仮面ライダーディケイド&リリカルなのは 九つの世界を歩む破壊神 Re:EDIT   作:風人Ⅱ

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第二十一章/雷牙の世界⑳(中編)

 

 

───その後。クアットロ一行とインスペクター、そしてドゥームズクロックを巡る騒動の事後処理は零達と異世界組(というかほぼ天満ファミリーを始めとした異能者組)の協力もあって都市機能はほぼ完ぺきなまでに復興を果たし、街の喧騒は先の事件での騒動がまるで嘘だったかのようにいつもの活気を取り戻しつつあった。そして……

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―機動六課前―

 

 

はやて(別)「──この度は、本当に申し訳ありませんでした!」

 

 

街の復興が無事に済み、次の世界へ旅立つ目処も立った零達はこの世界で知り合った六課の面々に別れを告げにいくと、何故か六課の隊舎前にて整列して待ち構えていたはやて(別)達からバッ!と頭を下げられた。

 

 

出会い頭のいきなりの六課メンバー勢揃いの謝罪に零達も流石にビビり倒し、一体何事かと困惑する中、はやて(別)の後ろから彼女と同様に頭を下げていた雷が前に出て説明し始めていく。

 

 

雷「お前達がまた旅に出ると聞いて、改めて今回の件を謝罪しようと思ったんだ。……今までの非礼の数々に加え、街の復興まで手伝ってもらい……本当に申し訳ないと思ってる」

 

 

零「…………ふん。誠意が謝罪だけとは流石に味気ないな。此処はもっと分かりやすく形に、そうだな……金一封を寄こしたりだとか―バシィッ!―ったぁ!?」

 

 

なのは「わざわざ心にもないこと言って悪者ぶらないの!!……ごめんね?こんなこと言ってるけど、こういう時って大体照れ隠しか自分が悪ぶれば解決すると思ってる時のムーブだからあんまり真に受けないであげて」

 

 

零「ごっ、ぅ……!人の頭をいきなり張り倒した上に、勝手な通訳までするな……!」

 

 

実に景気のいい音を立てて叩かれた頭を抑えて恨みがましげに睨み付ける零を、逆にジト目で睨み返すなのは。

 

 

そんな凸凹なやり取りをいきなり見せ付けられたはやて(別)達は呆気に取られてしまうが、零達に同行する一人のアズサ……の代わりに、人格が表に出ているアスハが腕を組んだまま溜め息混じりに口を開く。

 

 

アスハ「よーするに、一々相手にしてたらキリがないから程々に聞き流してってことよ。彼、そういうとこあるから」

 

 

零「どういう意味だっ……というか今更ながら、何でお前はサラッと出てきてるんだ。アズサの奴はどうした」

 

 

アスハ「あの子はまだ寝てる。私が表に堂々と出てこれるようになったからか、適度にサボるのを覚えてきたというか……ってか、そんなに驚かないでよ。あんまり歓迎されてないみたいで傷付くじゃないの」

 

 

零「いや別にそんな意図はないが……それにしたって、いきなり長く一緒にやってきた仲間の中にもう一人の人格が居座ってたとか急に聞かされたら混乱もするだろ、流石に」

 

 

アスハ「そこは慣れよ、慣れ。いいからホラ。お別れの挨拶、まだしっかり済ませてないでしょ?」

 

 

「んっ」と、無言で雷達を顎で指して続きを促すアスハ。

 

 

アズサの顔で、普段の彼女らしからぬその大人びた言動に零も未だ順応が間に合わず戸惑ってしまうが、そんな二人を横目に同行者のはやてとフェイトが苦笑いを浮かべ、代わりに雷達に応対していく。

 

 

はやて「この間も言うたけど、今回の事件は私らが原因で招いたみたいなもんや。この世界の貴方達が責任を感じる必要なんてあらへん」

 

 

フェイト「うん。だから謝るのは私達のほう……本当に、ごめんなさい」

 

 

なのは(別)「そ、そんな……!それこそ貴方達が謝るような事じゃ……!」

 

 

フェイトがはやて(別)達に頭を深く下げると、なのは達も彼女に続くように頭を下げていく(因みに零はそんな彼女達の姿を眺めているだけでいたが、なのはに横から無理やり後頭部を押さえ付けられて強引に頭を下げさせられた。

 

 

はやて(別)達はそんな彼等を前に慌てふためいてしまうが、暫しその様子を離れた場所から見守っていた理央がいい加減見兼ねて嘆息し、雷達の元にまで歩み寄っていく。

 

 

理央「いつまでこんな不毛なやり取りを繰り返す気だ?延々とこんな時間の無駄を繰り返していては、いい加減こちらの業務にも差し支えが出る」

 

 

雷「……そうだな……なら、此処は一先ず痛み分けと行こう。コイツの言う通り、このままだと流石にキリがないからな」

 

 

フェイト(別)「……それなら……」

 

 

なのは「うん。……とりあえず喧嘩両成敗?ってことで……」

 

 

まだ若干の気まずさは残っているものの、理央の仲裁からそれぞれ手を差し出し、和解の握手を交わす一同。と、其処へ……

 

 

紫苑「──なんだ。結構早く出たつもりだったけど、もう全員揃っちゃってたんですね」

 

 

雷「!紫苑……」

 

 

握手を交わす一同の前に紫苑と光、勇輔の三人がその場に遅れてやってきた。

 

 

彼等に気付いて雷が振り返ると、紫苑はいきなり手に持っていた何かを雷に目掛けて投げ渡した。

 

 

雷「?!なんだ、これは……?」

 

 

紫苑「此処にくる途中、大輝さんって人に会ったんですよ。何でもそれ、今回の戦いで手渡す予定だった雷牙のパワーアップツールらしいんですけど、今回は幸助さん達まで出張ってきてたし、時間もなかったから渡すのを諦めてたらしいんですけど、折角作って貰ったものをこのまま手渡しもせずに次の世界に行くのも後味悪いからって、僕から渡すようにって頼まれちゃったんです」

 

 

雷「雷牙の……パワーアップツール……」

 

 

零(……海道の奴、さてはコレを借りにして雷までいざって時に面倒事に巻き込むつもりだな……)

 

 

最早あの男の頭の中が手に取るように分かり、脳裏に嫌味な笑みを浮かべる大輝の顔が自然と浮かび上がる中、アスハが少し興味深そうに雷牙のパワーアップツールを観察した後に控えめに頷く。

 

 

アスハ「性能も見た感じ良さそうだし、結構いいんじゃない?あのドぐされメガネにパワーアップさせられたケルベロスとか、生き残りのインスペクターの戦力がどっかで息を潜めてるかも分かんないんだし。今回の報酬として貰っときなさいよ、折角なんだし」

 

 

雷「……そうだな……すまないな、紫苑。わざわざ届けてもらって」

 

 

紫苑「いいえ?案外楽しめたお仕事のほんのお気持ちですよ。気にしないで下さい。マジで」

 

 

勇輔(……これ絶対気にしてる言い方だわ)

 

 

光(事後処理で散々徹夜とかさせられてましたからね……)

 

 

清々しい笑顔なのに、何処か圧を感じる紫苑の声音から彼の中では未だにここ数日間、馬車馬の如く働かされたのが相当根に持ってるようだ。

 

 

心做しか目の下に隈がある紫苑になのは達も雷達も何とも言えない苦笑いを申し訳なさそうに返す中、零は首元から掛けた二眼レフカメラのファインダー越しにそんな彼等の姿を覗き込み、カメラを調節して一枚撮り終えると、そのまま名残惜しさもなく雷達に背中を向けて歩き出していく。

 

 

なのは「ちょ、零君!?」

 

 

雷「……いくのか?」

 

 

零「別れを惜しむ必要はないからな。……どうせまた、近い内にまた会える。違った形でだろうけどな」

 

 

ここから歴史通りに進むなら、彼とはまた祐輔の世界で再会し、共にあのヴェクタス達とも戦う事になる。

 

 

ならば今、惜しむ別れなど何もないと悠々とした足取りで歩き去っていく零の背中を雷は無言で暫し見つめた後、ほんの微かに口元に笑みを浮かべて、その背中に別れを告げる。

 

雷「またな、零。いつか、未来で」

 

 

零「……ああ。またいつか、未来(過去)でな」

 

 

振り返る事なく、片腕を振りながら去っていく零。なのは達も雷達に一礼すると、そんな零を追い掛けて走り出していく。

 

 

雷達はその姿が見えなくなるまで、彼等の献身と尽力に心からの感謝を込めて再び頭を下げ、紫苑もその光景を前に自身のカメラを手に取って撮影を行い、最高の一枚が撮れたと満足気な笑みを一人浮かべていくのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

―光写真館―

 

 

雷達との別れを終え、写真館に戻ってきた零達。帰宅して早々に出迎えてくれた栄次郎に写真の現像を頼んだ後、零はなのは達と共にそのままとある部屋に足を運ぶと、其処には既にヴォルケンリッターとFW、姫と優矢の姿が揃っていた。

 

 

キャロ「あ、皆さん!おかえりなさい!」

 

 

シャマル「おかえりなさい。皆とのお別れは済んだ?」

 

 

はやて「ん、大丈夫。……ただいまな、リインフォース」

 

 

フェイト「……アリシア」

 

 

リインフォース「…………」

 

 

アリシア「…………」

 

 

ルーテシア「…………」

 

 

皆から出迎えられつつ、はやてとフェイトが目を向けた先にある室内に並んでるベッドの上には規則正しい寝息を立てて眠る三人組……先の戦いにて救出したリインフォースとアリシア、そしてルーテシアの姿がある。

 

 

はやてがリインフォース、フェイトがアリシアの眠るベッドの傍に寄ってそれぞれ彼女達の頬や手に触れる中、部屋の入り口の扉からその様子を見守る零となのはの元に姫が近付いていく。

 

 

零「どうだ?目覚めの兆候は」

 

 

姫「依然としてまだ、だな。しかし私達に出来うる限りの事は全てやったんだ。後は……」

 

 

なのは「……本人達の頑張り次第、ですよね」

 

 

はやて達に見守られ、ベッドの上で眠り続ける三人を心配そうに見つめるなのは。

 

 

彼女の隣で腕を組み、壁に寄り掛かる零も無表情のまま三人を見守りながら、つい先日、三人を写真館に運び込んだばかりの際の記憶を思い返していく。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

数日前……

 

 

フェイト「──そんな……」

 

 

はやて「そんならこの子らは、意識は戻らへんてこと……?」

 

 

事件解決後。あの激戦でメンバー全員が疲労困憊の中、写真館の空き部屋に救出した三人を運び込んだ後、姫や幸助、紲那の世界のプレシア等を呼んで今の彼女達の容態を診てもらい、下された診断結果にはやてやフェイト、他のメンバーの間にも不穏な空気が流れるが、その問いに診断した面々は首を横に振って否定した。

 

 

プレシア(紲那)「今すぐには無理そうってだけの話よ。どうやらこの子達、洗脳の際に自己の意識を相当深い深層にまで押し込まれたようでね。意識を取り戻して目覚めるまでには、もう少し時間が必要そうなの」

 

 

姫「まあ、彼女達の心象意識の中にこちらから入り込んで、強引に叩き起す手もなくはないが……」

 

 

幸助「正直勧めはしないな。下手に意識に干渉した結果、例え目覚めた所で人格面に影響が出ないとも限らない。それなら、自然な目覚めを待つ方がよっぽど健全だ」

 

 

フェイト「……そっか……絶対に目覚めない、って事はないんですね……」

 

 

はやて「それだけ聞けたなら、安心です。……いつかあの子らが目を覚ますその日まで、私らも全力でサポートしますから!」

 

 

姫達の口から希望はまだあると聞かされ、先程までの悲観的な雰囲気から一変して希望を抱き、はやてとフェイトは自分達の代わりに三人の介護をしてくれているメンバーに混じって、アリシアとリインフォース、ルーテシアのお世話を手伝ってゆく。

 

 

そんな彼女達の様子を見届けた後、姫達が静かに部屋の外へと出ていくと、部屋のすぐ近くで待機し、今の話に聞き耳を立てていた零とクラウンと対面した。

 

 

クラウン『どうやら、一先ずは安心しても良さそうですね』

 

 

姫「ああ。ただまあ、懸念と呼ぶ程では無いが、少し気になることがあってな……」

 

 

零「……気になること?」

 

 

訝しげに零が首を傾げる。姫は「うむ」と頷くと、彼女の隣に立つ幸助が自分達が出てきた三人の眠る部屋の方へと振り返り、代わりに説明し出した。

 

 

幸助「アリシアとリインフォースの件だ。何故消えた筈の二人が復活したのか、そもそもどうやって肉体を得たのか……恐らくあの二人の体は、アズサやルミナと同様の人造人間の技術が応用されて使われている」

 

 

クラウン『……つまり』

 

 

零「あの二人の復活には、鳴滝も一枚噛んでたって訳か……」

 

 

大方、零を倒す目的で人造人間に関する技術をクアットロ達に自ら提供してたのだろう。

 

 

その執念深さに呆れつつも納得を覚える零に、幸助は続けて説明を進める。

 

 

幸助「多分お前達の世界での滅びの現象の際、あの二人の魂も巻き込まれて外の世界に弾き出されたんだろう。其処でスカリエッティ達にルーテシア共々拾われ、ナンバーズや人造人間などに関する技術を注ぎ込んで本物そのものと相違のない肉体を造り上げた上、そいつを器に二人の魂を注ぎ込んで蘇らせた。……あの人格でなければ、マジモンの天才なのは違いない一味だな」

 

 

零「……なら、このまま二人がまた消滅する事はない、って事か……?」

 

 

幸助「ルミナやアズサを見てみろ。恐らくあの二人の方が後から造られたロットだろうが、今もああやって問題もなく元気に過ごしてる。……お前のその不安は杞憂だ。心配しなくていい」

 

 

零「………………そう……か………………」

 

 

心の内を見透かす幸助の言葉に、零は漸く気が抜けたようにふらふらと壁に寄り掛かって背中を預けていく。

 

 

そんな零に、紲那の世界のプレシアが申し訳なそうに声を掛ける。

 

 

プレシア(紲那)「ゴメンなさい、零……フェイトの事だけでなく、アリシアの事まで気負わせてしまって……」

 

 

零「……謝罪は必要ない……俺が勝手に背負っただけの事だ……違う世界のアンタが気にする必要なんてない」

 

 

プレシア(紲那)「……そうね……野暮だったわ……あの子達のこと、どうかお願いします」

 

 

零「……ああ」

 

 

短く答えると、零は覚束無い足取りでその場から離れるように歩き出していく。

 

 

クラウン『顔を見なくともよろしいのですか?せめてひと目だけでも……』

 

 

零「……今はいい……まだ心の整理が付いてなくてな……少し風に当たりたい……」

 

 

姫「零……」

 

 

クラウン『……分かりました。お気を付けて』

 

 

気遣うクラウンに、零は無言で片手を振って応えながらその場を後にし、階段を降りていく。

 

 

道中、撮影スタジオの方で栄次郎が用意してくれたスイーツなどの山盛り料理をガツガツと嬉しそうに食べるチンク達の姿が視界の端に見えたが、そちらに目を向ける余裕もなく、受付カウンターがある入り口から外に出た零は、既に夜になった空を静かに見上げて白い息を吐き出す。

 

 

零(あの三人を、漸く助ける事は出来た……だが……)

 

 

この世界に訪れてから起きた出来事を思い返していく。

 

 

覚醒した破壊の因子により、力を使った代償として壊されたフェイトとの約束の記憶。

 

 

なのは達や雷達共々、皆を手に掛けた世界の破壊。

 

 

破壊された記憶を取り戻させてくれたリィルと自分のイレイザー化。

 

 

今回の黒幕だった、実の父親の黒月八雲。

 

 

……一気に考えるだけで、頭痛が走る頭を抑え、記憶を思い返すだけで体がその時の事を思い出すように震え出す。

 

 

零(……情けない。あんな強気に啖呵を切っておきながら、頭じゃ理解してても、心まではそう簡単には立ち直れないか……)

 

 

遠くから、何かの工事の音が聞こえて思わずそちらを見る。

 

 

どうやら先の戦闘で破壊されたドゥームズクロックの残骸の撤去作業を行っているらしい。主に手伝っているのはグランや紲那らを始めとした異世界組だったか。

 

 

零「……いいや……心配はいらないな……いざという時、俺を止めてくれる奴らは沢山いるんだ……俺はただ世界を救って、その後は──」

 

 

「──人知れず、また旅に出て僕達の前からも消えるつもり……なんだろう?」

 

 

零「……!?―バキィイイッ!!―ぐぅウッ!?」

 

 

秘めた想いを口にしようとした瞬間、先読みされたように次の言葉を誰かに先取りされ、声がした方に振り返ったと同時に頬を思いっきりブン殴られた。

 

 

地面を転がり、敵襲かと思って慌てて身を起こす零だが、自分を殴った相手の正体を目の当たりにし、我が目を疑った。

 

 

零「……クロ、ノ……?」

 

 

クロノ「──漸く会えたな。この大馬鹿野郎」

 

 

殴った手をヒラヒラさせ、明らかな怒りを宿した目で零を見下ろすのは、先の事件でなのは達と共に戦った零の世界の住人であり、友の一人……クロノ・ハラオウンその人だった。

 

 

 

 

 

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