに瞼を伏せて俯くが、すぐにまた無表情となり顔を上げて話を続けていく。

 

 

八雲「世界に選ばれたからと言っても、其処に選ばれた本人の意志は関係はない。アルテマは半ば不本意に世界に選ばれ、その上で奴が現出した理では、増え続ける平行世界の全てを許容出来る程の力を備えてはいなかった……。増え続ける並行世界によって、アルテマが生み出した並行宇宙は崩壊の危機に瀕し、やがては他の世界と引かれ合い、融合し、崩壊への末路を辿るのみだった。そんな危機的状況を解決する為に、アルテマは――」

 

 

ユリカ「……あの子と、あの子の中の破壊の因子を利用したのでしょ……彼の手で、古い世界を破壊させる事で、アルテマが世界を管理出来る範囲にまで負担を減らす為に……」

 

 

グラン「?!なん、だと……?」

 

 

幸助「…………」

 

 

嘗て八雲や零達の世界に存在し、彼等の並行宇宙を管理していたと言う創造神……アルテマ。

 

 

過去の零は、その神が全ての世界を管理出来るように増え続ける平行世界を破壊させられていたのだと語る八雲とユリカにグランは驚愕し、八雲は腕を組み話を続ける。

 

 

八雲「文明も進化も発達しない不要な世界、古い世界を破壊する事で並行宇宙の寿命を延命させ続ける……奴がお前とリィル・アルテスタの世界を訪れたのも、その一環だ……ついでに、とある目的からあの女の中の再生の因子を奪うようにアルテマから命じられていたようだが……その結果は、貴様も知っての通りだ」

 

 

ユリカ「……其処までは私の方でも散々調べたわ……問題はその先よ。あの子の下に、リィルの心臓と因子が至った経緯……私はまだ、その経緯を詳しくは知らない。あの子達の間に、本当は何があったのか、それをっ――――!」

 

 

八雲「だから言っているだろう……?経緯も何もない。あの出来損ないがリィル・アルテスタを手に掛け、血迷った挙げ句にアルテマ達に反旗を翻して返り討ちに遭い、お優しい巫女様は、そんな出来損ないを哀れみ、己の心臓である再生の因子をあの出来損ないに移植させて蘇生させた…………己の魂の『片割れ』を、移植の際に心臓に移して、な」

 

 

グラン「……?魂の片割れ、だと……?」

 

 

どういう意味だ、とグランが一同を代表して疑問を聞き返すと、八雲は幸助達を見回し……

 

 

八雲「此処の数人は既にご存知だろうが、それまで僅かでも疑問に思わなかったか……?神でもないただの人間の分際で、何故神の因子を2つも保持しているだけでなく、両方の因子の力を用いる事が出来るのか……。俺も当初は、せいぜい奴の中の再生の因子が保持者に死なれては厄介だからだと、勝手に起動して奴を生かしているのだと考えていた。奴自身の事を考えるのはそれだけで苦痛だから、せいぜいその程度の理由だと高を括っていたのだが……どうやら、その予想は間違いだったようだ」

 

 

ふぅ、と溜め息をこぼし、八雲は零が今も倒れている高層ビルを横目に語り続ける。

 

 

八雲「そもそもあの出来損ないに、二つの因子を同時に使いこなせるだけの器用な才なぞある訳がない。今まで再生の因子を起動させていたのは、本来の持ち主であったリィル・アルテスタ自身……数年前に奴が行き着いた世界で起きた事件、ロストロギアの事件で奴が死にかけた際に、奴の命の危機に再生の因子が呼応して起動したのは、リィル・アルテスタの魂の片割れが因子の力を呼び起こしたからだ……。奴に再生の因子の恩恵を与える為だけに、あの女は自分の死の間際、己の魂の半分を移した心臓を奴に移植し、残りの半分の魂をあの世へ送っていたのだろうよ……」

 

 

メモリーBP『?半分の魂をって、どうしてそんなこと……』

 

 

幸助「……アルテマやコイツのような存在に、自分は確かに死んだのだと思わせる為だろうな……零に因子の力の恩恵を与える為に、アイツの中に自分の魂が残っている事が悟られれば、コイツ等はそれを消しに掛かってくるかもしれない。それを予期して、リィル・アルテスタは己の魂を分ける事で、コイツ等の目を欺こうとした……コイツ等が自分の死を後から確かめたとしても大丈夫なようにな」

 

 

八雲「結果、俺やアルテマもリィル・アルテスタの策にまんまとハマったという訳だ……だが、それが逆に俺にとっては都合の良い結果を招いてくれた」

 

 

シズク「……都合の良い、結果……?」

 

 

訝しげに眉を寄せてシズクが思わずそう聞き返すと、八雲は幸助達に視線を戻し僅かに口端を吊り上げる。

 

 

八雲「どうやらリィル・アルテスタはいざという時に備えて、奴の中に残しておいた己の魂の片割れと、あの世に送ったもう片方の魂との間を繋ぐ『ライン』を作っていたようだ……。そうする事で、片割れだけの力ではどうにもならない事態の際に、その繋がりを辿って黄泉の国からあの出来損ないの中に残したもう片方の魂と一つになり、再生の因子の力を最大限に発揮できるようにする……。以前のキャンセラーやGEAR電童の世界などで、あの女はその方法で奴等に関与し続け、今回もあの出来損ないがイレイザー化する直前に、魂を一つにして奴の中のイレイザーを抑え込んだが、その代償は大きかったようだな……それが―――」

 

 

カルネ「―――リィル嬢ちゃんの、イレイザー化か……」

 

 

八雲の言葉を繋げるように険しげな表情でそう呟くカルネの脳裏に、先程零がアバドンイレイザーとは違う別の姿に変身した女神型イレイザー……否、リィルの魂が零の身体を使って変貌したイレイザーの姿を思い出していく。

 

 

八雲「再生の巫女が変身したのは、本来クリエイトで言う幹部クラスに該当する神話タイプのイレイザー……あの出来損ないのイレイザーの出来映えを除けば、神話タイプを2体も生み出せた事になる。これでノルマ達成どころか、クリエイトでの俺の立場はより揺るぎないものとなり、今以上に動きやすくなるという事だ。その点で言えば、リィル・アルテスタには俺からも感謝しなければならんな」

 

 

ユリカ「ッ……いい加減にして、何時までグダグダとくだらない話を続けるつもりなの……?私が聞きたいのはそんな事じゃないっ。あの子達の間に、本当は何があったのかをとっ――――!!」

 

 

何時まで経っても自分が知りたい情報を話そうとしない八雲に対して遂に痺れを切らし、ユリカは幸助達に向けていた側の銃を八雲に突きつけながら引き金に指を掛ける。だが……

 

 

幸助「――その通りだな。いい加減にしろよ、八雲。貴様、何時までそうやって道化の真似事を演ずる気だ?」

 

 

ユリカ「……えっ……?」

 

 

カルネ「幸助坊や……?」

 

 

突然そう言って口を開いたのは、武器を手にせず空手のまま八雲と対峙していた幸助だった。突然そんな意味深な発言をし出した幸助に他の面々も怪訝な表情で振り返り、八雲も僅かに首を傾げた。

 

 

八雲「急に何の話だ、断罪の?俺に何処か可笑しな所でも?」

 

 

幸助「……見くびるのも大概にしろと言っているんだ……その程度のチャチな分身で、俺の目をごまかせるとでも思ってるのか?」

 

 

ユリカ「……?!なっ……」

 

 

グラン「分身だとっ?!」

 

 

驚愕の声を荒げ、ユリカ達は一斉に八雲の方へと振り返る。対する八雲は幸助からの指摘を受けてその顔から一瞬表情が消え、僅かに口を閉ざした後、退屈げに小さな溜め息をこぼした。

 

 

八雲「分かってはいた事だが、こうも簡単に見破られるとなると白けるな……まぁ、貴様相手にこの程度の誤魔化しが通ずる筈もないか……気付いていたのは最初からか?」

 

 

幸助「当然だろう……雷牙の世界が修復され、俺達がこの世界に戻ってきた時点で、お前の気配は零の物語で戦った時より明らかに違う。……入れ代わったのは、俺達と共にこの世界に戻って来る直前、その時に分身を飛ばして入れ代わり、お前自身は既に裏方にでも引っ込んでいるんだろう?」

 

 

八雲「……流石の洞察力だな」

 

 

溜め息混じりにそう言って肩を竦めながら笑うと共に、八雲の身体が残像のように一瞬だけブレる。その様子から、目の前の八雲は本当に分身のようだ。

 

 

カルネ「黒月八雲っ、貴様……!」

 

 

八雲「……雷牙の世界が修復された以上、此処は既にメモリアルの管轄内だ。此処で貴様等を相手にこれ以上は好き放題暴れる訳にもいかないからな。水を刺された以上、お前達との決着は後のお楽しみとして取っておく事にしようと思った訳だ。あの出来損ないの駄作の世界よりも、より相応しい舞台で、なあ?」

 

 

ユリカ「ッ……!!貴方という男はっ……何処まで人をおちょくってっ……!!」

 

 

八雲「……ああ、貴様が知りたがってるあの出来損ないと巫女の過去についてなら、これ以上は俺の口から聞くよりも直接、奴の中の当人にでも聞いたらどうだ?転生の望みは最早ないが、あの出来損ないの身体を奪えばリィル・アルテスタも二度目の生を手に入れる事は出来ようさ……嘗て愛した男の身体と共に生きる……そう考えたら、中々にロマンチックだとは思わないか?」

 

 

ユリカ「ッッッッ……!!!!!」

 

 

―ズギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャアァァンッッッ!!!!!!―

 

 

煽るように笑ってそう語る八雲のその言葉を引き金に、ユリカは両手の銀の双銃を八雲に目掛けて容赦なく乱射させていく……が、ユリカが放った銃弾は全て八雲の身体をすり抜けてしまい、直後に八雲の姿が大きくブレた後に幻のように消え去ってしまった。

 

 

メモリーBP『消えた……?!』

 

 

『……どうやら本当に、本物は既に何処かに姿を眩ましていたようね』

 

 

ユリカ「黒月八雲っ……!!」

 

 

 

 

 

―……何れにせよ、今まであの出来損ないを護り続けていたあの再生の魔女もイレイザーと化し、黒月零自身が生み出したイレイザーと共に枷になる事に代わりはない。イレイザーは所詮は"存在を許されぬ者"……それを2匹もその内に抱えている以上、"世界"はこれまで以上に奴を異物として全力で追い出そうとするだろうさ……奴にはもう、安息の未来なぞないも同然なのだからな―

 

 

 

 

 

何処からともなく響き渡る八雲の声。その声の居場所を探して一同が周囲を見渡すが、やはり八雲の姿は見付けられず声も聞こえなくなってしまい、八雲から嘗ての零とリィルの過去を聞き出せなかったユリカは拳を震わせ、悔しさのあまり堪らず真横のフェンスを殴り付けた。

 

 

カルネ「ユリカ嬢ちゃん……」

 

 

ユリカ「ッ……何処まで人を馬鹿にすれば気が済むの、あの男はっ……!」

 

 

幸助「……あの男はそういう奴だと、お前も嫌と言うほど分かってるだろ?恐らくこうしてる間にも、奴は既に次の手を考えて良からぬ企みでも企ててる筈だ……零達の世界のクアットロ達を使ってな」

 

 

いや、それどころかこうなる事も予期して、既に何かしらの手駒を用意している可能性もある。幸助は薄い溜め息を吐きながらそう考えると、項垂れるユリカの背中を一瞥した後、踵を返し今も零が倒れる高層ビルの方へと振り返った。

 

 

椛「幸助君……これからどうする気なの?」

 

 

幸助「……一先ず零を回収して、この世界の機動六課と雷達に接触する。八雲達がこの程度で手を退くとは思えないからな……奴らがまた何か仕掛けてくる前に、打開策を用意しておく必要がある」

 

 

クラウン『クアットロ嬢も、恐らく今回の作戦を邪魔された事で更に復讐心を募らせているでしょうからね。彼女達が何か仕掛けてくる前に、零氏達を万全の状態にまで回復させなければなりませんが……』

 

 

シズク「……だけど、八雲の言う事が本当なら、零君は……」

 

 

そう、八雲の言う通り零にイレイザー化、そして雷牙の世界と共に雷やなのは達を手に掛けた記憶が残っているなら、零の精神は恐らく……。そんな不安を孕んだ声を漏らすシズクに一同も何も言えず沈黙が流れるが、幸助は目を伏せた後、メモリーBPに視線を向ける。

 

 

幸助「……それで、お前達の方はどうする気だ?このまま俺達と来るのか?」

 

 

メモリーBP『あ、それは―――』

 

 

『―――残念だけど、私達が関与出来るのは此処までよ』

 

 

此処から先について自分達がどうするか説明しようとしたメモリーBPの言葉を遮るように、メモリーBPの腰のバックルから響いた女性の声が代わりに答え、直後にメモリーBPの身体から僅かに粒子のようなモノが浮き出た。

 

 

グラン「ッ!それは……」

 

 

クラウン『……成る程。貴方達がこの過去の世界に関われるのには、何かしらの制限が課せられているのですね?』

 

 

『……ええ。私達が関われるのは、"黒月零が破壊した後の雷牙の世界での天満ファミリーと黒月八雲の闘い"までで、それ以降の歴史には関わってはいけないと言われているの』

 

 

メモリーBP『だから、この世界が元に戻ったら、俺達も未来の世界に帰るように言われてて……スミマセン、ホントは俺達も力になりたいんですけど……」

 

 

幸助「いや、此処まで手を貸してくれただけでも上々だ。それにそのベルトが未だに使われてるという事は、お前達の方にも、お前達なりの戦いがあるのだろうし、これ以上過去の出来事に関わる事でソレを疎かにする事もあるまい……お前達は、お前達の戦いに専念しろ。こちらの事は、俺達に任せておけ」

 

 

メモリーBP『…………。分かりました』

 

 

真剣な眼差しを向ける幸助の瞳を見つめ返して力強く頷き返し、メモリーBPは一同から少し離れた場所へと立って振り返り、メモリアルブレイドを地面に突き刺す。すると、メモリアルブレイドを突き刺した部分から光が広がって巨大な魔法陣が展開され、メモリーBPは魔法陣から発せられる光に包まれながら幸助達に目を向けた。

 

 

メモリーBP『先代さん……未来は必ず、先代さん達の意志を継いだ俺達が守ってみせます!だから過去の世界の事、頼みます!』

 

 

幸助「……ああ。お前も、断罪の後継者の名に恥じないように、精進し続けろよ?」

 

 

メモリーBP『……はい!』

 

 

―シュウゥウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッ…………バシュウゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーウウウゥゥゥッッッッッ!!!!!!!!!―

 

 

先代メモリーの幸助からの激励を受けながら、メモリーBPの全身が魔法陣から徐々に激しさを増していく光に覆われてその姿が見えなくなっていく。そして、メモリーBPを飲み込んだ魔法陣は少しずつ縮小していき、そのまま何処かへ転移するように消滅してしまったのであった

 

 

クラウン『……行ってしまいましたね』

 

 

シズク「うん。……あ、そういえばあの子の名前、結局聞きそびれちゃったね?」

 

 

幸助「ん?……そういえばそうだったな……まぁ、どうせ未来で知る機会もあるだろ。最も、その頃にまだ俺達が健在ならの話だが……」

 

 

自身の跡を継ぐ者が現れたと言うのなら、その頃には自分達はどうなっているのか……。そんな考えが一瞬過って思わずポツリとそんな小声を漏らすが、今は関係のない事だと軽く頭を振りながら思考を切り替えようとしていると、今まで無言でいたユリカがフェンスから拳を離し急に何処かへと歩き出した。

 

 

カルネ「!ユリカ嬢ちゃん?何処に行く気だ?!」

 

 

ユリカ「……決まっているでしょ……?黒月八雲の足取りを追うのよ……ノアノートを駆使すれば、奴の逃走ルートを割り出して追跡する事ぐらい……」

 

 

幸助「……追い掛けて、それでどうなる?お前の今の力で奴と対峙しても、今度こそ殺されるのがオチだぞ」

 

 

ユリカ「……そんな事、言われなくたって百も承知よ……実際に奴と戦った事がある経験もあるのだから、実力の差は嫌と言うほど分かってる……それでもっ……」

 

 

このまま何もせずにはいられない、そうじゃなきゃあの子達に顔向け出来ないと、実際には言葉には出さずに拳を強く握り締め、ユリカはそのまま転移魔法を用いて何処かへと消えてしまった。

 

 

グラン「お、おいっ!待てよアンタっ!」

 

 

幸助「放っておけ、今はアイツに構ってる暇はない」

 

 

カルネ「いや、しかしっ……!」

 

 

クラウン『彼女が心配なのは分かりますが、幾らユリカ嬢でも八雲氏相手に無謀な真似はしないでしょう。先程彼女自身も言っていた通り、彼の恐ろしさはユリカ嬢も良く分かっているハズ……今は彼女を信じるしかありません』

 

 

幸助「クラウンの言う通りだ。とにかく、俺達は零を連れてこの世界の六課と合流するぞ。……八雲の野郎がクアットロ達を使って次の一手を打ってくる前に、な……」

 

 

今回は予想外のアクシデントが重なった事でクアットロ達の計画を阻止出来たが、これで終わりとはとても思えない。クアットロ達がいつ何を仕掛けて来てもいいように零達と雷達を回復させなければと、幸助達は八雲の追跡をユリカに任せて高層ビルの屋上で一先ず解散し、シズクと椛ははやて達の下に、クラウンとカルネとグランは雷達の下へと向かい、幸助は一人零の回収へと向かっていくのであった。

 

 

 

 

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