仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―光写真館―
――早瀬智大の手により、マジカルエメラルドという名のクソステッキ二号誕生と共に生まれた、カレイドエメラルド――通称、まじかるアリサという二人目の魔法少女降臨事件から一週間が経った頃。
その日、光写真館のポストに一つの小包が前触れもなく届いた。
……小包みの表面に、ご丁寧にデカデカと『早瀬印』を表記して。
優矢「――なんだろなー……俺だけかなー……この展開にスゲえデジャヴを感じるのは……」
そんな怪しい雰囲気全開の小包を見下ろし、遠い目でそう呟いたのは、前回迂闊にもマジカルエメラルドを世に放つという蛮行を犯してしまった一人の優矢。
そんな彼の周りで、同じ様に怪しげな小包を覗き込むのは写真館でたまたま寛いでいたなのは、はやて、スバル、ティアナ、姫、魚見であり、彼女達もその明からさまに怪しい物体に揃って微妙な顔を浮かべていた。
はやて「なんやろなぁ……もう隠す気も更々ないっていうか……」
ティアナ「こんなにも堂々と差出人の名前書かれると、逆に怪しいっていうか……や、例え書いてなくても同じようなものけど」
スバル「……っていうか、どうしようかコレ?このまま放っとくのもそれはそれで何か気味悪いし……いっその事、思い切って開けてみるとかっ?」
優矢「……っていう意見もあるけどさ……お前どう思うよ、零……?」
そう言いながら顔を上げて優矢が振り向いた先に、他の面々の視線も集まっていく。其処には……
零「―――何度も言わせるな優矢。俺はさっきから断固反対だと言ってんだろっ」
――実に真剣味を帯びた顔と絶対零度のジト目でそう言いながら、テーブルの下に避難して微塵も動こうとしない震える子羊―――否、零の姿があったのだった。
なのは「零君っ、いい加減そんな所に隠れてないでこっちで真剣に話し合ってよっ。場合によったらコレ、智大君の所に返しに行かないといけないんだから」
零「嫌だ。断る。俺は関わらない。特に早瀬一家に関するものなら尚更だ。俺はもう二度とあのクソステッキ共の件と同じ轍を踏む事はしないと心に誓っているんだっ……!!」
姫「凄まじいまでの拒否っぷりだな……まあ無理もないが」
優矢「ってか、まだこれの中身があのマジカルステッキ達と同じかなんて分かんないだろ……お披露目するにしても、流石に二度も同じ手とかは―――」
零「その発想自体が甘いんだよ馬鹿野郎っ。裏の裏を掻いてまた同じ手を使って来る可能性だって無きに等しきだろうがっ。二度あることは三度なんちゃらって言葉を知らんのかっ」
優矢「いやなんちゃらの部分は知らねぇっていうか、裏の裏って結局表じゃ……あれ?この場合は合ってるのか?」
零「とにかくだっ……!そのふざけた荷物を開けるなら俺が外に出るまで待てっ!もし一ミリでも開けてみろっ……!ソイツの中身が飛び出してきた瞬間に此処で舌を噛み千切って今すぐにでも死んでやんぞォオッ!!」
優矢「どんだけ根深いんだよお前のそのトラウマッ!!」
血走った両目をかっ開いて自害発言までかます零に思わずツッコむ優矢だが、そんな二人のやり取りを他所に魚見が小包を手に取って封を切り、銀色のジュラルミンケースを取り出し箱を眺めていく。
魚見「箱の外見に特に可笑しな所はありませんね。箱の中身にもこれと言って妖しい気配を感じ取れませんし……」
はやて「ん、そんなら今回はトラブルの心配はないって事かな……?」
優矢「や、まだ分かんないですよ?確か型月のマジカルステッキって、血液認証をしないと起動出来ないみたいなのを原作プレイしてて見た事ある気が……」
ティアナ「……原作?」
零「良いからそのまま触れるんじゃないッ!触るなッ!いいかっ、せめてこのまま俺が外に出てくまでは待っ――」
魚見「はいパカーン」
零「ぬぅううううぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッ!!!!!!?」
一同にしつこく念を押しながら何故か身を屈めて外に避難しようとした零の前で、間の抜けるような声と共に魚見がジュラルミンケースをご開帳してしまった。直後に零は絶叫と共にテーブルの下に目も止まらぬ速さで滑り込んで引っ込み、優矢達も目をキツく閉じながら顔を背けて何か飛び出してくるのではと咄嗟に身構えたが、暫し時間が経っても何かが飛び出してくる気配はなく、一同が恐る恐る目を開けてケースの中身を見ると、其処には……
なのは「……?コレって……」
スバル「ドライバー……ですよね?コレ」
零「…………なぬっ?」
そう、呆然とした様子でそう呟いたなのはとスバルが目にしたジュラルミンケースの中身とは、新たなマジカルステッキなどではなく、謎のドライバーと様々な色彩の数枚のエンブレムが収められていたのである。
ケースの中身に収められている、色のみプレート状のエンブレムの数は五つ。
謎のドライバーの外見はガルウイング型のパトカーをモチーフにしたサイレンがベルトの上部にあり、フロントガラスにあたる部分が何かをセットできるような構造になっている。
そんな謎のドライバーとエンブレムを目にした二人の呟きを耳にし、テーブルの下で突っ伏していた零も顔を上げて振り返り、のそのそと四つん這いでジュラルミンケースの傍にまで寄って中身を覗いていく。
姫「ふうむ……どうやら一見して危険物、という訳でもないようだな。智大が新たに開発したライダーシステムか何かか?」
魚見「其処まではまだ分かりませんが、入ってるのがドライバーと変身に使うと思われるアイテムからして、恐らくそうかもしれないですね……良かったじゃないですか、零。マジカルステッキさんの三女さんとかでなくて」
零「ああ―――いや良かったじゃねえわどの口で言ってくれるんだお前っ……!俺が出てくまで開けるなと言っただろうがっ!これがホントに三女とかだったらどうなっていたか――!」
魚見「箱の中身が分からずにビクビクし続けるくらいなら、さっさと中身を確かめてしまった方が楽になると思っただけです。万が一三女さんが出て来た時には、まぁ、私が責任を取って契約を引き受ける覚悟でしたけど……」
零「市杵宍……お、お前っ……」
魚見「その後、カレイドの力で貴方をショタ化させて魔法少年にする目論見だったのに……クッ……残念ですっ……!」
零「俺の感動返せてめえ」
傷だらけのハートにこれ以上ないほど響く優しい台詞にジーンと来たと思ったら、下心満載の本音をポロリとこぼされ思わず出掛かった涙が引っ込んだ。そしてそんな本当に悔しそうに拳を握り締める魚見の隣で、ティアナはケースの中のエンブレムを一つ手に取り、窓から差す日の光に翳すように掲げて眺めていく。
ティアナ「でもコレ、どういう意図で送られて来たんですかね?傷心の零さんを労って、せめてものお詫び……とかでしょうか?」
零「……だったらもっと他に色々あるだろ。慰安旅行の招待券だの、良い温泉への案内状だのもっと良いものがっ」
優矢「や、それはちょっと話が美味すぎるって言うか、例え出来たとしても欲出し過ぎじゃね?」
零「欲を出し過ぎ?……ハッハッハ……並行世界を跨いで恥という恥を晒しまくった俺にっ、せめてもの癒やしを求める事も求めるなと言うのかお前はァああああああああッッッ!!!!」
優矢「ひ、ひぃいいいいいいいッッッ?!!分かったッ!!!分かったから落ち着けぇえッ!!!怖い怖い怖い怖い怖いってぇええええええッッッ!!!!」
なんかもう、血涙すら流しそうな形相で頭を鷲掴んで詰め寄ってくる零に優矢も顔を引き攣りながら恐怖の声を荒げ、そんな零の様子になのはも苦笑いしつつ、ケースの中からエンブレムの一つを手に取っていく。
なのは「まあでも、ホントにどうしようかコレ?取りあえず危なそうなものじゃないっぽいのは分かるけど……」
はやて「んー……まぁ、せっかくもらったんやし、有り難く頂戴してもええんやない?もしかしたら智大君も、今までの件を申し訳ないって思うてプレゼントしてくれたのやもしれんし……」
零「だったら尚のこと受け取れんっ……!これで今までの件をチャラにされて、またあのクソステッキが騒動を起こした時にさりげなく便乗して来るかも分からんのだからなっ……!そうならないようにコイツは突っ返しに行くっ」
優矢「えー、もったいないじゃんかー。せめて一回ぐらい試してからでも……うん、ウソウソ。返しに行こ、今すぐ、うんっ」
ギロッ!と、それだけで人を殺せそうな程の殺気を込めた目で睨み付けられて、優矢は冷や汗を流しながら両手を上げて軽口を閉ざし、優矢を黙らせた零は即座になのは達の手からエンブレムを回収してケースの中に投げ込み、閉じたケースを手に取って立ち上がった。
零「取りあえずっ、今から智大の事務所に行ってドライバーを返しに行ってくるっ。それでこの件は終わりだ。出掛けてる他の連中が帰ってきても何も言うなよ?特にアリサなんかから、変なトラウマを刺激してとばっちりを受けるのはゴメンだからなっ……」
優矢「あー……あー分かったから、早く行ってこいってっ。気をつけてなーっ」
人差し指をビシッと突き付けながら、一同に念を押して忠告してくる零に優矢も適当にそう返事しつつやる気なく手を振って見送り、そんな優矢や苦笑い気味のなのは達に見送られながら零はジュラルミンケースを手に廊下へ出て玄関に向かっていく。
零(全くっ、人の気も知らんでからに何が勿体無いかっ……まぁ、本当にお詫びだとすれば有り難いという気持ちもなくは無いが……)
そんな事を考えながら玄関に辿り着き、若干ヒンヤリとする玄関の扉の取っ手を掴む。
零(其処はソレ、此処でこんなものを受け取ればまた何かさせられるかも分からんのだ……此処は心を鬼にして、何を言われても動じない不屈の心で挑まねば……)
今まで散々口車に乗せられてどんな意見も封殺されて来たが、今度ばかりはそうはいかない。何せ失うものなど最早何もない身なのだ。どんな脅迫染みた事を言われようとも、一切突き動かされない不動の心を持って挑む決心をし、今度こそ安寧の日々を取り戻す為に扉を開け放ち……
『ヒヒィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイイイィィンッッッッ!!!!!!』
リア「――ん?おお!零君久しぶりー!元気にしてたかーい?」
零「」
―――扉を開けた先に広がっていた、町中にも関わらず馬鹿でかい馬の怪物の背に乗って清々しい笑顔を向ける顔見知りの元神様を見て、零の表情が凍り付いた。
不動の心、決心してから二秒で崩壊した瞬間である。
―……パタンッ―
零「…………うん…………うん?白昼、夢?…………いや…………もしかしたらまだ、あのクソステッキの魔力の残滓が残ってるせいで幻覚を…………?」
あ、そっか。そうだ、きっとまだ疲れてるんだ、そうに違いない、うん。絶対にそうだと考えながら一先ず玄関の扉をそっと閉じ、今の気分を落ち着かせようと親指と人差し指で瞼を抑え……
リア「んー?これは入っていいって事なのかな?よぅしおじゃましまーす、いえーい、たのもー」
『ヒヒイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーイィンッッッ!!!!!!』
―ガッシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーアアアァァァンッッッッッッ!!!!!!!―
零「ごぼぁあああああああああああああああああああああああああああァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあああぁぁぁッッッッ!!!!!!?」
優矢「ッ?!な、何だァッ?!何の音と悲鳴ッ?!」
なのは「ちょっ、零君ッ?!玄関で何やって……って何事ぉぉぉオオオオオオオッ!!!?」
気の抜けた掛け声と共に、ダイナミックお邪魔。
馬鬼と共に玄関をブチ破って飛び込んで来たリアのタックルをまともに受けてぶっ飛んだ零の悲鳴を聞き、なのは達が駆け付けて目にしたのは破壊された悲惨な光景の玄関と、馬鬼に跨がるリア、そんな一人と一匹に撥ね飛ばされて全身にガラス片がぶっ刺さり、ドクドクと流れる血溜まりの中に倒れる零の姿なのだった―――。