仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第二十一章/雷牙の世界⑯(前編)

 

―機動六課・作戦会議室―

 

 

なのはと幸助の乱入によりクアットロが退散した直後、突如としてクラナガンの上空に現れた謎のデジタル時計型の巨大兵器の存在は六課だけでなく紲那やグラン達の異世界組、そして街の市民達の間にも一気に広がり、瞬く間に混乱と騒動に陥っていた。

 

 

そんな彼らを治めるべく迅速に動き出した局員達が皆をどうにか落ち着かせつつ、安全圏までの避難誘導に既に動き出している。

 

 

そんな中、この世界の機動六課のメンバーと異世界からの助っ人組、そして零達が六課の作戦会議室に招集され、一同の視線の先には巨大なモニターの前に登壇するこの雷牙の世界のはやてと、その隣で彼女の助手役を務める奈央の二人の姿があり、彼女たち二人の背後にある巨大モニターの映像には数時間前にクアットロが去り際に残したと思われる件の兵器……タイマーがあと六時間を切ったデジタル時計型の巨大建造物が映し出されていた。

 

 

はやて(別)「こうして集まってもらったのは他でもない。もう承知の上やと思うけど、皆に話したいのはこのクラナガンに、今回の事件の黒幕の1人である別世界のクアットロが残したと思われる、このとんでもなくでかい時計みたいな兵器についてや」

 

 

奈央「しかもこの巨大な時計、実は私達が目にした個体だけではなかったと分かったんです。それがこちらで……」

 

 

奈央がそう言いながら手に持つタブレットの画面を手馴れた手付きで操作すると、大型モニターの映像が瞬時に切り替わる。

 

 

其処には零達が目にした大型のデジタル時計型の兵器だけでなく、街のあちらこちらに同型のデジタル時計型の兵器が三機、クラナガンの街の空の上に同様に鎮座している映像が映されていた。

 

 

フェイト(別)「同じ奴が…四機…!?」

 

 

奈央「ええ。しかもこの兵器に備え付けられたタイマーは、今こうしている間にも着々と時間が進んでいる……もしかすると、このままいけば……」

 

 

幸助「爆発するな。この次元ごと、間違いなく」

 

 

奈央の台詞に被さるように、壁に背中を預けて腕を組む幸助の淡々とした声が会議室内に響き渡る。

 

 

その内容に一同が驚きと動揺の眼差しを一斉に幸助に向ける中、先に我に返った雷が真剣な顔付きで問い掛けた。

 

 

雷「その口ぶり。アンタ、もしかしてアレについて何か知っているのか?」

 

 

幸助「一応な。いつぐらいだったか忘れたが、大分昔に俺たちの世界に"ハンドレッド"だとか名乗る連中が突然侵略しにやってきた事がある。そん時に奴らが持ち込んできたのが、あの"ドゥームズクロック"とかいう兵器だ」

 

 

理央「ドゥームズクロック……」

 

 

椛「正直に言って烏合の衆にも程がある連中だったの。戦力に使ってたライダーも違う世界の偽物だったし、あんなのを使うぐらいならせめてもっと歯応えのあるもがっ」

 

 

シズク「椛ちゃんステイ。今はちょっと空気読もっ」

 

 

心底退屈そうに、ハンドレッドと戦った時の記憶を思い出して愚痴を漏らす椛の口をシズクが横から塞ぎ、そんな二人を他所に、グランが幸助に改めて質問する。

 

 

グラン「つまり、一度は戦った事がある相手が使ってた兵器って事なんだろ?なら対策ってか……いやそもそも、今のアンタ達なら今すぐ行ってパパッと片付けるぐらい訳ないんじゃないのか?」

 

 

シズク「それは、確かに……今回の八雲の所業は私達にとっても静観出来る物じゃないし、恐らくアレも八雲がクアットロを唆して用意したものに違いないから、私達が対処するのが事態の解決に早い…んだろうけど……」

 

 

何やら歯切れの悪いシズクの反応に一同が怪訝な反応を返す。それに見兼ね、幸助が彼女の代わりに説明し始めた。

 

 

幸助「これだけの事態を引き起こしておきながら、俺達がみすみす引き下がるなんざ八雲の野郎だって思っちゃいない筈だ。実際、アレは外見こそハンドレッド共が使ってたドゥームズクロックと相違はないが、明らかに俺達に向けて手を加えられてるのがひと目で分かった。間違いなく奴の仕業だってな」

 

 

紲那「……それってつまり、向こうはあの時計を幸助さん達に破壊される事を想定して、何か罠を仕掛けられてるかもしれない、と……?」

 

 

幸助「寧ろそっちが本命である可能性の方が高い。奴の悪辣さに関しては嫌という程身に染みているからな……今回の事態も、クアットロ達の件も、奴からしたらどんな結果になろうが知ったこっちゃないに決まってる」

 

 

クラウン『ええ。私達とも対峙した際、彼は既に自分の"ノルマ"を達成したとも言っていました。つまり此処からは彼の個人的な趣向……自らが望む"至高の悲劇"とやらの為に、私たち自らの手でその引き金を引く様を高みから静観している事でしょう』

 

 

零「……何が至高の悲劇だ……」

 

 

なのは「……零君……」

 

 

幸助の説明を補足するクラウンの話を聞きながら、実の父親のあまりの醜悪さに憤りを覚えて拳を固く握り、苦虫を噛み潰したように顔を歪める零。

 

 

その様子に気付き、彼の隣に立つなのはの表情にも陰りが差す中、幸助は話を続けていく。

 

 

幸助「ともかく、奴の狙いが定かではない現状、俺とシズクと椛の三人はドゥームズクロックの直接破壊に参戦は出来ない。その代わりと言っちゃなんだが、クアットロ達はあの時計がカウントダウンを切るまで手厚い陣形を敷いてくる筈だ。俺達はその露払いに手を貸す。……奴を取り逃した失態を取り返すのも兼ねてな」

 

 

はやて(別)「分かりました。それだけでも助かります。そんで、他の時計、ドゥームズクロックが鎮座する別々の地区には戦力を分散し、これを六課メンバーと協力を申し出てくれた異世界組の皆さんで破壊して爆発を阻止する。それだけやったらまだシンプルな話なんやけど……」

 

 

はやて(別)が奈央に目配せをすると、奈央はタブレットを再度操作して大型モニターの映像を再び切り変える。

 

 

映像の中には先程と変わらずドゥームズクロックが空に浮かぶ姿が映し出されているが、問題はその周囲……灰色のオーロラが常時展開し、その中から次々に出現する紫苑達も戦った量産型ゲシュペンストやヒュッケバイン、更にはそれらの陣頭指揮を取るインスペクターのシルベルヴィントとドルーキン、そしてセンチュリオ・レガートゥスが、各エリアのドゥームズクロックを護るように陣形を粛々と展開する映像が映されていた。

 

 

勇輔「アイツ等!また……!」

 

 

理央「まぁ、連中が大人しく時計を破壊される様を黙って見ている筈はないだろうな……」

 

 

紫苑「ですね。だけど白い天使みたいなライダーはともかく、あのインスペクターとか名乗ってた二人組の連中は恐らく僕が狙いなんだろうね……戦いの中、僕の中の因子がどうとか言っていたし……」

 

 

光「?紫苑君、上手く聞き取れなかったんですけど、何か言いました?」

 

 

紫苑「……別に。あまりに情報量が多い話だし、どうせ光の頭じゃしっかり理解出来ないよ」

 

 

光「はぁーー!!?なに人のことサラッとdisってるんですかアナタはーーーー!?!」

 

 

グアァァーー!!と、あまりに人を馬鹿にした物言いに思わず食ってかかる光の顔面を、紫苑が片手で抑えながら何処吹く風と言わんばかりにそっぽを向いている。

 

 

静かな会議室内で声を荒らげる光を流石に見兼ね、はやて(別)がわざとらしく大きめの咳払いをすると、光はハッと我に返る。そして顔を真っ赤にした彼女が萎縮した様子で静かに座り込むのを確認し、はやて(別)は改めて作戦内容の説明を続けていく。

 

 

はやて(別)「ドゥームズクロックが出現した場所は全部で4ヶ所。雷君達が最初に目撃した一機目が存在する地区は、スターズとライトニングで担当。続いて現れた二機目は、紲那君達やグラン君らの助っ人組に。三機目の方は、雷君達レオンが対応を。そして最後の四機目は、黒月空曹長の世界のなのはちゃん達。幸助さん達には、オーロラの向こうから現れる敵の数を減らして時計の破壊までの時間稼ぎをお願いします」

 

 

この場に集まってくれた一同、メンバー一人一人の目を真摯に見つめ返し、作戦の概要を伝えるはやて(別)に各々が力強く頷く。

 

 

その中で、はやて(別)は物憂げに顔を俯かせる零の顔を視界に捉えた途端、内心彼に対する悔悟の念に苛まれるが、一度気持ちを落ち着けるように一瞬目を伏せた後、再び皆の顔を見渡した。

 

 

はやて(別)「正直、私達の世界の問題に皆さんを巻き込んでしまった事、本当に申し訳ないって思ってます。私らがもっと早くに敵の思惑に気付いてさえいれば、もっと違ったやり様もあった筈やったって……」

 

 

シグナム「別世界の主はやて……先程シャマルも仰っていましたが、貴方達はただ真剣に、この世界を守ろうとやるべき事を成していただけです。責任を問われるとするなら、一度は捕らえた筈の奴等を野放しにしている同じ世界の我々に……」

 

 

はやて(別)「ううん。貴方達はこの世界を守る為に、初めから私達に歩み寄ろうとしてくれてた。……その手を握るのを恐れて、自分達の安心の為に見える所に黒月空曹長を遠ざけたのは、私らの確かな非やと思う。そのせいで、沢山の人が傷付く事になってしまった……」

 

 

零「…………」

 

 

深い後悔と罪悪感の込められた彼女のその言葉を聞き、俯いていた零が思わず顔を上げる。そんな彼と、そして他の異世界組のメンバー達に向けて、はやて(別)は深く頭を下げていく。

 

 

はやて(別)「その恥を承知の上で、謝罪と共に、改めてお願いさせて下さい。私達のこの世界を、皆を守る為にも、皆さんの助力をお借りする事を。……どうか私達に、その力を貸して下さい」

 

 

雷「八神……」

 

 

深々と一礼するはやて(別)を見て異世界組やなのは(別)達も一瞬目を見張らせるも、それが彼女なりのケジメの付け方なのだと想いを汲み取り、異世界組の面々はお互いに顔を見合わせた後、はやて(別)達に視線を戻し頷き返した。

 

 

紲牙「勿論だ。俺らもその為に此処まで来た訳なんだし」

 

 

なのは「さっきシグナムさんも言ってた通り、クアットロ達の事は私達の世界の問題で、責任でもある……。彼女達を止める手伝いをお願いするのは、寧ろ私達の方だよ」

 

 

シズク「魔界城の世界での一件は私達も当事者だからね。八雲の事を抜きにしても、イレイザーの手を借りたアイツ等をこの世界で好き勝手させる訳にはいかない」

 

 

はやて(別)「……皆さん……」

 

 

異世界の友の為、或いはクアットロ達とのこれまでの因縁を終わらせる為にと、それぞれが既に覚悟を固めているなのは達の顔を見渡し、はやて(別)は改めて感謝の意を示すように一同に向けて頭を下げるのだった。

 

 

 

 

◆◇◇

 

 

 

 

──その後、ドゥームズクロックに残された時間を考慮し、招集メンバーははやて(別)の立案した作戦通り、それぞれが宛てがわれたエリアに向けて急ぎ動き出していく。

 

 

そうして一同が部屋を後にしていく中、皆と共に部屋を出ようと席を立つ零だったが……

 

 

はやて(別)「黒月空曹長!」

 

 

零「…………」

 

 

部屋を出る寸前に背後から不意にはやて(別)に呼び止められ、零は足を止め、無表情のままはやて(別)の方に徐に振り返る。

 

 

それを見て彼と共に退出しようとしてた写真館メンバーも零の背後で足を止めて振り返ると、はやて(別)は一拍置き、零に向けて深く頭を下げた。

 

 

はやて(別)「貴方にも、改めて謝罪させて下さい。今回の件、私らが──」

 

 

零「必要ない」

 

 

謝罪しようとしたはやて(別)の言葉を遮るように、零がピシャリと言い放つ。

 

 

その淡々とした声音にはやて(別)が驚きと共に思わず頭を上げて零の顔を見ると、零ははやて(別)から目を背けたまま、ただ何も感情の宿らない瞳で何処か虚空を見つめていた。

 

 

零「俺が取り返しの付かない罪を犯したのは紛れもない事実だ。例え踊らされてたとはいえ、お前達はそんな危険分子を遠ざげてでもこの世界を守ろうとした。……寧ろいち早く世界の危機に対処しようとしたのだから、誇るべき事だろ」

 

 

はやて(別)「そんなっ……そもそも今回の件も、私らがちゃんと貴方の真意を聞いていれば……」

 

 

零「謝るべきなのは俺の方だ。決してこの力を使わないと約束しておきながら、俺は自分の感情に逆らえずにお前達も……この世界を、一度は破壊した……」

 

 

フェイト(……零……)

 

 

まるで罪を告白する罪人のように淡々とした口調と表情でそう告げる零にフェイトが悲痛そうに顔を歪ませる中、はやて(別)もそんな彼の心情を察してか、何も言えずにただ押し黙ってしまう。

 

 

しかし、それでも……と、彼女は意を決したように顔を上げ、強ばった表情を無理矢理笑みの形に変えながら口を開いた。

 

 

はやて(別)「でも……貴方がこの世界の為に戦ってくれてた事も、また事実です」

 

 

零「…………」

 

 

はやて(別)「今だから言いますけど、最初の頃は正直、お世辞にも良い人とは思えんくて、どうしてそっちの世界の私らが彼処まで必死に貴方を庇おうとしてたのか、理解出来ませんでした……でも、今なら何となく分かる……貴方は、自分自身を勘定に入れない。ずっと皆の為に、皆から嫌われる役を一人で請け負おうとする、ただただ不器用で、優し過ぎる人なんやって」

 

 

零「……違う。俺はそんな──」

 

 

眉間に皺を寄せ、はやて(別)の言葉を否定しようとするも、突然後ろから勢いよく誰かに手を取られた。

 

 

驚きと共に振り返れば、其処には険しい表情と共に痛みを感じるほど強く、手を握り締めながら零の瞳を睨むなのはの姿がある。

 

 

彼女が何を訴え掛けているか。言葉はなくとも、その目と表情だけでなのはが何を言いたいのかを察した零は一瞬言葉を詰まらせ、口を噤んで俯く。すると其処へ、はやて(別)の後ろから雷が歩み寄ってきた。

 

 

雷「黒月」

 

 

零「……大規模な作戦の前だってのに、現場を指揮する隊長がまだ残ってていいのか?あの悪趣味な時計に残された時間は少ないぞ……」

 

 

雷「その前に、言いそびれた事を伝えに来た。……大きな戦いの前だからこそ、後悔を残すような真似はしたくないからな」

 

 

零「……?」

 

 

目を伏せ、真剣な口調でそう告げる雷に零が怪訝な眼差しを向け、傍らに立つはやて(別)やなのは達も不思議そうに小首を傾げる。

 

 

やがて、伏せた目を開いた雷は零の目をまっすぐに見つめ、口を開く。

 

 

雷「お前は言っていたな。世界を破壊し、俺達を手に掛けた罪人の自分が、何故誰かを頼ろうなどと思えるのかと」

 

 

零「…………」

 

 

雷「お前の犯した罪は、確かに消えないかもしれない。それはお前自身の存在に刻まれ、これから先も目を逸らす事は決して出来ないと思う。……それでも」

 

 

一拍置き、雷は力強く、そして決意を表すようにハッキリと断言する。

 

 

雷「それでも俺は、お前を救いたい。諦めたくない。……例え何度、何回何十回と、お前が俺達の手を振り払おうともな」

 

 

零「……お前……」

 

 

迷いのない、あまりにもまっすぐな雷の言葉に零は思わず息を呑む。

 

 

そして伝えるべき事を伝え終えたからか、雷ははやて(別)の肩の上に手を置いて彼女の目を見つながら無言で頷き、彼が言わんとしている事を察したはやて(別)も力強く頷き返すと、雷はそのまま自身が任された現場に向かうべく歩き出し、零とすれ違う間際、

 

 

雷「後はお前自身が決めてくれ──待っているぞ(・・・・・・)

 

 

それだけを言い残し、部屋を後にする雷。

 

 

振り返る事なく、その姿を肩越しに見送り、その場に残されて一歩も動けずにいる零に、それまで口を閉ざしていたなのはが漸く語り掛ける。

 

 

なのは「私達もいってくるよ。あの時計を止めないと……」

 

 

零「止めないとって……お前、手の怪我は……」

 

 

なのは「さっきシズクさんの治癒魔法で治してもらったから大丈夫。跡も残ってないからもう平気。……それより今は皆で力を合わせて、クアットロ達の目論見を阻止しないとだから」

 

 

スバル「ですね。ウォッチでの変身は一人しか出来ないけど、逃げ遅れた市民の避難誘導を手伝ったりとかは私達にも出来ますし!」

 

 

むんっ、と両手でガッツポーズを作りながら、明るい笑みを見せるスバル。そんな彼女に同調するようにスバルの隣にエリオが並び、零を安心させるように小さく微笑み返した。

 

 

エリオ「優矢さんやアズサさんの事も大丈夫です。さっき零さんが雷さん達と屋上に行ってる時、幸助さんに怪我を治してもらって全快になった姫さんが僕らに会いにきてくれて、お二人の治療をしてから合流してくれるってわざわざ伝えにきてくれましたから。……まああんな事があった手前、元気になり過ぎててちょっとビックリしちゃいましたけどっ」

 

 

ザフィーラ「最早慣れ切ってしまっている我々はともかく、事情を知らないこの世界の私達まで驚かせてしまったのは申し訳なかったな……まさか、包帯も松葉杖もそのままの状態で走り込んでくるとは……」

 

 

シャマル「あはは……この世界の私なんて血相を変えてたものね……あっ、ヴィヴィオちゃんの事も安心して。治療ですっかり元気になって、今は光写真館にいるから」

 

 

ヴィータ「今回の戦いの規模的に写真館も巻き込まれるかもしれねーし、彼処の防衛役も必要だしな。……自分も一緒に残って戦う!って、散々駄々こねられた時にゃ言い聞かせんのにメチャクチャ疲れたけど……」

 

 

シグナム「去り際も納得し切れてはいなさそうだったがな……まあ、あの子の事はチンク達に任せるしかない。彼女達の実力であれば、仮に写真館を狙われる事があっても戦力的に申し分はないだろう」

 

 

零が不在の間に起きた、些細なトラブルの様々を呆れ交じりの溜め息や苦笑いと共に語るエリオやヴォルケンリッター達。

 

 

そんな、あまりにいつもと変わないやり取り(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

あんな凄惨な出来事が起きて、全てを聞かされた後だとは思えない様子で話す仲間達の顔を見回し、零は戸惑ってしまう。

 

 

零「お前ら、なんで……全部知ったんだろ……?俺はっ──」

 

 

キャロ「零さん」

 

 

己が犯した罪を改めて語り、自罰の言葉を口にしようとした零の否定を遮るようにキャロがまっすぐに呼び掛け、その顔を見上げ、胸に手を当てて申し訳なさそうに眉を下げた。

 

 

キャロ「ごめんなさい……私達、今までたくさん助けてもらってたのに……零さんが一人で、たくさん悩んで、抱えて、ずっと苦しんでたこと……気付いてあげられる事が出来ませんでした……」

 

 

零「っ……何を言ってるんだ……お前が謝るような事なんて何一つない……それ所か、俺はこの手で……お前達を……」

 

 

悲痛な顔で、今度はキャロの謝罪を否定して返し、零は皆の前に今も小刻みに震える片手を差し出す。

 

 

それは恐怖ではなく、後悔と罪悪からくる震えだった。

 

 

零「この手で、お前達を傷付けた……心臓の因子が……アイツの助けがなければ……他の皆の手助けがなかったら、お前達は今頃此処にはいなかったかもしれない……なのに、どうしてまだ俺を……お前達はっ……」

 

 

ティアナ「ソレ、今更言っちゃいます?」

 

 

どうやって皆に謝罪すればいいか。どうして償えばいいのか。

 

 

グチャグチャに入り乱れた様々な感情が先走り、言葉もままならない零の吐露に、ティアナが呆れ混じりの溜め息と共にアッサリとそう言い放つ。

 

 

思わぬ反応に零が驚きと共に顔を上げると、スバルの後ろに立つギンガが小さく微笑みを返した。

 

 

ギンガ「確かに、最初に話を聞かされた時は戸惑った部分も多かったです。気持ちの整理とか、今もまだ全然出来てない部分もあるけど……でも、これだけは真っ先に思えました。知れて良かった(・・・・・・・)、って」

 

 

零「……ぇ……」

 

 

すずか「うん。何となくだけど、零君がずっと私達に何かを隠してるんだろうなって、気付いてたから。……私も、それが知れたのは良かったって思ってる」

 

 

あんまり嬉しい流れでじゃなかったけどね、と、苦笑いと共に付け加えるすずか。

 

 

他の皆も、そんな彼女の言葉に同意を示すように頷き、呆れた態度を表したりと各々反応を見せる中、呆然と立ち尽くす零にはやてが横から近付き、彼の頬をいきなり抓った。

 

 

零「痛ッ?!ナニ……!?」

 

 

はやて「でも、ロストの事を黙ってたんは話は別や。……あの子の事は、私やシグナム達にとっても大事なこと……。それを当事者を除け者に隠し事やなんて、幾ら零君でも、私らやフェイトちゃんにも不誠実が過ぎるんとちゃう?」

 

 

零「……それ、は……」

 

 

腕を組み、不機嫌を露わにムスッとした顔を浮かべるはやての怒気を感じ取り、抓られた頬を抑えながら何も言い返せず気まずげに目を逸らす零だが、何も言わず、ただ悲しげに見つめてくるフェイトの顔を視界の端に捉え、僅かに間を置いた後、申し訳なさそうに項垂れた。

 

 

零「悪かった……いつかは伝えるべきだって、思ってはいたんだ……ただお前達に、どうやって伝えたらいいのか、分からなかった……」

 

 

フェイト「零……」

 

 

はやて「…………」

 

 

零「ただでさえ俺の事で余計な気を回させて、ルーテシアの事もまだ助けられてなくて……其処に、あの二人の事まで伝えて……これ以上、お前達に負担を掛けたくないって、そんな風に思ってた……」

 

 

はやて「……それで、私らの事を守ってたつもりだったん?一人で何もかんも背負って、一人でどうにかして、そうやって全部解決すれば、私達が泣いて喜ぶとでも思ってたんか?」

 

 

フェイト「は、はやてっ……」

 

 

語気を強め、若干非難気味に言い募るはやてにフェイトが慌てて制止に入る。

 

 

しかしはやても退く気はなく、自分の叱責を目を逸らさず真剣味を帯びた瞳で受け止める零の瞳を暫し見つめ返した後、腕を解き、物悲しげに眉を顰めて顔を逸らした。

 

 

はやて「零君の気持ちは分かってる。何も言わなかったのも、私らを気遣って、傷付けたくなかったからやって事も、ちゃんと理解してる。……今までもずっとそうやったんやから、分からん訳ない……」

 

 

零「はやて……」

 

 

はやて「でも、零君も知っとるやろ?そんな風に護られたって嬉しくなんかない。苦しいよ。傷付く事も、背負う事も一緒に出来ひんなんて……少なくとも、私はそんなの望んでない」

 

 

ハッキリと言い切り、はやては己の胸に手を当てながら改めて零の目をまっすぐに見据える。その瞳の奥に、力強い決意を宿して。

 

 

はやて「せやから、こっから先は問答無用。ソレ(・・)は半分貰っていく。零君も黙って勝手してたんやもん。それぐらいの我儘、言われたって文句あらへんよね?」

 

 

零「────」

 

 

そう言って、ふふんと強気に微笑んでみせるはやての笑みには、何処か今までの零に対する意趣返しが込められているようにも感じ取れる。

 

 

その強気な態度に、零も思わず目を瞬かせて呆気に取られてしまう中、今この場で言うべき事を言い切ったはやては憑き物が落ちた表情で他の皆と互いに顔を見合わせて頷き合うと、雷達を手伝う為に急いで部屋を飛び出していく。

 

 

フェイト(零……っ……)

 

 

その中で、フェイトは皆と共に部屋を出る寸前、一瞬足を止めて残された零の方に振り向き、何かを伝えようと僅かに逡巡する素振りを見せるが、今の彼に何を言っても逆に負担を掛けるだけかもしれないと思い直し、静かに首を振って後ろ髪を引かれる思いを振り切り、そのまま部屋を後にする。

 

 

ただ、なのはだけはそんな彼女の様子に気付いて物悲しげに眉を下げ、その場で目を伏せて暫し俯いた後、何かを決意した様に徐に顔を上げ、立ち尽くす零を一瞥した。

 

 

なのは「私が言いたかった事、はやてちゃんに先越されて大体言われちゃった。だから一個だけ、私からも言わせてね」

 

 

零「……なのは……俺は……」

 

 

なのは「私の気持ちは、鷹さんの世界や稟君の世界で伝えた時と何一つ変わってない。……忘れないで」

 

 

零「……!」

 

 

穏やで、優しく、暖かい声色ながらも、確かな力強さを感じさせるその言葉に零はハッとして振り返るが、其処には既になのはの姿はなく、静かに閉まる扉の隙間から微かに揺れる栗色の髪の毛先だけが見えた。

 

 

そうして、仲間達が出ていった部屋に残された零は唇をキツく噛み締め、額を抑えながら力なく項垂れた。

 

 

零(本当に……救いようがない……ここまでされて、助けられて……俺はっ……)

 

 

己の不甲斐なさに腸が煮えくり返る。

 

 

押し潰されそうな罪の意識は、未だ消えない。きっとこの先も残り続ける。

 

 

迷いもある。これ以上道を踏み外した自分が戦えば、今度こそ取り返しのつかない間違いを犯してしまうかしれない。

 

 

……それでもまだ、自分を信じてくれようとしてる仲間達と世界を救いたいなどという烏滸がましい欲を捨て切れず、痛いほど強く拳を握り締めて無理矢理に震えを止め、自分達のやり取りを傍で見守っていたはやて(別)に静かに目を向ける。

 

 

零「部隊長……俺の監視は、もうとっくに必要なくなったって認識でいいんだよな……?」

 

 

はやて(別)「……紫苑君から話を伝え聞いてるんなら、それが全部です。今の私達に、貴方の行動を制限する理由はありません」

 

 

零「分かった。……すまない」

 

 

短く謝意を伝え、なのは達の後を追って零も駆け出す。

 

 

本音を言えば、戦いに身を投じる中で、自分の中のイレイザーに再び心と身体を乗っ取られるかもしれない恐怖心はある。

 

 

だが、今は異世界の仲間達もいる。

 

 

最悪そうなってしまった時には、この首を幸助に差し出してでも止めてもらう覚悟を密かに固めながら、扉から廊下へ勢いよく出た瞬間……

 

 

「──おっと。すまないがもう少し待ってくれ。こっちの用事がまだなんだ」

 

 

―グイッ!ブォオオッ!―

 

 

零「!?ぅ、ぉおおお!!?」

 

 

扉を出てすぐ、廊下に出て曲がろうとしたその時、突然誰かに片腕を絡め取られた。

 

 

そのまま身体を軽々と振り回された上に、扉の前にまで強引に引き戻されてしまい、零は驚きながらもいきかり邪魔をされた怒りから自分を引き留めた相手を思わず睨むが、その相手の顔を見た瞬間、目を見開いて硬直してしまう。

 

 

零「小坂井……先輩……」

 

 

ハル「──やあ。久しぶりだね、零君。思ってたより元気そうで安心したよ」

 

 

ヨッと片手を挙げながら零と向かい合い、軽い調子の笑みを浮かべて挨拶してくるのは、食堂でなのは達に零の事情を説明し、先程の作戦会議では姿がなかったハルだった。

 

 

そんな予想外の人物との思わぬ場面での再会に零は呆気に取られてしまうが、彼女の頭から足の爪先まで眺めて目の前にいるハルが本物だと認識していく内、動揺も少しずつ治まって元の無愛想な表情に段々と戻っていく。

 

 

零「話には聞いてはいたが……まさか本当にアンタまでこの世界に来てたとはな……」

 

 

ハル「うん。君の知ってるクロノ君やユーノ君と一緒にね。ほんとなら再会を祝して一杯ぐらいやりたい所だけど、残念ながらそんな状況ではないようだ」

 

 

零「分かっているなら引き留めないでくれ。時間もそんなに残されちゃいないんだ。積もる話は後で幾らだって出来る」

 

 

こんな一刻を争う状況でも柔らかな態度を崩さないハルに淡々とそう返し、久方振りの再会に感傷を浸らせる暇もなく、零はハルを無視してなのは達に追い付くべく歩き出していく。するとハルは小さく溜き息を吐き、そんな零を肩越しに見据え口を開いた。

 

 

ハル「私も無理に引き止めるつもりはないよ。……ただもし、君が危惧している君の中のソレの暴走を少しでもどうにか出来るかもって言ったら、ちょっとは聞く耳を持ってくれるかい?」

 

 

零「……!?何……?」

 

 

思いも寄らぬ発言がハルの口から飛び出し、零は訝しげに眉を顰めながら思わず歩みを止め、振り返った瞬間、其処で初めて気付く。

 

 

ハルの後ろ。自分たちから少し離れた位置の場所に、見慣れぬ二人組の青年の姿がある事に。

 

 

零「ソイツらは……?」

 

 

ハル「今の話に関係している助っ人、ってとこだよ。まあ、私もさっきが初めましてだから、まだそんなに親しい間柄って訳でもないんだけどさ」

 

 

「───よく言うぜ。さっきは遠慮無しにあれこれズケズケと質問攻めしてた癖によ。……んで、お前が例の仮面ライダーディケイド。黒月零か」

 

 

戯けるように肩を竦めるハルにそう言って心底呆れた溜め息を漏らしたのは、白いメッシュが入った首元まで長い茶髪の青年……ハル達と同様に先程の作戦会議で姿が見られなかった映紀であり、ハルをひと睨みしつつ零の前にまで歩み寄ると、何かを確かめるように零の足から顔までじっくりと眺めていく。

 

 

零「……なんだ?」

 

 

映紀「フー、ンー……ん、やっぱ駄目だな!遠巻きに見てた時にも思ったが、俺様はオメーの事、ぜんっぜん気に入らねえぜ!」

 

 

零「……ああ?」

 

 

「ちょ、映紀さん……!この後俺が話すのに雰囲気悪くするようなこと言わないで下さいよ!」

 

 

堂々と胸を張りながら初対面と思えぬ失礼発言をかます映紀に零が怪訝な反応を返すと、ピリッとした空気の変化を察したもう一人の青年……海斗が慌てて映紀の腕を後ろから掴んで無理矢理引っ込ませ、気を取り直すように一度咳払いした後、改めて零と向き合っていく。

 

 

海斗「急に失礼してすみません、代わりに謝らせて下さい……。彼は仮面ライダーディスパー、高岡映紀。貴方と同じ、世界を放浪して旅する仮面ライダーの一人です」

 

 

零「……ディスパー……」

 

 

映紀「ふんっ」

 

 

海斗の紹介から聞き覚えのないディスパーの名を聞き、自然と映紀に目を向ける零。

 

 

だが、視線を向けられた映紀の方は何故だか気に入らそうに鼻を軽く鳴らしており、そんな彼の不可解な態度に零が片眉を引き攣らせてしまう中、海斗は気まずげに苦笑を浮かべつつ、零と向き直る。

 

 

海斗「そして、俺は海斗。……海道、海斗。今から十数年後の未来から、貴方へ会いにこの時代へタイムスリップしてきた者です」

 

 

零「?未来から俺に……いや、待て。今なんて行った?海道……?」

 

 

海斗「はい。多分お察しの通りかと。俺の母はベール=ゼルファー。父は海道大輝。……今から数年後に産まれる、あの二人の息子です」

 

 

零「……………………」

 

 

目の前の銀髪の好青年。未来から自分に会いにタイムスリップしてきたというこの海斗の正体が、あの大輝とベルの息子であると急に聞かされ、零は真顔のまま一瞬思考が停止し、硬直してしまう。

 

 

やがて数秒の沈黙の後、零は人差し指と親指で眉間を抑えながら徐に天井を仰ぎ、スゥーーーッッと深く息を吸い込んだ。

 

 

海斗「え、っと……あの、すみません。なんか俺、失礼な事でも言いましたか……?」

 

 

零「……………………。気にするな……そういう事もあるのかと思って呑み込もうとしたが、ちょっと許容範囲を超える情報に立て続けに見舞われて、気を手放し掛けただけだ……」

 

 

海斗「は……はあ……」

 

 

苦節十九年。これまでも濃密な経験をしてきたつもりだったが、今日とてこんなにも人生観をガラリと変えられる一日は二度とはないだろうと、そんな風に思いながら零は最早眩暈すら覚えていい加減倒れたい衝動に駆られ、そんな零の姿を前に、海斗も戸惑いと困惑を露わに小首を傾げてしまうのであった。

 

 

 

 

 

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