仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第二十一章/雷牙の世界⑰(前編)

 

 

 

零「フェイト……お前、どうして……?なのは達と一緒だったんじゃ……」

 

 

暴走を恐れていた己の内のイレイザーの力を制御する術を海斗から授かり、戦う決心を強めて戦場へ向かおうとした道中、何故かなのは達と共に先に現場へ向かった筈のフェイトと廊下で鉢合わせた。

 

 

彼女がまだ六課に残っていた事に驚き、困惑を露わにしながら歩み寄ってくる零を前にして、フェイトは気まずげに視線を泳がせて片腕を掴み、恐る恐る口を開いていく。

 

 

フェイト「えと、ね……さっき、皆と一緒に作戦室を出た後、後から合流したなのはと一緒に街に出ようとしたんだ……その時──」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

なのは『──フェイトちゃん。いいの?』

 

 

フェイト『……え……?な、なにを……?』

 

 

なのは『零君に言いたいこと。伝えたいこと、沢山あるんじゃない?さっきのはやてちゃんみたいに』

 

 

フェイト『……それは……でも、今はそんな場合じゃ……零もきっと、今は苦しいだろうし……』

 

 

なのは『……かもしれない、ね……でも、それでも伝えられる時に伝えないと、きっと後悔すると思うんだ。……世界が終わってからじゃ、言いたい事を打ち明けるなんてこと、二度と出来なくなっちゃうんだしさ……』

 

 

フェイト『……なのは……』

 

 

なのは『……だから、フェイトちゃんも自分の言いたい事、しっかり伝えてきて。その間のフォローは私達にだってちゃんと出来るんだから。でないと私とはやてちゃんばっかしで、ちょっと不公平でしょ?』

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

零「──っ……あんのお節介焼きめ……」

 

 

フェイトから経緯を聞き終え、こうなったのはなのはの気回しのせいだと悟った零は後頭部を掻きながら、此処にはいない彼女への悪態が思わず口から出てしまう。

 

 

その様子から零が迷惑がっていると感じたのか、フェイトはより一層気まずそうにして項垂れ、慌てて頭を下げた。

 

 

フェイト「ご、ごめんっ。やっぱり駄目だったよね、こんな大変な時に……!」

 

 

零「……あ、いや……俺の方こそ、すまなかった……そもそもお前を其処まで思い詰めさせたのも、元はといえば俺のせいだったってのに……」

 

 

フェイト「……え……?」

 

 

不意打ちに投げ掛けられた謝罪の言葉に驚き、思わず顔を上げると、零は気まずげに身体ごとフェイトから顔を背けており、その表情は彼女に対する罪悪感の念で酷く歪んでいた。

 

 

零「全部思い出せたんだ……いつか、ちゃんと写真を撮ってやるって約束した筈なのに……俺は、お前にあんな……」

 

 

フェイト「!ほ……ほんと、に……?戻ったの?壊された記憶が……!?」

 

 

話を遮る勢いで、フェイトが零の肩を掴んで咄嗟に詰め寄る。

 

 

その圧に零も若干戸惑いつつ、控え目に頷き返すと、その応えにフェイトは目を見開いて息を呑み、動揺を露わによろよろと後退りした後、両手で顔を覆いながら突然その場にしゃがみ込んだ。

 

 

零「お、おい、フェイト?!どうし──」

 

 

フェイト「よか、った…………ほんとに、よかった…………!わたしっ、どうやって零に償ったらいいのか、全然分かんなくて……!何も出来ないくせにっ、勝手して……皆にも迷惑掛けて……アリシアにまで……わた、しっ……わたし……!」

 

 

零「……フェイ、ト……」

 

 

慌てて身を屈めて顔を覗き込むと、フェイトはそれまで押さえ付けてきたあらゆる感情が決壊したかのように、嗚咽を漏らして大粒の涙を流していた。

 

 

その姿を前に、零も改めて自分がどれだけ彼女を傷付けてしまったのかを実感して胸に激しい痛みが走り、フェイトの両肩に思わず手を伸ばす。

 

 

しかし寸前、この血塗れた手で彼女に触れるべきなのか。理性が訴え掛けて思い留まり、伸ばし掛けた手が宙を迷うが、止まらない涙を流し続けるフェイトの震える声を前にして感情に歯止めを掛けられず、彼女の身体を半ば強引に抱き寄せた。

 

 

零「……悪かった……ホントに、すまなかった……アリシアのことも、約束のことも……何一つ、俺はっ……」

 

 

フェイト「ひ、っ……ぅ、ンン…………いい……いいんだっ……ごめんっ…………ありが、とう…………ごめん……ねっ…………」

 

 

痛いほど強く抱き締められたまま、零の肩から頭を上げたフェイトの顔は涙でグチャグチャになっていた。

 

 

喋るのもままならない声で何度も何度も、謝罪と感謝を泣き笑いの笑顔と共に繰り返し続けていく彼女の言葉により強く胸を締め付けられ、零は抱き締めるフェイトの震える身体から伝わってくる生の暖かさから、ここに彼女が存在している事を確かに感じ取り、胸の内から込み上げてくる感情に瞳を静かに揺らしていくのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

フェイト「───っ、ぅ……ご、ごめん……こんな大変な時に……私、こんなのばっかりで……」

 

 

零「気にするな。今更こんなんで気まずくなる仲でもあるまいし……ちょっとは落ち着けたか……?」

 

 

フェイト「……うん……ありがと……」

 

 

それから少しして。フェイトの気が落ち着くまでその場でずっと傍で寄り添い、涙塗れになった顔をハンカチで隠しながら少し恥ずかしそうに拭っていくその姿を前に、零も内心安堵を覚えて僅かに微笑む。

 

 

そして涙を拭き終えた彼女の両手を取ってゆっくりと立たせていくと、フェイトは涙の跡が残る頬を最後にもう一度拭い、零の顔を見上げながら何かを言い掛けて口を開くが、途中で言葉を詰まらせ、視線を泳がせてく。

 

 

フェイト「えっ、と……ごめん……ここで待ってて、何から伝えようってずっと考えてたのに……何だか今、何も言葉が出てこないや……」

 

 

零「……だろーな。あれだけわんわん遠慮も無しに泣きじゃくってたんだ。そりゃ色々スッキリもして、言いたい事もなくなるだろうよ」

 

 

フェイト「わ、わんわんは流石に泣いてないよ!?……ごめん、やっぱり泣いてたかも……」

 

 

零「どっちだよ。……とにかく、もう謝るのは無しだ。今回の件はアリシア達の事や因子の事を隠して、お前達に相談もしなかった俺が全面的に悪い。なのにお前にそんな謝られたら、いよいよ俺の立つ瀬がなくなってくる」

 

 

フェイト「うん……ごめんなさ……あっ、ごめん!?あ……」

 

 

零「……わざとやってるつもりならそっちの才能あるぞ、お前……」

 

 

フェイト「ち、違うよ?!もう言わない!言わないから!」

 

 

あわわわっ…!と、無言のジト目を向けてくる零の前で両手をぶんぶん振りまくって慌てふためくフェイト。

 

 

そんな彼女の顔をジーッと睨んでいた零だったが、やがてフッと顔を背けて小さく噴き出し、フェイトに無言で手を差し出した。

 

 

フェイト「ぇ……な、何?」

 

 

零「写真。今朝お前に渡した奴。まだ持ってるか?」

 

 

フェイト「あ……う、うん……!」

 

 

一瞬困惑したものの、零に言われてすぐに意図を察し、フェイトはずっと仕舞っていた写真をあたふたと懐を漁って取り出して、零に手渡していく。

 

 

写真を受け取り、見慣れたピンボケばかりの一枚一枚を眺めていくと、零は可笑しそうに鼻を軽く鳴らした。

 

 

零「我ながら馬鹿なもんだ。こんな写真、俺以外に撮れる筈もないのにすっかり忘れてたなんてな……あんだけ撮り続けておきながら……なんて……」

 

 

フェイト「……でも、私は好き」

 

 

零「……?」

 

 

撮った筈の写真さえ忘れる自分の馬鹿さ加減に嫌気すら差し、自嘲が止まらない零にフェイトが穏やかな口調でそう告げた。

 

 

そんな突拍子のない発言に零が不思議そうに顔を上げてフェイトを見ると、彼女は胸の前で両手を絡め、零が手に持つ写真達を見つめながら何処か照れくさそうに微笑んだ。

 

 

フェイト「だってその写真は、零にだけしか撮れない一枚一枚なんだもん……。他の人には真似出来ない、貴方だけの証……だから私、キャンセラーの……祐輔達の世界で、零に写真を撮ってもらいたいって思ったから、約束をしてまでお願いしたの……その写真は、沢山の世界を探しても絶対に見つけられない、私と零だけの写真(・・・・・・・・)になるから……」

 

 

零「……お前……」

 

 

───約束を交わしたあの時。どうしてあんなにも彼女が写真を撮ってもらえる事を喜んでいたのか、正直何一つ理解出来ていなかった。

 

 

元の世界で彼女の写真は何枚も撮ってきたし、今更そんなに喜ぶようなモノでもないだろうなどと。

 

 

けれど今、彼女が其処までの想いで自分が撮る写真を、元の世界での一枚しかない写真(・・・・・・・・・・・・・・)を心から欲していたのだと気付かされた零は、呆然とフェイトを見つめた後、自身の右手を見下ろし、次に首から掛けた二眼レフカメラをなぞるように触れた後、正面を向き、フェイトの前まで歩み寄ると共にそっと小指を立てた右手を差し出した。

 

 

フェイト「ぇ……れ、い?」

 

 

零「……今度は俺から約束だ。元の世界に帰ったら、世界最高の一枚(・・・・・・・)を撮って、お前に贈ってやる」

 

 

フェイト「…………………………」

 

 

差し出された小指を前に、一瞬理解が追い付かず、今度はフェイトが呆然と立ち尽くしてその小指から零の顔へと自然と目を移していくと、ルビーのように輝く赤い瞳が、暖かな眼差しを向けて自分を見つめていた。

 

 

その目を見つめ返している内に、先程散々泣いて枯れ尽くしたかに思われた涙が、再び込み上げてくる感覚に見舞われていく。

 

 

今にも泣き出しそうな顔を零に見せまいとして俯き、深く息を吐き出して溢れそうになる涙を堪えると、朱が頬を差した笑顔で顔を上げ、差し出された小指に、ゆっくりと自分の小指を近付け、絡めていく。

 

 

フェイト「うん。……うんっ。もう一回、約束。今度また忘れた、ら……っ……承知、しないからねっ……?」

 

 

零「そうなった時には、今度はなのは達と一緒に記憶が戻るまで殴り飛ばしてくれよ。毎度毎度いつもやってた事なんだ。得意分野だろ?」

 

 

フェイト「ぅ、〜〜っ……こんな時にまで……意地悪だぁ……!」

 

 

零「おうとも。──なにせ、それが俺なんだからな(・・・・・・・・・・)

 

 

小指を絡めたまま、涙目で怨みがましげに睨んでくるフェイトの眼差しも何処吹く風と言わんばかりに肩を竦め、いつものように戯けてみせる零。

 

 

こんな空気の中、敢えてそれをぶち壊すかのようにわざとらしい態度でからかってくる零にフェイトも流石に出かかった涙が引っ込み、不満げに「むー……」と頬を膨らませるが、それもすぐに呆れた表情に変わって溜め息を吐き、絡めた小指を解いた後、零から身を離しながら後ろ腰に両手を回して指を絡め合わせ、不服そうに口先を尖らせた。

 

 

フェイト「いいもん……私だってやられっぱなしで終わるつもりなんてないんだから……納得のいく写真が出来るまで、嫌になるぐらい何度だって撮り直させてもらうもん……」

 

 

零「そう拗ねるなよ。……その前に今は、やるべき事があるだろ?」

 

 

フェイト「……うん……そうだね」

 

 

零が言わんとしている事を瞬時に理解し、フェイトは力強く頷く。

 

 

そして零もそんな彼女に静かに頷き返し、走り出す間際にフェイトの肩の上を軽く掌で叩いてから、受け取った写真を手にしたまま六課のエントランスを目指して急いで走り去っていった。

 

 

フェイト(……私も、皆と一緒に頑張るよ……だから零も、どうか気を付けて……)

 

 

正直、あんな大惨事があった手前、不安がないと言えば嘘になる。

 

 

しかし今は、自分達が出来る事をそれぞれ精一杯果たし、この世界を守る為に戦う。

 

 

それが自分達が交わした約束への未来に繋がると信じ、零の背中が見えなくなるまで最後までその姿を見送ったフェイトは帽子を深く被り直して前を見つめ、自分にしか出来ない戦いに赴くべく走り出していくのであった。

 

 

 

 

 

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