仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
―機動六課・ヘリポート―
「人気の少ない場所で話したい」という紫苑の急な申し出を受け、零と雷、紫苑の三人は場所を移し、屋上へ続くエレベーターに乗って機動六課隊舎のヘリポートへ足を運んでいた(最初は姫も同行しようとしたが、「ぞろぞろ行った所で邪魔になるだけだ」と幸助に首根っこを掴まれて引き留められた
零「──それで、わざわざ俺と何の話をしたいんだ?」
雷「…………」
屋上に着いてから、鉄柵越しに隊舎周辺の景色を暫し見渡していた零はわざとらしく不敵な笑みを顔に貼り付けたまま振り返るも、雷は何も答えない。
ただ真顔のまま真っ直ぐに零を見つめるそんな雷の様子を横目に、紫苑は薄く溜め息を吐いた後、零に向けて代わりに口を開いた。
紫苑「ついさっき、皆や貴方の仲間達と一緒に集まった食堂で話を聞かされたんです。貴方の知り合いだという、小坂井さんという方から」
零「……小坂井……?まさか、先輩……?あの人まで俺達の世界の滅びに巻き込まれてたのか?」
紫苑「そうらしいですよ。それに、貴方の世界のお仲間……クロノさんとユーノさん、でしたっけ?も来てます。なんでもその二人と一緒に今まで色んな世界を放浪してて、自分達の世界に帰る方法を探してあっちこっち旅して回ってたんだとか」
零「あの二人までっ?……無事だったのは嬉しいが、何をどういう縁を辿ればソコとソコが繋がるんだよ……」
お互いに知り合いでもなければ顔も知らなかったハズだろ……と、クロノとユーノが無事でこの世界にまで来ているというのは大変喜ばしい話だが、ハルと知り合ってた上に一緒に旅までしてたというあまりに急で突飛な話を聞かされ、零も流石に理解が追い付かず困惑した顔で遠くを見つめてしまう。
その反応に紫苑も苦笑いを浮かべるが、すぐに気を取り直し、話の続きを語った。
紫苑「どうやらあの人、かなりの情報通のようで、貴方が今抱えてる事情にもそれなりに精通してるみたいでしたよ。貴方の持つ因子や、それに貴方の過去が関わってること。今回の事件の裏に貴方の父親が関わってた件についてもそうだし……ロストとかいう仮面ライダーの正体についても……」
零「………………」
淡々と、ハルから聞かされた内容を羅列する紫苑の話を聞きながら、零は俯いて口を閉ざす。
暫しの沈黙の後、零は徐に鉄柵に寄り掛かりながら屋上からの景色を眺め、溜め息を一つ漏らした。
零「前々から油断ならない人だとは思ってたが、外の世界に出た途端、ここまで色々探られるなんてな……。学生時代、あの人の前で下手に魔法の事とか話さなくて正解だったか」
紫苑「……案外落ち着いてるんですね。正直もっと取り乱したりするものかと」
零「これでも驚いてるさ。ただ短期間の間にとんでもない事ばかり起きまくるわで、情報量の暴力に叩きのめされ過ぎて一々動揺するのも疲れてきたというかな……本音を言えば、もっと一つ一つ小分けにでもして持ってきて欲しくはある……」
でないといい加減こっちの身が持たないと、驚きの真相に一度に苛まれ過ぎた零は空を仰ぎ見たまま疲労感を滲ませた溜め息を吐き出す。
そうして一度目を伏せて何やら考え込む素振りを見せた後、瞼を開き、何処か恐る恐ると口を開いた。
零「なのは達もその場にいたんだろ?……アイツら、どうだった……?」
紫苑「……それは、まあ……」
雷「どうしても気になるなら、お前の方から直接高町達と話した方がいい。この件について、無関係な俺達が下手に口を挟むべきではないだろうからな」
零「……違いない……」
あまりにまっすぐ過ぎる正論に反論も出ず、思わず自嘲の笑みが漏れ出る零。
そんな零の心境を察して紫苑と雷も一度互いに顔を見合わせると、一拍間を置いた後、紫苑が改めて零と向き直り口を開いた。
紫苑「ともかく、貴方が抱えている事情については一通りハルさんから聞かせてもらいました。なのでこの世界の六課も、貴方の事情や黒幕が別にいる事を本局にも説明して、ディケイドに対する警戒態勢を解いてもらえるよう計らってくれるそうです。まだ向こうからの返事待ちではあるけど、一先ず現状としては、零さんへの監視も様子見という形で取り下げて貰えるみたいですよ」
零「……クアットロ達なんていう目に見える外敵が現れた以上、そっちを優先するのは至極当然だろうしな……いつまでも俺やお前に拘ってなんていられないだろうさ」
紫苑「…………」
この世界の六課や管理局の自分と紫苑に対する認識が改まって自由の身にもなれるというのに、零の顔色は一向に晴れる様子はなく、その口振りも何処か投げやり気味で大して関心もなさそうに聞こえる。
その些細な違和感に気付いた紫苑が僅かに目を細める中、零は瞼を伏せた後、再び紫苑と雷の顔を交互に見る。
零「話したい事がもうないなら俺は戻らせてもらうぞ。こっちはお前のとこの部隊長に無理を言って軟禁を解いてもらった身で、それについての謝罪もまだ済ませてなくてな。これ以上、無断で局内を好き勝手に動き回ってる所を見られて不興を買うのは俺も御免だ」
そう言いながら適当に話を切り上げ、紫苑の横を通り抜けて屋上の出口に向かって歩き出す零だが、その前に雷が歩み出て立ち塞がってしまう。
零「今度はなんだ……」
雷「随分俺達から離れたがるんだな。まるで俺達に対して怯えているみたいだ」
零「…………ハッ。表情筋が死んでいるような真顔でとんだ冗句を言ってくれるじゃないか。センスないぞ、お前」
雷「そうか。……では何故、こうして俺と向き合っている今も俺から震える手を隠そうとするのか、直接問い質しても構わないんだな?」
零「………………」
戯ける零のおふざけを軽く聞き流し、表情を一切変えずに詰め寄ってくる雷。その真剣な眼差しに表情を消した零も雷の目を見つめ返すが、やがて顔を逸らし、彼に指摘された右腕の震えをもう片方の手で抑え込みながら半歩後退りしてしまうが、雷は構わず更に一歩詰め寄る。
雷「そんなにいたたまれないか?その手で俺やコイツ、この世界やお前の仲間達に手を下してしまった事が」
零「……俺が?馬鹿を言え。今まで散々自分の都合を優先してこの力を行使してきたんだ。今更罪悪感を感じるだけの殊勝な心掛けなんか持ち合わせちゃいない」
紫苑「だったら……どうして僕らと一度も目を合わせてくれないんです?その腕は、何を恐れているんですか?」
零「……っ……」
雷に気圧されて後退る中、今度は背後の紫苑から追及の言葉が飛んできて一瞬言葉が詰まってしまい、そんな零の様子を見かねた雷が溜め息混じりに視線を落としながら呟く。
雷「俺とて部隊を預かる隊長の端くれだ。相手が今どんな気持ちでいるのかぐらい、全部でなくともある程度察する事は出来る」
零「…………」
雷「お前の身に降り掛かった出来事は、どれも全て一人で抱え切れるものなんかじゃない筈だ。なのに、どうしてまだ自分だけで背負おうとする?……誰かを頼る事は、お前にとってそんなにも恐ろしい事なのか?」
零の心に寄り添い、心の底からの本心を言葉に滲ませて心配するように雷はそう問い掛ける。だが……
零「──お前らには、解らないさ……」
紫苑「……っ」
雷「黒月……」
消え入りそうな声音の零の明確な拒絶に、紫苑が息を詰まらせ、雷も僅かに眉を寄せながら零の顔を見据える。そんな二人に対して零もまた、自嘲気味な笑みを口元に貼り付けたまま口を開いた。
零「誰かに頼った所で、俺の罪が消えて無くなる訳じゃない……お前らも聞いたんだろう……?俺がイレイザーなんて化け物に成り果てて、この世界の人間であるお前達や多くの次元世界さえ手に掛けた……そんな重罪人が、どうして被害者であるハズのお前らを頼ろうなんて恥知らずな真似が出来ると思うんだっ……」
雷「…………」
紫苑「零さん……」
今にも泣き出しそうな声と沈痛な面持ちを露わにし、そう吐き捨てる零に雷も紫苑もそれ以上何も返す事が出来ず押し黙ってしまう。
紫苑と雷が本心からこんな自分の事を気遣ってくれているのは分かる。その気持ちは素直に嬉しく、正直、二人の優しさに折れかかっている心を助けられてるのも事実だ。
だが、それとは同時にそんな優しさを受け入れようとしている自分自身を許せず、そんな資格もないとどうしても卑下してしまう。
零「結局、お前らが最初に危惧してた通りの話になっただけだ……。俺は此処にいるべきではないし、世界を救うなら紫苑の方がよっぽど適任だ……これ以上、俺のせいで無関係のお前達を巻き添えにする気はない……」
そう言って、今にも倒れてしまいそうなほど覚束無い足取りで、そのまま二人を置いて屋上の出入り口の扉へ向かおうとする零。
その場に残された紫苑はその後ろ姿を目で追うも、零に掛けるべき言葉が咄嗟に出てこず口を閉ざしてしまう。
やがて、零が扉の取手を掴んで回そうとした音を聞き、雷は何か意を決したように零の方に振り向いて口を開こうとするが、しかし……
「あらあらぁ。もうお帰りなのですか〜?せっかく来たばかりで面白くなりそうな流れでしたのに、ざぁんねーん」
「「「……!!?」」」
何処からともなく、甘ったるい女の声が響いた。
不意に聞こえた聞き覚えのあるその声に釣られて雷と紫苑は慌てて顔を上げ、零は咄嗟にその場から飛び退いて二人の元にまで下がり、雷と紫苑の眼差しを追うように鋭い目付きで塔屋の上を睨み付けた。其処に……
クアットロ「はぁ〜い。先程ぶりですねぇ皆さん。素敵なお顔が沈みに沈み切っていて何よりです♪」
零「クアットロっ……」
塔屋の上にいつの間にか腰を下ろし、片手をヒラヒラさせながら愉快げな笑顔と共に三人を見下ろす栗色の髪の女。
先の戦いにてハル達の前に敗走し、何処かへと姿を消した筈のクアットロの姿があった。