仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―センター街―
リア「―――というワケで、何やかんやありつつも君達の案内の下、こうして無事に街までやって来た訳だけど……おぉ、正に都会!って感じだねえ」
ガヤガヤガヤッと、零達に案内されて大勢の人々が賑やかに行き交うセンター街にやってきたリアは、街中に建ち並ぶ高層ビルの数々を見上げながらそんな感慨深い声を漏らし、暫し街の風景を眺めた後に「よし」と意気込みながら一同の方に振り返った。
リア「では早速、絢香達への贈り物を探しに街を回ってみるとしようかな。諸君、何か此処はオススメ!と思う店などはあるだろうか?」
ティアナ「や、あるだろうか、と言われましても……」
優矢「ぶっちゃけ、俺等もその辺あんま詳しい方じゃないって言うか、この世界での役目を果たすのに必死だったから他に目をやる余裕がなかったと言うか……」
リア「むぅ?それは頂けないなぁ。せっかく幾多数多の世界を旅しているのだから、もっとその世界ならではの娯楽も愉しまくては損だよ?戦いと息抜きは均等でなくてはならないからね。……よし、では今回は戦いと使命に明け暮れる君達の労いも兼ねて楽しむとしよー!おー!」
スバル「お……おー……?」
と、何か良くわからない謎のハイテンションで右腕を掲げながら笑うリアの勢いに圧されつつ、若干戸惑い気味に右腕を上げて応える優矢達。そして、零達はそんなリア達の様子を遠巻きに傍観しつつ、謎のドライバー一式が入ったジュラルミンケースを手にした零が怪訝な表情で口を開いた。
零「何だろうな……。玄関でアイツにぶっ飛ばされた時から妙な違和感があったんだが、アイツってあんなハツラツとしたキャラだったか……?前はもっとこう……一見穏やかに見えて冷徹と言うか、食えない奴だった気がするが……」
なのは「え、そうなの?私は全然、リアさんって元からああいう人当たりの良い人なのかなって思ってたけど……」
以前相対した時のリアと、今のリアの印象が何処か違って見えるように語る零に意外そうな反応を浮かべるなのは。すると、そんななのはの隣に立つ魚見が二人と共にリアを見つめながら語り出す。
魚見「多分、お二人が彼女に抱いた印象はどちらも間違っていないと思いますよ。きっと私達と戦った時のリアも、今のリアも、どちらも元からある彼女の内の本質なのかもしれません」
零「……と言うと?」
魚見「分かりやすく言えば、彼女にとってはどちらも"素"なんでしょう。私達と敵対していた時は、幻魔神としての役目を全うする為に冷徹な神を振る舞えるし、今のようにみなと仲良く接する事も出来る……特に今の彼女は、幻魔神としての永い生涯を終えたが故に、その柵みから開放された反動で、より今のこの瞬間が楽しくて仕方ないのかもしれません」
はやて「……あぁ、そっか……なんか、ちょっとだけ分かる気もするなぁ、その気持ち……」
なのは「?はやてちゃん?」
魚見の話を聞いて何か共感したのか、そう呟きながら苦笑いを浮かべるはやてに一同の視線が向けられ、はやては頬を掻きながら何処か複雑げに語る。
はやて「私も、ほら、ずっと部隊長として責任ある立場で働いてきたやろ?自分が望んで成った事なんやけども、やっぱり、それでもプレッシャーって言うか、周りからの期待とか、私の事を良く思わない人達の事とか……そう言うんのも色々含めて、背負って頑張って来たけど、今こうして皆と旅してる間はそういう柵みから開放されて、ちょっと気が楽と言うか……」
魚見「……私も少し、分かる気がします……。私も今は半ば無理矢理に押し付けられた水ノ神の役目から開放されて、初めてこうして地上に出てからは、冥府でずっと抱いていた悩みを考えずに済むようになりましたから」
はやて「ええ、私もそんな感じで……あっ、別に局員の仕事に嫌気が差したとかやないよっ?ただ、まぁ……今だけはこうしてみんなと、他の事を考えずに一つの目標を目指して普通に過ごせるんは、ちょっとだけ嬉しいかなぁ……なんてっ」
なのは「……そっか……うん、考えてみたら私達、こうやって旅を始める前までは根詰めで仕事してばっかりだったって言うか、その事で周りの色んな人達からも度々怒られてた気が……」
零「気も何も、実際にそうだったろうがよ。こっちが幾ら注意しても聞く耳持たずに仕事三昧で……。全く、人の事を無茶だなんだと言えた立場か」
はやて「上司に無断で危険な任務を進んで買って出てた人に言われたない」
なのは「同感」
零「グッ……ど、どの口で言うかっ……過度な量のデスクワークに加えて、重要な会議やら新人教育やらで忙しなく動き回ってるお前達にあんな高難易度な任務がこなせる筈がないだろうがっ!」
なのは「ソレ言い出したら零君だって仕事量は私達とそんなに変わらなかったでしょっ!……っていうかそうだ、思い出したっ……!確か何度か私やフェイトちゃんが引き受ける筈だった任務の受注書類をはやてちゃんに申請する前に後から書き変えて、自分の名前をサインしてた事あったでしょうっ?!しかも、勝手に私達が体調不良って嘘吐いてっ!」
はやて「せやっ……!書類の整理してる時に妙に零君の名前が多くて違和感感じたから、調べてみたらなのはちゃん達が筆記した書類のサインを後から書き変えて出したって分かって、ちょっと署内で騒動になったんやった……!」
零「……はて、何の話だったか……黒月さんの記憶にはござらんナー……お前ら揃って白昼夢でも見てたんじゃないのか?」
なのは「ま、またそうやってしらばっくれてぇええっ……!!言っとくけどアレも書類偽造で立派な犯罪なんだからねえッ?!私達が問題にしなかったってだけの話でッ!!」
零「ははははははは、冗談キツイな高町さんや。俺は清廉潔白を画に描いたような男ダゾ?この純粋且つまっすぐな瞳を見て、そんな後ろめたい不正を行うような奴に見えるのデスか?」
なのは「……などと容疑者はこのような供述を述べていますが如何致しましょうか、八神二等陸佐?」
はやて「よっしゃ説教や、今日という今日はこの捻くれた性根を叩き直したるっ……!」
魚見「……あの、三人共、人目の多い大通りでそういうのはちょっと……聞いてませんね」
やいのやいのっ、と以前に零が行った不正行為の件で揉める三人を一瞬止めようとするも、外野の声が届かない勢いで口論する零達に何を言っても無駄だろうと悟って諦め、軽い溜め息を吐きながら背後に振り返ると、其処には……
姫「…………(むすぅ」
……先程の一件から未だご機嫌斜め。拗ねた様子で口先を尖らせながらそっぽを向いて佇む姫の姿があり、そんな彼女を見て魚見は再び溜め息を吐いた。
魚見「桜ノ神、貴方もいい加減機嫌を治して下さい。さっきの件は私も悪乗りが過ぎたと謝罪したではないですか」
姫「……別に、その件の怒りを引きずってる訳じゃない……ただ、なんというかな……」
魚見「……一度意地を張ってしまったが故に、自分でも中々引っ込みが付かない、と?」
姫「う……」
図星らしい。魚見の指摘にあからさまに動揺する姫に、魚見も何処か呆れた様子で肩を竦める。
魚見「確かに、貴方の気持ちも分かります。さっきの貴方の言葉を借りれば、怨敵である幻魔の神であり、後の貴方達の時代に災厄を齎す存在の始まりである彼女に対して、複雑な感情を拭い切れないのは当たり前でしょうから」
姫「……分かってるんだよ、頭では私も……アイツを目の敵にするのはお門違いで、本当に悪いのは幻魔神の力を己の傲慢のままに悪用していたフォーティンブラス達だと言う事も。しかし……」
歯切れ悪く語りながら所作無さげに視線を彷徨わせてそう呟き、姫は自身の手元を見下ろす。
姫「それを抜きにしても……アイツは幻魔だ。奴らの手で、大勢の命が無慈悲に奪われ、私を信じて付いてきてくれた者達も目の前で殺され、幻魔から世界を守る事を私に後を託して志半ばに逝った……。鬼の一族や、当時の聖者達、柳生の衆、彼等と共に戦った者やその血を引く次世代達……そんな彼等の事を考えると、幻魔であるアイツを受け入れてしまう事が、私を信じてくれた彼等に対する裏切りになるんじゃないかって……」
魚見「……咲夜」
彼女達と幻魔達との因縁は決して浅くはない。永い戦いの中で、幻魔の非道な行いは嫌と言うほど見て来たし、その中には到底赦す事が出来ないモノもあった。特に姫はその悲惨な光景を此処にいる誰よりも目にし、失ってきた当事者だからこそ、リアを受け入れる事に未だ抵抗を覚えるのかもしれない。そんな彼女の複雑な心境に魚見も思わず口を結び、何か言葉を探すように俯いて考える素振りを見せると……
零「……まあ、別にそんな無理してまで受け入れようだなんて、考えなくても良いじゃないのか?」
魚見「……!零?」
不意に声を背後から掛けられ、振り返れば其処にはいつの間にかなのはとはやてに絞られていたハズの零が何処となく疲れた様子で立つ姿があった。確か説教の途中だったのではと?と気になってなのはとはやてを探すと、二人はリアと優矢達と共に何か雑談を交わしており、どうやら零の説教の最中にリアに呼ばれてあちらの方に行ったらしく、零はそんなリア達の方に目を向けながら言葉を続けていく。
零「神とは言ってもお前だって元は人間なんだ。聖人君子でもあるまいし、ソリの合わない奴ぐらい居たとしても何も不思議な事じゃない。アイツもそれで構わないみたい事は言っていたのだし、受け入れられない所があるなら別にそれでも良し、受け入れられる所だけ受け入れとけばいいだろ、今のところ」
姫「それは……しかし……」
零「……普段はボケ倒してるクセに、変な所で生真面目過ぎるんだよお前は……ちょっとは肩に張った力抜いてみろ。あまり気負い過ぎてもお前がしんどいだけで得するモノは何もないんだ……死んだ連中云々を語るんなら、先ずはお前自身が一番前を向いて生きやすい考え方に落ち着いてからにしとけ。気を揉み過ぎたせいでお前が病んだりでもしたら、それこそ、お前に後を託した連中に顔向け出来んぞ」
姫「…………」
姫の幻魔との永い確執は部外者である零には想像しか出来ないが、そう簡単に割り切れるほどの問題でもなければ、誰かからの言葉でそう簡単に解決出来るモノでもないのだろう。そうでなければ、もっと以前に姫自身の中で解決出来ていた筈だ。その葛藤に対しての姫が欲しいと思う答えは姫自身にしか分からないし、零達に出来るのはせいぜい姫が悩み過ぎないようにフォローする事ぐらいだが……
零「ま……ようは一人であれこれ考え過ぎるなって事だ。万年脳内思春期のお前にそんな気の重い顔をされたら、こっちも調子が狂うしな……取りあえず今は、探り探りでも良いから今のお前に合った距離感でアイツと接してみろ。それでもしまた何かウダウダ悩みでもした時は、俺とコイツで話ぐらいは聞いてやる……」
魚見「……そうですね。今は私だけでなく、零達も一緒なんですから。以前のように、一人だけで悩んで抱え込むのは無しですよ、咲夜」
姫「……二人とも」
それでも、こうして傍に居て、一緒に悩みを分かち合う事ぐらいは出来るだろうと、相変わらず無愛想な零と、どれだけ永い年月を重ねても変わらない笑みを向ける魚見の言葉に姫も驚くように僅かに目を見開き、そんな二人に余計な気を使わせている今の自分に対して思わず苦笑いを浮かべ、瞼を伏せて頷いた。
姫「そうだな……何事も考え過ぎは良くない。何より幻魔との戦いは、幻魔神を倒した事で終わったのだからな……幻魔だからという理由だけで、アイツという個人を受け入れないのはただの傲慢でしかないし、それではフォーティンブラスと何も変わらない……危うく奴と同じ轍を踏む所だったよ。心配を掛けてすまない、二人共」
零「フン……今更だろ、そんなの」
魚見「えぇ、友人を気に掛けるのは当然です。……まぁ、私としては、先程の零の言葉には少々反論したい部分が多々にあってモヤモヤしている所ですけど」
零「……は?」
姫「あぁ、それは私も聞きながら思った。悩み過ぎるだの、抱え込み過ぎるだの、寧ろ私から君へ送りたい言葉のオンパレード過ぎて思わずツッコミそうになるのを抑えるのに必死だったと言うか……」
零「はあっ?!」
いや、何故其処で急に自分に飛び火するのかと、姫の表情が少しは晴れて和やかなムードになったかと思いきやの予想外の展開に動揺を隠せない零だが、そんな零に構わず姫と魚見の話は続く。
姫「第一に、そもそも君は自分を軽視し過ぎているきらいがあるんだ。私を助けに来た時もそうだったし、魚見の件で有りもしない罪を被って彼女を庇ったり!あの時だけでも私がどれだけ気を揉んだか!」
零「あ、あの時の話はもう終わった事だろうがっ!今更蒸し返すような話じゃっ……!」
魚見「いいえ、この際ですからまた同じ事にならないように釘を刺すついでに言わせてもらいますが、もしあの時の貴方の提案が罷り通っていれば、今頃神々を敵に回してとんでもない事になっていた筈です。なのに貴方はその危険性を全くこれっぽっちもっ―――」
零「……あれ……なんだこれ……説教する相手がなのは達からコイツ等に変わっただけじゃないかっ……?」
姫を元気づけるつもりで掛けた言葉が何故か自分に向けられ、しかもなのはとはやてに代わり説教まで始まり、どうしてこうなったと頭を抑えて嘆く零。そんな中……
リア(……ふむ……成る程な……)
その様子の一部始終を、リアはなのは達と雑談を交わしたまま横目で見つめながら内心そう呟き、何かに納得するかのように小さく頷いていたのだった。
◆◇◆
―センター街・ショッピングモール―
そして、それから数時間後。リアの行き先が決まったという事で説教は中断され、一先ず零達はリアのリクエストである絢香達への贈り物を探しにこの日に備えて彼女達の好みを調べたと言うリアの調査の下、センター街の東側にある大型のショッピングモールへと訪れていた。因みに、この辺りの道に詳しくないと言う零達がどうやって其処までの道すがらを辿ったかと言うと……
零『―――スマホ……って、お前買ってもらったのかっ?!絢香にっ?!』
リア『うん、連絡を取るのに必要だろうという彼女の好意でね。やー、しかしほんと便利だねーコレ。インターネットとか電子マネーとかは勿論、新幹線の席の予約もこれひとつで十分。人間の技術力の進歩には頭が下がるよ。うん。だからこれさえあればモールまでの道筋も分かってチョーらくちん、だお?(*´ω`*)』
零『(コイツ……暫く見ない内に俗世に染まり切ってやがる……!)』
優矢『……っていうか、初めからソレ使ってりゃ俺らの案内とか別にいらなかった気が……』
という経緯から、現代人である零達も驚く程の吸収力で現代機器を使いこなすリアのおかげで迷う事なく此処まで辿り着き、その後も絢香達が好みそうな品がありそうな店を検索し、店先ではなのは達の異見を取り入れて無事に、絢香達への贈り物を選ぶ事が出来た。のだが……
零「―――あー……クソッ……まさか今度は四人一緒で説教されそうになるとはっ……」
頭を掻き、ウンザリとした口調でそう呟きながら零は一人、モール内のベンチにもたれ掛かるように座って溜め息を漏らしていた。周りになのは達の姿はない。と言うのも、その訳は今の零の台詞にある訳で……
零「全くっ、何だってこう、ああいう時に限って無駄に息が合うのかアイツ等はっ……。女三人寄れば姦しいとは良く聞くが、四人ともなれば尚更だなっ……」
空を仰ぎ、額に白い包帯が巻かれた手の甲を当ててもう一度溜め息を吐きながら先程の出来事を思い出す。
事の発端は絢香達への贈り物を探し終え、今度は自分の頼みに付き合ってくれたお礼にと零達への贈り物を探しに買い物の続きをリアに要求され(なのは達は最初遠慮していたが、実際はリアがもう少し観光したいという希望もあり、自分の我儘にまだ付き合って欲しいという意味も込めてとの事で)、とある洋服店でなのは達に似合いそうな服を探している最中、はやてが試着した服のサイズが合わず、どのサイズが合うか調べる為に店の店員を呼んでメジャーで測ってもらおうとした時に……
零『――わざわざそんな事せんでも一目で分かるだろ?腹周りだ腹周り、ウェストがこの前より(本人のプライバシーの為、自主規制)cm増してるんだよ』
優矢『ばっ?!』
はやて『…………(ピシッ!)』
……女性陣の長い服選びに痺れを切らしていたのに加え、気を利かせて無駄な手間を省かせようとそうアドバイスした結果、女性陣大顰蹙。特になのはとはやて、姫と魚見の四人は先の件の説教がまだ途中で不完全燃焼だったのが拍車を掛けてその勢いや凄まじく、これはヤバイとトイレ休憩を申し出てすぐさま逃亡。こうして外に逃げてきたという訳である。
零「何か、今日は何時にも増してツキ回りが悪いような気が……いや、さっきのは俺の失言だった訳だけども……」
とは言え、先程の件を抜きにしても此処までツキが悪いと、何だか何をやっても上手くいかないような気がしてならない。
……そう言えば、今日の自分の運勢はどうだっただろうか?と、ふとそんな事が気になって懐を漁り、ビートルフォンを取り出して開いた瞬間―――当然、目の前を何かが覆って暗闇に包まれた。
零「……は?なん――」
「だーれだー?」
―ギギギギギギギギギギギギギギギギィッ!!!―
零「イィッ?!イダダダダダダダダダダダダァアアッ!!!目がっ、目がァああああああッ?!!誰だお前ェええええええッ?!!」
急に目の前の景色が暗闇に変わったと思えば、直後に眼球を潰さんとばかりに信じられない力で両目を圧迫されて思わず悲鳴を上げ、すぐさま自分の目を覆っている何かを振り払いながら勢いよく飛び退き自分が今まで座っていたベンチの後ろを見てみれば、其処には何故か、なのは達と一緒に買い物をしている筈のリアが零に振り払われた両手を上げてキョトンとしていた。
リア「ありゃ……力加減を間違えたかな?すまないすまない、どうやら想定以上に驚かせてしまったようだ。幻魔は腕力が凄いから加減が難しくてねー、うん」
零「「うん」、じゃないわァアッ!!いきなり何事だお前ッ?!アレかッ?!新手の騙し討ちか何かかァッ?!危うく眼球を潰されそうになったぞこの野郎ォオッ!!」
リア「おお、まるでさっきの桜ノ神を彷彿とさせるリアクション。成る程……君と彼女が引かれ合ったのは、そういうところも含めて近しい部分が多々にあったから、かもしれないねえ?」
零「ああっ……?」
いきなり何の話だっ?と、危うく潰され掛けた両目を庇いながら思わず険しげに聞き返す零だが、リアはそれに対し特に何も答えず零が座っていたベンチの前へと移動して腰を下ろしていき、それを見て、零は怪訝な表情で辺りを見回していく。
零「おい、なのは達はどうした?一緒じゃないのか?」
リア「ああ、彼女達ならこの先のファミレスだよ。もうすぐ昼になりそうだから早い内に昼食を取ろうって事になってね。で、何時まで経っても帰って来ない君を探しにいく役を、私が買って出て迎えに来たって事さ」
零「……そうかよ……ソイツは無駄な手間を取らせたな……」
おかげで眼球を潰されそうになって散々な目に遭ったがな、と心の中で付け足しながら溜め息混じりにそう言うと、零はベンチの足元に置いておいたジュラルミンケースを手に取り、リアが言っていたファミレスに向かおうとするが、その時、リアが口を開いて喋り出した。
リア「しかし良い子だね、あの子達は。君と敵対し、一度は君を殺し掛けた私にもあんな風に屈託なく接してくれて。正直意外だったよ。もっとこう、桜ノ神みたいに警戒される事を想定していたのだけど」
零「……まぁ、アイツ等のお人好しは筋金入りだからな……長く一緒にいれば、自ずと毒気も抜かれていくぞ……かく言う俺も、アイツ等のそのお人好しに当てられた口だが……」
リア「……成る程……確かに、実際に関わってみればその言葉の意味が良く分かるよ。……私にも、彼女達のような存在が傍にいてくれたら、どんなに良かったかなぁ……」
零「……?」
ボソッと、風が吹けば掻き消えてしまいそうな程の小さな声でそう呟いたリアの言葉を耳で拾い取り、その意味が気になり零が訝しげな表情で振り返ると、リアは周囲を行き交う人々の姿を視線で追いながら、その目は何処か遠くを見つめているように見える。
リア「―――君はさ、零君。以前私と戦った時に、私が恐怖で人間達を従えようとした事を否定していたよね」
零「……突然なんだ、急に改まって」
リア「いや、別に大した意味はないよ。ただこうして、幻魔神でなくなってから人の中で生きていくようになって、ふと色々思うようになる事が多くてね」
そう言いながら、リアは空を仰いで手を伸ばし、太陽に掌を翳してポツポツと語り続ける。
リア「今だから言うけど、私はさ。再び幻魔神としての役目を果たす事を求められて、こうして蘇り、幻魔達を導く役を課せられて、君達が否定したその方法を手に取ったけど……正直、私もあんな方法で幻魔達が人と同じ世界を生きていくのは無理だろうと、頭の片隅では思っていたんだ。と言うのも、今の幻魔の現状を見て、そう思わざるを得なかったというのが本音だけど」
零「今の……そういえば、前にお前と戦う前のやり取りで似たような事を言ってたな……。数千年前には今より理性的な幻魔も多かったが、神権を次の幻魔神に譲ってからは、本能のままに人間を襲うようになったらしいとか」
リア「まあね。当時私が選んだ後継者は、私の後任を任せても大丈夫だと思った人選だったんだけど、どうやらその彼ですら、全ての幻魔を統治するのは無理だったようだ。結果、ギルデンスタンを始めとした様々な幻魔達が己の本能を抑えられぬまま生きて数千年が経ち、今では高等幻魔を除いて獣畜生同然の幻魔しか残らず、幻魔神という存在の消滅と共に消え去った……呆気ないものだよ、ホントに」
零「…………」
何処となく自嘲するように笑みをこぼして、肩を竦めるリア。零はそんな彼女の横顔を暫し見つめると、徐ろにリアが座るベンチの近くのオブジェに背中を預けるように寄り掛かった。
零「……今更後悔でもしてるのか?自分が生きていた頃、何かもっとこうしていれば、とでも……」
リア「ん?いや、別に後悔はないよ。流石に数千年後の未来の事まではどうしようもないし、私は私の時代で成すべき事を成し切ったし、自分なりに最善だと思う選択をしてきたつもりだ。私が選んだ後継者も、統治力は想像より私よりもなかったみたいだけど、彼よりも相応しいと思うような者も他にはいなかったからね。……と言うか、他のがどいつこいつも、幻魔神の力や権力にしか興味ない奴等ばかりだったから、彼しか選択肢がなかったってだけなんだけど……全く、そういう所は父上が統治していた頃から何一つ変わらなかったのが残念でならないよ」
零「……?父上が統治していた頃、って……」
リア「……あれ、そういえば言ってなかったっけ?私の父親って言うのは、私がまだ幼かった頃に幻魔界を収めていた幻魔の王。つまり王族ってヤツで、私、王の七番目の妻の子供。うん」
零「七番、目っ……」
それはまた、随分盛んですね、とでも言えばいいのか……。いや、問題は其処ではないか。つまりそれは、幻魔神という存在が生まれる前から、幻魔界を統べる者がいたという事か。しかし、そうなると……
零「その……お前の父親ってのは、お前が幻魔神になった頃にはどうしてたんだ?」
リア「?どうも何も、とっくの昔に殺されてたよ?自分が王になろうと、王の座を狙ったある幻魔に暗殺されて王位を奪われただけでなく、私の母や他の妻達や子供達も、その新たな王に残らず殺されてね。生き残ったのは当時、まだ九歳だった私だけだったよ」
零「…………」
そう言ってあっけらかんに己の過去を話すリアだが、その内容は、到底軽く聞き流せるようなモノではなかった。父親である幻魔王を殺され、王座を奪われただけでなく、母達を皆殺しにされて自分だけが生き残った。そんな予想外なリアの壮絶な過去に思わず目を剥いて固まる零だが、そんな零の反応を見て何か勘違いしたのか、リアは若干慌てた様子で胸の前で手を振った。
リア「あっ、別にこの復讐の為に幻魔神の力を求めたとかじゃないよ?さっきも言ったけど、私の父が収めていた頃から幻魔界は無法だったし、強い奴が生き、弱い奴は死ぬのが当然だと言う弱肉強食的な価値観が蔓延って一般化していたからね。だから私も、幼心に仕方のない事なのだと受け入れていたけど、その後の横暴の限りを尽くし、幻魔界を滅茶苦茶にしていく新たな王を見てこのままでは行けないと決心して、新たに神権というシステムを作り上げて王を倒した後に、幻魔界の新たな統制者として君臨した……みたいな感じだよ」
零「……どうして其処で神権に目を付けたんだ?単純に、王座を取り戻すだけじゃ駄目だったのか?」
リア「……うーん……強いて言えば、より完全な絶対者とは何なのかを追求した結果……かな?ほら、私の父上がそうだったように、王とかって叛逆されたり暗殺されたりするのが付き物だろ?其処に血気盛んな幻魔が加われば尚更、王が暗殺される度にコロコロ状勢が変わっていては、あのままではホントに幻魔界がいずれ潰れてしまうと危惧したんだ。だから、王よりももっと上の存在……挑もうという気概すら湧かず、誰も逆らえない絶対の存在を生み出す事で、幻魔界の状勢を不変のモノにしたかったんだよ。……ま、それも結果的に失敗に終わったけどね」
零「…………」
なんでもないようにそう語りながら、困ったように眉を下げてリアは笑う。しかしそんな彼女に対し、零は無言のまま眉を潜めて何か納得し難いような表情を浮かべていた。
零「何故だ?」
リア「……?何がだい?」
零「お前のその物事に対する執着の薄さの事だ。両親を殺された事もそうだし、俺達はお前が其処までの想いで作り上げた幻魔神という存在を消し去ったんだぞ?なのにお前はそんな俺達に怒りを覚えるどころか、未練すら抱いていない……。どうしてお前はそんな―――」
リア「平然としていられるか、って?さっきも言ったけど、私の価値観のベースには弱肉強食……強い奴が生き、弱い奴は死ぬのが当たり前って考えが今尚強く根付いてる。だからって別にそう振る舞おうって気はないのだけど、『負けた奴は全てを失って当然』……そういう考えは自分にも向けられていてさ。だから生前、私は死ぬまで誰にも敗れるような事はしなかったけれど、君達に負けた時点で、私は"何もかも失ったと受け入れられた"。……まぁ元より、今の幻魔界は其処まで執着する程のものではないと思ったから、早々に見切りを付けたっていうのもあるんだけどね」
零「……だから俺達に負けた時、妙に潔く負けを認めてたのか」
リア「まあね……君達と戦う時にも言った"不本意"、というのもそういう意味だ。だからまぁ、私が執着というモノをしないのはそういう単純な理由さ。君が其処まで気にする事じゃないよ」
零「……それは……」
―――いや、待て、違う。そうじゃない。
本当に問い質したい事はもっと別にある。
今までの話を聞いていて、リアに対し覚えたモヤモヤとした感覚。
一聞、今のリアの話にこれと言って可笑しな部分はなかったように聞こえるが、その中に何か、気付かねばならない疑問があったような気がするが……しかし、それが一体何だったか……。
本当はその事を追求したいのに、そのモヤモヤの正体が自分でも分からない故に口に出して言葉に出来ない。その妙な引っ掛かりに零が渋い顔を浮かべる中、リアは高層ビルの壁に貼り付けられた大型画面に映る時刻を見てベンチから立ち上がった。
リア「何か随分話し込んでしまったね、長話になってすまない。そろそろ行くとしようか?あんまり遅いと彼女達が心配し兼ねないし、特に桜ノ神とか、迎えに行った私に遅い!と言って怒りそうで恐いし」
零「…………、まぁ、その辺は俺の方でフォローしといてやる……話が長引いたのは俺が質問を投げ掛け過ぎたせいでもあるし……」
リア「おお?無愛想な見掛けに依らず優しいねー君は。しかし、あまり桜ノ神の前で私の肩を持ち過ぎないよう気を付けた方がいいよ?彼女からしてみれば、自分の契約者である君が天敵の私と仲良くしている姿を見るのは心底面白くないだろうし」
零「無愛想云々は余計だっ……大体、木ノ花はそんなこと気にする様な奴じゃないだろ。さっき話した時にも、アイツなりにお前とちゃんとした付き合い方を考えるみたいな事を言っていたのだし」
リア「……それとこれとはまた別の話だと思うけどなぁ……まぁ、今の君には言うだけ無駄か……」
零「っ?」
やれやれと、首を横に振りながら両手を広げて呆れるリアの意図が読めず、険しい顔で怪訝な反応を浮かべる零だが、リアはそんな零を他所に背筋を伸ばしながら歩き出していき、それを見て零も符に落ちない様子で口先を尖らせながらも、取りあえず今はリアと共にファミレスに向かうべきだろうと溜め息を吐いて一先ず気を取り直し、彼女の後を追うように足を踏み出した。が……
―……チュドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオォォォンッッッッッ!!!!!!!!―
リア「―――!」
零「?!何だっ?!」
突如、鼓膜を裂くような爆発音と共に零とリアの足元が大きく上下に揺れ動いた。その突然の震動に思わずバランスを崩して倒れそうになる零だが、リアの方はけたたましい爆発音に驚いただけで不動を保ち、今の爆発が聞こえてきた方へと振り向くと、其処には、街の至る場所が破壊され黒煙が立ち込めている光景が見え、零はその光景を目の当たりにし思わず目を見開いてしまう。
零「爆発っ……?何で急に……事故か何かか……?」
リア「……いいや。どうやら、そういうのとは少し違うようだよ」
零「……何?」
空に立ち上る黒煙を見上げて突然の爆発に困惑する零だが、そんな零とは対象に落ち着いた様子のリアが僅かに細めた目で正面を見据えながらそう呟き、零はリアの言葉に疑問符を浮かべながら彼女の視線を追って前を向くと、其処には……
―ギュイィィィィィーーーーーーーイィンッ!!―
『シャアァアアアアアアアアッ!!!』
「う、うわぁあああああああああっ!!!?」
「ば、化け物ぉおおおおっ!!!」
……街の上空に無数のファスナーが出現し、チャックが開くように裂け目が開け、其処から無数の怪物達……智大の世界のライダーの一人である迅武達が戦う怪人・パンデミック達が飛び出し、街の人々を無差別に襲う光景が広がっていたのだ。
零「パンデミックッ?!何でこの世界にアイツ等がっ……?!」
リア「ふむ……君の台詞から察するに、アレは元からこの世界にある産物ではない、と……何やらきな臭いなぁ……零君、こんな無粋な真似をする誰かに心当たりとかないのかい?」
零「ッ……寧ろあり過ぎて逆に検討が付かんっ……。とにかくお前は此処にいろっ!今はアイツ等を―――!」
一体何故、誰が何の目的でこんな真似をしたのか分からないが、このままパンデミックに襲われる人々を見過ごす訳にはいかない。とにかく今は民間人の救出が優先だとディケイドライバーを取り出して変身しようとする零だが、その時……
―バシュウゥッ!―
零「ッ?!なっ……?!」
ディケイドに変身しようとした零の目の前を、突然一発の銃弾らしき物が遮ったのだ。危うくその凶弾に当たり掛け、驚きを隠せないままその銃弾が放たれてきた方に振り返ると、其処には……
『………………ピピッ』
零が振り向いた先に視界に捉えたのは、無機質な造形の謎の白いアンドロイド……。その右腕の側部には、今の銃弾を放った正体と思われる射撃ユニットが搭載されており、その銃口を突き付けたままアンドロイドは無言で零を見つめ不気味に佇んでいたのだ。
零「お前はっ……?」
『………………(クイッ』
突然現れた謎のアンドロイドに困惑を露わにする零だが、アンドロイドの方はそんな零の反応に構わず、まるで「付いてこい」と告げるように顎を差した瞬間、パンデミックの大群が人々を襲う街中を走り出して何処かへと向かっていく。
零「……そうかよ。向こうの目的は俺、って訳か……」
リア「しかし、どうにも罠臭いのが否めないな……どうする?彼女達に連絡して先に合流でもしとくかい?」
零「……出来ればそうしたいが、こんな状況だ。パンデミック達の方も放っておけない以上、此処は分散して撃退に動いた方が得策だろ……此処で誘いに乗らないと何をして来るかも分からんからな……リア!」
例え罠だとしても、今はその誘いに乗るしかない。そう考え、零は背後のリアの胸にジュラルミンケースを押し付けた。
リア「?これは?」
零「お前の用件が片付いたら、そのまま知り合いの所に直行して突っ返しに行こうと思ってたモノだ……!お前はソイツを持ってなのは達と合流しろっ!いいか、絶対中身に傷は付けるなよっ?!もし壊しでもしたら、それを弱味にまた訳の分からんトラウマ事に巻き込まれるか分からんからなぁっ!」
『KAMENRIDE:DECADE!』
『FORMRIDE:KUUGA!DRAGON!』
指を指してしつこいくらいにリアにそう念を押しつつ、零は腰に巻いたドライバーにカードを装填してディケイドに変身すると、更にもう一枚カードをバックルにセットしてDクウガ・ドラゴンフォームに姿を変えながら素早い身のこなしでアンドロイドを追って飛び出し、その道中、地面に転がっていた鉄パイプを素早く拾い上げてドラゴンロッドへと変化させ、すれ違い様に人々を襲うパンデミックを次々と撃退しながら、アンドロイドの後を追跡していくのであった。
リア「……さて……これが本当に、零君だけを狙っての騒動なのか……どうにも不穏だなぁ……」
そして、謎のアンドロイドを追い掛けて遠ざかっていくDクウガの背中を見つめながら、独り残されたリアはこの突然起こった騒動に奇妙な違和感を感じてポツリとそう呟いた、その時……
―……ギュイィィィィィーーーーーーーイィッ!―
『シャアァアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』
そんなリアの頭上に、不意にファスナーが現れて裂け目を開き、一匹のパンデミックが飛び出し眼下のリアへと襲い掛かったのである。迫る凶爪がリアの後頭部を捉え、数秒後には無残にも引き裂かれたリアの姿が誰の目にも浮かぶが、しかし……
―フッ……―
『―――ッ?!ギッ……?―ガシィッ!―クギィッ?!』
―グシャアァアアアアアアアアアアアッ!!!―
不意に、パンデミックの視界からリアの姿が残像のように消え去り、直後、パンデミックの後頭部を背後から何者が鷲掴みながらそのまま地上へとめり込むように叩き付け、まるで果実が潰れたような生々しい音と共にパンデミックの頭がグチャグチャに粉砕されたのだ。そして、パンデミックを地上へと叩き潰した人物……パンデミックの背後へと瞬時に移動したリアはゆっくりと身を起こし、乱れた前髪を掻き上げて目付きを鋭く細めた。
リア「――いずれにせよ、あんまりこういうのは頂けないかな……私を倒した彼等を振り回すような真似は……」
―ギュイィィィィィーーーーーーーイィンッ!!―
『シャアッ!』
『ギィイイイイイイイッ!』
そう呟くリアの声音は、先程まで零と話していた時と違って低く、その佇まいはあの夜に零達と戦った時と何一つ変わらない、圧倒的な気配を漂わせている。
そしてそんな彼女の気配に引き寄せられるように、更に無数の裂け目が出現してパンデミック達が飛び出し、ワラワラと群がるパンデミックの大群を前に、リアも僅かに薄い息を漏らしてジュラルミンケースを肩に背負い、ゆっくりとパンデミックの群れに向かって歩き出していくのだった。