仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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番外編/幾ら努力しようが絶対に無駄に終わる努力もある。ようするに無駄な努りょ(ry⑥

 

―中央区・旧モール街―

 

 

―ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!―

 

 

聖桜『グッ……?!あぁああああああッ!!』

 

 

―ガシャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアンッ!!!―

 

 

天神『ッ?!魚見ィッ!!』

 

 

同時刻。地下下水道の管制室にて零達が何者かの襲撃に遭う中、地上の旧モール街では天神と聖桜がテュフォンを相手に奮闘する姿があった。

 

 

しかし、やはりヒュドラの持つ猛毒の牙が厄介な為にロクにテュフォンに近付く事も叶わず、かと言って距離を離した途端に放たれて来る炎弾の嵐に二人も防戦一方を強いられてしまい、遂には魔法陣で炎弾を防御し続けていた聖桜の障壁が打ち破られ、そのまま炎弾の直撃を喰らって背後の元電化店へとガラスを突き破って吹っ飛ばされてしまった。

 

 

テュフォン『ハッハハハハハハハッ!よえーなぁ神様たちよぉッ!アンタらの力ってのはその程度なのかァい?えぇ?』

 

 

天神『クッ……だったらッ!』

 

 

『SU•I•CA!』

 

 

額に片手を当てて愉快げに笑い挑発するテュフォンに対し、天神は左腰のホルダーからスイカロックシードを手にして解錠し、バックルへと装填してカッティングブレードでカットした。

 

 

―スパァアンッ!―

 

 

『Soiya!』

 

『SUICA ARMS!』

 

『Oodama Big Bang!』

 

 

―ギュイィィィィィィーーーーーーーーイィンッ……!!―

 

 

戦極ドライバーから響く電子音声と共に、天神の背後の空に出現したジッパー状の裂け目からスイカアームズが現れ地上に落下し、それを確認した天神はスイカアームズへと即座に乗り込むと、ヨロイモードへと変形してスイカ双刀を手にテュフォンと対峙していく。

 

 

天神SA『この巨体と分厚い装甲なら、その蛇達の毒牙もそうやすやすと通るまいッ!』

 

 

テュフォン『ハッ……!いいねいいねぇー、ちっとは楽しめそうじゃないかぁ。せいぜい足掻いてみせろよォ?かませ犬のカミサマよォおおおおおおおッ!!』

 

 

これで少しは歯応えが出ると歓喜を顕わにし、弓を引いて矢を放ちながら天神に挑みかかるテュフォン。

 

 

対する天神もスイカアームズの後ろ腰に備え付けられる巨大な薙刀・スイカ双刃刀を取り出しながら矢を弾き、その巨体を活かしてテュフォンに突進していくのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―管制室―

 

 

―――薄暗い室内に突如響き渡った発砲音と共に、零の右胸に撃ち込まれた一発の凶弾。

 

 

無数の赤い血飛沫が撒き散らされるその光景を前にリアも目を見開き、呆然と背後に振り返り零に銃弾を放ったその人物に目を向けると、管制室の入り口の前に佇むのは、自分達を追ってきたリーガン……ではなく、ストライプのスーツを着込んだ一人の青年だった。

 

 

リア「君、は……」

 

 

「―――なーんてな……どうだい、黒月?俺からのプレゼント、気に入ってくれたか?」

 

 

リア「……?プレゼン……?「グッ……ぅッ……」?!」

 

 

戯けるように意地の悪い笑みを浮かべる青年の言葉に訝しげに聞き返そうとしたリアの背後で、苦しげな呻き声が響く。

 

 

そしてその声に釣られリアが振り向けば、其処には撃たれた筈の零が苦痛に顔を歪め、右胸に撃ち込まれた銃弾……否、銃弾を模した注射状の薬が突き刺さった胸を抑えていた。

 

 

リア「これは……」

 

 

「俺特製の解毒薬だ。幾ら叔父さんの技術を真似た物でも、その程度の毒なんて俺の前じゃ大したもんじゃないさ。どうだ?副作用で痺れはするが、段々身体が楽になってくのが分かるだろ?」

 

 

零「……ッ……確かに、何だかだんだん身体が楽にはなってきたがっ……だからって今のは流石にタチが悪いだろっ……!"文臣"っ……!!」

 

 

解毒薬を撃ち込まれた右胸を抑えながらどうにか声を絞り出すようにそう言うと、零は額に汗を滲ませて解毒薬を打ち込んだストライプのスーツを纏った青年……事あるごとに零にトラウマ級のトラブルを持ち込み、今となっては零の天敵の一人である"早瀬"の名を持つ男、"早瀬 文臣"をキッと睨み付ける。

 

 

だが文臣はそんな零の視線も何処吹く風と意に介した様子もなく、解毒薬を放った銃を手の中で回転させてスーツの内ポケットに収めながら二人の下に歩み寄っていく。

 

 

文臣「タチが悪いとは酷い言い草だなぁ。せっかく死に掛けてた所を助けたんだぞ?もうちょっと素直に礼を言ってくれても罰は当たらないと思うが……」

 

 

零「だったら素直に礼を言わせる治療をしろっ……!というかっ、そもそも何でお前が此処にいるっ……?!」

 

 

文臣「ん?そうだな……まぁお前の毒の治療だったり、奴の動きに気付いて万が一に備えて追ってきたりとか、理由は色々あるにはあるんだが……」

 

 

と、文臣が何故この世界にいるのかと言う零の疑問に対して考えるような素振りを見せながら、文臣はゆっくりとリアが地面に置いたジュラルミンケースの傍に歩み寄って屈み、ケースの上に掌を乗せる。

 

 

文臣「取り敢えず今は、お前の怪我の治療に一役買うこのベルトの使い方を、其処の元神様に説明する為……みたいな感じだろうかなァ、うん」

 

 

リア「え……?」

 

 

零「使い方を説明、って……お前、何で智大のベルトのこと知って……?」

 

 

文臣「いやいや、ソレ叔父さんが作ったベルトじゃねぇぞ?コイツは俺が作って、そのまま完成間もなくお前達の写真館に送り付けたモノだ。……元幻魔神さんが、お前達を訪問するタイミングに合わせてな」

 

 

零「は……はあッ……?!ならソレを送り付けた犯人は、智大じゃなくてお前だったのかっ?!」

 

 

しかも、何故かリアが光写真館に着くタイミングに合わせて荷物を届けたのだと語る文臣に困惑を露わに驚愕する零だが、そんな零とは対象的にリアは無表情のまま文臣を観察するようにその顔をジッと見つめた後、やがて瞳を伏せて小さく溜め息をこぼした。

 

 

リア「成る程……今の早瀬の血筋の者は曲者揃いだとは知っていたが、君はその中でも格別のようだな……いや……タチが悪い、と、零君の言葉を借りればいいのかな?」

 

 

文臣「はははははっ、また酷い言われようだな。まぁ、確かに自分でも人よりかは意地の悪い方かなー?と自覚はしているが、それも黒月家に関して限った話さ。普段の俺はもっと紳士的かつ、全人類どころか自然にすらハートフルな男だぜ?lady?」

 

 

零「おい、今サラッと人のこと人類の枠から外してなかったお前っ……ゥッ……」

 

 

さりげに失礼な事を言われ思わず身を起こそうとする零だが、解毒薬の副作用の痺れに加えて傷が響き苦痛で顔を歪め、リアは文臣を見据えながら静かな口調で語り出す。

 

 

リア「良く回る口だな……。しかし、満更見当違いとも言い切れないんじゃないか?先程チョロッと口にしていたが、君はあの彼の動きを追っていたんだろう?君ほどの男が、あの彼の動きを一切見逃す筈も無し……君は彼がどう動くかも予想して、私達を狙って襲撃しに来ると踏んでそのベルトを彼等に送り付けた……つまり君は、最初から―――」

 

 

文臣「……そうだな。正直、俺が此処まで出張る予定はなかったよ。何せアイツの始末は黒月達と、このベルトを用いたアンタに全部任せるつもりだったしな」

 

 

零「!な、に……?」

 

 

あの男……リーガンの動きを監視していながら、その事を狙われる零達には伝えず、自分はベルトを送っただけで今回の件には傍観を決め込む予定だった。

 

 

そう自ら語る文臣に零は一瞬言葉を失うが、すぐに険しい表情で文臣を睨み付けた。

 

 

零「お前っ、タチの悪さにしても限度ってものがあるだろうっ……!奴の事を掴んでいたなら何で事前に知らせなかったんだっ?!そうすればっ―――!」

 

 

文臣「そうすれば、そいつを匿ってもっと安全な場所に避難させて、お前達だけで奴と戦った、か?それは困る。寧ろそうならないようにする為に、敢えてお前達に奴の事を知らせなかったんだからな」

 

 

零「何っ……?」

 

 

リアを今回のトラブルから遠ざけられてしまうのは文臣にとって都合が悪い。

 

 

そう語る文臣の意図が読めず訝しげに眉を寄せる零に対し、文臣はコツコツと人差し指でケースを叩きながら飄々と話を続ける。

 

 

文臣「俺としては、其処の元神様にはこの騒動の火中の中に進んで関わってもらいたかったのさ。その為にはどうすればいいかと考えて真っ先に思い付いたのは、ソイツが自分を倒した勝者と呼んで固執してるお前さんと奴をぶつけ合わせて、お前が命の危機に瀕すれば、必ずその場にノコノコ現れてくれると踏んだ。んで、結果は予想通りに事を運び、お前はその女を庇って瀕死の重傷を負ったって訳だ……因子を奪われたのはちょっぴり誤算だったがな」

 

 

詫びれもせず、手をヒラヒラさせて己の計画を語っていく文臣。

 

 

しかしその内容は流石に容認出来る物ではなく、彼の話を聞いていく内に零の顔付きも更に険しく染まって思わず声を荒げた。

 

 

零「ふざけるのも大概にしろっ……今までのお前の悪ふざけはギリギリでも容認してきたが、今回は度を越してるにも程があるだろっ!!なんのつもりか知らんがっ、お前が奴の行動を見過ごしたせいで街にどれほど被害がっ―――!!」

 

 

文臣「街の人間の事なら気にしなさんな。予め奴の手は読んでいたし、パンデミックが出現する地点に俺のガジェットを大量に待機させて怪我人どころか死人一人出しちゃいない。ああ、一応お前達の付近にもガジェットは潜ませてたが、お前達がパンデミックを速攻で倒してくれたおかげで出番は無しだ。いやはや、流石に流石、一騎当千のライダー達は違ったな」

 

 

零「ふざけるなと言ったぞ俺はっ……!どっちにしろ街の人間やリアを危険に晒したことに変わりはないだろうがっ!それでも医者かお前はっ?!」

 

 

ガァンッ!、と背中の壁に血まみれの拳を叩き付け、息も絶え絶えに文臣を睨み据えて怒りに吠える零。

 

 

そんな零の気迫を受けて文臣も一瞬口を閉して無言になると、ふぅ、と小さく溜め息を吐き、前髪を掻き上げながら真剣味を宿した口調で、

 

 

文臣「医者だからこそ、なんだよ黒月……此処までの事をしなければ、その女は自分の在り方を変えない。変えられない。……この騒動はな。ある意味、そいつを治療する為に建てたオペ室でもあるんだよ」

 

 

零「……なに……?」

 

 

リア「…………」

 

 

普段の人を苛つかせるふざけた口ぶりではなく、医者としての顔を表に出した文臣の淡々とした話に零は眉を潜め、リアは無表情のままそんな文臣を見つめていると、文臣はリアを顎で指し、

 

 

文臣「その女に人の道理で物を語っても無駄だ。見た目は人と同じでも、根底にある根っこの部分は人ではなく幻魔の……言っちまえば化け物の価値観なんだからな。お前の仲間の姫や魚見といったそもそもが人間の神様連中とは違い、異形の存在として生まれ、生きてきた世界が違う以上、人間の道理を説いたところでそいつの考えが変わる事はない。フォーティンブラスを始め、お前が今までの世界で戦ってきた連中がそうだったようにな」

 

 

零「……それは……」

 

 

そう言われ、零は今まで巡ってきた世界で戦ってきた強敵達との戦いを思い起こし、文臣の言葉を一概に否定出来ないとして口を閉ざして俯いてしまう。

 

 

すると文臣もそんな零からリアに視線を移し、声音を一切変えず言葉を続けていく。

 

 

文臣「まあだが、お前の言う事もあながち間違っちゃいない……。俺の目的はその女の自殺紛いな行為を辞めさせることだが、その為にこの街を巻き込むことを良しとした……手前勝手な理屈一つでな。そういう意味じゃ、俺の行いは医者とは到底呼ぶに値しない。糾弾されるのも当たり前だ」

 

 

ただな……と、文臣は僅かに目を細める。その瞳には、いつもの彼らしくもない強い意志のようなモノが見られる。

 

 

文臣「どんなに腐っても、俺は医者だ。命を生かす人間だ。それは人でも人外でも関係ねえ。目の前で死の縁に立たされるヤツがいりゃあコレを助けるし、命を投げ出そうとしてるバカがいりゃあ何をしてでも止める。……例え世界中の全てを敵に回してでもな……」

 

 

零「……お前……」

 

 

リア「…………」

 

 

迷いなく、リアを見据えながら断言するように告げる文臣。

 

 

……端から聞けばめちゃくちゃ以外の何物でもない。

 

 

なにせ彼は、目の前の一つの命の為ならば手段を選ばず、犠牲を強いる事になっても、何を敵に回そうとも救うと口にした。

 

 

到底医者とも思えない矛盾に満ちた言葉。普通ならば批難されても当たり前の事を彼は口にしてるのだ。

 

 

……だが同時に、それだけの覚悟を持って命というモノと向き合っている文臣の決意が伝わり、零は何処か呆気に取られた顔でそんな文臣を見つめ、リアも文臣の視線を受けて暫し見つめ返した後、呆れるように瞳を伏せて溜め息を吐いた。

 

 

リア「本当に無茶苦茶だな……まったく、理解に苦しむよ……。一度は君達の世界を奪おうとした敵を、何故其処までして……」

 

 

文臣「人間の中には、たまにそういう馬鹿が生まれてくるのさ。……で、どうするよ、元神様?もう分かってんだろ?俺もそいつも本気だ。黒月はお前の命を繋ぎ止められるなら自分の命すら懸けるし、俺もその為なら何を犠牲にしてでも阻止する……これだけの事をされても、まだ自分が死ぬ事に固執するか?」

 

 

リア「…………」

 

 

それはお前としても望む事ではないだろ?、と片目を伏せながら戯けるように語る文臣に対し、リアは無言のままそんな文臣と零を交互に見つめ無言になると、やがて、もう一度重々しい溜め息を吐いて肩を竦めた。

 

 

リア「参ったよ……ハッタリでないのは君達の顔を見てても嫌でも分かるし……流石に私を倒した人間の命と、私を倒して守った世界を人質に取られた上、私のせいでそれらが過失してしまってはいよいよ立つ瀬がなくなる……戦い以外でも、君達には叶わないようだな、私は……」

 

 

零「リア……」

 

 

文臣「……フッ……」

 

 

自嘲するように目尻を下げて微笑み、自らの敗北を認めるリア。

 

 

そんな彼女の様子を見て零も僅かに安堵するような表情を浮かべ、文臣も二人に見えぬように小さく笑う。が……

 

 

―…………グニャアァアアアアアアッ……―

 

 

零「…………あ……?」

 

 

―……ズズッ、ズッ……ドサァアッ!―

 

 

文臣「――!」

 

 

リア「ッ!零君!」

 

 

リアが自らの命を捨てる事を諦めた矢先、突然零が視界がグニャリと歪んで意識が遠退き、そのまま壁に寄り掛かったままズルズルと倒れてしまったのだ。

 

 

それを見たリアと文臣はすぐさま零の傍に寄るが、倒れる零の目は何処か空虚を見つめ焦点が定まらず、息をする呼吸音も「ヒュー……ヒュー……」と、今にも途切れてしまいそうな程か細く、そんな零の容態を目にした文臣は口の中で小さく舌打ちした。

 

 

文臣「長話が過ぎたようだな。血を流し過ぎてる……幾ら毒をどうにかしても、このままじゃ出血多量であの世逝きは免れん」

 

 

リア「再生の因子は?毒を抑える必要がなくなったのなら、アレの治癒力でこの程度の怪我もすぐに治せると思うが」

 

 

文臣「ダメだ。治癒を受ける本人の体力が先にもたない。流石に因子の力でも、本人が死んじまえば因子本体である心臓も止まる……このまま何もしなけりゃ、な」

 

 

リア「……何か秘策がある、といった口振りだね」

 

 

文臣「それを教えてやる為に俺が出張った」

 

 

ガチャッ!と、いつの間にか鍵を外したジュラルミンケースを開き、文臣は中に収まるバックル……ジャッジドライバーを取り出し、リアの前に差し出しながら説明を始めていく。

 

 

文臣「コイツは元々試作品のままお蔵入りした品物なんだが、お前が神権を保有してることに着目して改造を施したベルトでな。機能の一つとして、お前の持つ神権をコイツに封印するシステムを組み込んである。ま、ただ封印するってだけなら大した事はないんだが、コイツの有用性はここからでな。封印した神権の力を、限定的にだが一時的に神化する必要なく用いる事が出来る。つまり……」

 

 

リア「……まさか……」

 

 

文臣が言わんとしてる事に先に気付いたのか、リアは僅かに目を見開いて驚き、文臣もそんな彼女の反応に気を良くして頷きながら続ける。

 

 

文臣「幻魔神の力を、幻魔神になる事なく限定開放する事が出来る……。ま、長時間も開放し続けるとオーバーヒートを起こしてぶっ壊れるから使いすぎ注意だが、これなら幻魔神が再び生まれる事なく、一時的にでも力を行使することが出来る。……此処までの説明で、俺が言いたい事は伝わったな?」

 

 

リア「……そういうことか……ふう……何から何まで君の手の上みたいで面白味はないが、まぁ、四の五の言っていられないのも事実だ……」

 

 

これだから早瀬の血筋は油断ならないよ、と、愚痴とも取れるような台詞を呟きながら溜め息を吐くと、リアは文臣の手からジャッジドライバーを半ば乱雑に奪い取ってそのまま腹部に当て、バックルの端から伸びた金属製のベルトが巻き付いてドライバーを装着していく。

 

 

瞬間、リアが巻いたジャッジドライバーのバックルが突然緑色に淡く発光し、それに連動するようにリアの身体から緑色のオーラのようなモノが流れ出てベルトに吸い込まれていき、やがて吸収を終えたガルウイング型のパトカーをモチーフにしたバックルに、エンブレムのようなものが刻まれたのであった。

 

 

文臣「ふむ……神権の封印は無事に成功したようだな。どうだ?何か身体に不調はないか?」

 

 

リア「今の所はないね。寧ろ使わない重りがなくなった事で身軽になった気分だ。……で?君の考え通りにするにはどうすればいい?」

 

 

文臣「簡単さ。お前が知る、神権を呼び起こすアクションを何でもいいから実行すればいい。そいつが発動キーになって、ベルトから限定的に幻魔神の力を一時的に使える筈だ」

 

 

リア「……発動キー、か」

 

 

後はそれだけだ、とさも簡単そうに方法を教える文臣。

 

 

しかしその説明を聞いたリアはううむ、と何やら悩むような素振りを見せて逡巡し、僅かに考え込んだ末にそのリアが知る"発動キー"を文臣に教えてゆくのだが……

 

 

文臣「―――そいつはまた……よりにもよってこんな状況で、としか言いようがないな」

 

 

リア「全くだよ。……ま、君が私に提供してくれると言うのなら、話は早いのだけど」

 

 

文臣「それは流石に勘弁願いたい。せめて身持ちだけは清らかに、ってのが母親との約束なんでな。……仕方ないか」

 

 

そう言いながらヤレヤレと軽く溜め息を吐き、文臣は床に倒れる死に体の零の顔を覗き込んでパチパチと頬を叩いていく。

 

 

文臣「黒月ー、俺の声が聞こえるかー?」

 

 

零「――――…………っ…………?文臣、か…………?」

 

 

文臣「フム、意識は戻ったか……実はな黒月。リアの神権とジャッジドライバーを使って瀕死のお前を治療しようと思ったんだが、その前に一つ問題が発生してな。急遽、お前の助力も借りないといけなくなった」

 

 

零「…………じょりょ、く…………?」

 

 

どういう意味だ?、と意識が朧げながら文臣の説明を聞き、怪訝な反応を返す零。

 

 

それに対し、文臣は「ウェエッホンッ!」とわざとらしい大きめな咳払いをした後、

 

 

文臣「リアが幻魔神の神権を開放する為の発動キーは、今この場には一つしかなくてな。……その方法ってのが、魔力を有する人間から直接血を吸う『吸血行為』しかないらしい」

 

 

零「…………ハ…………?」

 

 

文臣「ま、要するにだ。リアには今から出血多量で死に掛けのお前から血を吸ってもらい、それで幻魔神の力を開放するから、耐えろ。なに。死の一歩手前くらいならまだ助けられる余地はあるから、後はお前次第だ」

 

 

零「ヤ、まっ……!ちょッ……!!こんな状態の重傷人にそんな無茶を要求するとか正気かッ!!?鬼か何かかお前はッ!!?」

 

 

文臣「お、ツッコミで活力が戻ってきたな。よし、その勢いのまま、イッテミヨー」

 

 

零「ふざけんなテメェええええええッッ!!!ってかっ、魔力を持ってる誰の血でもいいなら健康体のお前が差し出せばいいだけの話じゃ―グイッ!―なぁああああああッ?!!」

 

 

文臣の理不尽極まりない無茶振りを前に、先程までの衰弱振りも何処へやら。

 

 

キレて文臣へのツッコミが止まらない零だったが、いきなり誰かに顔をロックされて首の向きをグルンと強引に変えさせられ、振り向いた先に、口を開けて八重歯を見せるリアの顔が映った。

 

 

 

リア「なに、血を吸うにしてもほんの一定量だけだから安心してくれ。時間もあまりないんだ。死にたくなければ、死なないように耐えろ、零君。そういうの得意だろ、君?」

 

 

零「理不尽な要求にも程があるわァあああああッ!!!?ちょっ、待てッ……!!!!考え直せッ!!!!止めッ―――?!!!」

 

 

リア「さて。吸血なんて久方ぶりだから、上手く出来るか不安だが……うん。じゃ、いただきます、と。あー……」

 

 

―ガブゥッ!―

 

 

零「イィイイイッ――――!!!?」

 

 

こんな場面で残った力の全てを出し切り、全力で頭を振って抵抗の意を示す零だが、やはりそれも微々たるもの。

 

 

抵抗虚しく無意味に終わり、リアは零の首筋に噛み付いたのであった。

 

 

そしてリアは、さっさと行為を終わらせてしまおうとそのまま噛み付いた零の首筋からちゅぅううううううっと血を吸い始めていくのだが、吸い出した血液が舌に触れた瞬間、まるで電流が走ったかのような感覚が走り、閉じていた目を勢い良くかっ開いた。

 

 

リア(こ、これは……?滑らかな舌触りに、血液特有の苦味の中にほのかな甘み……?それでいて味もしつこくなく、粘り気もなく飲みやすい……なんたる……なんたる美味!)

 

 

―ちゅぅうううううっっ―

 

 

零「マ、ッ……!チョッ、リアさんッ……?アナタちょっと飲み過ぎじゃありませんかッ……?一定量でいいならそれ以上、はッ……」

 

 

リア(なるほど、これが彼の"母親の血"か……風の噂で耳にしたことはあれど、いやしかし、まさか此処までのものなのか?正に話に違わぬ禁断の味、これは確かに……クセになる……!)

 

 

―ちゅぅうううううっっ……!―

 

 

零「…………アノ……アノ、ちょッ……なんか心なしか、勢い、増してませんヵッ……?」

 

 

リア(ちゅうぅ、むちゅうぅ――。ちゅっ、ちゅるっ、ちゅううぅっ――。 はぁあッ……マズい、飲めば飲むほどクセになってくるっ……。首筋でコレなら、他の部位だとどんな味がする?薄味か?濃い目か?嗚呼……彼と戦った時にあんなにもドバドバと流れ出ていたのに勿体無い事をした……これなら一口くらい飲んでおけば……!)

 

 

―ちゅぅうううううううううううううううっっ!!!!―

 

 

零「ぜったい勢い増してるぞコイツゥうううううううううううッ!!!?止めろォおッ!!!文臣コイツ止めろォおおッ!!!この女ホンキで俺の血を吸い尽くすつもりぃぃぃぃぃぃぃぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァッ………………」

 

 

先程までの毅然とした姿は何処へ行ったのか。初めて口にした零の血の味に魅力され、興奮のあまり我を見失ってガッチリと零をホールドしながら呼吸も荒く、ひたすら血を吸っていくリア。

 

 

そんなリアの様子から冗談抜きで命の危機を感じ取った零が慌てて文臣にヘルプを求めるも、その顔色が急激に青白く染まってガクリとダウンしてしまい、その光景を傍から見ていた文臣もやれやれと溜め息を吐くと、リアの肩を掴んで揺さ振っていく。

 

 

文臣「そこまでにしとけ。それ以上は流石にガチで死んじまうぞ、ソイツ」

 

 

リア「……ッ?!ぁ、んんぅっ……はぁあッ……あぁ、そうか……すまない……少しばかり夢中になって、我を見失っていたようだ……んちゅ、んんむぅ……」

 

 

文臣の制止を受けて漸く正気に戻り、唾液と血が入り混じった赤い糸を引きながら零の首筋から離れたリアのその顔は、うっとりと頬を赤く染めて熱に浮かされているように見える。

 

 

――あ、これマズいスイッチ入ったな……。

 

 

興奮冷めやらぬまま、口周りに付いた血を拭って唾め取るリアの様子からそう確信し、文臣は彼女から零へと視線を移すと、一定の量を超えた血を絞り尽くされた零は真っ白に染まり、軽く痙攣まで起こして完全に気を失ってしまっていた。

 

 

文臣「……ま、ギリギリ死なない程度で済んだから良しとするかね……で、どーだいリア?神権は使えそうか?」

 

 

リア「ンッ、ンンッ……ああ。少しばかり多めに採取してしまったが、これだけ魔力を得られれば後は容易いよ……ふっ!」

 

 

文臣の質問に軽くそう答えながら、リアは腹部のバックルに意識を集中した後、全身に気合を入れたと同時に緑色のオーラがベルトから放出されてゆく。

 

 

すると、緑色のオーラはそのまま霧のように宙を舞った後にリアの下に集まって右手に宿り、リアは緑色のオーラが纏われた右手を開閉して調子を確かめると、零の傍に腰を下ろし、零の胸に右手を当て……

 

 

リア「……フンッ!」

 

 

―ズドォオオオオオッ!!!―

 

 

零「―――――ッ!!!!!?グッ……ガハァアァアアアアアアアアアアアッ!!!!?」

 

 

いきなり掌底気味に零の胸に右手を打ち込み、右手に纏うオーラを零の中に注ぎ込んだのだ。

 

 

瀕死の身体にはあまりに重いその衝撃に零も思わず意識を呼び戻されて思いっきり吐血し、身体をくの字に折り曲げながら胸を抑えて激しく咳き込んでしまう。

 

 

零「ゲホッ!!ゲホッゲホッゲホォッ!!ぐっ、テ、テメッ……!ナニいきなり馬鹿力でっ……!血を吸い尽くした上にトドメまで刺す気かァッ?!」

 

 

リア「おお、元気なツッコミだ。ウン。その様子だと、どうやら無事に成功したようだね」

 

 

零「何っ?…………ぁ、れ……?」

 

 

危うくホントに昇天し掛けて額に青筋を浮かべながら怒鳴る零だが、リアの言葉を聞いて漸く其処で身体に痛みがない事に気付き、自分の身体を見下ろすと、テュフォンに受けた傷がいつの間にか癒え、毒に侵されていた筈の黒い肌も元の肌色に戻っていた。

 

 

零「治ってる……?奴から受けた傷も、毒まで一瞬で……?」

 

 

リア「神権を一時的開放して、幻魔神の治癒力を君に付与したんだよ。ま、因子に侵食された左目までは元には戻せなかったけど……それも私の方で取り返してくるよ」

 

 

零「!取り返しにって、まさか、奴と戦いに行く気か?!待てっ、だったら俺も―バチバチバチバチィッ!!―のぉおおおおおおッ?!!」

 

 

天井を見上げるリアの台詞からテュフォンの下に戻ろうとしている事に気付き、自分も一緒に行くと立ち上がろうとした零だが、腰を上げた瞬間に全身に痺れが走り、力無くその場に座り込んでしまう。

 

 

零「な、ンだ、コレッ……?身体が、痺れっ……?!」

 

 

文臣「さっき言っただろ?解毒剤の副作用で身体に痺れが出ると。俺が作る薬品は神格の力でも簡単に打ち消せるもんじゃないのさ」

 

 

リア「そういうことだ。君は大人しく休んでろ。ナニ、あの彼への借りは、私が君の代わりに返しておくさ」

 

 

解毒剤の副作用で動けない零にそう言いながら、リアはジュラルミンケースの中に残る数枚のエムブレムを手に取り、そのまま軽い足取りで管制室の出入り口へ向かっていくと、そんな彼女の背中に向け文臣が声を掛ける。

 

 

文臣「一応念は押しておくが、もうヤケは起こすんじゃねえぞ……。お前が自分の命に一切の執着がなかろうと、そんなお前の為に身を張る馬鹿が出来ちまったんだからな……その繋がりを作っちまった以上、責任も取らずに逃げるのは無責任ってもんだ」

 

 

リア「……肝に銘じておくさ……彼を頼むよ?早瀬のトリックスターくん」

 

 

エンブレムを軽く上に放り、落下してきた所をキャッチしながら戯けるようにウィンクを返しながらそう告げると、リアは地上に向かうべく扉を押して管制室を後にしていく。

 

 

そして文臣もそんなリアの背を見送ると、肩を竦めて軽く溜め息をこぼし、その様子をジッと見ていた零は痺れる手で額を流れる汗を拭い、

 

 

零「お前、アイツを説得する為にわざとあんなハッタリをかましただろ……」

 

 

文臣「……さてな。ただ、俺はやると決めたからにはいつでも全力投球だぞ?お前に関する事は面白いから、特にな」

 

 

零「吐かせっ。礼は言わねえぞ……まぁ、お前から受けた過去の仕打ちの一つはチャラにしてやってもいいが……」

 

 

文臣「マジ?やったね。なら許してもらった分を埋める為に次の企画を用意しなきゃな」

 

 

零「前言撤回オマエだけは何があってもぜったい許さんっ」

 

 

凝りもせずに次の悪巧み宣言を口にする文臣に思わず許し掛けた気を引き締め直し、絶対にこの男の前で隙は見せないと改めて固く誓う零なのだった。

 

 

 

 

 

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