仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT 作:風人Ⅱ
紫苑「零、さん……!」
雷「…………。ちょっと所じゃない。大遅刻が過ぎるぞ、黒月空曹長」
零「大目に見てくれよ。此処までの道中、逃げ遅れた街の住民を襲ってる邪魔な奴らを片付けるのに手間取った」
雷「そうか。こんな状況でなければ賞状ものだな。諸々の事情を汲んで給料からの差し引きで手打ちにしよう」
零「悲報だ紫苑。どうやらうちの隊長は融通も効かんブラック気質の上司らしい」
紫苑「……すみません。今ちょっと胸の辺りが滅茶苦茶痛むんで、ツッコミ役は辞退させて下さい……」
颯爽と駆け付け、窮地を救ってくれたかと思いきや目の前で突然気の抜ける漫才を雷と披露し始めた零からの真顔のフリに、紫苑は深々とした溜め息で返した。
そんな軽口から紫苑達の無事を改めて実感した零は安堵の笑みを浮かべると、徐に身を起こし、デザイアドーパント達の方へ悠々と振り返る。
零「よお。またとんでもない騒ぎを起こしてくれたもんだな。いい加減、慎ましさってヤツを覚えて静かな監獄生活に戻った方が身の為だと思うぞ。罪状と刑期は更に増えるだろうがな」
『…………これはまた予想外でしたね……まさか、まだ図々しくにも戦場に戻ってこられるとは思いもしませんでした……貴方、ご自身が何者になられたのか、ちゃんとご存知で?』
零「黒月零。年齢は恐らく19。高町家の養子で末っ子。出身地は海鳴市。趣味はカメラだが、写真の出来は周りには大体不評。この世界の管理局じゃ一応空曹長なんて肩書きだが、元の世界だともっと上の──」
『ッ、ふざけるのも大概にして頂けます!?こちらは今真剣な話を……!』
零「ふざけたつもりはない。今話したこれまでの俺も、今此処にある俺も……その全てが
『……なん、ですって?』
つい先程、六課で相対した時とは違い、まるで人が変わったかのように堂々とした佇まいでハッキリと言い切る零の答えに、デザイアドーパントは思わず気圧されてしまう。戸惑う彼女に対し、零は正面切って見据えたまま淀みのない口調で更に言葉を続けていく。
零「お前が言う通り、客観的な視点から見てみれば、今の俺はお前なんて目じゃない程の大罪人だろうよ。その罪の咎を受ける時も、必ず訪れる。俺はそれを否定しない。とっくに受け入れもした。……だからといって、今の俺は俺が果たすべき使命の全てを、今更こんな場所で放り捨てる気なんて微塵もない」
『ッ……何処までも図々しい事を……!そうして罪を認めれば、同情心から周囲からの庇護を受けられるとでもお思いなのでしょう!』
零「寧ろその逆だ。……もしいつか、俺が俺を捨てて道を踏み外した時。俺がこの罪を清算する日が訪れた時には……アイツ等の手で、この
雷「黒月……」
紫苑「………………」
不敵な笑みで、デザイアドーパントからの糾弾さえ涼しい顔で受け止める零の覚悟を聞かされ、雷は切ない目付きで、紫苑は何かを決心したような力強い顔付きで零の背中を見つめる。
そんな彼の予想だにしていなかった答えにデザイアドーパントは不快げに喉を鳴らしながら零を鋭く睨み付けるが、零の傍らの雷と紫苑を視界の端に捉えた途端、何かを思い付いたかのように薄ら笑う。
『なるほど。それが貴方なりの罪と向き合う覚悟、というワケですか。それは大変ご立派な志かと思われますが……果たして、貴方の言う彼らにそんな重要な責任と信頼を任せて預けられるのでしょうか?……特に、其処で無様な姿を晒している貴方達の隊長とやらは?』
雷「……っ!?」
急に名指しを受け、雷の顔が驚きに染まる。
零はそんな雷に視線だけ向けると、デザイアドーパントは声を高らかに、意気揚々とご高説を垂れ流し続ける。
『一番始め!私達が仕掛けた罠にまんまと騙され、踊らされ!話し合いを試みようとした貴方を敵と決め付けて問答無用で襲い掛かり、必死に誤解を解こうと健気にも戦いを止めようとした貴方の仲間さえ傷付けた!』
雷「……っ……」
『しかもそれだけに終わらず?私に捕らえられた人質を傷一つ助ける事も叶わず、赤の他人の生命をその手で犠牲にしようとした挙げ句、異世界人達の助けがなければ、あの危機を脱する事さえ出来なかった!』
紫苑「クアットロ!!」
雷の胸の内の傷を抉るかのように、その場でクルクルと愉しげに舞い踊りながら彼への誹謗が止まらないデザイアドーパントの口を黙らせようと声を荒らげて叫ぶ紫苑だが、その声にデザイアドーパントはピタリと背中を向けて足を止め、零達の方を見返って冷淡に告げる。
『そして今。この世界を救わんと奮闘しながらも私達に力さえ及ばず、そうして無様に這いつくばる事しか出来ない、仮面ライダーに何の価値が?何が果たせて?何を任せられると言うのです?……世界を守る牙などと、そんな御大層な肩書きは、その男には最初から分不相応だったのですよ』
雷「────────」
まるで唾を吐き捨てるかのように、仮面ライダーとしての雷の存在意義を徹底的なまでに否定するデザイアドーパントに何も言い返せず、雷は力なく地面に両手を付き、彼女から告げられた心無き非難に打ちのめされるように項垂れてしまう。が……
零「──流石に驚いた……クアットロ。お前、いつから其処まで人を見る目が衰えたんだ?」
雷「…………!?」
『……はあ?』
心底不思議そうに首を傾げる零の言葉に、雷は驚きから思わず顔を上げ、デザイアドーパントはまるで頭のおかしな人間を目の当たりにしたのように素っ頓狂な声を漏らすが、そんな二人の眼差しを受け止めながらも、零は構わず真剣な表情に切り替わって淀みのない言葉を続けていく。
零「お前はその目で、コイツの何を見てきた?コイツはずっと苦境に立たされ、時に心が折れ、苦しみながら膝を屈する事があっても、
紫苑「……そう。それこそが仮面ライダーの資格の一つ……お前が幾ら相応しくないと言い張っても、彼の中には既に、最初からその火種を心に宿している」
零「コイツが世界を守る牙になるのは、既に決まっている事だ。……何せこの男が、いずれこの先の未来で本当に世界を救う事になるのを、俺はとっくに知っているんだからな……」
雷「…………?」
感慨の篭った眼差しを静かに雷に向ける零の脳裏に蘇るのは、自分にとっては過去。そして今の彼にとってはいずれ訪れるであろう未来で起こる、キャンセラーの世界で破壊の因子の狂気に呑まれた際、彼と仲間達に助けてもらった時の記憶。
この世界が過去の時間軸の世界と知ってからは、あんな事件に彼を巻き添えにしてしまう事に最初は消極的だった。
しかし今、世界を破壊した罪人である自分にとって、世界を守る牙である彼が既に心強い存在に映っている。
重く辛い、彼からすれば迷惑でしかないであろう酷い役目を雷にも託そうとしているそんな自分に対して嫌悪と罪悪感を抱きつつも、零は再びデザイアドーパントを見据え、人差し指を突き付けながら不敵な笑みを返した。
零「お前のその曇り切った色眼鏡如きで、コイツの価値を測ろうなんざ10年早い。寧ろその力を愉しみ、まだ未熟なコイツを使って遊び続けた自分の甘さをこれから呪う事になるだろうよ」
『……うふふ。面白い冗談ですね。私が私を呪う?それこそ寧ろ味合わせて欲しいものですよ。……この最強のメモリの力を前に、そんな大言壮語をいつまで吐き続けていられるのかを!!』
零の言葉に冷笑で返しながら、デザイアドーパントは高らかな叫びと共に天上に向けて人差し指を突き出す。
直後、デザイアドーパントの身体が突然黄金色に発光し出し、其処から溢れ出した金色の無数の粒子がビルの屋上からクラナガン全体へ勢いよく広がっていく。
なのは(別)「くっ!……?なに……これ……?」
黒獅子リオ『フンッ!……?黄金の、光……?』
粒子は各地区の四機のドゥームズクロックの攻略戦に参戦する仲間達の元にまで辿り着き、風に乗って何処からともなく運ばれてきた無数の粒子が視界全てを覆い尽くす光景を前に、仲間達も戦闘の最中にも関わらず目を奪われてしまう。
雷「なんだ、これは……クアットロ!何をするつもりだ!?」
『決まっているでしょう?真なる絶望を……何度でも立ち上がるというのであれば、どうしようもない現実を前に、今度こそ跪かせてあげるわ!』
パキィッ!と、嬉々とした声と共にデザイアドーパントが天上に掲げた中指と親指を擦り合わせて音を鳴らした次の瞬間、恐ろしい光景が一同の目の前で起こり始めた。
戦場の全域に拡散したキラキラと輝くその全ての粒子が、彼女の合図と共に次々と大きさと形を変えていく。黄金の装甲を煌めかせ、背中のマントを靡かせる女王の姿をした異形……デザイアドーパントの分身と化し、瞬く間に戦場のあちこちに降り立って仲間達を包囲してしまったのだ。
フェイト(別)「ク、クアットロ!?しかもこんな数……?!」
シグナム(別)「例の分身能力か……!まずいぞっ、完全に取り囲まれている!」
シルベルヴィント『へえ……何が何だか知らないけど、どうやらこっちに優勢が傾いたようだ。シカログ!この気に乗じて一気に決めるよ!』
ドルーキン『……!』
黒獅子リオ『くっ……!』
空から降り注ぐ雨露が如く、数を数えるのも馬鹿馬鹿しくなる程の分身が次から次に目の前に立ち塞がり、その圧倒的な光景を前に仲間達も思わず眩暈すら覚えながらもとにかくそれぞれが迎撃態勢を取っていく。
その凄まじい光景を前に、デザイアドーパントは零達に誇るように己が分身が街中を埋め尽くす様を指して高らかに笑い出した。
『どうです!これでもまだ絶望しない、折れないと言い切れるのかしら!これだけの数の私を前に、貴方達に一体何ができ──』
零「それだけか」
『…………はい?』
愉悦に浸るデザイアドーパントの笑い声が、たったその一言で止む。
予想とはまるで違う、落ち着き払った様子の零からの問い掛けにデザイアドーパントは咄嗟に答えを返せず聞き返すと、零は淡々と改めて返す。
零「それで終わりなのかと聞いているんだ。クアットロ」
『は……なに、を……強がっているだけなら無駄な虚勢ですね……!断罪の神々を頼りにしているなら、彼らはドゥームズクロックに手は出せない!結界の外の天使達を食い止めるだけでも精一杯!そんな状況下で、貴方達にどんな手が残されていると……!』
零「そうか。残念だったな。……今、俺達の勝利に揺らぎはなくなったぞ」
『……は……?』
―ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーアアァァァァンンンンッッ!!!!―
確信に満ちた零の宣告に思わず間の抜けた声を返した瞬間、デザイアドーパントのその声に被さるように、街の方から突如爆発音が響いた。
驚きと共にデザイアドーパントが振り返ると、クラナガンのあちこちで爆発が立て続けに起きており、一瞬零の仲間達の内の誰かが遂に倒れたのかと笑みを浮かべるが、その笑みも次第に消え去っていき、徐々に驚愕の色へと染まっていった。
◇◇◇
―クラナガン・ドゥームズクロック壱号機地点―
なのは(別)「──貴方たち……どうして……?」
スターズとライトニングが受け持つ、壱号機攻略戦の戦場。
今まで戦っていた量産型ライダー達に加え、其処へダメ押しと言わんばかりに現れたデザイアドーパントの分身達を前にしてなのは(別)達も覚悟を決めるしかないかと腹を括ろうとした矢先。
自分達に背中を向けて、今の一瞬でデザイアドーパントの分身の十人は切り捨てた金色のスパナのような形状をした長剣を軽く振るい、肩に背負った全身包帯だらけの青年はぶっきらぼうに答える。
真也「勘違いすんな。俺らの仕事はあのクアットロ達をとっ捕まえて情報を聞き出すこと……。別にテメエ等を助けるつもりはねえ」
恭平「──またまたー。テンプレなツンデレなんてしちゃってー。今どき流行んねーぞーそういうのー?」
真也「うるせえ!痛っ……あー、クッソッ……頼むから今は大声出させんな……傷に響くっ……」
薫「いや。単純に先輩が黙って戦えばいいだけの話なのでは」
クレア「同感ね。ってか口開かないで。息くさくて吐くわ」
真也「コイツらより先にぶっ殺されてーかオメーら」
恭平「お願いだから此処に来てまで喧嘩しないでねー……」
そんな愉快なやり取りを交わすのは、前の戦いにてサンダーレオンを巡り、雷達と敵対してた筈の真也達だった。
思わぬ増援にスバル(別)達は目を白黒させ、なのは(別)ら隊長陣は警戒して真也達を睨み付ける中、そんな彼女達の背後から音もなくハルが現れた。
なのは(別)「!ハルさん!」
ハル「大丈夫。今の彼等は君達の敵じゃない。共通の敵を前にしての、利害の一致って奴さ」
ポンっと、なのは(別)の肩に手を置いて軽くウィンクをすると、ハルはそのまま真也達の元まで歩んで彼らと肩を並べていく。
真也「……いいんスか。俺らに手を貸すような真似をして。俺達は──」
ハル「関係ないよ。君達も零君達も、私にとってはどっちも可愛い後輩だ。今は元先輩の生徒会長として、後輩達に手を貸そう」
真也「……そっスか」
其処から先の交わす言葉はなく、真也とハルはまるで示し合わせたかようにそれぞれの腰に同時にギアを巻き付け、取り出した携帯に番号を打ち込んでゆく。
そして恭平も静かに変身の構えを。クレアは懐から出したバックルを腰に当てていき、薫は一歩前へ踏み出すと共に戦闘体勢を取った。
◆◇◇
―クラナガン・ドゥームズクロック弐号機地点―
―ドゴォオオオオオオオオオオンッッ!!!!―
映紀「はっ、ぬるいぜ!こんな数だけ揃えたとこで、この俺様が止められるかよ!」
海斗「だからって猪突猛進が過ぎますよ!危ないですから一人で突っ走らないで!」
弐号機地点。零と別れてから六課を飛び出した映紀と海斗はデザイアドーパントの分身達と戦うディジョブド等と合流を果たし、戦場に辿り着いてすぐにディスパランサーを豪快に振るってデザイアドーパントの分身達を纏めて切り裂いた映紀に、後から追い付いた海斗が息も絶え絶えにツッコミを飛ばしていた。
ディジョブド『映紀、海斗!来てくれたんだね!』
映紀「おーよ!あの女にはこの前してやられた借りがあんだ。借りっぱなしなんてのは、ストレートじゃねえからなぁ!」
チャキッ!と、ディスパランサーの槍先をデザイアドーパントの分身達に向けて高らかに叫ぶ映紀。
そんな彼らの姿を、センチュリオRは上空から眺めながら冷静に分析する。
センチュリオR(仮面ライダーディスパーに、データにはない謎の守護者である戦士……脅威度レベルを引き上げる必要はありますが、現時点で、こちらの今の戦力差を覆す程ではな──)
―バシュンッ!―
センチュリオR『……!』
思考するセンチュリオRの真横から、突如一発の青い銃弾が飛来しセンチュリオRが常時展開する障壁に阻まれた。
徐に振り返れば、其処には建物の屋上からセンチュリオRにディエンドライバーの銃口を向ける大輝の姿があった。
センチュリオR『仮面ライダーディエンド……海道大輝……また貴方ですか……』
大輝「釣れないねぇ。例の研究所以来の再会じゃないか。もっと感傷的になってくれたまえよ、お人形さん」
センチュリオR『言語を交わす必要はありません。貴方の討伐も私の中にある指示の一つ……今度は命拾い出来るとは思わない事です』
大輝「あっそ。ならこっちも容赦はしないさ。君達のお宝は既に頂戴済みで、もう用はないんでね」
センチュリオRと対峙しながらそう宣告し、胸のポケットからディエンドのカードを取り出す大輝。
その姿を、海斗は大きく目を見開いて瞳を激しく揺らしながら感慨深そうに見上げていた。
映紀「……?どうした海斗?」
海斗「───────。いえ、何でもありません。俺達も行きましょう!」
映紀「???おう、なんか知らねーが良い顔だ。決まってるぜ!」
何処か気合いの入った、自信に満ち溢れた顔付きを浮かべながら眼前に広がる敵の軍勢と対峙する海斗。映紀もそんな彼に触発されるようにディスパランサーを荒々しく振り回し、ディスパーのカードを手にしていく。
◇◇◆
―クラナガン・ドゥームズクロック参号機地点―
シルベルヴィント『──なんだいコレは……どうなってんだい!?』
同じ頃、参号機地点。
デザイアドーパントの分身達と量産型ライダーの軍勢と共に、勢いに乗じて一気に勝負を付けるべく黒獅子リオ達に一斉射撃を試みたインスペクターだったが、それは失敗に終わった。
彼女らが忌しげに睨み付ける先には、自分達の攻撃を全て凌いだ巨大な花びらを模した桜色の盾がある。
その盾が花が散るように消え去っていくと、盾の奥から黒獅子リオ達の前に佇むアズサと優矢、そして今の盾を展開した姫の姿が露わになった。
黒獅子リオ『お前たち……!』
テンガ『優矢!?それにアズサと姫さんも……!大丈夫なのか!?』
アズサ「うん。もう平気」
優矢「心配掛けさせて、悪かったなっ。こっから先は──」
姫「ああ。この間のリベンジマッチといこう!」
パシッ!と、掌に拳を叩き付けて気合いを入魂する優矢に同調するように、姫とアズサはインスペクターとデザイアドーパントの分身達を力強い眼差しで見上げていく。
そんな彼女達を前にシルベルヴィントも一瞬だけ臆するも、すぐに強気な態度を取り戻して三人を馬鹿にするように嘲笑った。
シルベルヴィント『呆れた連中だねぇ。あれだけ手酷く痛め付けてやったってのに、性懲りも無くまたやられに来たってのかい?』
「───相変わらず、ペチャペチャとお喋りなのは変わりないオバサンね。いい加減、その不快な声にも辟易してきたわ」
シルベルヴィント『ッ!アアッ?!』
優矢「え……ア、アズサ……?」
隣に立つアズサの口から、いきなり普段の彼女からは考えられないドスの効いた低いトーンの声と過激なセリフが飛び出し、優矢はギョッとした目でアズサを見た。
腰に片手を添え、ウンザリした様子で項垂れながら深い溜め息を吐き出すアズサが顔を上げ、閉じていた瞼を開くと、その瞳の色は金色に輝いていた。
姫「おや……。君が私達の前に姿を見せてくれるとは意外だな。どういう風の吹き回しだい、アスハ?」
優矢「……アス、ハ?」
アスハ「私もあの連中には刺された借りがあるのよ。それに、あの預言者が寄越した新しいドライバー……アレを使いこなすには、私とアズサは変身してる間だけ意識を統合しなきゃならないようでね。つまり今までみたく、あの子の中に引っ込んでる訳にはいかなくなったってワケ」
姫「なるほど。ではこれからは君とも肩を並べて共に戦えるようになる訳だな。嬉しく思うよ」
アスハ「そいつはドーモ……ってか今更なんだけど、なんでアンタ、私のことまで知ってんの?今まで自己紹介したりされたりした覚えがないんだけど?」
姫「さっき君自身の口からも言っていただろう?君達の新しいドライバーに怪しい点がないか調べた際、君とアズサの意識を統合するシステムが組み込まれていた。其処から君の名を知れたし、それよりも前から、アズサの中に君の存在が在る事は薄々気付いていたさ」
アスハ「……あー……なーる……やっぱ神様って油断ならないわ……」
アズサ『うん。ヒメはずっとスゴイよ』
優矢「……俺の目の前で、全然知らない仲間の情報がどんどん出てくるぅ……」
これまで結構長いこと共に旅をしてきた筈なのに、今日がはじめましてのアスハを交えて和気あいあいなやり取りをする姫とアズサに置いてけぼりにされ、疎外感からホロりとちょっと涙目になる優矢。
そんなのほほんとした雰囲気を見せ付けられてシルベルヴィントも思わず呆気に取られてしまっていたが、段々と敵に放置されている今の状況に内心フツフツと怒りが湧き上がっていき、姫達に向かって激しく怒鳴り散らした。
シルベルヴィント『いい加減にしなぁっ!!人を放っていつまでもベラベラと!あたいらをコケにしにきたのかい!?』
姫「……そんなつもりはなかったのだが……しょうがない。改まっての挨拶はまた後ほどだ。優矢もそれでいいな?」
優矢「説明してくれるならもうなんでもいいです……ハァッ……とにかく行くぞ、三人共!」
アズサ『うん……!』
アスハ「ええ」
『VAIZER DRIVER!』
優矢の呼び掛けにそれぞれ応えながら、姫は懐から取り出した戦極ドライバーを、アスハはヴァイザードライバーを腹部に当てていく。
すると、ヴァイザードライバーのバックル端から黒鉄色のベルトが一周して延びてアスハの腰に巻き付き、姫も戦極ドライバーを装着すると、スカートに身に付けた装身具に繋げられている桃の意匠が中央カバーに施されている南京錠型のアイテム……ピーチロックシードを取り外して顔の横に掲げ、錠前の側面にある解錠スイッチを軽く親指で押し込む。
『PEACH!』
―ギュイィイイイイイイインッ……!―
シルベルヴィント『!?な、何だい……!?』
カイル「あ、あれって……?」
レオナ「……桃……?」
解錠スイッチを押して電子音声が鳴り響いた直後、姫の頭上でまるでジッパーのように環状の裂け目が開き、その裂け目の向こうに繋がってる違う世界から桃の形状をした巨大な果実が宙に浮きながら現れたのだった。
◆◆◇
―クラナガン・ドゥームズクロック肆号機地点―
―ガシャアァアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァーーーーーーアアァンッッ!!!!―
Tフェザー『ぐうぅっ!ハァッ……ハァッ……!』
『『『ウフフフフ……』』』
最初に破壊された、ドゥームズクロック肆号機が顕在する地点。
肆号機の破壊に結果的に失敗してしまったTフェザーは、本部からの通信で聞かされた本体の破壊までの時間稼ぎに奔走し、絶え間なく襲い掛かる量産型ライダー達を相手に奮闘し続けていた。
しかし、此処にきてデザイアドーパントの分身体までもが追い討ちのように増援に現れ、数で追い込まれるあまり無人となった市街地のビルとビルの間を猛スピードで飛翔しながら背後に振り向き、街への被害を抑えるべく出力を下げたビームを連射して追ってくる敵を一体ずつ、確実に数を減らしてくが、減らした矢先にまた次から次に増援が出てきてしまう。
Tフェザー『(キリがないっ……!このままだと消耗戦になる!しかも──!)
『DARK!SHOT!』
『STRIKE VENT!』
Tフェザー『ッ?!グッ!』
未だ終わりの見えない戦いに、体力的にも精神的にも疲労が徐々に蓄積しつつある中、不穏な電子音声が街中で反響して響き渡る。
慌ててその場から急降下したと同時に、Tフェザーが直前まで留まっていた地点に両脇のビルから黒い弾丸と漆黒の火炎放射が壁を突き破りながら激突し、巻き起こる大爆発から発生した爆風に当てられたTフェザーは吹き飛ぶも、どうにか背中の翼を巧く操って半ば強引に宙で体勢を立て直しながら地上へと滑り込むように着地し、直後に片膝を付きながらトランスの姿に戻ってしまう。
トランス『ハァッ…ハァッ……正直に言うけど、ごめんね……ちょっとしつこ過ぎるんじゃないかなぁっ……』
―バゴォオオンッ!―
ロスト『…………』
ガリュウ『………』
少しだけ申し訳なさそうに言いながら仮面の下で苦笑いを浮かべるトランスの目前に、火災が発生するビルの穴から今の同時攻撃を放った犯人であるロストとガリュウが飛び降り、地上に着地してトランスと対峙していく。
更に其処へ、上空からトランスを追ってきたデザイアドーパントと量産型ライダーの混合部隊が追い付いてきて二人の背後に次々に着地し、トランスの目の前に数十の軍勢となって立ち塞がった。
トランス『ッ……あー、もう……目眩いがするっ……こんな感覚、デスクワークで四徹した時以来かも……』
『こんな時に嫌なこと思い出すなぁ……』とボヤきつつ、軽く頭を振ったトランスはフラフラと起き上がりながらソードモードに切り替えたライドブッカーを手にしていく。
丁度其処へ、先程まで激しい空中戦を繰り広げていたトランス達を追ってきたスバル達が漸く追い付き、トランスが対峙する軍勢を目の当たりにしてギョッとしてしまう。
ティアナ「な、なのはさん!」
シグナム「もう一度私達と代われ!一人でその数は無理だ!」
トランス『……そうしてもらえると助かるんですけど……ちょっとその隙が、ね……』
そんなやり取りをしてる間にも、ロストとガリュウが軍勢と共にジリジリと迫る。
シグナムの提案通りにしたい所だが、この状況で彼女達の元にまで下がってKウォッチを譲渡する
冷や汗を流しながらも少しずつ後ろへ下がろうとするトランスだが、そんな彼女へデザイアドーパントの分身達が情け容赦なく一斉に飛び掛かり、向かってくる異形達を前にトランスも咄嗟にライドブッカーから新たにカードを取り出そうとした、次の瞬間……
『ATTACKRIDE:SLASH!』
『『『……!!?』』』
―ザシュウゥゥ!!ドゴォオオオオオンッッ!!―
トランス『ッ!……えっ?』
背後から不意に聞こえた電子音声と共に、トランスの頭上を巨大な横一文字の斬撃波が飛び越え、そのままトランスを襲おうとしたデザイアドーパント達を纏めて斬り裂き、爆散させた。
目の前で起こったいきなりの出来事に理解が追い付かず、唖然となるトランスの後ろから前へと、一人の紫色の仮面ライダー……先の戦いにて、零と戦い、その後に現れたヴリトライレイザーに敗れて怪我を負った後、奈央の手助けにより六課へと運び込まれた迅が変身するディソードが静かに歩み出た。
トランス『!貴方は……?』
ディソード『誰でもいい。今は少しでも体力の回復に専念しろ。……これで、奴に助けられた借りは無しだ』
トランス『へ?』
急に現れるなり一方的にそう言い付けるや否や、ディソードは右手の剣を手に走り出して眼前の軍勢に立ち向かっていく。
その後ろ姿を呆然と見送ると、トランスはふと緊張の糸が解けて変身が解除されながら後ろへ倒れそうになるが、そんな彼女の両脇を背後から二人の女性……市民の避難誘導を手伝っていたはやてと、六課から此処まで駆け付けたフェイトが咄嗟に抱き支えた。
フェイト「なのは……!大丈夫!?」
なのは「ぅ……フェイトちゃん、に……はやて、ちゃん……?」
はやて「また無茶して……!ほら、今はこっち!」
二人掛かりの力で、動けないなのはの身体を必死に引きずりながら運んでいく。
其処へ駆け付けてくれたシグナム等の手も借りて近くの物陰まで何とか逃げ込むと、なのはを壁に預けるように寝かせ、一先ずの安堵の後、シグナムがはやてとフェイトの顔を交互に見ながら改めて疑問を投げ掛けた。
シグナム「主はやて、テスタロッサ。お二人はどうやって此処まで……」
はやて「ああ、ウン。結界の外までの避難誘導が一先ずは落ち着いたから、後の事はシャマル達に任せて、私もシグナム達を手伝いに来たんよ。その途中でフェイトちゃんとも合流して、それから──」
フェイト「うん…あのライダーに会って、なのは達の所まで連れていこうって申し出てくれたんだ」
そう言いながらフェイトが向ける視線の先を皆も追うと、其処には量産型ライダー達とデザイアドーパントの分身体の攻撃をいなしつつ、ロストとガリュウを相手に立ち回るディソードの姿があった。
ザフィーラ「私達を手助けしたという事は、紲那達と同じように異世界からの助っ人なのか……?」
はやて「それが分からへんねん。名前を聞いても全然口も効いてくれへんかったし……」
なのは「……でも、誰だとしても、助けてもらったのは事実だよ……なんであれ、感謝しない、と……うぅっ……」
フェイト「なのは……!」
脇腹を抑えて痛みで唸るなのはを見て、一同は心配して思わず身を乗り出す。その様子に、シグナムも痛ましげに眉を顰めた。
シグナム「無理もない……総出で掛かってドゥームズクロックを破壊したまでは良かったものの、直後にこの有り様だ。此処まで持ち堪えるのにも、相当体力を消耗しただろうに……」
なのは「あはは……壊すだけならって、甘く見積もってたけど……やっぱり、そう簡単にはいかないかぁ……」
「流石に参ったなぁ……」と、黒い炭で汚れた顔で苦笑いを浮かべるなのは。そんな彼女の身を皆が案じる中、なのはは心配そうに顔を覗き込んでくるフェイトを見上げ、静かに問うた。
なのは「フェイトちゃん」
フェイト「うん……」
なのは「零君とはあの後、しっかり話せた?」
フェイト「……うん。なのはが背中を押してくれたおかげだよ」
なのは「そっか。……じゃあ、今のフェイトちゃんなら大丈夫だ」
フェイト「…え?」
心底安堵したように深く息を吐き、なのはは腕に付けたKウォッチを徐に外すと、フェイトの前に差し出していく。
フェイト「なのは……」
なのは「この世界での、最後の決着。今度は
フェイト「……!」
疲労を滲ませながらも、優しげな眼差しと共に微笑むなのはが言わんとしている意図を察してフェイトは目を見張らせる。そんな二人のやり取りを前にはやても仕方なさそうに笑うと、なのはの手を下から支えるように添えていく。
フェイト「!はやて……」
はやて「今回の件、振り回されまくったフェイトちゃん的にも思うところはあるやろ?……あの子のこと、今の私の代わりに頼んだよ」
フェイト「…………。うんっ」
親友達からの後押しを受けて、フェイトはなのはとはやての手から受け取ったKウォッチを大切そうに胸に抱き、力強く頷き返す。
そんな三人の姿を前にスバル達も温かに見守る中、覚悟を固めたフェイトは物陰から飛び出しながら右腕にKウォッチを巻き付けて起動し、画面に出現したエンブレムをタッチした。
『RIDER SOUL BEET!』
フェイト「来て──ビートゼクター!!」
ライダーベルトを腰に出現させたKウォッチを巻き付ける右腕を天に掲げ、高らかに叫ぶフェイトのその呼び掛けに応えるかのように、ビートゼクターが上空から時空を寸断しながら現れてフェイトの元に飛来してゆく。
そしてフェイトはビートゼクターを掴み取り、最早一点の曇りもない瞳で、眼前でディソードに襲い掛かるデザイアドーパントの分身達とガリュウ、ロストを見据え、そして───
◆◆◇
―クラナガン・ドゥームズクロック本体地点―
『──そんな……どうしてまだ……?何故立ち上がれているの?!あれだけの傷に、絶望を!心に深く刻み込んだ筈なのに!どうしてまだこの状況を前に折れないというの?!』
零「その答えはとっくに知っている筈だぞ、クアットロ」
『!?』
無限にも近い己の分身を各地に送り付け、普通ならとっくに絶望して打ちひしがれても可笑しくはない困難を前にしても未だ諦めずに立ち向かおうとする戦士達の姿を目の当たりにし、あからさまな動揺を隠そうとする余裕すら無くしたデザイアドーパントに零は真摯に答える。
零「魔界城の世界や、翔子達の世界、俺達の元の世界でのJS事件でも嫌というほど目にしてきた筈だ。何度打ちのめされた所で、俺達は決して、目の前の誰かを助ける事を諦め切れない。例えこの心が砕かれたとしても……指先の一つでさえ動かせるのなら、俺もアイツ等も、この男も、地を這いつくばってでも最期の瞬間まで戦えるのだとな」
雷「黒月…………っ……ぐっ、うぅっ……!!」
紫苑「!雷さん……!」
自分だけでなく、雷やなのは達がその内に秘めてる誰にも引けを取らない覚悟の強さを改めて口にする零の激励を力に、雷は膝を付いた足で徐に立ち上がり、前へ一歩、強く歩み出て二人の間に肩を並べていく。
零「やれるのか」
雷「……当然だ。何度打ちのめされようとも、その度にまた立ち上がれるのが俺達の強さ……なんだろう?」
零「……ふっ」
『なん、なの……どうしてまだ笑っていられるというの……!?何なのよっ、貴方達はっ!』
理解が出来ないと、既に目と鼻の先にまで迫っている世界の終焉と絶望的な戦力差を前にしても笑みを交わす零達を見て、激しく動揺を露わにするデザイアドーパントからの問いに、零と紫苑、そして雷は正面切って迷いなく告げる。
零「聴きたければ何度でだって聞かせてやる。俺は、」
紫苑「僕達は、」
「「通りすがりの仮面ライダーと……」」
雷「世界を守る──雷の牙だ!」
「「「憶えておけ!!」」」
それぞれの腰にドライバーを巻き付け、三人は取り出したカードを目の前に突き出すように掲げながら変身の構えを取り、そして……
ハル「──変身」
真也「変身……!」
恭平「変身っ!」
大輝「変身!」
映紀「変身っ!!」
姫「変身!」
優矢「変身ッ!」
アスハ&アズサ「『変身!』」
フェイト「変身ッ!」
紫苑「変身!」
零「変身──!」
雷「──変、身ッ!」
目的は違えど、今だけは敵も味方も関係なく目の前の世界の終焉を前に志を共にし、戦士達は眼前の敵を前に恐れ一つなくその姿を変えていく。
『Complete!』
『Complete!』
『KAMENRIDE:Dl-END!』
『KAMENRIDE:DISPAR!』
『Lock On!』
『ソイヤッ!』
『PEACH ARMS!豪華☆絢爛!』
『
『
『
『Henshin!』
『Cast Off!』
『Change Beetle!』
『KAMENRIDE:DECADE!』
『KAMENRIDE:DECADE!』
『CHANGE RAIGA!』
ドゥームズクロックの前に立ち塞がる敵の軍勢に向けて、それぞれ変身を完了したライダーと怪人、守護者達は各々の得物を手に勇猛果敢に立ち向かう。
その中には、新たな仮面ライダーとしての姿を得た姫と、アスハとアズサの姿もあった。
姫は仮面ライダー鎧武のアーマードライダー達と同様の変身動作を行い、戦国武将の兜をモチーフにしたような薄桃色のパルプアイと、鎧武と斬月の中間に近いデザインの銀と桃色の仮面を纏い、後ろ腰から袴を連想させる銀のコートを靡かせる銀色のアンダースーツと、桃の果実をモチーフにした桜色の和風の鎧を纏い、左腰には鍔の部分が銃身になっている銃剣を装備し、右手には専用武装の桃色の長刀・桜雪を握り締めた銀色の仮面ライダー『
ヴァイザードライバーを装着したアスハ&アズサはバックルの右側側面に付随する剣の柄をモチーフとしたキーを軽く引くと、バックル中央部を覆っていた禍々しい爪の両手のパーツが左右に開き、直後にアスハの左右から手の甲に緑色の丸い宝玉のようなパーツが埋め込まれた巨大な蒼い右手。
同様に、水色の丸い宝玉のようなパーツが手の甲に埋め込まれた刺々しい外見のダークブルーの巨大な左手が現れ、そのままアスハの上半身と下半身をまるで握り潰すように包み込み、霞のように両手が消え去った後、アスハは漆黒と青のツートンカラーの騎士のような風貌と、背中から血のように赤い真紅のボロボロのマントを羽織った姿である『仮面ライダーヴァイサーガ』に変身し、左手に出現させた赤いラインが特徴的な鞘に収まった巨大な長剣・五大剣を手に仲間達と共にインスペクター達に挑む。
そして、変身を完了した二人のディケイドと雷牙もまた、デザイアドーパントとケルベロスインフェルニティを前に身構えていく。
雷牙「いくぞ二人共……俺に力を貸してくれ……!」
ディケイド(紫苑)『勿論』
ディケイド『決着を着けるぞ、クアットロ。お前のその欲望、今此処で俺達が叩き潰す……!』
『調子に乗って……いいでしょう。寧ろ丁度いい機会です。イレイザーに覚醒した貴方の因子の力、私自ら確かめて差し上げますわ!』
『ガァアアアアアアアッ!!』
獣の雄叫びを上げるケルベロスインフェルニティを従えて、デザイアドーパントが地を蹴って猛スピードで三人に襲い掛かる。
対する雷牙とディケイド(紫苑)はケルベロスインフェルニティと。ディケイドはデザイアドーパントと真正面から激突し、最後の決戦の火蓋が此処に切って落とされたのであった──。