仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

495 / 519
第二十一章/雷牙の世界⑳(前編)

 

 

───長く苦しい戦いを乗り越えて、漸くデザイアドーパントを撃退する事が出来たディケイド達。

 

 

デザイアドーパントが巨大な爆発に飲み込まれた跡地には既に異形の怪人の姿はなく、結んだ髪が傷んで解け、元の姿に戻ったクアットロがうつ伏せに倒れたままボロボロの体を這うようにして引きずらせながら手を伸ばす先には、砕けた眼鏡の破片の中に混じる無惨にも粉々になったデザイアメモリだったモノの残骸があった。

 

 

クアットロ「ぁ……ああああっ……メモリが……わたしの、メモリがぁぁぁぁ…………!」

 

 

ディケイド『…………』

 

 

メモリの破片を土ごと掴み取り、失った力に未練がましくも未だ縋り付く彼女の姿をジッと見つめ、ディケイドは静かにドライバーのサイドバックルを開いて零の姿に戻る。

 

 

そして雷牙達も元の姿に戻る中、零は一人倒れるクアットロの元に歩み寄り、彼女を見下ろしていく。

 

 

零「もういい加減、諦めろ。これ以上罪を重ねるような真似はするな。大人しく投降して、スカリエッティや残ったナンバーズ達の居場所を教えろ」

 

 

クアットロ「…………あきらめろ、ですって……?なにもっ、何も知らない貴方ごときが偉そうにィっ!!」

 

 

バッ!と、掴み取った土ごとメモリの破片をまるで癇癪を起こした子供のように零の足に投げ付けるクアットロ。

 

 

一瞬身構える雷達だが、零は肩越しの眼差しだけで彼等を制すると、クアットロは心の底から悔しそうに項垂れ、強く握り締めた両手の拳で何度も何度も八つ当たりのように地面を叩き付けていく。

 

 

クアットロ「ドクターの夢を叶えることこそ私の生まれた意義!生きる意味!その為だったらどんな手でも使ってきた!そういう風に育てられてきた!!そんな私の人生の全てをっ、ただ破壊する事しかできない貴方なんかに否定されてたまるかぁああっ!!」

 

 

雷「コイツは……」

 

 

紫苑「何となく察してはいたけど、そのスカリエッティとかって奴に心底心酔しているようだね。本当に救いようがない……」

 

 

此処まで徹底的に敗北しても尚、スカリエッティへの忠義心に一切の揺らぎを見せないクアットロの変わらなさに流石に匙を投げて肩を竦める雷と紫苑。

 

 

それは零も同様の印象なのか、憎しみの篭った眼差しを向けてくる彼女の目を暫しジッと見つめた後、瞼を伏せて口を開く。

 

 

零「お前がどんな立場であろうと、お前とスカリエッティ達が今まで犯してきた罪は決して許されないし、誰にも許されはしない。同情だってするつもりはない。世界の終わりを前にそのエゴを貫き通す道を選び取ったのは、他ならぬお前達自身の意思なのだから」

 

 

クアットロ「っ……敗者への鞭打ちですかぁ……?ええ、いいですよ……こうして負けた以上、甘んじて受け止めて差し上げっ──」

 

 

零「世界中の誰もが、お前達を許す事はしない。それは絶対だ。……だが少なからず、俺はお前に感謝している」

 

 

クアットロ「………………は?」

 

 

何を言っているんだ?と、頭の可笑しな人間を目の当たりにしたかのように困惑の声を漏らすクアットロに対し、零はそっと自身の左目に触れていく。

 

 

零「お前のやってきた事は最低最悪だ。それを擁護するつもりは微塵もない。……ただ、俺個人としてはやり方が最悪だったとはいえ、ルーテシアを保護し、アリシアやリインフォースを生き返らせて、俺に過去と向き合う機会を……俺がこれまで何もかも取りこぼしてきた後悔を、のうのうと生きて今まで忘れていた罪と向き合い、アズサや……コイツを救う力を、俺に与えてくれた」

 

 

姫「……零……」

 

 

左目から手を離し、姫を肩越しに一瞥する零。

 

 

そしてもう一度クアットロに目を向けると、徐に腰を落とし、倒れる彼女と目線を合わせるように屈んでいく。

 

 

零「だからこれだけは、お前に伝えようと想ってた。……俺が救えなかったアリシアや、リインフォースともう一度引き合わせてくれて……因子を……リィルの存在を俺に取り戻させてくれて……ありがとう」

 

 

クアットロ「ッ!!くっ……ぅ……ぅうううううっっ……!」

 

 

その言葉にだけは、他意も何もなく、ただ純粋な感謝の気持ちしか含まれていないのだと直に感じ取り、衝撃で目を見開き、それでも零を睨み付けるクアットロの目からボロボロと大粒の涙が溢れ出す。

 

 

それは屈辱か。負けた相手への悔しさからか。

 

 

それとも何か別の感情が芽生え苛まれているのか当の本人のクアットロにさえ分からず、嗚咽の声を漏らして力無く項垂れながら最早抵抗する素振りすら見せなくなったクアットロを前にもう危険はないと感じ、彼女を拘束しようと皆の手を借るべく姫達に目配せを送った。直後だった……

 

 

『──生憎だが、ソイツを此処で引き渡す訳にはいかん』

 

 

零「……!」

 

 

―ザシュウゥッ!―

 

 

雷「なっ!」

 

 

姫「零っ!!」

 

 

零とクアットロの頭上から突如何者かが襲来し、そのまま二人の間に割って入るかのように右腕から展開した鋭い刃を振るい、零に斬り掛かった。

 

 

姫達の困惑と驚きの声が飛び交う中、直感的に危機を察して咄嗟にその場から離れた零は幸いにも肩の服が破けただけで済み、目の前に視線を戻すと、其処には倒れるクアットロを守るように身を屈めて両腕から生えた紫色の刃をこちらに向ける、トーレが変身するアースの姿があった。

 

 

零「トーレ……!」

 

 

クアットロ「……とー、れ……ねえさま……」

 

 

アース『お前は少し休んでいろ。あとは私が何とかする』

 

 

クアットロ「っ……ぅ……─────」

 

 

そう言ってクアットロの背中に手を添えるアース。その温もりから安堵を覚えたのか、クアットロはプツリと意識が途絶えたかのように気を失ってしまい、そんな彼女の体をアースは徐に肩に抱き抱えて身を起こし、零達と向き合っていく。

 

 

アース『今回は私達の敗北だ。完璧なまでにな。故にこの場での勝利は、貴様らに譲る』

 

 

零「……まだ諦める気はないのか」

 

 

アース『無論だ。今のドクターを支えられるのは、最早私達において他にいない。……あの方の命を守り通せるのは、今や我々だけなのだからな……』

 

 

顔を背け、何処となく自嘲気味にそう語りながら背後から現れた銀色のオーロラを潜り抜けて、クアットロを抱えたまま自分達のアジトに戻っていくアース。

 

 

その後を慌てて追おうとする雷と紫苑だが、零が両手で二人を制し、オーロラはそのまま徐々に消え去ってしまった。

 

 

姫「……いいのか?今からでも、私なら彼女達を追跡出来るが」

 

 

零「これ以上の深追いは禁物だ。俺たち全員、揃って消耗し過ぎてる……このまま仮に奴らの本拠地に辿り着けた所で、今度はこっちが返り討ちに遭うのがオチだろうからな」

 

 

姫「……わかった。君がそう判断するのなら、私は構わないが……」

 

 

姫の視線が雷と紫苑に向く。先程クアットロ達を追い掛けようとしていた二人は果たして納得してくれるか否か。

 

 

そんな姫の心中を眼差しだけで察したのか、紫苑は肩を竦め、雷は静かに瞳を伏せた。

 

 

紫苑「ここまで苦労させられて逃げられたのは癪だけど……ま、この世界の危機は去った事だし。別にいいんじゃないですかね、雷さん」

 

 

雷「ああ。……それに、連中はお前達の世界の住人なんだろう?完全な決着を着けるつもりなら、それはお前達の手で成すべき事だ。部外者なのは寧ろ俺達の方なのだからな」

 

 

零「……すまないな」

 

 

自分達の世界のクアットロ達のこの世界での跋扈を許してしまった挙げ句に逃がしてしまい、その上、二人に気まで遣わせてしまい酷く申し訳なさそうに眉を下げる零。

 

 

雷はその顔を両腕を組みながら真顔でジッと見つめると、やがて深く溜め息を吐きながら踵を返し、機動六課がある方角に向かって歩き出した。

 

 

雷「戻るぞ、()紫苑(・・)。事件が解決した今、お前達に手伝ってもらいたい事後処理もあるだろうからな。隊員としての勤めは果たしてもらうぞ」

 

 

紫苑「うへえ……こんな疲労困憊の状態でまだ働かせる気ですかあ……」

 

 

零「さっきも言ったろ?コイツにはブラックの気質があると…………うん……?」

 

 

愚痴を言い掛けた所で、零は何かに気付いたように雷の方に視線を向ける。

 

 

しかし雷は振り返る事もなく、ただまっすぐ、前だけを見据えて歩みを止める事なく進み続けていた。

 

 

紫苑「……零さん?どうしました?」

 

 

零「………………。いいや。存外、うちの分隊長殿も不器用な方だと改めて実感してな」

 

 

紫苑「……?」

 

 

何かを察した様子で顔を背けて微笑む零に紫苑は訝しげに首を傾げるも、零はそれ以上の野暮は語らずに雷の後を付いていく。

 

 

そんな零に腑に落ちない様子で紫苑も後頭部を掻きつつも二人を追い掛けると、残された姫は「やれやれ」と苦笑いを浮かべながら首を振り、何処か軽やかな足取りで三人を追い、零の隣に並んで全員一緒に機動六課への帰路に付くのであった。

 

 

 

 

◆◇◇

 

 

 

 

真也「──行ったみてぇだな……」

 

 

ハル「ああ……。クアットロ達はこの世界から去り、脅威になり兼ねなかったデザイアメモリも彼らが破壊した。これでもう、君達的にも安心だろ?」

 

 

零達が歩き去っていく中、そんな彼等を見送るように遙か後方の廃墟となった建物の屋上から見つめる五人組の姿があった。

 

 

壱号機のドゥームズクロックの破壊に貢献した、真也達とハル。

 

 

ドゥームズクロックを破壊してすぐ、なのは(別)達の前から姿を消した真也達は今回の任務の標的であったクアットロ達の退去を見届けると、漸く終わりを実感したのか、それぞれが気の抜けたポーズで途端にダルんとしていき、くたびれた様子の彼等とは対照的に涼しい顔を浮かべてるハルは微笑し、少しずつ遠ざかっていく零達の背中が見えなくなるまでずっとその目で捉えていた。

 

 

恭平「……けど、なんで今回俺らに手ェ貸すような真似したんスか、先輩?俺らは零達の敵で……」

 

 

ハル「関係ないと言った筈だよ?そんなこと。君達が私の可愛い後輩である事に変わりはない。……だからこそ、少しでも長く生きていて欲しい(・・・・・・・・・・・・・・・)と力を貸した。それだけの事さ」

 

 

真也「…………そっすか…………」

 

 

意味深に語るハルに、真也はそれだけの言葉を返してふらつきながら立ち上がると、そんな彼の体を薫が横から支えて肩を貸していく。

 

 

真也「新人……」

 

 

薫「……ちょっとだけですけど、見直しました。貴方にもあんな熱い一面があったんですね、先輩」

 

 

真也「っ……うっせぇっ」

 

 

クレア「なに照れてんのよ。せっかく見直し掛けたのに好感度下がる顔しないでくんない?きしょいから」

 

 

真也「おめーはホントに最後の最後まで辛辣だなぁ!?男嫌いにしたってちったァ可愛げぐらい見せろよ最後ぐらいよぉ!」

 

 

クレア「お生憎様、私は一筋な女なのよ。私は私の世界の仮面ライダーの桜羅、黎愛以外には絶対に靡かないと心に決めているの。絶対にあの子を手に入れる為にね!」

 

 

薫(……黎愛?って、誰の事ですか……?)

 

 

恭平(あーっと……確か組織調べによると、零の並行同位体……つまり、女として生まれた世界線のアイツってワケで……え?もしかして?)

 

 

真也(マジか……この女……)

 

 

自信満々に胸を張ったかと思えば、誰かを思い浮かべているのかほんのり朱が差した頬を両手に添えて「にへ〜」と、此処にきて初めて目にする顔を見せるクレアの衝撃の好みに絶句してしまう真也一行。

 

 

そんな彼らの愉快なやり取りを微笑ましげに見守った後、ハルはその辺りの壊れた鉄筋に適当に掛けていた自身の上着を手に取り、真也達に背を向けて何処かへと歩き出していく。

 

 

恭平「…もういくんですか?」

 

 

ハル「ああ。お互い、こんな所で一緒にいられるとこを誰かに見られるのは都合も良くないだろうしね。この辺でお別れにしとこう」

 

 

真也「……次に会った時、戦う事になるかもですよ。俺ら」

 

 

ハル「その時は加減はしないから心配はご無用さ。じゃね!終夜君や裕司君にもよろしくー!」

 

 

ばーい!と、最後まで楽しげに、何処までもマイペースなままに真也達に手を振りながら廃墟から飛び降り、後ろ髪を引かれる様子もなく去っていくハル。

 

 

そんな彼女のペースに呑まれて薫もクレアも目を白黒させる中、真也と恭平は「あー……」と呆れ気味に声を揃えた。

 

 

恭平「そうだわなー……あの人って、卒業する最後の最後までずっーとあんな感じだったわなー……俺らも零達も、あの終夜でさえ振り回されっぱなしだったし」

 

 

真也「……忠告のつもりであんなこと言ったけどよ……やっぱ、あの人には勝てそうにねーわ……」

 

 

「色んな意味でな……」と真也が付け加えると、恭平も共感するように小さく笑う。

 

 

そうして真也一行は銀色のオーロラを出現させ、ボロボロの体を引きずりながらオーロラの向こうへと渡り、自分達の拠点へと戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

───そんな彼らから、また離れた場所では……

 

 

 

 

 

 

ユリカ(…………リィル…………)

 

 

 

 

 

 

真也達がいた廃墟から、また別の廃墟のビルの一角にて。

 

 

背後に無数のセンチュリオと量産型ライダー達の骸を積み上げ、遠くから仲間達と共に去っていく零の姿を複雑げに見つめるのは、薄紫色のロングヘアーの髪を風で靡かせる女性……八雲の足取りを追う為に幸助達と別れた後も、影ながらこの決戦に参戦していたユリカ・アルテスタ。

 

 

少しずつ遠ざかっていく零の背中に名残惜しそうに手を伸ばそうとするも、途中で思い留まるように拳を強く握り締め、ユリカは身を翻して辺りに転がる骸達に目もくれず歩き出していく。

 

 

ユリカ(必ず見つけ出してみせる……真実を……そうすればきっと、私は───)

 

 

心は未だ晴れず。先行きの視えない真実を未だ追い求めるべく、再び歩き出した終極の神は建物の奥の闇の中へ溶け込むように消えていった。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。